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第一章 プロローグ
1-3 成人の儀 その三
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ウワー、何だか一杯ついてるけれど・・・。
これが普通なの?
それとも私だけ特別?
ウーッ、わかんないよぉ。
ゼファー様のお言葉から言えば、少なくとも加護の項目だけ特別なのは間違いなしだよね。
それに八神様の恩寵レベルがオール3は数千年ぶりらしいから・・・。
魔法の全属性持ちって、ファンダレル王国でも一人しかいないって噂話で聞いたことがあるから多分これも特別だよね。
まぁ、LVが最低だから今のところショボイけれど、スキルの習得と鍛錬に励めってゼファー様が言ってたようだから、これからきっと伸びるんだろうと思う。
うーん、先ずは魔晶石採掘師と魔晶石加工師について調べなきゃいけないよね。
そもそも学校で教わっていないし、私がこれまで聞いたことの無い職業だから。
魔晶石ギルドの支部が侯爵領内では領都にしかないっていうのは、きっと希少な職なんだろうね。
だって、私の住んでいるバンデルって結構大きな町なんだよ。
侯爵領では領都に次いで二番目の大きな町だし、ファンダレル王国でも十指に入るほどの町なんだから、普通のギルドなら何でもある。
噂では闇ギルドさえあると言われているのに・・・。
お父さんが宝飾の関係で極稀に魔石も扱ったりするから、ひょっとしたら魔晶石のことを知っているかもしれない。
家に帰ったら聞いてみよう。
但し、周囲から妬まれたり、王侯貴族の囲い込みなんかの恐れもあるってゼファー様が言っていたよねぇ。
普通、お告げの有った職業については友達同士で気軽にお話ししたりもするんだけれど、私の場合は内緒にした方がいいかも。
そうして司祭様が皆からお告げがあったかどうかだけの確認をして、成人の儀の終わりを告げた。
因みに、司教様はお告げの有無の確認だけでその内容については全く尋ねませんでした。
メダリオン教では、お告げは神聖なものであり、みだりに公言してはならないものとされているからです。
にもかかわらず、皆が立ち上がると隣に居たシェラが、早速私に尋ねてきました。
「私、裁縫師のお告げがあったのよ。
シルヴィは?」
「うーん、お父さんが、お告げがあったなら無闇に人に話さずに家に戻って両親にだけ報告しなさいって。
だから、今は内緒。
ごめんね?」
「お父さんから言われていたら仕方ないわね。
メダリオン教の教義でもみだりにお告げを言うなとされてるしね。
聞いた私の方が間違っていたよ。
ごめんなさい。」
「私へのお告げは言えないけれど、シェラはおめでとう。
裁縫師がシェラの一番の望みだったものね。」
「うん、ありがとう。
これで母さんの後を継げるよ。」
シェラは、私の家の隣にある裁縫店の娘で私の幼馴染なんです。
シェラとは何でも話せる仲の筈だったけれど、魔晶石の話はちょっとできない。
嘘をつくのも嫌だし、取り敢えずは内緒で誤魔化すしかない。
二人そろって家路を辿り、お告げ以外の話で盛り上がり、それから家の前で別れたのです。
家では相変わらず父と母が生真面目な顔で仕事をしていました。
それでも私の顔を見ると、父母はすぐに仕事の手を休めて居間に座ってくれた。
兄は行商人の見習いで旅に出ているから今は家にいないのです。
父が言いました。
「で、お告げはどうだった?
いい職業のお告げがあったのかな?」
「うん、お告げの件だけれど、ちょっと特別なのでシェラにも内緒にしている。
お父さん魔晶石って知っている?」
椅子に座っていたお父さんが突然立ち上がり、びっくりした表情を見せていた。
普段、何事にも動じない冷静な筈のお父さんが、こんなに動転しているところは初めて見た。
「魔晶石?
ひょっとして加工師か?」
「採掘師と加工師の両方だよ。」
父の顔が少し歪んだ。
「あぁ、何ということだ。
まさかシルヴィが魔晶石の仕事に携わることになるとは・・・。」
「お父さん、魔晶石って何?
