後悔と幸せ

ハル

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後悔と幸せ~その後~

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束縛の強い晃は、その束縛を緩めることなく2年経ったある日のこと。
あぁ、因みに、

「名前の呼び方結婚したんだから晃『さん』はないよな?」

って事で晃って呼ぶようになった。職場では…部署が変わった。いろいろやりにくいのだ。晃の説得はすっごく苦労した。

「公私混同だなんてあり得ないですよね、部長。私、妻になったからって職場で晃なんて呼びませんし他人行儀ですよ。耐えられますか?」

と、言ったところ、私に他人行儀にされるのは耐えられないと、渋々許可してくれた。出勤、お昼ご飯、帰宅はどちらがどれだけ遅くなろうと待つと言う条件付きで。

そんなある日だ。唐揚げ作っていたら吐き気がした。最近体調悪いし病院行こうかな…って事で病院に行くと妊娠だった。もちろん、束縛系夫の晃もついて来て待合室で待っていた。私自身驚いていて、晃には私が落ち着いた時に聞いてもらいたかった。なので、

「急な事なので、夫には家でゆっくり伝えます。」

と言った。先生は納得してくれた。

「どうした?何があった?具合大丈夫か?気分悪くないか?」

家に着くまでずっと聞いて来たが、私は俯いて黙ったままだった。私なりに心の整理をしている最中だったから。こんんな私でも不安になる。
そうこうしているうちに家に着いた。

「瑠奈…いい加減、何があったか教えてくれないか?」

そういえば、前に妊娠すれば束縛が緩むかも的なことは言っていたが、それは他に目移りをすると言う事なのか?と、急に母になる現実や晃に捨てられるかもと言う謎の不安に駆られた。

「ね、晃、私、晃のこと好きだよ。」
「え…あぁ俺も好きだ。」
「ずっと?」
「あぁ、ずっと好きだ。愛してる。」

その時、滅多に言わない愛してるを聞けた。なので、勇気を出して言ってみた。

「………えっと、え、っと、に…。妊娠してる。」
「え…?…!!本当か!?嘘じゃないのか?」
「う、うん。」
「ありがとう、瑠奈!あ…産んでくれないか?」

あぁ、喜んでくれるのか。なら、産んでもいいだろう。きっと可愛い子が産まれる。愛しい彼との子だから。

「うん、うん。産む?喜んでくれて、ありがとう。」
「え?当たり前だろう?瑠奈との子だぞ?嬉しいに決まっている。」
「そっか。前にさ、妊娠すれば束縛が弱まるかもって言ってて…不意に、子供ができたら飽きるって言ってたんじゃないかと思って…。」
「はぁ?そんなわけあるか。子供という形で絆が深まればちょっと緩めても安心出来るからな。」
「そっか。…昔はちょっと窮屈だった束縛が緩まると不安になるね。」
「え?って言っただけで緩めるとは言ってない。緩めるつもりもないしな。」
「それでいいよ。」

それでいい。安心出来るから。



-----その後-----

出産は結構大変だった。まず、破水してから、10時間以上(それ以降考えるのも嫌になった)苦しんで、産まれるまで…結構時間がかかった。双子の男の子だった。

「瑠奈、お疲れ様。ありがとう。」
「うん。可愛いよ。晃に似てる。」
「次、女の子で頼むな。」
「え、また産むの?」
「おう。頑張ってくれ。」
「まず2人の名前考えよう。」
「…そうだな。」

そうして決まったのは、
『紺田 光瑠ひかる』『紺田 香瑠かおる
光瑠は基本のんびりしてる感じ。あんまり泣かないから。
香瑠は元気いっぱいで泣く。こっちが泣きそうになるときもあるけど、結構晃が手伝ってくれる。育メンだ。子育てしてる姿は本当にカッコいい。

1年半後には娘を産んだ。『紺田 瑠衣』
よく笑う可愛い子だ。光瑠と香瑠もお兄ちゃんを頑張ってしている。



-----瑠衣を産んでから5年後-----

「瑠衣!これいるかぁ?」
「にいたん!めっだよ!おかあしゃんが、おかちは、しゃんじっていってたもん!」
「お、瑠衣はしっかりしてるなぁ。香瑠、瑠奈に内緒でお菓子食べようとしてたな?」
「げ、父さん…。母さんには…。」
「あ?言うに決まってるだろ?俺は瑠奈が1番だからな。」
「くっそぉ~!明日のお菓子俺だけ少なくなるじゃんか!」
「ズルするのが悪い。」
「香瑠、明日減らされたら僕のお菓子半分あげるからちゃんと母さんに謝ったほうがいいよ。」
「…分かった。」

「ただいまぁ~!いい子にしてた?」
「母さん、ごめんなさい…お菓子ズルしようとした。」
「…自分で悪いことしたら言って来れるようになったのね。いい子だ。これからはダメだよ?お菓子、明日減らさないであげる。今後はダメだけど、今回は自分の過ちを謝れたからね。」
「ほんと!?やった!」
「光瑠が助言したんでしょう?ありがとうね。」
「ううん。いいよ。」
「瑠奈、おかえり。」
「晃、ただいま。」

愛する人と子供に囲まれて私は結構幸せだ。
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