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前編
悪魔との交流2
しおりを挟む先程から出てくる言葉。誰かわからないあのお方と、聖なる天使。よくわからないが、その聖なる天使は自分のことらしい。
意味はわからないが、リベラが呼ぶのだからそうなのだろうと思うことにした。
あのお方は聖なる天使と恋仲と言う。自分と恋仲と言うことになる。つまり、彼らの言うあのお方はリュツィフェールということになるのか。
「ねぇ、あのお方って……リュツィフェールなの?」
「そうだぜ。なんだ、リーネン話してなかったのか?」
話そうとしたらリベラが来たんだよ、と思わず突っ込んでしまったラピエール。そもそも、自己紹介すらしていない現状だ。
名乗りもまだだと気付いたリーネンが、しまったと表情を変える。失念していたのだ。
「ここにいたのかぁ」
そこに、また新たな悪魔がやってくる。世間知らずのラピエールが見てもわかるほどの、男前の悪魔だった。この悪魔ならモテそうだ、などと考えてから振り払う。
(リュフェが一番かっこいい)
リュツィフェールが一番いい男だ。やっと一緒に過ごせると思っていただけに、寂しいなと俯く。
彼らにも事情があることはわかったが、再会してすぐに引き離されてしまったことだけは、どうしても受け入れられなかったのだ。
ラピエールが俯いてしまったからか、悪魔達がどうしようとあたふたすると、大丈夫と笑いかける。彼らはなにかがあって、リュツィフェールを求めているのだ。
楽園のことがあるだけに、リュツィフェールが応えてくれるかはわからないが、交渉の場を作るだけなら力を貸してもいいかもと思う。
「えっと、とりあえず自己紹介からしない?」
二人のやり取りで、リーネンとリベラという名前なのはわかったが、それしかわからない。
しばらくはここに世話になるようだし、これでは不便だなと思ったのだ。すぐにでもリュツィフェールに会いたいところだし、言えば会わせてくれる気もした。
しかし、そうすると悪魔達の望みは叶わないだろう。
「私はラピエール。聖なる天使っていうのはよくわからないから、名前で呼んでくれると嬉しいんだけど」
どうかな、と首を傾げながら言えば、三人ともがわかったと頷く。名前で呼んでほしいということなら、そちらで呼ぶと。
元々、名乗り合っていなかったことから、聖なる天使と呼んでいただけなのだ。深い意味はなかった。
それで、と視線が向けられれば、三人が顔を見合わせて頷く。
「僕はリーネン。一応、この一帯では僕が一番上の立場になる。長って程ではないんだけど」
まとめ役みたいなものと説明するのは、最初に会った悪魔の少年。家もリーネンのものだと言われれば、使い魔と言った小鳥の言葉を思いだす。
家主に知らせると言って彼が来たのだから、当然彼の家ということ。なぜ考えなかったのかと、苦笑いを浮かべてしまった。
「それで、俺がリベラ! リーネンとは幼馴染みってやつなんだ」
「幼馴染み?」
なにそれ、と言えば、三人ともが驚いたように見てくる。幼馴染みがわからないとは思わなかったのだろう。
「ごめん。私、楽園にいたからなにも知らなくて」
知ることもできない場所なのだと言われれば、三人もそれなら仕方ないと納得する。環境が原因なら、ラピエールがいけないわけではない。
「あれだな。簡単に言えば、小さい頃からずっと一緒ってこと」
「俺ら三人は、気付いたらずっと一緒だったんだよな」
リベラがわかりやすくと説明すれば、三人目の悪魔も笑いながら言う。いつも一緒に遊んでいたと。
なるほどと頷く。自分とウィリディスも似たような関係なのかもしれないと思い、三人がどれだけ仲がいいのか理解した。
「次は俺か。俺はカルディスって言うんだ。さっき言った通り、俺達三人は幼馴染みで、ここにいる悪魔では年長者かな」
驚いて思わず声を上げると、そうなるよなと三人も笑う。自分達が最年長だなどと言われれば、驚いて当然だ。
「悪魔ってさ、色々なタイプがあるんだ。天使は、天使しかいないって聞いたけど、魔界の住むのを一括して悪魔と呼ぶのが正解さ」
カルディスが魔界の住民を総称するのが悪魔だと言えば、どういう意味だろうかと真剣に考える。天使は天使しかいない、という意味はなんとなく理解したが、それなら悪魔は悪魔なのではないか、と思ってしまう。
「そうだなぁ、わかりやすくか……たとえばだけど、天界なら天使は天使。鳥は鳥、だろ」
「うん」
当然じゃないのか、とラピエールが視線を向ければ、それが当然じゃないのが魔界だとリベラが言った。
魔界に暮らしていれば、鳥も悪魔だと。これがこちらの常識なのだと言われてしまえば、理解が追い付かないなりに、わかったと頷く。
鳥という悪魔がいる、と思うことにしたのだ。
「まぁ、なんだ。魔界って面倒だな、と思ってくれればいいんじゃね。ちなみに、ここは地上に近い関係で人間より」
姿はこんなだけど、と笑いながらリベラは言うが、だからあの悪魔とは違うのかもしれないとラピエールは思えた。
彼らがまっとうなのか、それとも一部の悪魔があのような状態なのか。
どちらにしても、信用できる悪魔だけ信じればいいかと思うことにした。
(天使だって、信用できない)
楽園でのことを考えれば、天使など信用できないと思うのは当たり前だ。ラピエールが信じられるのは、リュツィフェール達だけなのだ。
「僕達は、あなたに手荒な真似はしません。あのお方が来てくれるのを待つだけです」
信じてくれとは言えないが、信じてほしいとリーネンが頭を下げると、リベラとカルディスも同じように頭を下げる。
三人の言葉に嘘偽りはない。わかるからこそ、ラピエールは少しだけならと返す。
間違いなくリュツィフェールは来るだろうが、いつ来るかはわからない。ウィリディスのこともあるからだ。待てなくなったら、そのときは帰してくれと言えば、三人は少し寂しそうな表情を浮かべて了承した。
そのときは、責任もって地上へ連れていくと。
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