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第十一章 ファンデンダルク侯爵
11ー4 ガランディア帝国との紛争 その三
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私はガランティア海軍提督であり、バルマラード海軍基地の司令官でもあるレーリッヒ・ズーゲンだ。
我が国最大の商港にして軍港のバルマラード港が存るバルマ湾に、ジェスタ国の軍船と思われる異形の船三隻が侵入してきたのが昨日の午後であった。
そうして王宮からの指示によって五日前に拿捕したジェスタ王国の大型交易船について、その動向を知っているようであり、拿捕責任者の出頭を求めてきている。
期限は翌日の日没時を指定してきているのだ。
返答無き場合は宣戦布告も辞さずとし、我らから攻撃があれば直ちに応戦すると公言しているから、相手は即応体制を既に終えているのだろう。
この軍船の一方的な通告は我らのみならず、バルマラード市内に住む大勢の市民が聞いており、市民も息をひそめてその動向を見守っているようだ。
一方で、少数ながらも昨夜のうちに慌ただしく市街から避難を始めた者もいるとの報告を受けている。
侵攻してきた軍船は、我らガランディア海軍の軍船に比べると倍以上の大きさではあるものの、数で押せば撃破できるものと信じてはいるのだが、一方で大いに不安があり、不気味である。
湾口から吹く強風のために、一時的には我が軍船が一隻も出港できなかったにもかかわらず、彼の三隻の大型軍船は錨も打たずに同じ沖合にちちゅうしているのだ。
これは明らかに道理に合わぬが、或いは特殊な魔法によりそのようなことが可能なのかもしれない。
但し、我が軍船に配属されている魔法師でそのようなことができる者はいないはずだ。
それができるのであれば、或いは強風をおして出港することさえ可能になるかもしれぬ。
いずれにせよ、この一事をもってしても三隻の異形の軍船が我らの知らぬ力を持っているかも知れず、迂闊な攻撃はできないのだ。
帝都の宰相に向けて急使を走らせているが、同時に湾口で警備していた我が軍の軍船の状況を確認するためにも数名の伝令を走らせている。
本来、湾口での戦闘があればなにがしかの報告があって然るべきなのだが、今もってその報告が無いことが異常なのだ。
いずれも伝令待ちの状況ながら、既に一夜が明けている。
昨夕から風が凪いで戦列艦12隻が出動し、即応態勢で三隻の異形の軍船を距離をあけて取り囲み、いつでも魔法攻撃が可能なようにするよう指示はしているのだが、このまま帝都からの指示が来るまで何事も無ければいいのだが・・・。
その日、正午前頃には、湾口付近の状況を確認しに行った伝令が戻った。
湾口付近にあった桟橋は全て破壊されており、湾口には湾内に侵入してきた軍船と同じ軍船三隻が張り付いているという。
配備されていた大型戦列艦1隻と中型の戦列艦2隻については、いずれも航行不能の状態で浅瀬にて半水没状態であったのが望見されたようだ。
生憎と桟橋付近にある仮設基地までの道路が大規模に崩落していて詳細な確認はできていないが、遠目ながらも桟橋付近に生存者多数を確認している模様だ。
つまりは湾口付近でなにがしかの戦闘があり、我が方の三隻の軍船は敗れたということであろう。
伝令の一人が山越えの道を辿って仮設基地へ向かっている様だが、険しい道なき道を進んでいることから仮設基地に辿り着くまでに一日、そこから情報を得て戻るまでにさらに一日を要するとみられているので今夕の日没には間に合いそうにない。
次いで帝都より急使が着いたのが日没の二刻ほど前であった。
宰相からは、副司令官を出して取り敢えずは交渉に応ずる様に指示が来た。
指示の中に「時間稼ぎのため」とあるが、あまり意味は無いであろうと私は考えている。
仮に帝都から正規軍が送られてきたところで、彼らが海上の軍船にできることは限られている上に、最寄の駐屯地からでは二日がかりの行軍になるだろう。
それでは間に合わないし、そもそも相手が応ずるか否かが不明である。
