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13・聖女、異変に気づく。
01恋。
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私、ジュリアナ・ロックハートは、この国の聖女です。
神に祈り続け、この国に安寧と幸福を与える聖女。
その為に生まれ、育ち、生きている。
それが私。
聖女であることを苦に思ったことは一度たりともない。
それが私の幸せなのですから。
「いやなに物思いにふけってんのよ。ジュリアナの番よ」
と、向かいに座るアンジェラ・ステイモスが私に声をかける。
「すみませんアンジェラ、では王手。詰みです。投了してください」
「え⁉ 待って、嘘でしょ⁉ …………え? まだあるでしょ……」
アンジェラは盤面の逃げ道を失った王の駒を見ながら思考を巡らす。
私は今、アンジェラとショーギと呼ばれる最近ふつふつと人気の出てきているボードゲームに興じています。
祈りはどうしたと思われるかもしれませんが実は最近は朝晩の祈りの時間以外、私は神に祈りを捧げていません。
理由は友人が出来たからです。
友人であるアンジェラとお話をしたり、こうやって遊ぶのが楽しいのです。
私は変わったと思います。
かつての私は、民の安寧と幸福のために祈るだけの聖女という装置でしかありませんでした。
それが聖職者エリック・バーネットより知識を得て。
アンジェラ・ステイモスより心を知り。
そしてなにより。
「無い! 負けたあー! 参りました! 詰んでるわー、これ…………、と、それはそうとジュリアナ。最近はジャレッド王子とどうなのよ? またチューした?」
「な、なななんの関連性があるのですか?」
突然のアンジェラの追求に私は動揺してしまう。
そう、私は恋を知ってしまったのです。
婚約者である、この国の第二王子であり次期国王であるジャレッド・メルバリア様に私は恋をしている。
この国には王族の誰かが聖女と婚姻関係を結ぶ決まりがある。
大昔の聖女ローラ・ロックハートが王族の不正を神託により正し、それを見張るために婚姻関係を結んだことから由来する決まりだ。
そんな伝統を守るだけの婚約でしたし、私は聖女としてその伝統に則るだけでした。
その伝統と聖女制度を廃止する決定を覆す為にエリックに頼んで国中に爆弾を仕掛けて抵抗する程度には、私は聖女として伝統に則っている。
我ながら狂気の沙汰ということは自覚しておりますが聖女退任案を覆すことが出来たからこそ、ジャレッド王子と共に居られるのだから良しと思えるほどには私は恋をしているのです。
王子が婚約を破棄する為にこの部屋までやってきて、結局デートに行く約束をしてしまってから恋をしています。
正直それまで私はジャレッド王子を何とも思っていませんでした。
ただ、聖女としての役割として婚姻を強行したに過ぎないのです。
それが今では、こんなにも参ってしまっている。
「ジュリアナ本当に変わったよね、良いことだと思うよ、そゆとこ」
「伝統を重んじ変化を嫌う教会派で強い影響力を持つステイモス侯爵家の令嬢が、そのようなことを言うのですね」
私はアンジェラの感想にそう返す。
「変化ってより悪化を嫌うのよ。聖女だって初代の聖女スーザンはもっと式典をしたり政治的な役割も担ってたし、王子との結婚も聖女ローラが王族の不正を暴いてから出来たものだし、聖女リディアが脱走したり聖女ウェンディが暗殺されそうになったり聖女ホープが誘拐されたりして、今みたいな過剰な程に完全に隔離されるようになったってのも変化でしょ? それよりも聖女ジュリアナが恋を知った方が絶対に良いことだもの」
歴史学を専攻するアンジェラは流暢に答えるが、隔離されるようになった理由に私、聖女ジュリアナが国中に爆弾をしかけたことも要因の一つということは知らないようですね。
でも確かにアンジェラの言う通り、千年以上の時間をかけて聖女の在り方も緩やかに変化している。
