魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監

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第八章 研修と色々

8ー4 宿題って面倒ですよね

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 ◆◇◆ 明けましておめでとうございます。◆◇◆
 ◆◇◆ 本年もどうぞよろしくお願いいたします。◆◇◆

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 ハイハ~イ、シルヴィです。
 診療に加えて研修も始まり、結構忙しい思いをしています。

 研修初日に送られて来た患者さんは、ある意味で話題てんこ盛りですよね。
 一人目がほぼ末期の膵臓癌、二人目がかなり危ない寄生虫を飼っている方でしたし、三人目は明らかに薬物中毒と思われる症状を呈している人でした。

 二人目と三人目の症状が、仮に当該地域で蔓延しているならば、早急に対策を立てなければなりませんけれど、それぞれの国または政府機関と治癒師ギルドで対応できるのかどうかが若干疑問です。
 寄生虫の場合は、特に中間宿主の特定と排除が必要になります。

 かなり昔は日本人の大部分が何らかの寄生虫をお腹に抱えていたということで、「」なるお薬もあったようですけれど、今回見つかった寄生虫に効くようなお薬があるかどうかも不明です。
 全ての患者さんを診療所に運んで貰っても、こちらがパンクしますからね。

 精々、リモートで現地の治癒師ギルドにやってもらうしか方法がありません。
 頼まれたわけじゃないですけれど、その方策を見つけることが一つ目の宿題です。

 もう一つの覚せい剤等麻薬の中毒症状ではないかと疑われる症状も、仮に当該地域に広がっているならば早急に対策を立てねば拙いですよね。
 例えば、幻覚を招くキノコ等を食することによる例外的な発生であれば良いのですけれど、もし麻薬等の拡散によって中毒患者が増大しているような状況ならば、早急に元を絶たねば、他地域への蔓延拡大も危惧されます。

 特に麻薬の類は反社会性の強い闇組織が導入しそうなになりますので、早めに手を打つ必要があります。
 一応の警告は、患者さんの付き添いでやって来た騎士と治癒師に伝え、本国にも伝えてもらいましたので、それなりに動くでしょうけれど、未だ麻薬そのものが確認されていない状況では、闇組織の摘発はなかなか難しいはずです。

 まぁ、今の段階では現地の対応に委ねるしかありませんが、こちらで異常な精神状態を招いた成分の分析により可能であれば麻薬等を特定したいと思っています。
 それが二つ目の宿題ですね。

 もう一つ、一人目の患者さんはかなり体力を落としていました。
 従って、今日の研修の最後に、点滴を施して研修生にもその方法を見てもらいましょう。

 彼女たちにやらせるのはまだ無理ですからね。
 身体の中と機能が未だよくわかっていない者に注射や点滴なんぞさせられません。

 私だって、前世では医師や看護師の資格を持っていたわけじゃないですから、人に注射をしたことなんてありませんでしたよ。
 このアスレオール世界では、そもそも医療に関する規制がほとんどありませんから、医者の真似事も勝手にしていますけれど、それも私の3Dセンサーにより、生体スキャンができるからこそ、狙った血管に注射針を刺し込んだり、病巣を取り除けるのであって、そうでなければきっと何もできなかったでしょうね。

 ですからこの感覚を知らない研修生に教えるのは実に難しいことなんですけれど、センシングのやり方に慣れると或いは簡単にできるようになるかもしれません。
 いずれにしろ一人目の患者さんについては、明日の朝まで持続するような点滴を施すことにします。

 その処置を、研修生とヘルパーさんに見学させて今日の研修は終わりです。
 それと私自身は、念のために病棟内にある待機室で分析をしながら寝泊りする予定です。

 病棟に収容した三人の患者さんの様態に異常があった時には、私が対応するつもりでいるのです。
 当直医、誰か他に代わりが居ると良いのですけれどねぇ。

 まぁ、無い物ねだりをしても仕方がありません。
 その夜、真夜中まで種々分析をしましたけれど、麻薬と思われる物質の効果のみが残っていただけで生憎と薬剤成分そのものの痕跡は見つかりませんでした。

 因みに当該因子をモルモット代わりの診療所の周辺の林に棲むリスと地ネズミに注入するとやはり凶暴化しました。
 この成分が凶暴化を招くことはわかりましたけれど、その大本は今のところ不明です。

 現地でも特定ができないようならば状況によっては私が向こうに行く必要があるかもしれませんね。
 召喚精霊のサルスにも相談してみましたけれど、やはりこれだけで大本を特定するのは難しいようです。

 但し、サルス曰く、ディルコル共和国に隣接するヴァルヤード連合国内の山岳部に自生するユリ科の球根に存在するアルカロイド系有機化合物が有毒なのだけれど、致死量に至らぬ量を嚥下すると凶暴性が増すことがあり、その症状に似ているということと、体内に発動している成分因子は異なるものと思われるということを教えてくれました。
 結論的には、このユリ科の球根の毒物と何らかの成分を組み合わせた人為的な麻薬の可能性があるということを言っていましたね。