察するにジェスタ国は、無駄な交渉を求めているわけではないように思えるのだ。
拿捕の理由を説明させ、同時に船と乗員の開放を目的としているのであれば、交渉を長引かせることになど応じるはずがない。
一方で連合国家との戦闘中を理由に、宰相は交戦権の行使については保留してきている。
しかしながら、詳細は不明ながらも湾口での戦闘により我が方の軍船三隻は行動不能に陥り、湾口は敵方により封鎖されている状況である。
これは明らかに我が国に対する戦闘行動に他ならないだろう。
特使を副司令官のシェンツと指定して来たことにも若干の不安がある。
奴は押しが強すぎるし、相手を見下す傾向がある。
交渉最中にその癖が出たら交渉は決裂するだろう。
交戦権を保留されている状態では、相手から攻撃が為されない限りこちらからは手を出せない。
これは明らかに不利なのだ。
私は海軍基地の幹部を集め半時ほど会議を開催して、交渉内容をまとめた上でシェンツ・カルバンドを送り出した。
シェンツ・カルバンドは、第一種礼装に身を固めて出て行った。
◇◇◇◇
私は、シェンツ・カルバンド准将だ。
私は宰相の次女を嫁に貰っている関係で、王宮への覚えもめでたく種々の面で優遇されている。
今回の特使としての出動も、大いにそのあたりが効いているのだろう。
義父である宰相の望む方向で交渉を長引かせられれば、今後の昇進も捗るに違いない。
ガランディア帝国に比べれば隣の大陸の蛮族小国家の軍船など恐れるに足らず、何故に侵入して来た際に攻撃しなかったのかと司令官の考えを疑ったものだ。
まぁ、宰相が交戦権を保留してきた以上は、ジェスタ王国との戦いを必ずしも王宮も望んではいないということが透けて見えるが、所詮は時間稼ぎであり、準備ができ次第、戦いに踏み切るのだろうと思われる。
なれば私の仕事は簡単だ。
相手の主張を聞きながら、のらりくらりと質問を躱して時間を稼げばよい。
これから日没まで頑張って、以後の会談を翌日に回せばよい。
明日は明日で、また、別の手で引き延ばしを図るだけのことだ。
私は端艇に乗って、沖合に止まっている軍船に向かった。
夕日が大分傾いてはいるが日没にはまだ半時以上もあるだろう。
近寄って目の前にあるジェスタ国軍船は確かにデカかった。
端艇が近寄ると最寄り軍船の甲板上から合図が為され、その指示に従って左舷側に回ると階段付きのタラップが舷側から降ろされたのには驚いた。
我がガランディア帝国海軍の軍船にはそのような設備は無く、縄梯子だけだから海上で戦列艦に乗降する際には礼服がいつも汚れてしまうのだ。
最初に副官がタラップの最下段のスペースに乗り、私が落ちたりしないよう補助してくれた。
無論、階段を上がるのは私が先頭になる。
タラップを上がり終えると、そこに軍人らしき男数名が待ち構えていたが、特段武器らしきものは持っていないように見える。
或いはこ奴らも魔法師なのかもしれぬ。
魔法師は剣や槍などは持たぬ。
身に着けた腕輪、指輪或いは小振りの杖などで魔法攻撃を放つことができるから、武器を持たぬと言っても要注意なのだ。
因みに同行する副官も私も官製のショートソードを剣帯に下げている。
これは軍人としての嗜みだ。
一方で出迎えた軍人らしき者の服装は非常に変わっている。
薄青のガリカパッチャ(詰襟)に狩衣の様な細めのセルアー(ズボン)を履き、革製のサイニィジュート(軍靴)を履いている。
ガリカパッチャには肩章が付いており、金線で階級を示しているのだろうが私にはその階級がわからない。
「私は、ガランディア帝国の特使、シェンツ・カルバンド将軍だ。
代表者にお目にかかりたい。」
金線の一番多い人物に向かってそう言うと、「こちらへどうぞ。」とだけ言って、船内を先導してくれた。
この軍船の船体も甲板も鉄か否かはわからないが、すべてが金属製のようであった。
白い色はその金属を塗装した色の様だが、その塗装の痕跡が見えないほど均一なのだ。
普通塗装をすれば刷毛の跡など痕跡が残るものだが、それが見えないほど均一な塗装は初めて見た。
これはやはり技術力が高いのか?