学園でも魔晶石って習わなかったよ。」
「あぁ、普通の人はまず魔晶石のことは知らないはずだ。
俺だってよくは知らないんだが・・・。
シルヴィは、魔石については知っているな?」
「ええ、魔獣や魔物が体内に持っているのが魔石で、年を経るごとに内包される魔力が大きく強くなって行く。
特に力のある魔石は、色々な魔道具に使われている筈。」
「その通りだ。
俺がやってる宝飾の関係でも偶に守護を付与した魔石を扱うことが有る。
だが、そうした魔石に比べて桁違いの魔力を包含しているのが魔晶石と呼ばれるものだ。
魔晶石の産地は、・・・。
ウーンと・・・。
確かどっかの公国の領内にあるホープランドとか言う魔境でしか採掘できないものなんだ。
魔境だから魔獣も魔物もここら辺で出てくる奴よりも大きくて強い奴が生息している場所だから、そもそも採掘そのものに大きな危険が伴う。
だから魔晶石採掘師と言う資格を持った特別な人たちが魔晶石の採掘を行っていると聞いている。
元々そうした能力を持つ者が少ないので、他の職業に比べると現役の魔晶石採掘師はかなり少ないとも聞いているがな。
また、そうした魔獣や魔物の危険だけではなく、魔晶石そのものにも危険があるらしい。
俺にはよくわからんが、魔石もなにがしかの力を周囲に放射しているらしい。
魔晶石は魔石よりもその力が強いゆえに、その放射の影響で人体に影響を与え、寿命が縮むともいわれている。
採掘師も加工師も齢60歳を超える者はいないらしい。
魔法師や錬金術師なんぞは100歳を超える者もまま居るというのに比べると寿命が短いよな。
まぁ、それでも俺たち一般人からすればうらやましい話なんだけどよ。
筋向いの爺さんが先日亡くなったけれど48歳だったし、裏のマーサ婆さんが亡くなったのは47歳の時だった。
その意味では60歳まで生きられるってのが、むしろ長命な方なんだよ。
話が少しそれたが、魔晶石の加工も有資格者でなければできない。
魔晶石自体が余程のことが無けりゃ傷すらつけられないっていう代物らしいから、仮に手元にあっても俺なら何もできないだろうと思うぜ。
で、魔晶石採掘師や魔晶石加工師になる者はさっき言った何とか公国まで出かけて行ってそこで修行しなければならんらしい。
俺が知っているのはそれぐらいだな。」
母が文句を言った。
「あんたぁ、それじゃさっぱり要領を得ないじゃないか。
何とか公国がどこかわからなけりゃ、シルヴィが困るじゃないかぁ。」
「オウ、そう言やそうだけど、確か、領都モノブルグに魔晶石ギルドの支部があったはずだ。
そこで聴けば詳しいことは教えてくれるはずだ。
何せ、会員自体がめっぽう少ないからな。
このバンデルじゃ、影も形もありゃぁしない。
まぁ、どうしても情報が欲しけりゃ魔法ギルドか商業ギルドで聴いてみるがいい。
そんなに詳しい情報は無いと思うが、それなりに魔晶石関係の魔道具はバンデルあたりでも需要があるからな。
ほれ、この街の結界石は魔晶石でできているんだよ。
万が一にでも壊されたりしたら大変だから人目には触れさせないよう厳重にしまってあるけれどな。
それから領都や王都に出ている定期の魔導飛空船、あいつにも魔晶石が使われているらしいぜ。」
「そういう特別な職業って人の妬みを買ったりしないの?」
「オウ、そういうこともあるかもな。
何せ、報酬が凄いらしい。
魔晶石の小さいのを一個持ち帰るだけで大金貨10枚は下らないらしいし、そいつを加工すればさらに大金貨10枚以上の上乗せがあるって話だ。
これまで最大の代物は採掘して持ち帰るだけで大金貨二千五百枚の価値があったと聞いている
このご時世で金貨20枚ありゃぁ、優に1年は贅沢な生活ができるってのに、大金貨10枚って言やぁ、その5倍にもなる。
多分、俺の8年から10年分の収入に近いだろうな。
そんな大金を稼げるんだから、そりゃ貧乏人にとっちゃ高嶺の花だ。
妬みもあろうってもんだ。
採掘師も加工師もギルドに所属しなければ仕事はできないが、その一方で金を持っているお貴族様はそうした採掘師や加工師の抱き込みを図っているという話は風の噂で聞いたことがあるな。
但し、現役は無理だから怪我をして引退した採掘師や加工師を抱き込むことが有るってぇ話だ。
未加工のモノならば魔晶石も比較的安いらしいから、それを入手してお抱えの加工師に細工をさせれば多少は安くなるという話だろうな。」
「じゃぁ、余り私のお告げの話はしない方がいいよね。
変なところに伝わると、妬みが講じて色々と拙いかもしれないし・・・。」
「おぅ、そう言や、そうだな。
あれ?
