親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

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第六章 日米の戦いと紅兵団の役割

6-1 開戦

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 日本の対応に驚いたのは陰謀を策したベンソン大佐とルーズベルトである。
 最も確率が高いと予想されたのは、日中開戦が先ずあって、その後国民党政府に加担する駐留米軍への日本軍の攻撃があってから日米開戦という筋書きであったのが狂ってしまったのだ。

 中国への足がかりを作る前に宣戦布告を突きつけられてしまったのでは、ある意味、そもそもの予定が狂ってしまう。
 無論、日本との全面戦争を想定してはいたのだが、少なくとも数ヶ月は先の話と考えていたのである。

 日本とは戦争をしていないのだから、当然のことながら軍備費の増強なども準備が出来ていない。
 以前から、大西洋と太平洋の両面作戦は立ててはあるのだが、当面、欧州方面の作戦遂行にその勢力の大部分をつぎ込んでいたのである。

 いまさら大西洋方面の軍備を太平洋に振り向けるわけには行かない。
 取り敢えずは手持ちの太平洋艦隊と、フィリピン他幾つかの太平洋の諸島に配備している戦力で対応するしかないのだが、フィリピンの三個師団規模の駐留軍は別としても、そのほかへの島嶼への増派はかなり難しいことになる。

 補給面で問題があるのだ。
 海軍は、当面ハワイにある太平洋艦隊を主軸に日本との戦争をするしかないのだが、いずれにしろ日本は遠い。

 フィリピンの米陸軍を活用したいが、地の利はむしろ日本にある。
 フィリピンの増強を画策するにしても輸送路の確保が前提である。

 ドイツのUボートのように通商破壊をされては、フィリピンに物資も届かないが、輸送船に回せるほどの護衛船団は実のところ無かったのである。
 幸いにして日本軍の潜水艦は旧式であり非常に性能が悪いと見られており、尚且つ、その数も少ないことから、ドイツのUボートのような通商破壊はできないだろうと憶測されていた。

 それに太平洋艦隊の駆逐艦等を商船隊の警護に回しては、太平洋艦隊自体の警護が出来なくなる。
 結局、米軍はオレンジプランに基づき、太平洋艦隊に輸送船100隻をつけて、フィリピンへ25個師団を送り、フィリピン、台湾、沖縄、九州から島伝いの日本本土占領計画を立てたのである。

 当然に日本海軍との海上戦闘が予想されるが、戦艦の数において日本海軍に引けをとるとは思えなかった。
 日本政府の要請に応ずるつもりは毛頭無く、何の措置も講ずることはしないので、当然に4月1日以降は臨戦態勢となる。

 米陸海軍は、フィリピン、マーシャルなど近隣地域の部隊に対しては最高度の警戒警報を発した。
 しかしながら、いずれの場合も宣戦布告がなされる前に米国から手を出してはならないとの通達が出された。

 こちらの手を見透かされたとは言っても、確たる証拠などありよう筈も無く、米国が知らぬ存ぜぬを決め込めばいいのであり、あくまで戦争を仕掛けたのは日本軍であり、米軍ではないことを国民と国際社会に見せなければならないのだ。
 こうして、太平洋を隔てて二つの軍団は、緊張の一週間を対峙することになった。

 日本においても宣戦布告以前に戦闘を開始しないよう厳命がなされていたのである。
 米国東部時間昭和17年3月31日午後12時少し前、野村大使は宣戦布告のために米国防省を訪れた。

 ハル国務長官に形式的な口上を述べ、国交断絶と宣戦布告を言い放って退出した。
 大使館職員は48時間以内に、メキシコへと移動しなければならないのである。

 ハワイの領事館もまた、そのために用意されていた中立国チリの貨物船によってメキシコまで移動する事になっていた。
 メキシコのアカプルコでは、メキシコの貨客船が米国大使館及び領事館の職員と家族を乗船させるために傭船され待機していた。

