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5・お嬢様、学校に行く。

01驚き。

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 私、アビゲイル・バセットが貴族の子息女がつどう学園に通い始めて一週間が経った。

 もう既にバセット家の屋敷は出て、お父様に買わせた家で執事のナイン・ウィーバーと共に暮らしている。

 ちなみに軽い仕返しとして出際にエミリーとお母様の服を全て燃やしておいた。
 なかなか気分が良かったので、もし今後あの家に顔を出す際は毎回必ず行おうと思う。ナインはドン引きしてたけど。

 それはさておき、ここ一週間は驚きの連続だった。
 高田まりえは勿論もちろんのこと、アビィも初体験のことだらけだった。

 まず驚いたのは、ナインは料理が出来る。

 というか家事全般が出来るのだ。

 何より料理が美味しい、これには本当にびっくりした。
 あの卓越たくえつしたナイフさばきもふくめて、本当に謎多き男だと思う。

 続いて驚いたのは、学園そのものにだ。

 高田まりえも勉強自体はパソコンを視線追跡操作にして動画や教材やらネットやらでしていたし。
 アビィ自身も最低限の読み書きは教えられていたので、授業自体には着いていけたのだけど。

 同年代の人間が目の前にあんなにいることに、驚いた。

 いやーテンパったというか舞い上がったというか。
 友達が作れるんじゃないかって浮き足立ってしまった。

 制服は可愛いし、校舎は綺麗だし、私の知っている学校からはかなり異世界ナイズされた学園だったけどかなり心おどらせた。

 しかし、更なる驚き。

 思っていた以上に貴族間の派閥はばつ争いでバッチバチだったことだ。

 いやーなんか思ってたのと違う。
 なんなの? 貴族の爵位を持つ親たちがそういう政治絡みのことでバチバチしてんのはわかるけど、何者でもない子供の私たちが何したってどうしようもないじゃない。

 なんて思っていたけどそれがどうにも違うらしい。

 子供同士のおとしいれ合いみたいな、いじめとかスクールカーストの延長みたいなもので貴族同士の婚約が破棄されたり自主退学に追い込まれたりしているらしい。

 そこまでの問題ともなると、流石にこの国の貴族間のパワーバランスにも影響が出るようだ。

 なんか私としてはとてつもなく関係のない話だし、バセット家の人間が没落ぼつらくしようが処刑されようが心境としては知ったこっちゃないのだが。

 バセット家はまだ使い道があるので下手に巻き込まれたくはない、またあいつらの服も燃やしたいし。

 なので、私も私でその貴族の派閥はばつ争いに一枚噛みつつ、あわよくばお友達を作ろうと思う。

 ごうりてはごうしたがえ、それに私はせっかく学校に通うのなら学校での流行りに乗りたいだけなのだ。

 と、言うことでこの一週間はこの国の貴族派閥はばつについて勉強をした。

 このメルバリア王国はざっくり、発展派、教会派、中立派の三つに別れていてそれらの意見を王族がまとめあげているみたいな政治構造らしい。

 一応バセット家は中立派にぞくするみたいだ。

 だったら中立派のグループ内で友人を探せば良いのだろうが、それは面白くないし、幸せに近づくとも思えない。

 何より私はバセット家の為になることをする気なんて毛頭もうとうない、全ては私の幸せの為にしか行動しない。

 一番良い目標としては、バセット家が滅びつつ私だけが独立して幸せになることなのだけども。
 だったら中立派でつるんでいても仕方がない。
 狙うは発展派か教会派の有力貴族とお友達になることだ。

 そんな思惑を持ち、友情を育むために私はある貴族令嬢に目をつけた。

「ご機嫌ようグロリア嬢、お隣よろしいですか?」
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