少なくとも我が国の造船所ではこのような金属加工はできないと思われるのだ。
この辺は拿捕した大型交易船での調査で概ね判明しているとおりである。
大きなハッチ状の扉を潜り抜けて船内に入ると目にも眩しい照明が天井にあった。
それが通路のいたるところにあるので昼間以上に通路が明るいのである。
もう一つは軍船の通路が広い。
恐らく三人が並んで歩けるほどの幅が設けられている。
そうしていくつかの曲がりくねった通路を経て、案内されたのは大きな部屋であった。
窓は無いが照明があるので非常に明るい。
正面に大きな机があって一人の年若い人物が座っていた。
それこそ金ぴかの肩章をつけていることからこの者が元帥なのだろう。
余りに若すぎるとは思うものの、私は慣例に乗っ取って、外交辞令の挨拶を行った。
だが相手から返されたのは、無礼にも外交辞令ではなくいきなりの詰問だった。
「貴公が全権特使なのか?」
「全権特使とは?」
「交渉において、国を代表して全ての取り決めをできる権限を有している者か?」
「いや、私はそのような権限を与えられてはいない。」
「私は、我が国の交易船アーレマイン号の不当な拿捕についてその責任者の出頭を求め、拿捕の理由と現状を説明せよと伝えたはずだ。
貴公は、拿捕の責任者なのか?
また、私が納得できるようにその説明ができるのか?」
「私はバルマラード海軍基地の副司令官であり、拿捕の理由と現状については説明できるのでやってきた。」
「なるほど、では拿捕の理由についてまず述べよ。
断っておくが、嘘の説明は一切通用しないと思え。」
私は相手の口上に若干憤慨もしたが、ここで怒っては時間稼ぎもできないから我慢をした。
「拿捕の理由は、アーレマイン号に我が帝国で禁制品とされている麻薬を所持している疑いがあり、その為に捜査を行うために我が帝国法に乗っ取って、差し押さえ、乗員は全員逮捕した。
これは皇宮も承知の上のことだ。」
「今一度言うが、嘘は通用しない。
そのような嘘を続けるならば、貴国が我がジェスタ国に対して宣戦布告を為したと見做すぞ。
これを見よ。」
驚くべきことに、男の背後にスクリーンが生じ、そこに先刻の我らが会議の模様が映し出されていた。
映像のみではなく音声も聞こえ、まさしく出発直前に開いた幹部会議の模様であり、その中で、密輸容疑で拿捕したとの説明をする旨の謀議が為されていたことが暴露された。
私は一瞬血の気が引いたが、ここは嘘を押し通すしかない。
=================================
11月12日 「王都」を「帝都」に修正しました。
我が国最大の商港にして軍港のバルマラード港が存るバルマ湾に、ジェスタ国の軍船と思われる異形の船三隻が侵入してきたのが昨日の午後であった。
そうして王宮からの指示によって五日前に拿捕したジェスタ王国の大型交易船について、その動向を知っているようであり、拿捕責任者の出頭を求めてきている。
期限は翌日の日没時を指定してきているのだ。
返答無き場合は宣戦布告も辞さずとし、我らから攻撃があれば直ちに応戦すると公言しているから、相手は即応体制を既に終えているのだろう。
この軍船の一方的な通告は我らのみならず、バルマラード市内に住む大勢の市民が聞いており、市民も息をひそめてその動向を見守っているようだ。
一方で、少数ながらも昨夜のうちに慌ただしく市街から避難を始めた者もいるとの報告を受けている。
侵攻してきた軍船は、我らガランディア海軍の軍船に比べると倍以上の大きさではあるものの、数で押せば撃破できるものと信じてはいるのだが、一方で大いに不安があり、不気味である。
湾口から吹く強風のために、一時的には我が軍船が一隻も出港できなかったにもかかわらず、彼の三隻の大型軍船は錨も打たずに同じ沖合にちちゅうしているのだ。
これは明らかに道理に合わぬが、或いは特殊な魔法によりそのようなことが可能なのかもしれない。
但し、我が軍船に配属されている魔法師でそのようなことができる者はいないはずだ。
それができるのであれば、或いは強風をおして出港することさえ可能になるかもしれぬ。
いずれにせよ、この一事をもってしても三隻の異形の軍船が我らの知らぬ力を持っているかも知れず、迂闊な攻撃はできないのだ。