 それ以外の邦人は日本政府からの要請により3月30日までに全員が米国を出国していた。

 ◇◇◇◇

<開戦>

 日本時間昭和16年4月1日午前1000、日本国営放送はラジオで米国との戦争状態に入ったことを知らせたが、その時点では太平洋地域のいずれの場所でも戦闘は起きていなかった。
 同日正午、フィリピンにある数箇所の軍事基地が一斉に空襲を受けた。

 多数の戦闘機と爆撃機からなる空襲であり、厳戒態勢にあった各拠点では応戦したが、1時間後には米軍航空機は壊滅、戦車及び艦船も甚大な被害を受けた。
 日本軍の戦闘機は新型機であり、配備されていた米軍戦闘機では全く歯が立たなかった。

 地上の対空砲火も懸命な防空に努めたが、襲来した日本軍機を只の一機でも撃墜できたものは無かったのである。
 フィリピンには航空機が一機たりとも残って居らず、米軍の誇る機械化部隊も戦前の予想以上に大きな被害を受けたのである。

 日本は、戦果を大々的に広報すると共に、親米国家群に対して警告を発した。

「この戦いは大日本帝国とアメリカ合衆国の戦争である。
 他のいかなる国家も、この戦いに介入してはならない。
 物資の支援その他、米軍に協力するものは敵性国家として帝国軍の攻撃対象となることを覚悟しなければならない。
 一方で中立を守る限り、帝国軍は中立国家に対して如何なる攻撃も行わない事を保証する。」
 
 同日、日本近海で作戦行動中であった米軍潜水艦7隻が攻撃を受けて沈没した。
 いずれも、海防艦による対潜弾攻撃を受けての撃沈であった。

 日本海軍の支配下にある海防艦は、全て沼津造船所において建造されたものであり、当初情報でもたらされていた性能とは異なり防空戦闘能力の強化と共に、対潜水艦能力が駆逐艦以上に強化されていたのである。
 海防艦は高性能ソナーで容易に潜水艦を発見していた。

 しかも、事前にデーターを与えられ、いずれの国の潜水艦であるかの判別が音紋解析により瞬時に可能となっていた。
 全国各地に配備されていた海防艦も宣戦布告と同時に米国籍の潜水艦狩りを始め、初日だけで7隻の戦果を挙げたのである。

 4月3日、米軍グアム守備隊は奇妙な軍艦8隻の攻撃を受けた。
 小型空母のような艦船8隻が島の北側に接近、同空母から見慣れぬ形の航空機多数が飛来、守備隊に攻撃をしてきたのだ。

 守備隊は大した装備も無く、3インチ野戦砲6門と40ミリ対空機関砲12基があるだけであった。
 当該航空機に対して40ミリ対空機関砲は一切効果が無かった。

 機体に当たっても、全くダメージを与えられる事ができず、応戦した米兵はロケット弾と搭載機関銃になぎ倒された。
 当該航空機はずんぐりとした機体の上部に大きなプロペラをつけた機械で、空中で止まる事も、垂直に離発着もできる航空機であった。

 米軍守備隊の必死の攻撃にも関わらず、この妙な航空機の出現でほぼ戦力をなくしたところへ、空母と見えた艦が船首を砂浜に乗り上げ、船首のハッチを開けるとそこから戦車が現れた。
 戦前の情報によれば、日本軍の戦車は35ミリ砲を搭載したブリキ缶のようなちゃちな戦車ということであったが、米国でも見たことも無いほど大きな戦車であった。

 更に装甲車両も後に続き、総計で戦車24両、装甲車48両が上陸した。
 これら機械化部隊に対しては、手持ちの武器が一切通用しなかった。

 駐留米軍の指揮官は反撃の無駄を悟り、同日夕刻までには全ての米軍部隊が投降していたのである。
 4月7日までに、フィリピンの米軍基地では1日以降連日猛烈な爆撃を受け、ほぼ軍事施設は壊滅していた。

