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2部 二刀流の魔剣士編
光の英雄3
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話を聞いていたシュレは、双子の絆を見ているような気分だった。
どのような理由とはいえ、敵対していた二人なのだ。それを簡単に同志として戦えるのか。自分ならできるのかと考える。
(無理だな。仕事ならともかく、それ以外でなんか無理だ。それはできない)
もちろん、なにがしたかったのかという真実があってこそなのだろうが、それでもだ。他のやり方もあっただろうと考える。
大切な者を傷つけられれば、どれだけ助けるためのことだったとしても、簡単に許せることではない。
少なくとも、シュレはそう思っている。
「俺の考えで英雄殿は理解してはいけないようだな」
フッと笑うシュレを見て、グレンも楽しげに笑う。こういったところが気に入っているのかもしれない。
「女神を倒すこと、それがお前達のしていたこと。これは、記録として残せるものではないな」
光の英雄と題した話に、太陽神の記載は微かにある程度。グレンがそこに関わっていたことなど、ほとんど書かれていない。
書けるわけがないと、話を聞いて納得したほどだ。
世界を新たな道へ進めた英雄。それが光の英雄だと物語は記載されている。
そこに、バルスデ王国が関わっていることは書かれているが、英雄王が戦いに参加していることは書かれていない。
太陽神の名も同じこと。世界を見守る存在と書かれているが、戦いに参加していたとは書かれていない。
「女神を倒したなんて書けないし、女神が罪深いなんて残せないだろ。さすがにな」
これに関しては、情報操作を行う必要がある。行ったのはクレド・シュトラウスだったが、うまくやったものだとグレンは思っていた。
魔物は完全に消えたわけではないのだから。
「魔物は、確か新たな道へ進んだ証とされてたね」
昔読んだ本を思いだしながらアイカが言えば、グレンはそうだと頷く。
「神が住まう地と同等になった、ということになっている」
あながち間違いではないと思っていた。創造主を倒してしまった世界は、環境としては外と同じではないかと。
いや、女神が放置した時点でそうだったのかもしれない、とすら思っていた。
「お前は俺の力を希望と言った。その意味は?」
東での戦いで、彼は女神の力ではない。希望の力だと確かに言っていた。
これが意味するところはなんなのか。
「アクアに星視をさせたところ、レインとスレイの力は光だと言われた。外からの干渉は闇」
「光の英雄とは、そういう意味で付けたのか」
「そうだ。そして、力の意味を知ったのはすべてを終えてからだった」
子供達が行ったこと、それは世界の理を変えることだった。女神メルレールを絶対とするこの世界を変える。
その鍵となるのは光と称された力の解放とメディスという存在。彼女はこの世界を支える力の源。つまり理そのものだったのだ。
「そんなことをしたら、その子は消えてしまうのでは?」
詳しくなくても、それぐらいはわかると言うようにエシェルが言う。彼女を犠牲にしたのかと。
それは、さすがに太陽神でも躊躇ったのではないかと思った。イリティスが娘として育てたということは、彼にとっても娘だったと思えたから。
四つの塔で四人の力を開放した。セレンは世界の中心であることから、世界を支えている物のひとつ。
ここから力を放つことで、世界の隅々まで行き渡る。塔は天空城を守る要にして、各大陸を支える物と思われると説明した。
「残念ながら、創った本人でないとわからない。これは想定だ」
塔を壊すことはできず、新たな力で書き換えることで大陸を女神から切り離す。
現状としてはそこまでしかされていない。扱いに悩んでいるというのもあるのだ。
「シオンやリオンの力で塔は稼働していたと思われるが、それを光で稼働するようにした。この天空城で二人の力が理を変えたとき、メディスは一度消えた。それは間違いないことだ」
一度はという言葉に、エシェルがホッとする。つまり消えていないということだから。
「この世界は奇跡を起こす。よくはわからないが、それは女神が放置しても存続できたことで得たものなのか、なんらかの理があってなのかはわからない」