ならば私は私の代で、私が変わるのも良いのかもしれません。
神に祈り続け、この国に安寧と幸福を与える聖女。
その為に生まれ、育ち、生きている。
それが私。
聖女であることを苦に思ったことは一度たりともない。
それが私の幸せなのですから。
「いやなに物思いにふけってんのよ。ジュリアナの番よ」
と、向かいに座るアンジェラ・ステイモスが私に声をかける。
「すみませんアンジェラ、では王手。詰みです。投了してください」
「え⁉ 待って、嘘でしょ⁉ …………え? まだあるでしょ……」
アンジェラは盤面の逃げ道を失った王の駒を見ながら思考を巡らす。
私は今、アンジェラとショーギと呼ばれる最近ふつふつと人気の出てきているボードゲームに興じています。
祈りはどうしたと思われるかもしれませんが実は最近は朝晩の祈りの時間以外、私は神に祈りを捧げていません。
理由は友人が出来たからです。
友人であるアンジェラとお話をしたり、こうやって遊ぶのが楽しいのです。
私は変わったと思います。
かつての私は、民の安寧と幸福のために祈るだけの聖女という装置でしかありませんでした。
それが聖職者エリック・バーネットより知識を得て。
アンジェラ・ステイモスより心を知り。
そしてなにより。
「無い! 負けたあー! 参りました! 詰んでるわー、これ…………、と、それはそうとジュリアナ。最近はジャレッド王子とどうなのよ? またチューした?」
「な、なななんの関連性があるのですか?」
突然のアンジェラの追求に私は動揺してしまう。
そう、私は恋を知ってしまったのです。
婚約者である、この国の第二王子であり次期国王であるジャレッド・メルバリア様に私は恋をしている。
この国には王族の誰かが聖女と婚姻関係を結ぶ決まりがある。
大昔の聖女ローラ・ロックハートが王族の不正を神託により正し、それを見張るために婚姻関係を結んだことから由来する決まりだ。
そんな伝統を守るだけの婚約でしたし、私は聖女としてその伝統に則るだけでした。
その伝統と聖女制度を廃止する決定を覆す為にエリックに頼んで国中に爆弾を仕掛けて抵抗する程度には、私は聖女として伝統に則っている。
我ながら狂気の沙汰ということは自覚しておりますが聖女退任案を覆すことが出来たからこそ、ジャレッド王子と共に居られるのだから良しと思えるほどには私は恋をしているのです。
王子が婚約を破棄する為にこの部屋までやってきて、結局デートに行く約束をしてしまってから恋をしています。
正直それまで私はジャレッド王子を何とも思っていませんでした。
ただ、聖女としての役割として婚姻を強行したに過ぎないのです。
それが今では、こんなにも参ってしまっている。
「ジュリアナ本当に変わったよね、良いことだと思うよ、そゆとこ」
「伝統を重んじ変化を嫌う教会派で強い影響力を持つステイモス侯爵家の令嬢が、そのようなことを言うのですね」
私はアンジェラの感想にそう返す。
「変化ってより悪化を嫌うのよ。聖女だって初代の聖女スーザンはもっと式典をしたり政治的な役割も担ってたし、王子との結婚も聖女ローラが王族の不正を暴いてから出来たものだし、聖女リディアが脱走したり聖女ウェンディが暗殺されそうになったり聖女ホープが誘拐されたりして、今みたいな過剰な程に完全に隔離されるようになったってのも変化でしょ? それよりも聖女ジュリアナが恋を知った方が絶対に良いことだもの」
歴史学を専攻するアンジェラは流暢に答えるが、隔離されるようになった理由に私、聖女ジュリアナが国中に爆弾をしかけたことも要因の一つということは知らないようですね。
でも確かにアンジェラの言う通り、千年以上の時間をかけて聖女の在り方も緩やかに変化している。
ならば私は私の代で、私が変わるのも良いのかもしれません。
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