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3部 永久の歌姫編
転生者3
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意味があるかはわからないが、星の女神候補と言われてしまうと、どことなく納得できることでもあった。
『星の女神となる条件……わかっているなら聞きたいのだけれども』
「……たぶん、互いに惹かれてること」
間違いはないと思っていたが、最終的な判断はシオンでないとわからないと思っている。
自分もイリティスも思っていて、エリルもそうならほぼ確定だと思っていることを伝えれば、フィフィリスはわかったと頷く。
『もしかしたら、リーナの魔力が強いのはその辺りもあるのかもしれないわ。あの二人は幼馴染みで、幼い頃から惹かれ合っているみたいだから』
クオンが月神であり、その影響が彼にあるならばの話だと言うことは忘れない。
家系のことも考えれば、影響を受けやすいのかもしれないと言われれば、アクアも納得する。
「オーヴァチュア家には女神の血が混ざってる」
『それも、月神の血族であるシリン・アルヴァースの血……』
影響を受けている可能性は高いと、二人ともが頷いた。
互いに惹かれ合っているなら、なおのことリーナへは月神の影響を受けているかもしれない。
『あの子は、自分が選ばれているなどと思いもしていないのでしょうね。自分に自信がない子だから……』
「そうなの?」
『えぇ。少し異質なのよ。会ってみればわかると思うけれど』
出会いは偶然であったけれど、初めて会ったときに感じた違和感は忘れないと言う。
どことなく普通ではないと感じた。それが月神の影響を受けていたからなのか、本来の能力からくるものなのかはわからない。
もしかしたら、彼女にはもっとなにかあるかもしれないが、現時点ではみられなかった。それがフィフィリスの感想だ。
「気になるところだけど、あたしにはわからないしなぁ。グレン君に任せるしかないか……」
察知能力に関しても、アクアはさほど持っていない。会ってみたところで異質とわかるか、正直自信がないところだ。
星に出ればわかるのだが、すでに月神の影響を受けているなら視られないのも納得だ。月の加護によってわからないのだろう。
「もしわかるなら、クオン・メイ・シリウスも知りたいんだけど」
そちらの情報はついでだと思っていたが、リーナが弟子であり、クオンとリーナが幼馴染みなら知っているかもと問いかける。
『残念ながら、彼との面識はないのよ。リーナが連れてこないし、私も表立って動いてはいないの』
今はまだ、表に出ることはできないと言われてしまえば、仕方ないと思う。おそらく、彼女は裏にいる理由があるのだろうから。
そのときが来るまで、とにかく裏で見ているだけなのかもしれない。
『わかっているのは、彼は普通ではないということぐらいだわね。奥底に眠っている膨大な力がある』
遠巻きに一度だけ見た感想だと言われてしまえば、十分だと頷く。普通ではないと彼女が感じたなら、それがすべてだ。
いずれ結果はわかることだろう。月神の覚醒は避けられないのだから。
『これもお耳に入れておいた方がいいかもしれないわね。私の他にも、転生者は動いているわ』
一人は記憶を持っていて、もしかしたらクオンの傍にもう一人いるかもしれないと言われてしまえば、アクアは驚く。
連絡を終えると、アクアは部屋から出てソニアとシャルを捜す。万が一にでも聞こえたらいけないと、どうやら部屋から少し離れているようだったのだ。
廊下で待っていていいのにと思いつつ、この話はまずグレンかイリティスの通すべきかとも思う。
自分が決めていいことなのか、判断に悩むところだった。フィフィリスが転生者ということもあるが、今はまだ裏で動いているからだ。
二人が口を滑らすことはないだろうが、なにかの瞬間に漏れてしまったときのことを思うと、弊害があったら困る。
「あっ、いたいたー!」
二人が少し離れた廊下にいるのを見つけると、アクアは勢いよく飛び込んだ。
「終わったのですか?」
「うん!」
慣れたように受け止めるソニアと、どうしたらいいのかわからずに動けないシャル。お転婆とは聞いていたが、ここまでだとは思っていなかったのだ。
なにせ、目の前にいる女性は三千年も生きているのだから。長く生きている分、落ち着いてもおかしくはない。
(当てはまらないようだ)
ただし、目の前の女性には当てはまらないと知る。
噂ではとても可愛い女神様と言われているアクア。これは自分から見ても可愛いなと、シャルにしては珍しいことを思う。
「フィフィリスとは話せましたか?」
「うん、話せたよ。色々とわかったから、陛下に頼んで本格的な星視をしてみようかと思う。それでも視えないかもしれないけど」
その辺りの詳細はまだ話せないと言われれば、二人は了承するように頷く。
むしろ、現状としては話しすぎなのではないかと思っていたほどだ。こうも聞いてしまっていいのだろうかと思うほどに、アクアは平然と話す。
「視えなかったときは、どうされるのですか?」
