鬼とドラゴン

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森の魔女

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 ヴァンの口調は落ち着いているものの、アランは寒気がする程の怒気を感じていた。正直、普段のヴァンに負ける気は一切しないのだが、こういうところがあるからヴァンは怖いとアランは思うのであった。ヴァンは怒れば怒るほどに冷静に物事を対処する傾向があった。

「殺す気はあるのかえ?」
 
 老婆の問い返しを無視してヴァンは建物に向かって駆けた。戦闘開始だった。老婆がマントで身を覆うと姿が見えなくなるが、ヴァンは別段驚かなかった。ヒップバッグにしまっていた宝具を掴み屋上へ跳躍すると、老婆がいた所を横一閃に払った。光の刃の先端が石造りの建物の一部に当たり火花を散らした。マントがめくれ上がって老婆の体の一部が一瞬姿を現した。体勢を低くしてヴァンの横なぎの剣をかわしていた。その位置にヴァンは宝具を一回、二回、三回と突き出す。老婆は全てかわすと後方へ大きく跳躍して地面に降り立った。着地の瞬間地面に魔法陣が光る。重力を緩和したのだ。マントが舞い上がり、また一瞬老婆の姿が見えた。

「可愛げがないのぅ。このシソーラスのマントに驚きもせんのかい」

 姿の見えない所から老婆の声がする。

「僕は森に入ってからずっと周囲に気を配っていた。それなのに婆ちゃんに気づかなかったんだ。つまり、そういう能力ぐらいは持っていて当然だよね」

「可愛くないのう」

 もう一度同じ事を言うと素早い動きで光弾を打ち出した。先程ハナに当てたものより強い魔力が込められていた。ヴァンは避けずに魔力を纏わせた腕で弾いた。波動と呼ばれる鬼の攻防魔法だ。

「やはり鬼の力を持っているか……。しかし目が赤くないという事は雑種、しかも劣等種ってところかい?」

 雑種というのは混血児の蔑称。挑発の意図がみてとれるみてとれるが一旦戦闘が始まったのであればヴァンにとっては意味のない事だった。

「さぁ? どうだろうね?」

 屋上から老婆を見下ろして言う。ヴァンは逆に挑発する態度をとってみたが、老婆にとっても意味のない事であるようだった。老婆はたいした反応もせずに再び光弾を打ち出した。今度は連弾で数えきれない程の光弾がヴァンに迫った。被弾する直前大きな跳躍でかわすとヴァンは咆哮を上げて宝具を振り落とした。姿は見えなくとも魔法陣が老婆の位置を示していた。鬼の腕力と重力が相まって凄まじい威力があった。展開された老婆の防壁は大きな音をたてて砕け散った。ヴァンの攻撃の威力が老婆の防御力を上まったのだ。すかさずヴァンは目の前の空間に手を伸ばし、老婆からマントを剥ぎ取った。姿があらわになる。瞬間ヴァンは驚愕した。老婆はマントの下に魔法陣を隠していたのだ。
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