帝都の宰相に向けて急使を走らせているが、同時に湾口で警備していた我が軍の軍船の状況を確認するためにも数名の伝令を走らせている。
本来、湾口での戦闘があればなにがしかの報告があって然るべきなのだが、今もってその報告が無いことが異常なのだ。
いずれも伝令待ちの状況ながら、既に一夜が明けている。
昨夕から風が凪いで戦列艦12隻が出動し、即応態勢で三隻の異形の軍船を距離をあけて取り囲み、いつでも魔法攻撃が可能なようにするよう指示はしているのだが、このまま帝都からの指示が来るまで何事も無ければいいのだが・・・。
その日、正午前頃には、湾口付近の状況を確認しに行った伝令が戻った。
湾口付近にあった桟橋は全て破壊されており、湾口には湾内に侵入してきた軍船と同じ軍船三隻が張り付いているという。
配備されていた大型戦列艦1隻と中型の戦列艦2隻については、いずれも航行不能の状態で浅瀬にて半水没状態であったのが望見されたようだ。
生憎と桟橋付近にある仮設基地までの道路が大規模に崩落していて詳細な確認はできていないが、遠目ながらも桟橋付近に生存者多数を確認している模様だ。
つまりは湾口付近でなにがしかの戦闘があり、我が方の三隻の軍船は敗れたということであろう。
伝令の一人が山越えの道を辿って仮設基地へ向かっている様だが、険しい道なき道を進んでいることから仮設基地に辿り着くまでに一日、そこから情報を得て戻るまでにさらに一日を要するとみられているので今夕の日没には間に合いそうにない。
次いで帝都より急使が着いたのが日没の二刻ほど前であった。
宰相からは、副司令官を出して取り敢えずは交渉に応ずる様に指示が来た。
指示の中に「時間稼ぎのため」とあるが、あまり意味は無いであろうと私は考えている。
仮に帝都から正規軍が送られてきたところで、彼らが海上の軍船にできることは限られている上に、最寄の駐屯地からでは二日がかりの行軍になるだろう。
それでは間に合わないし、そもそも相手が応ずるか否かが不明である。
察するにジェスタ国は、無駄な交渉を求めているわけではないように思えるのだ。
拿捕の理由を説明させ、同時に船と乗員の開放を目的としているのであれば、交渉を長引かせることになど応じるはずがない。
一方で連合国家との戦闘中を理由に、宰相は交戦権の行使については保留してきている。
しかしながら、詳細は不明ながらも湾口での戦闘により我が方の軍船三隻は行動不能に陥り、湾口は敵方により封鎖されている状況である。
これは明らかに我が国に対する戦闘行動に他ならないだろう。
特使を副司令官のシェンツと指定して来たことにも若干の不安がある。
奴は押しが強すぎるし、相手を見下す傾向がある。
交渉最中にその癖が出たら交渉は決裂するだろう。
交戦権を保留されている状態では、相手から攻撃が為されない限りこちらからは手を出せない。
これは明らかに不利なのだ。
私は海軍基地の幹部を集め半時ほど会議を開催して、交渉内容をまとめた上でシェンツ・カルバンドを送り出した。
シェンツ・カルバンドは、第一種礼装に身を固めて出て行った。
◇◇◇◇
私は、シェンツ・カルバンド准将だ。
私は宰相の次女を嫁に貰っている関係で、王宮への覚えもめでたく種々の面で優遇されている。
今回の特使としての出動も、大いにそのあたりが効いているのだろう。
義父である宰相の望む方向で交渉を長引かせられれば、今後の昇進も捗るに違いない。
ガランディア帝国に比べれば隣の大陸の蛮族小国家の軍船など恐れるに足らず、何故に侵入して来た際に攻撃しなかったのかと司令官の考えを疑ったものだ。
まぁ、宰相が交戦権を保留してきた以上は、ジェスタ王国との戦いを必ずしも王宮も望んではいないということが透けて見えるが、所詮は時間稼ぎであり、準備ができ次第、戦いに踏み切るのだろうと思われる。
なれば私の仕事は簡単だ。
相手の主張を聞きながら、のらりくらりと質問を躱して時間を稼げばよい。
これから日没まで頑張って、以後の会談を翌日に回せばよい。
明日は明日で、また、別の手で引き延ばしを図るだけのことだ。
私は端艇に乗って、沖合に止まっている軍船に向かった。
夕日が大分傾いてはいるが日没にはまだ半時以上もあるだろう。
近寄って目の前にあるジェスタ国軍船は確かにデカかった。
端艇が近寄ると最寄り軍船の甲板上から合図が為され、その指示に従って左舷側に回ると階段付きのタラップが舷側から降ろされたのには驚いた。