じゃぁ、商業ギルドや魔法ギルドに問い合わせるのも藪蛇になりそうだな。
だったら、まぁ、次の休みにでも領都に行って魔晶石ギルドから直接話を聞いたほうが確実でいいだろう。
ギルドも元々会員が少ないんだからお告げがあった者なら絶対に手放さないはずだ。
そもそもなり手が少ないからな。
だがよ。
シルヴィは良いのか?
加工師はともかく、採掘師は現場に出てなんぼのものだからな。
良くは知らんのだが本当に危険が多い仕事らしいぜ。」
「それは覚悟しています。
でもせっかくお告げにあった職だから大事にしたいと思います。
それにいきなり死地に行かせるほどギルドも馬鹿じゃないでしょう。
ギルドが利益を得るためには採掘師が魔晶石を持ち帰らなけりゃいけないのだから。
採掘師の安全を確保するためにきっと最善の努力をしている筈よ。」
「そりゃぁ、そうだが、・・・。
危険が大きいのも間違いない。
親としては娘をそんな職業にはつかせたくないのが本音なんだが・・・。
八神様のお告げなら仕方がねぇよ。
で、加護はやっぱり、俺や母さんと同じパイテス様か?」
その問いには一瞬詰まったけれど、両親にだけは正直に話しておこうと思った。
「私の加護は、絶対神のゼファー様だった。
他の八神様からは恩寵をいただいている。」
父も母も一瞬呆けていた。
それはそうだ。
絶対神ゼファー様の加護なんて今まで無かったのだから、それに八神様全部の恩寵と言うのも多分聞いたことがないはずだ。
だって、魔晶石採掘師と魔晶石加工師にしか必要とされないから・・・。
普通であれば八神様のうちお一方の加護が貰え、付随して職に関連する一乃至二の恩寵がいただけることが有るとされている。
例えば父と母は、ともに工の神パイテス様の加護を持ち、父は鍛冶の神ルーデス様の恩寵が与えられ、母は芸術の女神ミゾン様の恩寵が与えられている。
因みに父母共に恩寵のレベルは1だ。
職によっては恩寵が無い場合もある。
例えば「農民」は、農業の神アトル様の加護はあるけれど、恩寵が無い人の方が多い。
これが普通なの?
それとも私だけ特別?
ウーッ、わかんないよぉ。
ゼファー様のお言葉から言えば、少なくとも加護の項目だけ特別なのは間違いなしだよね。
それに八神様の恩寵レベルがオール3は数千年ぶりらしいから・・・。
魔法の全属性持ちって、ファンダレル王国でも一人しかいないって噂話で聞いたことがあるから多分これも特別だよね。
まぁ、LVが最低だから今のところショボイけれど、スキルの習得と鍛錬に励めってゼファー様が言ってたようだから、これからきっと伸びるんだろうと思う。
うーん、先ずは魔晶石採掘師と魔晶石加工師について調べなきゃいけないよね。
そもそも学校で教わっていないし、私がこれまで聞いたことの無い職業だから。
魔晶石ギルドの支部が侯爵領内では領都にしかないっていうのは、きっと希少な職なんだろうね。
だって、私の住んでいるバンデルって結構大きな町なんだよ。
侯爵領では領都に次いで二番目の大きな町だし、ファンダレル王国でも十指に入るほどの町なんだから、普通のギルドなら何でもある。
噂では闇ギルドさえあると言われているのに・・・。
お父さんが宝飾の関係で極稀に魔石も扱ったりするから、ひょっとしたら魔晶石のことを知っているかもしれない。
家に帰ったら聞いてみよう。
但し、周囲から妬まれたり、王侯貴族の囲い込みなんかの恐れもあるってゼファー様が言っていたよねぇ。
普通、お告げの有った職業については友達同士で気軽にお話ししたりもするんだけれど、私の場合は内緒にした方がいいかも。
そうして司祭様が皆からお告げがあったかどうかだけの確認をして、成人の儀の終わりを告げた。
因みに、司教様はお告げの有無の確認だけでその内容については全く尋ねませんでした。
メダリオン教では、お告げは神聖なものであり、みだりに公言してはならないものとされているからです。
にもかかわらず、皆が立ち上がると隣に居たシェラが、早速私に尋ねてきました。
「私、裁縫師のお告げがあったのよ。
シルヴィは?」
「うーん、お父さんが、お告げがあったなら無闇に人に話さずに家に戻って両親にだけ報告しなさいって。
だから、今は内緒。
ごめんね?」
「お父さんから言われていたら仕方ないわね。
メダリオン教の教義でもみだりにお告げを言うなとされてるしね。
聞いた私の方が間違っていたよ。
ごめんなさい。」
「私へのお告げは言えないけれど、シェラはおめでとう。
裁縫師がシェラの一番の望みだったものね。」
「うん、ありがとう。
これで母さんの後を継げるよ。」
シェラは、私の家の隣にある裁縫店の娘で私の幼馴染なんです。
シェラとは何でも話せる仲の筈だったけれど、魔晶石の話はちょっとできない。
嘘をつくのも嫌だし、取り敢えずは内緒で誤魔化すしかない。
二人そろって家路を辿り、お告げ以外の話で盛り上がり、それから家の前で別れたのです。
家では相変わらず父と母が生真面目な顔で仕事をしていました。
それでも私の顔を見ると、父母はすぐに仕事の手を休めて居間に座ってくれた。
兄は行商人の見習いで旅に出ているから今は家にいないのです。
父が言いました。
「で、お告げはどうだった?