ただ、その奇跡によってメディスは失われなかったのだ。
失いたくないと願うレインの想いと、レインを想うメディスに大地の女神が手を貸した。そのことによって彼女は消えることはなかったと言う。
「姿が変わりはしたが、それは大地の女神が手を貸してくれたからだと思う」
なんだかんだ言いながらも、世話焼きの女神だと笑いながら言えば、イリティスもそうかもと頷く。
彼女もすべてが終わった後に声をかけられたからこそ、思えることだった。
「少し、能力的なことも変わってるかもしれないけどね。今でも能力だけ引き継いでるし」
太陽神の息子であるレインと元は世界を支える力であったメディス。その家系は今も残っており、イリティスは時折会いに行っているのだ。
南では精霊の巫女とまで呼ばれている。精霊の声を聞くことが出来ることからだ。
「聞いたことがあります。アーリアス大陸のどこかに精霊の声を聞く人間がいると。あなた方の血族でしたか」
傭兵組合には情報として入っていたが、実在するとは思っていなかったというのが本音だ。
あくまでも情報でしかなく、エシェルの周辺には会ったことがある知り合いもいなかったから。
「最後に、レインとスレイは俺達を集めて話をした。力の解放と共に知ったことがあると」
それは、二人が持っていた力のことだった。
「二人の持っていた力は、絆が起こした奇跡だ。七英雄達の想い」
最悪の終わり方をした戦いのあと、シオンが今度こそ幸せを掴めるように願った仲間のもの。
リオンを想う仲間と、敵対した際に得た新たな仲間達のものだと二人は言ったのだ。
「だから希望の力なのか」
「あぁ。この世界から生み出された神の力だ。外の世界とやらでもやっていけるな」
だからこそ、このままでは終わらないのではないか。その考えを捨てることはできなかったのだという。
外にはこの世界を気に入らないと思っている神がおり、その神に並ぶ力が自然と生まれてくるなど、どう思うことか。
いつかまた、外からの干渉があるのではないかというのが、四人で出した答えだったと語る。大地の女神が味方となってくれたところで、完全に防ぐことは無理だろうと。
そして、それが今だと思っていた。
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どのような理由とはいえ、敵対していた二人なのだ。それを簡単に同志として戦えるのか。自分ならできるのかと考える。
(無理だな。仕事ならともかく、それ以外でなんか無理だ。それはできない)
もちろん、なにがしたかったのかという真実があってこそなのだろうが、それでもだ。他のやり方もあっただろうと考える。
大切な者を傷つけられれば、どれだけ助けるためのことだったとしても、簡単に許せることではない。
少なくとも、シュレはそう思っている。
「俺の考えで英雄殿は理解してはいけないようだな」
フッと笑うシュレを見て、グレンも楽しげに笑う。こういったところが気に入っているのかもしれない。
「女神を倒すこと、それがお前達のしていたこと。これは、記録として残せるものではないな」
光の英雄と題した話に、太陽神の記載は微かにある程度。グレンがそこに関わっていたことなど、ほとんど書かれていない。
書けるわけがないと、話を聞いて納得したほどだ。
世界を新たな道へ進めた英雄。それが光の英雄だと物語は記載されている。
そこに、バルスデ王国が関わっていることは書かれているが、英雄王が戦いに参加していることは書かれていない。
太陽神の名も同じこと。世界を見守る存在と書かれているが、戦いに参加していたとは書かれていない。
「女神を倒したなんて書けないし、女神が罪深いなんて残せないだろ。さすがにな」
これに関しては、情報操作を行う必要がある。行ったのはクレド・シュトラウスだったが、うまくやったものだとグレンは思っていた。
魔物は完全に消えたわけではないのだから。
「魔物は、確か新たな道へ進んだ証とされてたね」
昔読んだ本を思いだしながらアイカが言えば、グレンはそうだと頷く。
「神が住まう地と同等になった、ということになっている」
あながち間違いではないと思っていた。創造主を倒してしまった世界は、環境としては外と同じではないかと。
いや、女神が放置した時点でそうだったのかもしれない、とすら思っていた。