我がガランディア帝国海軍の軍船にはそのような設備は無く、縄梯子だけだから海上で戦列艦に乗降する際には礼服がいつも汚れてしまうのだ。
最初に副官がタラップの最下段のスペースに乗り、私が落ちたりしないよう補助してくれた。
無論、階段を上がるのは私が先頭になる。
タラップを上がり終えると、そこに軍人らしき男数名が待ち構えていたが、特段武器らしきものは持っていないように見える。
或いはこ奴らも魔法師なのかもしれぬ。
魔法師は剣や槍などは持たぬ。
身に着けた腕輪、指輪或いは小振りの杖などで魔法攻撃を放つことができるから、武器を持たぬと言っても要注意なのだ。
因みに同行する副官も私も官製のショートソードを剣帯に下げている。
これは軍人としての嗜みだ。
一方で出迎えた軍人らしき者の服装は非常に変わっている。
薄青のガリカパッチャ(詰襟)に狩衣の様な細めのセルアー(ズボン)を履き、革製のサイニィジュート(軍靴)を履いている。
ガリカパッチャには肩章が付いており、金線で階級を示しているのだろうが私にはその階級がわからない。
「私は、ガランディア帝国の特使、シェンツ・カルバンド将軍だ。
代表者にお目にかかりたい。」
金線の一番多い人物に向かってそう言うと、「こちらへどうぞ。」とだけ言って、船内を先導してくれた。
この軍船の船体も甲板も鉄か否かはわからないが、すべてが金属製のようであった。
白い色はその金属を塗装した色の様だが、その塗装の痕跡が見えないほど均一なのだ。
普通塗装をすれば刷毛の跡など痕跡が残るものだが、それが見えないほど均一な塗装は初めて見た。
これはやはり技術力が高いのか?
少なくとも我が国の造船所ではこのような金属加工はできないと思われるのだ。
この辺は拿捕した大型交易船での調査で概ね判明しているとおりである。
大きなハッチ状の扉を潜り抜けて船内に入ると目にも眩しい照明が天井にあった。
それが通路のいたるところにあるので昼間以上に通路が明るいのである。
もう一つは軍船の通路が広い。
恐らく三人が並んで歩けるほどの幅が設けられている。
そうしていくつかの曲がりくねった通路を経て、案内されたのは大きな部屋であった。
窓は無いが照明があるので非常に明るい。
正面に大きな机があって一人の年若い人物が座っていた。
それこそ金ぴかの肩章をつけていることからこの者が元帥なのだろう。
余りに若すぎるとは思うものの、私は慣例に乗っ取って、外交辞令の挨拶を行った。
だが相手から返されたのは、無礼にも外交辞令ではなくいきなりの詰問だった。
「貴公が全権特使なのか?」
「全権特使とは?」
「交渉において、国を代表して全ての取り決めをできる権限を有している者か?」
「いや、私はそのような権限を与えられてはいない。」
「私は、我が国の交易船アーレマイン号の不当な拿捕についてその責任者の出頭を求め、拿捕の理由と現状を説明せよと伝えたはずだ。
貴公は、拿捕の責任者なのか?
また、私が納得できるようにその説明ができるのか?」
「私はバルマラード海軍基地の副司令官であり、拿捕の理由と現状については説明できるのでやってきた。」
「なるほど、では拿捕の理由についてまず述べよ。
断っておくが、嘘の説明は一切通用しないと思え。」
私は相手の口上に若干憤慨もしたが、ここで怒っては時間稼ぎもできないから我慢をした。
「拿捕の理由は、アーレマイン号に我が帝国で禁制品とされている麻薬を所持している疑いがあり、その為に捜査を行うために我が帝国法に乗っ取って、差し押さえ、乗員は全員逮捕した。
これは皇宮も承知の上のことだ。」
「今一度言うが、嘘は通用しない。
そのような嘘を続けるならば、貴国が我がジェスタ国に対して宣戦布告を為したと見做すぞ。
これを見よ。」
驚くべきことに、男の背後にスクリーンが生じ、そこに先刻の我らが会議の模様が映し出されていた。
映像のみではなく音声も聞こえ、まさしく出発直前に開いた幹部会議の模様であり、その中で、密輸容疑で拿捕したとの説明をする旨の謀議が為されていたことが暴露された。
私は一瞬血の気が引いたが、ここは嘘を押し通すしかない。
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