コンバット

サクラ近衛将監

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第五章 ブルボン家の嫁

5ー6 動乱の気配

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 ヴィオラでございます。
 ブルボン家へ嫁いで早8年が過ぎました。

 私(ヴィオラ)は21歳(前世で云えば28歳ぐらいでしょうか?)になり、我が子のチャールズは王立学院に入学いたしましたし、同じく次男ダニエルが5歳、長女ベアトリスは3歳になりました。
 夫のレイノルズは、私よりも四つ年上の25歳、お義父おとう様は44歳、お義母おかあ様が41歳、お義祖母おばあ様が59歳になります。

 ヒルベルタお義祖母様は、前世の年齢で云えば、77歳近くなのですが、私が傍にいて健康チェックを欠かさないので、まだまだお元気ですよ。
 但し、この世界での平均年齢を過ぎていますので、来年からは自然に任せようと思っています。

 ブルボン家で幾分風変わりな点は、夫のレイノルズが第二夫人を迎えないことでしょうか。
 ライヒベルゼン王国の裕福な貴族は、往々にして側室を持つようなのですけれど、レイノルズはえてその慣例を無視しています。

 私(ヴィオラ)に対する愛情ゆえのことなのかもしれませんが、後継ぎとなる男子二人もすくすくと育っていますから、侯爵家の存続には問題がありませんので、予備の血筋が必要無いと言えばそれまでのことですけれどね。
 何せこれまで衛生的にも問題がある世界でしたから、せっかく生まれた子が育つ前に病死するなどの不幸もあり得るわけで、子供は多い方が良いというのが当たり前の考え方だったのです。

 そんな風潮の中で、側室を設けないというのは、高位貴族としては、比較的少ない例なのでしょうね。
 私(ヴィオラ)としては。レイノルズに第二夫人ができることについては、ある意味で覚悟はしていたのですけれどね。

 まぁそれはともかく、嫁ぎ先のブルボン家は、私の実家であるエルグンド家と同様に隆盛期を迎えております。
 従来からあった木材加工業も種々の工夫を凝らして、ライヒベルゼン王国のみならず近隣諸国にまで流通するようになっています。

 家具等はどうしても嵩張るかさばるので輸送に困るわけですが、それでもブルボン産の木工家具としてブランド名をせる様になりましたね。
 私の提言で、小物の木工玩具にも手掛けており、これが人気になっています。

 但し、どちらかと言うと購買層は裕福な階層の者になるわけですので、さほどの数がけるわけではないのですけれど、輸送に嵩張らずに済むことや、遊戯に使えることなどから、子供だけでなく大人も使える品として広く知られ始めています。
 製塩業も順調に育っており、とある他家でも地下深くにある岩塩層めがけて穴を掘っているところがございますね。

 岩塩の生産拠点が増えると、当然市場競争により、塩の単価が下がることにはなるかもしれませんが、おそらくは岩塩から食塩に加工する時点で、品質の差が出て来ると思われます。
 製塩過程の詳細についてはエルグンド家、ブルボン家両家で秘匿しており、公表していませんからね。

 ロデアル領とブルボン領の塩が品質で勝るでしょうし、現状の採算性から見て現状の4割程度の安値までの価格競争にも耐えられるはずです。
 因みに、海岸国産の塩は多少値が下がってしまいましたね。

 品質の点で劣る塩が敬遠されているのかもしれません。
 海水からの製塩でも、もう少しごみを含む不純物の除去に力を入れていれば品質が上がるのですから、その辺を改善すべきなのですけれど、どうも手間をかけることで経費が上乗せされることを嫌っているようです。

 鉱山については、新たな銅鉱山が稼働を始めましたし、タイラントア鉱石の試掘も始まっています。
 前にも申し上げたかもしれませんが、このタイラントア鉱石の堆積層が隣国との国境近くにあるために非常にデリケートな地帯ではあります。

 それでも、国境となる稜線の内側は間違いなくライヒベルゼン王国領になっていますから、その範囲内での採掘をしている限り問題は無い筈です。
 当該境界部分は、ブルボン領の北側で境界を接しているパルテネン王国とホルツバッファ皇国との境界付近でもあり、将来的にはライヒベルゼン王国を含む三国で境界紛争が生じそうな感じがしますね。

 農業部門では小麦の輪作もほぼ定着し、農業生産に幅と言うか余裕が出てまいりましたね。
 教育体制もかなり充実はしてまいりましたけれど、まだまだ十年単位での育成が必要だと思います。

 教育体制でネックになるのは、徒弟制度かも知れません。
 徒弟となって仕事を覚えるという昔ながらの慣習は中々崩せません。

 基礎教育が必要とわかってはいても、手に職をつけることが近道と信じている人が多いのです。
 最低限の教育を受けてから職人としての訓練を始めても良い筈なのですけれど、昔ながらの慣行と言うものは、それまでの歴史という重みがあるだけに中々変えにくいものなんです。

 物体が動き出すまで、あるいは動き出してからも、物体に作用している慣性力というものは無視できないものです。
 特に重量が重いほど、動いているものを止め、あるいは、方向を変えてやるには相当の力が必要です。