「戻るかな。十分なほど情報は得たと思うし、星視ができなかったらここにいる必要はないかと」
アクアが一番力を発揮できるのは星視だけ。それがまったく使い物にならなかったら、あとは他のみんなをサポートするしかない。
悔しくなるほど自分は役に立たないと思うと、だからこそ他のことで役立つのだとも思う。この性格は違うことに役立つだろうから。
自分が明るく振る舞うだけで、少なくともグレンの役には立てる。彼の傍で歌うだけで、安らいでもらえるなら十分なのだ。
「そうと決まれば、陛下のとこ行かないとなぁ」
「あ……今日は無理ですよ。陛下は神官長達との会議がありますから……」
その先は言わなくてもわかるというもの。シルベルトの猫かぶりに笑いをこらえる姿が、容易に思い浮かんだのだ。
これによって会議が長引くのはいつものことで、理解しているのは裏を知っているルアナぐらいだろうか。
女王の護衛として会議にも参加している彼女は、引きつった笑みでも浮かべているはず。その後は当然ながら説教だ。
そう、二人ともが説教を受ける。ここまでがセットで神官長との会議となっていた。
「相変わらずなんだね」
「はい、お変わりなく説教までが会議です」
頭が痛くなってきたとシャルが言えば、そのうちルアナがストレスでキレそうだとソニアも言う。さすがにアクアも苦笑い。
あれからだいぶ経つだけに、アクアも変わっていると思っていたのだ。
「しょうがないから……どっかでご飯でも食べようか」
会議が長引くのは確定していることで、その後の説教も長くなることはわかりきっている。今日一日は絶対的に話せないだろう。
女王と話せなければ、星視をすることもできない。
「セネシオも誘おうよ。せっかくこっちにいるんだから」
フィフィリスとの話をするため、シャルも休み変更をしていた。四人で食事、と嬉しそうに言われてしまえば、二人とも断る気にはならない。
「なぜだろう……つい甘くなってしまう」
ルンルンで城へ向かう姿を見ながら、シャルは苦笑いを浮かべている。
自分はこうも甘かっただろうかと、アクアを見ながら何度思ったかわからないのだ。
「私も…なぜかアクア様なら、なんでも許せてしまえそうで……」
護衛としてこれでいいのかと思ったのは、一度や二度ではない。この甘さがいつか、問題になってしまうのではないかと不安になる。
「けど、アクア様といるようになってからソニアは明るくなったからな。なにかあれば呼べ」
ソニアを変えたアクアのためなら、いつでも手を貸すと言われてしまえば、職務中なのに顔が赤くなるのを感じた。
そんな二人をアクアが見ていたなど、気付いてはいなかっただろう。
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『星の女神となる条件……わかっているなら聞きたいのだけれども』
「……たぶん、互いに惹かれてること」
間違いはないと思っていたが、最終的な判断はシオンでないとわからないと思っている。
自分もイリティスも思っていて、エリルもそうならほぼ確定だと思っていることを伝えれば、フィフィリスはわかったと頷く。
『もしかしたら、リーナの魔力が強いのはその辺りもあるのかもしれないわ。あの二人は幼馴染みで、幼い頃から惹かれ合っているみたいだから』
クオンが月神であり、その影響が彼にあるならばの話だと言うことは忘れない。
家系のことも考えれば、影響を受けやすいのかもしれないと言われれば、アクアも納得する。
「オーヴァチュア家には女神の血が混ざってる」
『それも、月神の血族であるシリン・アルヴァースの血……』
影響を受けている可能性は高いと、二人ともが頷いた。
互いに惹かれ合っているなら、なおのことリーナへは月神の影響を受けているかもしれない。
『あの子は、自分が選ばれているなどと思いもしていないのでしょうね。自分に自信がない子だから……』
「そうなの?」
『えぇ。少し異質なのよ。会ってみればわかると思うけれど』
出会いは偶然であったけれど、初めて会ったときに感じた違和感は忘れないと言う。
どことなく普通ではないと感じた。それが月神の影響を受けていたからなのか、本来の能力からくるものなのかはわからない。
もしかしたら、彼女にはもっとなにかあるかもしれないが、現時点ではみられなかった。それがフィフィリスの感想だ。
「気になるところだけど、あたしにはわからないしなぁ。グレン君に任せるしかないか……」
察知能力に関しても、アクアはさほど持っていない。会ってみたところで異質とわかるか、正直自信がないところだ。
星に出ればわかるのだが、すでに月神の影響を受けているなら視られないのも納得だ。月の加護によってわからないのだろう。
「もしわかるなら、クオン・メイ・シリウスも知りたいんだけど」
そちらの情報はついでだと思っていたが、リーナが弟子であり、クオンとリーナが幼馴染みなら知っているかもと問いかける。
『残念ながら、彼との面識はないのよ。リーナが連れてこないし、私も表立って動いてはいないの』
今はまだ、表に出ることはできないと言われてしまえば、仕方ないと思う。おそらく、彼女は裏にいる理由があるのだろうから。
