雨中フード

月詠 よる

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三粒目

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そうやって微笑んでいれば可愛いんだけどな

そう思ったが照れた蓮は遠慮なく足を踏みつけてくるので言わない
あれ、めちゃくちゃ痛いんだよなぁ

「はやく、見つけたって。捕まえないと」

そうやって走り出す

ああやって元気に走ってるところ見ると
あぁ、もっと早くにこうすればよかったと



思ってしまう



自責の念に絡まれて、動けなくなる
どんどん悪い方向に偏ってしまう

あの時は何も見えてなかった
見ようとしなかった

それは蓮も同じ
だが、それだけの一言で許されるわけがない

見ようとしない、考えようとしない
それは自分から逃げるだけじゃなくて、時に人を大いに巻き込んで傷つけてしまう


ぁあ、こうして「今」という普通が
どれだけ俺を楽にさせてくれているか、安心させてくれるのか

だから考えてしまう
また変な行動を起こしたら、たったちょっとの些細なことで壊れてしまわないか

そう思うと、足がすくんでしまう
自分に呆れたのか、っは!と乾いた笑みが出た

「歪んだ笑顔だね?寒九」


気づいたらいつのまにか目の前に蓮がいた
あれ、なんで、
先に走っていったじゃんか

雨が降った後の土の上を走った後だからか、蓮の靴は土にめり込んだ後のような泥の跡が残っていた

不思議と首を傾げでしまう


「ついてこないからでしょ!迎えに来たのよ!あのバカの回収がなにより先なの。首傾げてないで行くよ、ほら?」

そう言って差し出された手が

やけに眩しかった



いつも救われてる
俺は素直じゃないから言わないけどいつも感謝している

人の感情を読み取るのが上手い蓮は
俺の感情もなるべく気づこうとしてくれている

蓮に引っ張られる手は暖かくて、ずっと側にいたいような
そんな気持ちにさせる

俺は蓮に何を返せるだろう
側にいたい、いつでも何があっても隣にいたい

恋慕かな?これは
そんな生易しいものではない気がするけど

「れん?俺はお前の側にいよう」

そう言ったら、早まってた足がだんだん遅くなって

「急になによ?…………はぁ、私も側にいる、
その願いが叶えられる限り」

真剣な顔で俺を見て、そう言ってくれた

俺の言いたかったことを汲んで自分の本心で返そうとする
この澄んだ心が何よりも好きになったところか、


急に俺の前に腰をかがめて顔を覗き込むように

「満足でしょうか?寒九どの?」

そういってニタニタ笑うもんだから

「満足じゃ」

と返させてもらった



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