「お前は俺の力を希望と言った。その意味は?」
東での戦いで、彼は女神の力ではない。希望の力だと確かに言っていた。
これが意味するところはなんなのか。
「アクアに星視をさせたところ、レインとスレイの力は光だと言われた。外からの干渉は闇」
「光の英雄とは、そういう意味で付けたのか」
「そうだ。そして、力の意味を知ったのはすべてを終えてからだった」
子供達が行ったこと、それは世界の理を変えることだった。女神メルレールを絶対とするこの世界を変える。
その鍵となるのは光と称された力の解放とメディスという存在。彼女はこの世界を支える力の源。つまり理そのものだったのだ。
「そんなことをしたら、その子は消えてしまうのでは?」
詳しくなくても、それぐらいはわかると言うようにエシェルが言う。彼女を犠牲にしたのかと。
それは、さすがに太陽神でも躊躇ったのではないかと思った。イリティスが娘として育てたということは、彼にとっても娘だったと思えたから。
四つの塔で四人の力を開放した。セレンは世界の中心であることから、世界を支えている物のひとつ。
ここから力を放つことで、世界の隅々まで行き渡る。塔は天空城を守る要にして、各大陸を支える物と思われると説明した。
「残念ながら、創った本人でないとわからない。これは想定だ」
塔を壊すことはできず、新たな力で書き換えることで大陸を女神から切り離す。
現状としてはそこまでしかされていない。扱いに悩んでいるというのもあるのだ。
「シオンやリオンの力で塔は稼働していたと思われるが、それを光で稼働するようにした。この天空城で二人の力が理を変えたとき、メディスは一度消えた。それは間違いないことだ」
一度はという言葉に、エシェルがホッとする。つまり消えていないということだから。
「この世界は奇跡を起こす。よくはわからないが、それは女神が放置しても存続できたことで得たものなのか、なんらかの理があってなのかはわからない」
ただ、その奇跡によってメディスは失われなかったのだ。
失いたくないと願うレインの想いと、レインを想うメディスに大地の女神が手を貸した。そのことによって彼女は消えることはなかったと言う。
「姿が変わりはしたが、それは大地の女神が手を貸してくれたからだと思う」
なんだかんだ言いながらも、世話焼きの女神だと笑いながら言えば、イリティスもそうかもと頷く。
彼女もすべてが終わった後に声をかけられたからこそ、思えることだった。
「少し、能力的なことも変わってるかもしれないけどね。今でも能力だけ引き継いでるし」
太陽神の息子であるレインと元は世界を支える力であったメディス。その家系は今も残っており、イリティスは時折会いに行っているのだ。
南では精霊の巫女とまで呼ばれている。精霊の声を聞くことが出来ることからだ。
「聞いたことがあります。アーリアス大陸のどこかに精霊の声を聞く人間がいると。あなた方の血族でしたか」
傭兵組合には情報として入っていたが、実在するとは思っていなかったというのが本音だ。
あくまでも情報でしかなく、エシェルの周辺には会ったことがある知り合いもいなかったから。
「最後に、レインとスレイは俺達を集めて話をした。力の解放と共に知ったことがあると」
それは、二人が持っていた力のことだった。
「二人の持っていた力は、絆が起こした奇跡だ。七英雄達の想い」
最悪の終わり方をした戦いのあと、シオンが今度こそ幸せを掴めるように願った仲間のもの。
リオンを想う仲間と、敵対した際に得た新たな仲間達のものだと二人は言ったのだ。
「だから希望の力なのか」
「あぁ。この世界から生み出された神の力だ。外の世界とやらでもやっていけるな」
だからこそ、このままでは終わらないのではないか。その考えを捨てることはできなかったのだという。
外にはこの世界を気に入らないと思っている神がおり、その神に並ぶ力が自然と生まれてくるなど、どう思うことか。
いつかまた、外からの干渉があるのではないかというのが、四人で出した答えだったと語る。大地の女神が味方となってくれたところで、完全に防ぐことは無理だろうと。
そして、それが今だと思っていた。
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