 良きにつけ悪しきにつけ、慣行も同じですね。
 歴史があればあるほど、その慣行を変えるには相当の時間と努力が必要になるということです。

 こんなところで意識を変えるための闇魔法なんかは使えませんから、腰を据えてゆっくりと変えて行く方法をとるだけですね。

 ◇◇◇◇

 一方で、若干きな臭くなっているのがライヒベルゼン王国の南方方面です。
 ライヒベルゼン王国の南部には、略南西方向にローランデル王国との国境、真南に魔境、略南東方向にフルベルク王国との国境が接していますけれど、この中の魔境付近における国境線は三国間で明確にはなっていません。

 おまけに、三代前のライヒベルゼン国王の領土拡張戦略の所為せいで、ローランデル王国とフルベルク王国の両国とライヒベルゼン王国とは、依然として国交断絶中なのですが、最近になって、この二国が対ライヒベルゼン秘密同盟を結び、領土回復を狙ってライヒベルゼン王国への侵攻を企てているようなのです。
 その詳細は、私(ヴィオラ)の式神で承知していますけれど、この両国が動く前から王宮に知らせることはできません。

 特に、南部から遠く離れたブルボン領にいる私(ヴィオラ)からの情報提供であれば、当該情報の信憑性しんぴょうせいを疑われますし、その情報入手の仕方や経路を問われることにもなります。
 仮に、マスコ・ジェンカなど、私(ヴィオラ)の幻影を情報提供者に仕立てたところで、こと戦争に関する情報であれば、明確な後ろ盾が無いですからほぼ信用が無いですよね。

 もう一つ、注意を払わねばならないことは、王弟派の一部と、ローランデル王国の密偵が秘密裏に情報交換をしていることです。
 飽くまで可能性の問題ではありますが、ローランデル王国とフルベルク王国が同時侵攻を始めた時点で、ライヒベルゼン王国は南部に軍を集めなければなりませんけれど、その王国軍が集結した時点で王弟派が反乱を起こしたなら、国家転覆も大いにあり得ます。

 その逆に王弟派が内乱を起こした時点で、それに呼応するように南方の二カ国が侵攻を始めたなら、非常に憂慮すべき事態になりますよね。
 仕方がないので、この双方に対応できるように秘密兵器の準備を開始しました。

 但し、ライヒベルゼン王国にしろ、ブルボン家にしろ、当該秘密兵器の秘密を渡すことはできません。
 三代前の国王のように外征に関心を向ける輩が出て来ると、国内外の人々の安寧が損なわれます。

 私(ヴィオラ)の魔法だけでも何とかできそうな気はしているのですけれど、広範囲の複数個所で同時に適切な防衛に当たるためには、オーバーテクノロジーの武器を使用する必要があると思うからです。
 一つは、アンドロイド若しくはゴーレムの利用でしょうか?

 私(ヴィオラ)の代わりになって動いてくれる信頼できる者が必要なのです。
 これからも鋭意研究開発はしますけれど、当面使えるのはゴーレムと式神の併用でしょうかねぇ?

 式神が指示をし、ゴーレムがその指示に従うという構図を考えているのです。
 勿論ゴーレムが自立できればそれに越したことは無いのですけれど、そうしたAI擬きもどきを造るには時間がかかりそうです。

 式神で私(ヴィオラ)の代わりに指揮をしてもらい、ゴーレムにその手足になってもらうのが一番良さそうなのです。
 もう一つは、飛行艇の利用を考えています。

 飛行艇と言うのは、飛行能力を持った魔導具で前世における攻撃機に該当するタイプになるのでしょうか。
 正直なところ、余りやりたくは無いのですが、爆弾を使用して脅しをかけ、内乱や外部からの侵攻を止める策を取ろうと考えています。

 但し、脅しに爆弾を使っても、相手が屈しないのなら、大量殺人もやむを得ませんね。
 場合によっては、二カ国の王都の枢要な場所の攻撃もあり得ると考えています。

 それが敵味方双方の被害を抑える最善の方策と信ずるが故です。
 試行錯誤で制作したゴーレムは、何というか阿修羅像に似た人型になりました。

 頭部は二つ、四本の手と四本の足を持っていますから蜘蛛に近いかもしれませんね。
 でも身体は椅子に固定されていて、そこから離れることはありません。

 飛行艇の二組のコンソールに付くことを考えていますので、そこから動く必要が無いんです。
 手と足が必要なのは、方向変換調整と増減速調整を手足で行うからです。

 仮に、船(艇)外活動が必要な場合には、別のゴーレムを造ることになるのでしょうね。
 私(ヴィオラ)の亜空間で時間操作をも使いながら、実世界では二か月ほどの時間をかけて阿修羅型ゴーレムのプロトタイプを生み出しました。

 飛行艇の方は、斥力と引力操作が可能な魔導具を生み出し、それを推進機関として利用する楕円体型の機体を設計し、同じく三か月で何とか作りあげました。
 最終的に阿修羅型ゴーレム10体と戦闘爆撃機型の飛行艇10機を揃えたのは、半年後(8か月後)のことでした。

 取り敢えず、現時点では、南方二カ国からの侵攻も始まってはいませんし、王弟派の内乱の企ても始まってはいないようです。
 私(ヴィオラ)は、この双方の動きを式神多数で監視しているところなのです。
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