ととのい賢者の王国最強戦記

異世界でサウナを広める！

　俺は、サウナが大好きだ。
　サウナがないと、生きていけない。

　目の前に広がるのは、異世界。
　剣と魔法の王国。

　だけど人々の顔は、とても疲れ切っていた。
　兵士たちは日々の訓練と戦でボロボロになり、街には病が蔓延し、活気がまるでない。
　汗を流す文化がない。リラックスする方法を誰も知らない。

「……この世界って、もしかして、サウナがないのか？」
「サウナ？ なんだそれは？ そんな魔法、聞いたことがないが……」

　絶望だった。

　風呂すらろくにないこの世界で、サウナなんて夢のまた夢。
　人々は体を清める習慣もなければ、心身を癒やす手段も持たない。

「こんな世界、やってられるか！」

　だけど、ここで俺は決意した。

「サウナを作るしかねぇ！」

　薪を焚き、石を熱し、水をかけて蒸気を発生させる。
　村の片隅に手作りのサウナ小屋を作り、試しに入ってみた。

　──熱い！ でも、最高に気持ちいい！

　試しに村のやつらにも入らせてみると……

「なんだこれは……！ 体の奥から力が湧いてくる！」
「体が軽い……これが、"ととのう" ってやつか！」

　だが、俺は異端者扱いされた。

「そんな怪しげな蒸気を浴びるなんて、呪いではないのか？」
「人を閉じ込めて熱するなんて、拷問じゃないのか？」

　そして、とうとう俺は追放された。

「辺境でおとなしくしていろ。お前は危険だ、危険なんだ！」

　……だが、運命は俺を見捨てなかった。

　追放の地へ向かう旅の途中、俺は見つけた。
　この世界にも、誰も知らぬまま湧く魔法の蒸気泉があることを。

「レベルアップ、おめでとうございます！」

　謎の声が虚空に響いた。魔法の蒸気を浴びると、俺だけがどんどん〈レベルアップ〉した。
　サウナに入るたびに体力が回復し、魔力が増し、戦闘能力が向上する。

　こうして、**王国最強の"ととのい賢者"**となったのだ。

　新たな伝説のサウナを求めて、俺の冒険はまだまだ続く。