コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4ー30 今後の課題

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 ヴィオラで~す。
 ブルボン侯爵領から王都に戻ってまいりましたが、色々とすることもございます。

 先ずは、夏休みでございますので、ロデアルに帰省しなければなりません。
 まぁ、これは年中行事のようなものでございますよね。

 今回は、二週間近くブルボン侯爵領へお邪魔する件がございましたが、夏休みはまだ続いており、ロデアルに行って戻る程度の余裕があるので帰省いたします。
 正味5日ぐらいしかロデアルには滞在できませんけれど、それでも我が家に戻って家族の顔を見ること、また、私(ヴィオラ)の元気な姿を見せることが大事なのです。

 夏休みは、来年の中等部三年が最後になり、秋口には卒業でございます。
 多分、来年の夏休みには、今年と同じようにブルボン侯爵領を訪ね、ロデアルにも帰省することになるでしょう。

 婚姻自体は、私(ヴィオラ)が卒業してから予定が立てられることになりますので、卒業と同時に結婚という話は通常少ないようですけれど、半年から一年、長い場合は二年程待つ場合もあるようです。

 ◇◇◇◇

 さて、ブルボン侯爵領に赴いたことで、私(ヴィオラ)の宿題ができましたね。
 ブルボン領内における漆工芸品の進化・発展を促すために、私(ヴィオラ)が螺鈿らでん工芸と蒔絵まきえ工芸の見本を造ることです。

 それなりの見本が有れば、ブルボン領の職人は、それをより昇華して、推し進めてくれると思うからです。
 私(ヴィオラ)は、螺鈿工芸、蒔絵工芸をこれまで手掛けたことはありませんけれど、前世のパソコンの中で見た記憶にそうした工芸品の製作過程がありますので、ある程度は知っているのです。

 そのために、ブルボン侯爵領で漆を分けていただき、密閉容器にいれて持ち帰っているのです。
 この漆を使い、ロデアルの工芸品の中で良き品を選んで、螺鈿と蒔絵の品を作ってみるつもりなのです。

 それなりのものができたなら、レイノルズ様、若しくはマーガレット様を通して、ブルボン領の然るべき職人に渡して貰うつもりでいます。
 秋口か冬休みまでには、ある程度の見本となる成果物が欲しいところですね。

 もう一つ、マーガレット様の寄木細工の為にニスを手配いたします。
 ロデアルでは既にニスの生産が始まっていますから、それを送付するだけでも済みますけれど、実のところ、ロデアルで生産しているニスは余り日持ちが致しません。

 これは、造ってから日を置かずして使うことを前提にしているからです。
 でも、ブルボン領のように木工工芸が盛んなところには、今後もロデアルから販売できる可能性がありますから、少なくとも半月、できれば一月程度製品の品質を維持できるような保存方法を工夫する必要があると思います。

 ニスは、特に乾きが早いですからね。
 実は、前世のようにニスと溶剤を別々にしている訳ではなくって、製品として出荷する際には溶剤も含まれた品を瓶詰にして密封しているために、余り長くは保管できないのです。

 溶剤のシンナーも作れないことは無いのですけれど、ある意味で危険物であり、中毒の危険性もあったので最初から、別の植物性の油脂溶剤で安全なものを使っているのです。
 開発当初は水溶性のニスも試したこともありますけれど、耐摩耗性に問題があり、最終的に油脂溶剤を混入したニスにしました。

 このニスと油脂溶剤は、いずれも植物由来の製品ですから、毒性はほとんどありません。
 また、漆のような皮膚疾患を惹起することも無い品なのです。

 ニスと油脂溶剤を分離して渡す方法もありますけれど、ロデアルでなければ得られない名産品とするためにも、出来上がったものを販売する方向が、ロデアルのためには望ましいでしょう。
 ある程度の長期保管が可能になったら、これも寄せ木細工に塗布した見本と併せてをマーガレット様に送りたいと考えています。

 取り敢えず、私(ヴィオラ)が直ぐに取り掛かれるのはこの二つの案件でしょうね。
 小麦の連作障害については、既にロデアルから二人の農業指導員がブルボン領に向かっているようで、私と入れ違いぐらいに王都を通過していったようですよ。

 冬小麦の種蒔きたねまきには間に合いますから、輪作や土壌改良を推し進めれば三年か四年で小麦生産量は増えることになると思います。
 最初はそれなりの苦労と金銭的損害も生じますけれど、将来的な展望が開ければ、今の希望の無い農業生産からは脱することができます。

 そのロデアルの農民には、そのメリットを納得してもらうのに時間がかかるかもしれませんが、ロデアルでの実績を踏まえた人たちが指導員になっているはずですから、彼らに任せておけば大丈夫でしょう。
 将来的に取り組まねばならない課題として、教育制度があります。

 現状のブルボン家の教育制度はいずれ手直しが必要かとは思いますけれど、必ずしもロデアルの方式にこだわらずとも良いと思っています。
 その地域によって慣習も文化も違いますからね。

 無理に他所よそに合わせる必要はないと思っています。
 でも領内の識字率を上げることが間違いなく領内の進歩につながりますから、最低限の義務教育的な制度は取り入れたいですね。

