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18・名無し、仕事をする。
04許さん。
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「ロバート」
「……ごくん、……かしこまりました。リリィ様、来客の調査と来客との会話内容の特定ですね。すぐに取り掛かります」
名前を呼ばれただけで意図を汲み取り、口いっぱいのブドウを飲み込んでロバートは答える。
「ああそうそう、クレア・クレメンテ」
「ボス、それ前の前の名前です」
ロバートの答えに何も反応せずに、ボスは私を呼ぶ。
「貴女はとりあえずしばらく休み、多分その傷ちょっと無理すると開くわよ。医者の許可が出るまで休んだらまた何人か殺してもらうから、わかった? マリア・マルグリーズ」
ボスはわざと一つ前に使ってた名前で、私に休養を言い渡した。
まあ名前にアイデンティティを持たないので、何でも良いのだけど。
「……わかりました。ボス、失礼します」
「では、私も失礼致します」
私はロバートと共に、ボスの部屋を出た。
そこで私はボスには聞けないことをロバートに聞いてみることにした。
「ねえロバート、ボスってなんでメルバリア王国にこだわってんの? あの国なんかバタついてんなら、ほっといて治安悪くさせた方が儲かるんじゃないの?」
私は煙草に火をつけながらロバートに尋ねる。
「……リリィ様のプライベートに関わる部分もあるので全てのお考えを伝えることはできんが、金儲けという筋で言うなら既にこれ以上なく裕福なのだからわざわざあの国で稼ぐ必要はない。リリィ様はリリィ様で様々なバランスを考えているのだ」
ロバートは私を見ずに答える。
「バランス? 崩壊させることじゃなくて?」
「それも含めてだ。今あの国は民主化の波と王族の暴走が均衡状態にある、それに関してリリィ様はまだあの国に民主主義は早すぎると考えているのだ。リリィ様はまだあの国の人間が愚かで浅はかなことを十二分に知っているからだ」
私の疑問にロバートは語る。
まあ民主主義とやらで何がどう変わるかは私にはよくわからんけど、確かにボス以上に人間の愚かさや闇を見てきた人間はこの大陸にはいない。
「このままだと内戦が起こることも考えられる、我々のような裏が生きていられるのは表が確立しているからだ。大陸で一番力を持つメルバリアが戦乱になれば表も裏もなくなる混沌となる、それを防ぐためにバランスをとろうとお考えなのだ。……無論、それだけでもないんだが……」
ロバートの語りはここで終わる、それ以外の理由については私に教える気はないようだ。
「ふーん、なんとなくわかった気になってきたけど、あの謎の暗殺者モドキマンにこだわるのはなんでなの? 別にリングストンに付いてるんじゃないならほっときゃよくない?」
私の問いかけに、ロバートはため息を一つ吐いて答える。
「……来客との会話によっては相手がリングストン側に付く可能性もある、故に調査は必要だ。しかし、なによりリリィ様は部下であるおまえを傷つけられたことが気に入らないのだ」
ロバートのそんな答えに私は。
「まっさかあ~、ボスは私が死んでも失敗した私を剥製にしてワイン片手に眺めながら次の殺し担当を探すわよ」
そう言って笑いとばす。
「ふ……かもしれんな。ほら話は終わりだ。リリィ様の命令通り、医務室に行ってからしばらく休め」
「はいはい、あんたは休まず働きなさいよ。ボスの犬として精々、身を粉にして働きなさいよ」
そう言ってロバートとは別方向に歩き出したところで。
「無論、……言われるまでもないさ」
ロバートはそう呟いて去っていった。
さーて、私はしばらく休みだー! 何しよっかなー!
と、ボス公認の休みに心を高鳴らせて思い切り伸びをすると。
お腹が伸びて、傷口が裂けて血が吹き出す!