 しかも極めて正確な爆撃であった。
 手の出せない高空からピンポイントで爆弾が投下され、米軍兵士は逃げ惑うのが精一杯であった。

 夜昼の区別無く定期的に襲来する爆撃機に将兵はノイローゼ気味であり、士気は極端に落ちていた。
 基地の修復はほとんど意味を成さなかった。

 若干の修復で使用が可能になると次の日には完璧に破壊されるのである。
 大隊規模で集結すると必ず狙われたことから、小隊規模で分散せざるを得なかった。

 米軍に対する攻撃とはいえ、米軍の周辺でも相応の被害は出ており、フィリピン人の協力も次第に敬遠されがちになってきていた。
 巻き添えで被害を受けるのは誰しも嫌であるから止むを得ないところである。

 4月8日、大規模な艦隊がマニラ湾に現れた。
 小型航空母艦6隻、戦艦4、巡洋艦8、駆逐艦16隻と上陸用強襲艦8隻、輸送船24隻からなるフィリピン上陸部隊である。

 マッカーサーは艦隊出現の報告を受け、直ちにマニラを放棄、バターン半島に撤退した。
 コレヒドール島とバターンには自然の要害を利用した堅固な要塞が築かれていたのである。

 日本軍は、コレヒドール要塞を艦砲射撃で砲撃した。
 戦艦群の艦砲射撃は、要塞砲の射程外から行われ、コレヒドールの施設全てを破壊した。

 その上で、日本軍は殆ど抵抗の無いまま上陸を開始し、その日の内にマニラを占領した。
 マッカーサーは孤立無援の状態で、バターン半島に追い込まれたのである。

 上陸軍は情報に全く無かった機械化部隊であり、多数の大口径砲を保有していた。
 日本軍は、バターン半島付け根付近に堅固な陣を、築き始めていた。

 要塞ではなく土塁であるが、4月20日には高さ10mほどの土塁の壁がバターン半島を横断、海上には要所要所で戦闘艦が警戒に当たっており、日本軍は完全に外界との交通を遮断したのである。
 土塁の建造に当たっては、ブルドーザーなどの重機械が多数使用されており、日本軍は重機械を保有せず陣の構築には人力が主として用いられるというこれまでの情報が明らかに間違いだった事を示していた。

 マッカーサーは不利を悟っていたが、ハワイの太平洋艦隊が応援に来る事を信じて、可能な応戦をしていた。
 バターンには、米兵以外にもフィリピン人の傭兵のほか親米的なフィリピン人も家族連れで多数逃げ込んでいた。

 これら現地人への食料供給量も馬鹿にならず、次第に内部で軋轢が起きている事もマッカーサーの頭痛の種である。
 マッカーサーが心待ちにしていたハワイの太平洋艦隊は、一気に日本軍を叩くために、フィリピンへの増援部隊を準備していた。

 日本周辺に配置した潜水艦は開戦初頭に壊滅状態となり、その後も偵察を兼ねて出撃する潜水艦の殆どが消息不明となっている。
 15日までに実に42隻の潜水艦が消息不明となっていたのである。

 従って、日本の海軍部隊が何処にいるかを正確に掴めないでいた。
 フィリピン上陸作戦に当たって主力部隊と思われる艦隊がマニラ湾にいたことは判明しているが、わずか3日でマニラ湾を出撃、8隻の駆逐艦のみが配備されている事は判明している。

 11日以降、日本の主力部隊の配置は不明であった。
 開戦前に得られていた日本本土の工作員の連絡も、4月1日以降一切の連絡を絶たれている。

 フィリピン、マニラに潜伏している工作員からの報告も途絶えがちであるが、マッカーサーの情報とあわせると、相当強力な機甲師団がフィリピンに上陸していること、マニラ郊外のクラーク飛行場が拡充整備され、4発の大型航空機が連日往来しているという情報が入っていた。
 太平洋艦隊司令部でも出発準備を急いでいるが、艦隊編成に若干手間取ったこと、機甲師団相手ということで、急遽陸軍が編成部隊の改変を行ったことで、準備が遅れに遅れ、4月18日ハワイ集結、19日出港となったのである。

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