いい職業のお告げがあったのかな?」
「うん、お告げの件だけれど、ちょっと特別なのでシェラにも内緒にしている。
お父さん魔晶石って知っている?」
椅子に座っていたお父さんが突然立ち上がり、びっくりした表情を見せていた。
普段、何事にも動じない冷静な筈のお父さんが、こんなに動転しているところは初めて見た。
「魔晶石?
ひょっとして加工師か?」
「採掘師と加工師の両方だよ。」
父の顔が少し歪んだ。
「あぁ、何ということだ。
まさかシルヴィが魔晶石の仕事に携わることになるとは・・・。」
「お父さん、魔晶石って何?
学園でも魔晶石って習わなかったよ。」
「あぁ、普通の人はまず魔晶石のことは知らないはずだ。
俺だってよくは知らないんだが・・・。
シルヴィは、魔石については知っているな?」
「ええ、魔獣や魔物が体内に持っているのが魔石で、年を経るごとに内包される魔力が大きく強くなって行く。
特に力のある魔石は、色々な魔道具に使われている筈。」
「その通りだ。
俺がやってる宝飾の関係でも偶に守護を付与した魔石を扱うことが有る。
だが、そうした魔石に比べて桁違いの魔力を包含しているのが魔晶石と呼ばれるものだ。
魔晶石の産地は、・・・。
ウーンと・・・。
確かどっかの公国の領内にあるホープランドとか言う魔境でしか採掘できないものなんだ。
魔境だから魔獣も魔物もここら辺で出てくる奴よりも大きくて強い奴が生息している場所だから、そもそも採掘そのものに大きな危険が伴う。
だから魔晶石採掘師と言う資格を持った特別な人たちが魔晶石の採掘を行っていると聞いている。
元々そうした能力を持つ者が少ないので、他の職業に比べると現役の魔晶石採掘師はかなり少ないとも聞いているがな。
また、そうした魔獣や魔物の危険だけではなく、魔晶石そのものにも危険があるらしい。
俺にはよくわからんが、魔石もなにがしかの力を周囲に放射しているらしい。
魔晶石は魔石よりもその力が強いゆえに、その放射の影響で人体に影響を与え、寿命が縮むともいわれている。
採掘師も加工師も齢60歳を超える者はいないらしい。
魔法師や錬金術師なんぞは100歳を超える者もまま居るというのに比べると寿命が短いよな。
まぁ、それでも俺たち一般人からすればうらやましい話なんだけどよ。
筋向いの爺さんが先日亡くなったけれど48歳だったし、裏のマーサ婆さんが亡くなったのは47歳の時だった。
その意味では60歳まで生きられるってのが、むしろ長命な方なんだよ。
話が少しそれたが、魔晶石の加工も有資格者でなければできない。
魔晶石自体が余程のことが無けりゃ傷すらつけられないっていう代物らしいから、仮に手元にあっても俺なら何もできないだろうと思うぜ。
で、魔晶石採掘師や魔晶石加工師になる者はさっき言った何とか公国まで出かけて行ってそこで修行しなければならんらしい。
俺が知っているのはそれぐらいだな。」
母が文句を言った。
「あんたぁ、それじゃさっぱり要領を得ないじゃないか。
何とか公国がどこかわからなけりゃ、シルヴィが困るじゃないかぁ。」
「オウ、そう言やそうだけど、確か、領都モノブルグに魔晶石ギルドの支部があったはずだ。
そこで聴けば詳しいことは教えてくれるはずだ。
何せ、会員自体がめっぽう少ないからな。
このバンデルじゃ、影も形もありゃぁしない。
まぁ、どうしても情報が欲しけりゃ魔法ギルドか商業ギルドで聴いてみるがいい。
そんなに詳しい情報は無いと思うが、それなりに魔晶石関係の魔道具はバンデルあたりでも需要があるからな。
ほれ、この街の結界石は魔晶石でできているんだよ。