「……やっば‼」
私はお腹を押えて急ぎ医務室へと向かった。
おのれ、暗殺者モドキ、やはり許さん。
絶対いつかぶっ殺す。
「……ごくん、……かしこまりました。リリィ様、来客の調査と来客との会話内容の特定ですね。すぐに取り掛かります」
名前を呼ばれただけで意図を汲み取り、口いっぱいのブドウを飲み込んでロバートは答える。
「ああそうそう、クレア・クレメンテ」
「ボス、それ前の前の名前です」
ロバートの答えに何も反応せずに、ボスは私を呼ぶ。
「貴女はとりあえずしばらく休み、多分その傷ちょっと無理すると開くわよ。医者の許可が出るまで休んだらまた何人か殺してもらうから、わかった? マリア・マルグリーズ」
ボスはわざと一つ前に使ってた名前で、私に休養を言い渡した。
まあ名前にアイデンティティを持たないので、何でも良いのだけど。
「……わかりました。ボス、失礼します」
「では、私も失礼致します」
私はロバートと共に、ボスの部屋を出た。
そこで私はボスには聞けないことをロバートに聞いてみることにした。
「ねえロバート、ボスってなんでメルバリア王国にこだわってんの? あの国なんかバタついてんなら、ほっといて治安悪くさせた方が儲かるんじゃないの?」
私は煙草に火をつけながらロバートに尋ねる。
「……リリィ様のプライベートに関わる部分もあるので全てのお考えを伝えることはできんが、金儲けという筋で言うなら既にこれ以上なく裕福なのだからわざわざあの国で稼ぐ必要はない。リリィ様はリリィ様で様々なバランスを考えているのだ」
ロバートは私を見ずに答える。
「バランス? 崩壊させることじゃなくて?」
「それも含めてだ。今あの国は民主化の波と王族の暴走が均衡状態にある、それに関してリリィ様はまだあの国に民主主義は早すぎると考えているのだ。リリィ様はまだあの国の人間が愚かで浅はかなことを十二分に知っているからだ」
私の疑問にロバートは語る。
まあ民主主義とやらで何がどう変わるかは私にはよくわからんけど、確かにボス以上に人間の愚かさや闇を見てきた人間はこの大陸にはいない。
「このままだと内戦が起こることも考えられる、我々のような裏が生きていられるのは表が確立しているからだ。大陸で一番力を持つメルバリアが戦乱になれば表も裏もなくなる混沌となる、それを防ぐためにバランスをとろうとお考えなのだ。……無論、それだけでもないんだが……」
ロバートの語りはここで終わる、それ以外の理由については私に教える気はないようだ。
「ふーん、なんとなくわかった気になってきたけど、あの謎の暗殺者モドキマンにこだわるのはなんでなの? 別にリングストンに付いてるんじゃないならほっときゃよくない?」
私の問いかけに、ロバートはため息を一つ吐いて答える。
「……来客との会話によっては相手がリングストン側に付く可能性もある、故に調査は必要だ。しかし、なによりリリィ様は部下であるおまえを傷つけられたことが気に入らないのだ」
ロバートのそんな答えに私は。
「まっさかあ~、ボスは私が死んでも失敗した私を剥製にしてワイン片手に眺めながら次の殺し担当を探すわよ」
そう言って笑いとばす。
「ふ……かもしれんな。ほら話は終わりだ。リリィ様の命令通り、医務室に行ってからしばらく休め」
「はいはい、あんたは休まず働きなさいよ。ボスの犬として精々、身を粉にして働きなさいよ」
そう言ってロバートとは別方向に歩き出したところで。
「無論、……言われるまでもないさ」
ロバートはそう呟いて去っていった。
さーて、私はしばらく休みだー! 何しよっかなー!
と、ボス公認の休みに心を高鳴らせて思い切り伸びをすると。
お腹が伸びて、傷口が裂けて血が吹き出す!
「……やっば‼」
私はお腹を押えて急ぎ医務室へと向かった。
おのれ、暗殺者モドキ、やはり許さん。
絶対いつかぶっ殺す。
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