そのときが来るまで、とにかく裏で見ているだけなのかもしれない。
『わかっているのは、彼は普通ではないということぐらいだわね。奥底に眠っている膨大な力がある』
遠巻きに一度だけ見た感想だと言われてしまえば、十分だと頷く。普通ではないと彼女が感じたなら、それがすべてだ。
いずれ結果はわかることだろう。月神の覚醒は避けられないのだから。
『これもお耳に入れておいた方がいいかもしれないわね。私の他にも、転生者は動いているわ』
一人は記憶を持っていて、もしかしたらクオンの傍にもう一人いるかもしれないと言われてしまえば、アクアは驚く。
連絡を終えると、アクアは部屋から出てソニアとシャルを捜す。万が一にでも聞こえたらいけないと、どうやら部屋から少し離れているようだったのだ。
廊下で待っていていいのにと思いつつ、この話はまずグレンかイリティスの通すべきかとも思う。
自分が決めていいことなのか、判断に悩むところだった。フィフィリスが転生者ということもあるが、今はまだ裏で動いているからだ。
二人が口を滑らすことはないだろうが、なにかの瞬間に漏れてしまったときのことを思うと、弊害があったら困る。
「あっ、いたいたー!」
二人が少し離れた廊下にいるのを見つけると、アクアは勢いよく飛び込んだ。
「終わったのですか?」
「うん!」
慣れたように受け止めるソニアと、どうしたらいいのかわからずに動けないシャル。お転婆とは聞いていたが、ここまでだとは思っていなかったのだ。
なにせ、目の前にいる女性は三千年も生きているのだから。長く生きている分、落ち着いてもおかしくはない。
(当てはまらないようだ)
ただし、目の前の女性には当てはまらないと知る。
噂ではとても可愛い女神様と言われているアクア。これは自分から見ても可愛いなと、シャルにしては珍しいことを思う。
「フィフィリスとは話せましたか?」
「うん、話せたよ。色々とわかったから、陛下に頼んで本格的な星視をしてみようかと思う。それでも視えないかもしれないけど」
その辺りの詳細はまだ話せないと言われれば、二人は了承するように頷く。
むしろ、現状としては話しすぎなのではないかと思っていたほどだ。こうも聞いてしまっていいのだろうかと思うほどに、アクアは平然と話す。
「視えなかったときは、どうされるのですか?」
「戻るかな。十分なほど情報は得たと思うし、星視ができなかったらここにいる必要はないかと」
アクアが一番力を発揮できるのは星視だけ。それがまったく使い物にならなかったら、あとは他のみんなをサポートするしかない。
悔しくなるほど自分は役に立たないと思うと、だからこそ他のことで役立つのだとも思う。この性格は違うことに役立つだろうから。
自分が明るく振る舞うだけで、少なくともグレンの役には立てる。彼の傍で歌うだけで、安らいでもらえるなら十分なのだ。
「そうと決まれば、陛下のとこ行かないとなぁ」
「あ……今日は無理ですよ。陛下は神官長達との会議がありますから……」
その先は言わなくてもわかるというもの。シルベルトの猫かぶりに笑いをこらえる姿が、容易に思い浮かんだのだ。
これによって会議が長引くのはいつものことで、理解しているのは裏を知っているルアナぐらいだろうか。
女王の護衛として会議にも参加している彼女は、引きつった笑みでも浮かべているはず。その後は当然ながら説教だ。
そう、二人ともが説教を受ける。ここまでがセットで神官長との会議となっていた。
「相変わらずなんだね」
「はい、お変わりなく説教までが会議です」
頭が痛くなってきたとシャルが言えば、そのうちルアナがストレスでキレそうだとソニアも言う。さすがにアクアも苦笑い。
あれからだいぶ経つだけに、アクアも変わっていると思っていたのだ。
「しょうがないから……どっかでご飯でも食べようか」
会議が長引くのは確定していることで、その後の説教も長くなることはわかりきっている。今日一日は絶対的に話せないだろう。
女王と話せなければ、星視をすることもできない。
「セネシオも誘おうよ。せっかくこっちにいるんだから」
フィフィリスとの話をするため、シャルも休み変更をしていた。四人で食事、と嬉しそうに言われてしまえば、二人とも断る気にはならない。
「なぜだろう……つい甘くなってしまう」
ルンルンで城へ向かう姿を見ながら、シャルは苦笑いを浮かべている。
自分はこうも甘かっただろうかと、アクアを見ながら何度思ったかわからないのだ。
「私も…なぜかアクア様なら、なんでも許せてしまえそうで……」
護衛としてこれでいいのかと思ったのは、一度や二度ではない。この甘さがいつか、問題になってしまうのではないかと不安になる。
「けど、アクア様といるようになってからソニアは明るくなったからな。なにかあれば呼べ」
ソニアを変えたアクアのためなら、いつでも手を貸すと言われてしまえば、職務中なのに顔が赤くなるのを感じた。
そんな二人をアクアが見ていたなど、気付いてはいなかっただろう。
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