 そうして教育者自体も育成しなければなりません。
 知識はあっても人格に問題のある人は弾かないと、子供達の情操教育に大きな影響を与えてしまいますからね。

 師範学校的なものを作って、教育者を育てるところから始めなければならないかもしれませんね。
 人材については、私の能力でしっかりと選定するようにいたしましょう。

 そうしてその新たな教育制度に移行するための資金が出せるかどうかですが・・・・。
 やはり、ブルボン家での新たな事業を考えておかねばならないかもしれません。

 ブルボン侯爵領は、その領域も予算規模も非常に大きいのですけれど、実態は左程に裕福ではないようなのです。
 単純に言えば、現状では農業生産と森林業及び木工業生産にかなりのウェイトがあり、一時は隆盛を極めた鉱山業に陰りが見えているようですからね。

 簡単に進められそうなのが、国境周辺の山岳地帯にある鉱山資源の開発なのでしょうが、どのようにその場所を示唆するかという問題と、ブルボン領で開発を始めると、場合により国境紛争を招く恐れがあるかもしれませんので注意が必要ですね。
 今のところ、その所在地を私(ヴィオラ)以外には誰も知りませんが、有望な鉱山資源はライヒベルゼン王国と隣国であるゼラート王国両方に跨(またが)って存在しているからです。

 今一つ可能性のあるものは、ブルボン領内の比較的低地部分に埋もれている岩塩層の開発でしょうか。
 ライヒベルゼン王国は、その全域が山に囲まれた盆地形状を成しているのですけれど、古代においてはここが海底だった時期があるようなのです。

 その時代には、南西部に湾口がある大きな内陸湾を形成してたようです。
 それが造山運動により陸地が隆起したことで、湾口が閉じられ、それまで湾であったところが塩湖になり、永劫とも思える時間を経て、水分が蒸発して岩塩層を形成したのですけれど、その後にとある火山で噴火が有って、当該岩塩層が厚い堆積物に覆われてしまったようです。

 ライヒベルゼン王国は、他国から塩を輸入していますから、塩が自前で生産できるようになれば経済面でも潤いますよね。
 ロデアルにも岩塩層はあるのですけれど、ブルボン領に比べると地下のかなり深い位置にあることと、硬く厚い岩盤層に阻まれているために普通の採掘では時間がかかります。

 勿論、私(ヴィオラ)が手掛ければ短時間で岩塩採掘ができるようにはなるのですが、余り目立つことは避けるために、敢えて岩塩は掘り出していないのです。
 一方、ブルボンの場合は、地表からの深さが浅いので、ロデアルに比べれば採掘の難易度が低いと言えます。

 但し、岩塩層の厚みという点では、ブルボン領よりもロデアルの方が厚いので、実際の採掘で永続性が高いのはロデアルの方ですね。
 いずれにしろ、国内での塩生産が可能になれば、ライヒベルゼン王国では初めてのことですから、莫大な収益が見込めます。

 ただまぁ、程度問題ではあるのですけれど、採掘までにかける労力はかなりのものになりますし、鉱山の位置と同様に、と示唆してやる手法が課題になりますね。
 で、私(ヴィオラ)が考えたのは、部分的な自然災害で地割れを生み出して岩塩層にまで届くようなルートを確保できないかという事です。

 大地の精霊さんに聞いてみると、できないわけではないらしいのですけれど、調整が難しいのだそうです。
 もし力の入れ加減を間違えると大きな地震災害となって、大きな被害をもたらすそうなんです。

 そうですよね。
 マグニチュードが0.2違うだけで地震エネルギーは倍になりますもんね。

 その辺の調整が上手くできないとやりにくいのだそうですけれど、そうした災害が起きないようできるだけ抑制した方法で精霊さんに少しの地割れを発動してもらい、私がその後に補正を行って地割れを広げることはできるかも知れません。
 将来的な秘策として、一応温めておきましょう。

 岩塩の採掘事業とは別に、別の産業育成についても検討はしておきましょう。
 ロデアルが生産している特産品に関して、そのままブルボン領内に技術移転することは、その原因が私と知れてしまいますからできるだけやめておきましょう。

 山の果実を利用した果実酒の製造なんかは競合しないと思いますけれどね。
 ワインもブドウの品種が違えば味が異なるのです。

 私は女ですから将来的にも余りアルコールは飲まないとは思いますけれど、小麦等の農産物から生み出すウィスキーやバーボンなども売れるとは思いますね。
 でも、強い酒を造ると、何となく酔っ払いやアルコール中毒患者が大量に生まれそうなので、できるだけそちら方面には導かないようにしておきたいですね。

 製紙業も一考に値すると思いますね。
 山にある植物で、製紙に使えそうなものを実は見つけてはいるんです。

 それらから作れるのは所謂和紙の類になりますけれど、この世界の文化は和紙にはチョット向いていないかもしれません。
 所謂ペンとインクを用いて書面を造る文化ですから、和紙を使うとインクが滲む上に、引っかかりやすくなりますよね。

 であればパルプから作る所謂洋紙でしょうか。
 製材所から出る廃材やチップを利用することなら簡単にできそうですけれど、これも度を過ぎると森林破壊につながるので要注意です。

 ただでさえ、薪を燃料として使う文化ですので、大都市の周辺には山林が無くなってしまいます。
 ギリシャの都市国家が衰退した一因には、森林の伐採と牧羊が大いに関係しているようです。

 薪が無くなれば、都市を維持できませんし、日差しの強い場所では土地がせる原因にもなります。
 それと、ブルボン領で細々と存在しているのが薬草を利用した製薬業がございました。

 但し、素材となる薬草を採取するのが難しく、生産量は至って少ないようです。
 この薬草を人工的に栽培できたなら、その生産量を増大できますし、新たなお薬を開発できる切っ掛けになるかもしれません。

 この件も将来の検討事項にいたしておきましょう。

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