 これは薬師若しくは錬金術師が関わっている可能性が高いですね。
 全くの素人が毒物を扱えることは少ないのです。

 ましてや毒物であれば扱える職業も限られてきます。
 やはり前世のマフィアや暴力団のような闇組織が暗躍しているのでしょうか。

 翌朝の朝食前には一人目の患者さんの点滴を外しました。
 そうして二人目、三人目の患者さんの様態を確認し、ついでに事情聴取もしました。

 二人目の寄生虫の患者さんは、中間宿主の介在については全く知らないようです。
 この患者さんの生業なりわいは、豚に似たネルポルクという家畜を育てている酪農家のようです。

 或いはこのネルポルクが中間宿主かもしれませんね。
 三人目の患者さんは色々聞いても反応が薄いというか黙して語らずです。

 念のため闇魔法で自白を強要してもいいのですけれど、騎士や治癒師のいる前では迂闊なことはできないので、思考の表層観察だけしてみました。
 これは六次元波動とも思われる思考波を色で見分ける方法なのです。

 ある意味で嘘発見器に近いかもしれません。
 私が発した「お薬」、「隠す」、それに「密売」という言葉に強く反応しました。

 やはり、闇組織から麻薬を買った疑いが濃厚ですね。
 廊下に騎士さん一人を呼び出して、患者さんの自宅等に何らかの薬物が隠されている可能性があると伝え、至急に捜索をするようにお願いをしました。

 そうして三人の患者さんはともに今日の便で帰国してもらうことになりました。
 その辺の手続きは、事務方に任せ、これから私は本業の魔晶石採掘師の仕事に就くのです。

 本業の方は、午前中にもチャチャっと黒魔晶石を採掘し、8の時(地球時間の正午)過ぎにはギルドに納品してしまうのが最近のパターンなのです。
 以前は、周囲に対する遠慮と偽装のために夕刻まで時間をかけていたりしましたけれど、余り意味が無いので無駄を省いて、できるだけ時間的余裕を作るようにしているんです。

 空いた時間で新たな魔道具の開発をしたり、また、新たな休憩所の建設にも手を出していたりする状況なのですが、その日はギルドの寮で魔道具の開発をしていました。
 その日の夕刻には、昨日診療した三人の患者さんを帰国させるために稼働していた救急輸送機が順次戻ってきましたけれど、その中でもディルコル共和国に行った輸送機が、患者の自宅に隠されていた薬剤の一部をサンプルとして運んで来ました。

 因みに隠されていた薬剤十二錠の内の二錠を、容器に入れて治癒師ギルドから託送されたようです。
 残り十錠については、ディルコル共和国の治癒師ギルド、薬師ギルドそれに錬金術ギルドが分析をしているそうです。

 なるほど、私の方でも分析をしてほしいということでしょうかねぇ。
 余分な仕事まで盛り込まないでほしいのですけれど、これも事務方に投げて仕事として請け負うならば契約を結ばせるようにしましょう。

 タダ働きは後々のためにも良くないですからね。
 契約の方は一両日中に出来上がるとのことで、その日の宿題は、麻薬かも知れない錠剤の分析になりました。

 診療所の一部に工房があり、そこで多少の分析はできますし、ヒラトップに行くと更に詳細な分析もできます。
 召喚精霊のサルスにも手伝ってもらい、錠剤の分析に取り掛かりました。

 最近分かったことなのですけれど、ガスクロ擬きの分析が私の能力でできちゃうんです。
 多分、アマテラスオオミカミに与えられた「言霊」の能力の所為じゃないかと思うのですけれど、自分のイメージを言葉にして呪文を唱えると実際にその事象が発現するのです。

 私はガスクロマトグラフィの詳細な構造も機能も知らないですよ。
 でもこんな分析ができたらいいなと思うものを具体的に重い浮べて、できるだけ言葉にするとそれが起きるんです。

 勿論、最初はあやふやで、ロクな分析もできませんでしたけれど、サルスの支援もあって回数をこなすごとに充実して来たみたいです。
 最近はかなりの分析ができるようになりました。

 錠剤をそのガスクロ擬きの分析に掛けると、サルスの言っていたアルカロイド系有機物と、もう一つ硝酸塩基化合物が見つかりました。
 このうちアルカロイド系有機物には、炭素と水素の化合物に他の元素が結びついた高分子が含まれており、さらに硝酸塩基化合物が重なると強い中枢神経興奮作用をもたらすと同時に、薬物依存性が非常に高まるようです。

 流石に私のガスクロ擬きでは正確な分析はできないのですけれど、メタンアンフェタミン若しくはそれに似た性状の覚せい剤が少なくとも含まれており、更にその性状増強のために精油成分が使われている可能性が高いように思われます。
 ウーン、これは薬師と錬金術師双方の介在が疑われますね。

 精油とはアロマテラピーで有名であり、有機化合物を一旦蒸して蒸気になったものを冷却して得られる精水と精油に分離することで得られる液状物質で、健康にも種々の影響を与えるとされる代物ですが、普通この世界の薬師は扱わないものなのです。
 一方のアンフェタミン系の薬物は、錬金術師では扱わない代物のはずです。

 いずれにしろ契約が確定した翌日には分析結果をディルコル共和国に通信機でお知らせしておきました。
 後はディルコル共和国とその周辺国の問題ですよね。
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