ととのい賢者の王国最強戦記

私は、私の道を行く

　私は、自分が大好き。
　自分がいないと、自分は生きていけない。当たり前か。

　目の前に広がるのは、異世界。
　剣と魔法の王国。

　でも人々の顔は、とても疲れ切っていた。
　誰もが同じような服を着て、同じような顔をして、同じような言葉しか話さない。

「この世界の人って、もしかして、自分ってものがないの？」
「自分？　そんなものは必要ない。みんな同じ存在だ。」

　絶望だった。

　個性も、自由も、好きなものを語ることすら許されていない。
　人々はただ命令に従い、誰が誰だかわからない社会に埋もれていた。

「私はもう、こんなところにはいられない！」

　だけど、ここで私は決意した。

「自分を取り戻さなくちゃ！」

　個性を、自由を、自分だけの輝きを……私がこの世界に取り戻してみせる！

　「自分」のない世界で、私はまず、自己紹介してみた。

「私の自分語り、聞いてください！」

　試しに人々にも自己紹介を促すと……

「自分の話？ いや、そんな話、したいと思ったことがない」
「でも、もしも私が『自分』でいられるなら、どんなに楽しいことだろう！」

　人々は少しずつ、「自分の考え」「自分の趣味」「自分の世界」を持ち始めた。

　しかし、噂が広まると危険視され、とうとう追放された。

「そんな異端な思想、国を乱すだけだ！」
「辺境でおとなしくしてろ。お前は異端だ、異端なんだ！」

　だけど、追放の地へ向かう旅の途中、私は見つけた。
この世界にも、人に知られぬまま眠る、「魔法の鏡」があることを。

「レベルアップ、おめでとうございます！」

　謎の声が虚空に響いた。「魔法の鏡」を覗き込むと、自意識ばかりがどんどん〈レベルアップ〉した。

　こうして私は、王国唯一無二の「自分らしさ」を見つけたのだ。

　新たな「自分」を探して、これからも私の冒険は続く。