万が一にでも壊されたりしたら大変だから人目には触れさせないよう厳重にしまってあるけれどな。
それから領都や王都に出ている定期の魔導飛空船、あいつにも魔晶石が使われているらしいぜ。」
「そういう特別な職業って人の妬みを買ったりしないの?」
「オウ、そういうこともあるかもな。
何せ、報酬が凄いらしい。
魔晶石の小さいのを一個持ち帰るだけで大金貨10枚は下らないらしいし、そいつを加工すればさらに大金貨10枚以上の上乗せがあるって話だ。
これまで最大の代物は採掘して持ち帰るだけで大金貨二千五百枚の価値があったと聞いている
このご時世で金貨20枚ありゃぁ、優に1年は贅沢な生活ができるってのに、大金貨10枚って言やぁ、その5倍にもなる。
多分、俺の8年から10年分の収入に近いだろうな。
そんな大金を稼げるんだから、そりゃ貧乏人にとっちゃ高嶺の花だ。
妬みもあろうってもんだ。
採掘師も加工師もギルドに所属しなければ仕事はできないが、その一方で金を持っているお貴族様はそうした採掘師や加工師の抱き込みを図っているという話は風の噂で聞いたことがあるな。
但し、現役は無理だから怪我をして引退した採掘師や加工師を抱き込むことが有るってぇ話だ。
未加工のモノならば魔晶石も比較的安いらしいから、それを入手してお抱えの加工師に細工をさせれば多少は安くなるという話だろうな。」
「じゃぁ、余り私のお告げの話はしない方がいいよね。
変なところに伝わると、妬みが講じて色々と拙いかもしれないし・・・。」
「おぅ、そう言や、そうだな。
あれ?
じゃぁ、商業ギルドや魔法ギルドに問い合わせるのも藪蛇になりそうだな。
だったら、まぁ、次の休みにでも領都に行って魔晶石ギルドから直接話を聞いたほうが確実でいいだろう。
ギルドも元々会員が少ないんだからお告げがあった者なら絶対に手放さないはずだ。
そもそもなり手が少ないからな。
だがよ。
シルヴィは良いのか?
加工師はともかく、採掘師は現場に出てなんぼのものだからな。
良くは知らんのだが本当に危険が多い仕事らしいぜ。」
「それは覚悟しています。
でもせっかくお告げにあった職だから大事にしたいと思います。
それにいきなり死地に行かせるほどギルドも馬鹿じゃないでしょう。
ギルドが利益を得るためには採掘師が魔晶石を持ち帰らなけりゃいけないのだから。
採掘師の安全を確保するためにきっと最善の努力をしている筈よ。」
「そりゃぁ、そうだが、・・・。
危険が大きいのも間違いない。
親としては娘をそんな職業にはつかせたくないのが本音なんだが・・・。
八神様のお告げなら仕方がねぇよ。
で、加護はやっぱり、俺や母さんと同じパイテス様か?」
その問いには一瞬詰まったけれど、両親にだけは正直に話しておこうと思った。
「私の加護は、絶対神のゼファー様だった。
他の八神様からは恩寵をいただいている。」
父も母も一瞬呆けていた。
それはそうだ。
絶対神ゼファー様の加護なんて今まで無かったのだから、それに八神様全部の恩寵と言うのも多分聞いたことがないはずだ。
だって、魔晶石採掘師と魔晶石加工師にしか必要とされないから・・・。
普通であれば八神様のうちお一方の加護が貰え、付随して職に関連する一乃至二の恩寵がいただけることが有るとされている。
例えば父と母は、ともに工の神パイテス様の加護を持ち、父は鍛冶の神ルーデス様の恩寵が与えられ、母は芸術の女神ミゾン様の恩寵が与えられている。
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