妓楼の楼主に転生しました

11.秘密の関係

用意されていた赤い布団の片方に寝かされ、藤花が覆い被さってくる。

「ん、ふ⋯」

差し込まれた舌に自分からも舌を絡め、ふわふわした感覚に酔いしれていたところで、はっとして軽く胸を押し返した。

「ま、待った！」
「ん⋯、何？」

中断させられた藤花は、訝しげに眉を顰める。

「今日は俺がこっちじゃなくてもよくないか？」
「⋯は？」
「誰かに見つかる心配もないし」

いつもは見世の藤花の部屋なので、花魁の部屋に勝手に入ってくるやつなんていないとはいえ、細心の注意を払う必要がある。けれど、今はその心配はない。

「その話は、俺の年季が明けたら考えようって約束したじゃん」
「そうだけど⋯」
「それに今日は、俺が智陽を癒してあげることになってるから却下」
「それ、関係な⋯、っあ！」

着物の合わせ目から入り込んできた手に素肌を撫でられ、ピクッと身体が震える。藤花は帯を解くと、はだけだ胸元に手を這わせてきた。

「っ、ん⋯、ぁ、」

指先で軽く突起を摘まれると変な声が出そうになって、指の背を唇に押し当てた。

「ここも感じるの？　ほんと敏感だね」
「ち、が⋯、お前のっ、せい⋯っ」
「えー？　ここはテクとかより、智陽が弱いだけだと思うよ？」
「うるさ⋯っ、やっ」

摘んで引っ張られていたのを、ふいに押しつぶすようにして胸を揉まれ、ゾクッと快感が下肢に集まる感覚がした。

「気持ちいい？」
「っ、んん⋯」

恥ずかしさに僅かに首を横に振ると、嘘つき、と吐息混じりの声を耳に吹き込まれた。

「あっ、まっ⋯！」

乳首を弄っていた手が脚の間に移動し、反応を示していた自身に触れる。久しぶりなせいもあって、裏筋や先端を優しく撫でられると、一気に射精感が高まった。

「くっ、だ、め⋯、もっ、イク⋯っ」
「智陽、俺の名前呼んで」
「え、なに⋯？　急に⋯、んあっ！」

ギュッと根本を押さえつけられて、涙目で藤花を睨んだ。

「呼んで」
「んっ、藤花⋯」
「もっと」
「藤花、藤花⋯っ、や、だめっ、イキた⋯！」
「ふっ、かわい」

戒められていた手が緩み、吐精を促すように擦られる。

そう言えば、見世でした時はバレたらマズいと思って、無意識に名前をあまり呼ばないようにしていたなと、達った後キスされながらぼんやりと思った。


　　　✦✦✦

「あ、そうだ⋯」

行為の後、２人で風呂に入りながら、俺は昼間のことを藤花に話した。

「鈴夜に、俺が藤花と特別仲良くしてるみたいなこと言われたんだけど」
「そうなの？」

藤花は意外そうな顔をした。

「みんなの前ではそういう態度とってないつもりなんだけどな～」

顎に指を当てながらそう呟く。

それはもちろん俺も気をつけている。けれど、鈴夜にそう見えたということは、他にもそんな風に思っている人がいるかもしれない。

もしくは、

「鈴夜が、お前に気があるみたいなことは？」
「ないない。仕事の話以外で話しかけられたことないし」
「⋯そうか」
「俺より、椛と仲良さそうだったよ」
「椛と？」

それは初耳だ。

椛はうちのナンバー３なだけあって、藤花とは違うタイプの美人だ。あざとかわいい感じ。

「って言っても、時々楽しそうに話してるの見かけるってだけだけどね。俺あんまり椛と仲いいわけじゃないし」
「ああ⋯」

うちのトップ３は、ここしばらくランキングが変わっていない。他の見世でも、トップ争いをしている花魁同士はバチバチと火花を散らしているようだし、うちはそこまであからさまではないとは言え、仲良くしろというのは難しいのかもしれない。

「お前も苦労するな⋯」
「俺は別に。１位にこだわってるわけでもないし」
「そうなのか？」

売上は気にしているみたいだったし、ランキングがどうでもいいと思っているようには見えなかったが。

「そう見せてるだけ。トップの奴が、別に順位とかどうでもいいって態度だと、下は腹立つでしょ」
「あぁ、まぁ⋯」

その思惑までバレてたら余計に腹立つけど、まあそれはないか。不要な争いを避けようとしてくれてるんだと考えよう。

「話逸れたけど、とりあえず鈴夜には気をつけろよ」
「うん。わかった」

これでひとまずは安心、となるといいんだが。