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19話 結果報告
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次の訪問者の正体、それはカイルだった。侯爵夫妻が来たせいで一気に記憶が飛んでしまっていたが、魔塔主様が遣いをやると言っていた。そして、その遣いがどうやらカイルだったようだ。
「カイルだったのね」
「ああ、俺じゃない奴が来ると思ったろ?」
確かにその通りだ。カイルは魔導士とはいえ、騎士団所属で魔塔の人間ではない。すると、カイルは私の対面の椅子に座り、足を広げ、肘を自身の膝の上に置くように前傾姿勢になり告げた。
「さっき会議があって、クリスタの配属先が決まったんだよ。んで、偶然魔塔にいた俺が、魔塔主様の命令で遣わされたってわけ」
――そうだったんだ。
というか、突然走ってどっか行ったと思ってたけど、魔塔に行っていたのかしら……?
それよりも、結果が気になるわ!
「来てくれてありがとう。で、どうなった!?」
自身の人生に大きく関わることだ。食い入るようにカイルに訊ねた。すると、カイルは真剣な私に反し、すこしおどけたような口調で結果を発表した。
「適性も考慮した結果、なんと……クリスタの新しい職業は騎士団の治癒士でーす!」
「はあ!? 騎士団ですって!?」
騎士団とは盲点過ぎた。カイルは「イエーイ」なんて言いながら、この場を盛り上げるかのようにパチパチと手を叩いている。
――騎士団ということは、あの人がいる職場で働くということよね……。
毎日会うたび、今日みたいな態度を取られたら……。
想像しただけでも恐ろしい。だから、反射的にカイルに言葉を放った。
「エンディミオン卿がいるのよ……いや、無理!」
そう言うと、私の発言に対しカイルは困ったような表情をした。
「でも、騎士団以外だと、レアード・カーチェスに絶対に会わなくて済む場所なんて、黒魔法管轄しかないし……」
「いやいやいや! あそこはもっと嫌! ぜっっったいに嫌!」
リスクが高すぎる上、黒魔法管轄で働く人は皆変人ばかりだ。あんな職場で働いていたら、恐らく私は正気を失う。
すると、カイルはフーとため息をついて口を開いた。
「てか、クリスタが悪いわけじゃないから、あいつにどっか行ってもらえれば良いだろ?」
確かにその意見が出るのは不思議じゃない。魔塔主様もそうだった。分かってもらえるかは分からない。だけど、私はカイルに率直な感情を告げた。
「あの男との思い出が残ってるところで働きたくないから、あいつがいようがいまいが魔塔はもう嫌!」
「だろ? じゃあ、騎士団しかないんだよ」
「でも、エンディミオン卿がいるし……」
ふとそう呟くと、カイルは呆れた様子で子どもに諭すかのように告げてきた。
「はあ? あいつがいるから何? 別に良くね? だってあいつ基本怪我しないもん。そんな無理無理嫌嫌言わないの! いくら俺でも、これ以上は姫さんのわがままなんて聞けないぜ」
そう言うと、彼は前傾姿勢から一気に体勢を変え、勢いよくドサッと背もたれによりかかって言葉を続けた。
「というか、エンディミオンは強くてイケメンでその上賢い、それに公爵家ときた。めちゃくちゃモテる男だぞ? 騎士以外には優しいし……。それに今日だって、クリスタから会いに来てたじゃん。なのに、何でそんなにエンディミオンのこと嫌がるんだ?」
カイルは本当に不思議だというような顔をしている。確かに、エンディミオン卿を世間一般の人がどう見るかを考えると、今さっきカイルが言った通りだ。
そして、私も今日の今日まではエンディミオン卿に対し、大衆とほとんど変わらぬイメージを抱いていた。だが、そうでない彼の一面を知ってしまったからには、もう今まで通りのイメージで接することは不可能に思えた。
だから、私はそのことを伝えるべく、今日カイルがいなくなってからの出来事をカイルに伝えた。
「今日途中でカイルがいなくなったでしょう?」
「おう」
「そのときね……プロポーズされたの」
そう言うと、カイルは耳は私の発言を信じていないような真顔で声を漏らした。
「は? まさか?」
「そのまさかよ」
「ショックで頭がおかしくなった訳じゃなく?」
「そうだったらどれほど良かったか……」
そう言葉を返すと、カイルは一瞬何かを考えたような顔をしたが、途端に笑顔になって告げてきた。
「まじかよ……。まあ、良いんじゃね! あいつ性格も良いからよ!」
「カイルってば……もう! 他人事過ぎるのよ!」
私は真剣に悩んでいたが、カイルは真逆の反応をするものだから、つい大きい声を出してしまった。しかし、カイルはより晴れやかな笑顔になり告げてきた。
「大丈夫だって。あいつ治癒士の世話にはならないし、それにめちゃくちゃ忙しいから。正直いくらクリスタのことが好きで会いたくても、なかなか勤務時間中に会うのは難しいと思うぜ。まあ……昼休みは日によってチャンスあるけどよ……」
そうだわ……エンディミオン卿は基本忙しい人よ。今日のせいでそんなこと、すっかり頭から抜けてしまっていた。
第3騎士団の仕事は討伐に関する事案が中心と聞く。そのため、彼らは事案がなくともその間はかなりハードな訓練をしているはずだ。
それに騎士団長ともなれば、自身も訓練をしてなおかつ団員にも指導をし、そのうえ書類手続きの仕事もしなければならないのだ。
――それなら適度な距離感で働けそうじゃない……?
「じゃあ、やってみようかな」
そう言うと、カイルは嬉しそうに微笑んだ。
「そう来なくっちゃな! それに、失恋は新しい恋でって、魔導士学校の先生も言ってただろう? 騎士団は男しかいねーからより取り見取りだぜ」
「もう! カイルったら、すぐにそんなふざけたことばかり言って!」
そう言うと、カイルは楽しげな顔で笑いながら口を開いた。
「まあ、クリスタが俺にこんなに言い返せるくらい元気で良かったよ。ショックで死なれたらどうしようかと思ったんだぞ!」
そう言うと、カイルはホッとしたような顔で私のことを見てきた。私に兄がいたならきっとこんな感じなんだろうなと、ふと思った。そんな彼に、私は告げた。
「自分でも不思議なの。こんなに未練が無くなるなんて思わなかったわ……。ショック以前に怒りが強すぎるもの」
ショックよりも、今絶賛継続中なのは怒りだ。この怒りが静まった時には、とてつもないショックが襲ってくるかもしれないが、少なくとも今の私は怒りの感情しか持っていなかった。
怒りというのはとてつもないエネルギーを消費する感情だ。だからこそ、未だ怒りが燻る自身に驚いている。
そして、こんな私にカイルが口を開いた。
「怒れるだけ良かったよ。お前が元気だったらそれだけで良いからさ」
なんて良い友人を持ったのだろうか。そんな風に感動していたが、そんな私にカイルはびっくりするようなことを言ってきた。
「じゃあ俺そろそろ戻らないといけないから……。クリスタ、お前は明日から出勤だから、絶対に遅刻すんなよ!」
「え!? 帰ってきたばかりなのに明日からなの!?」
「ああ、そうだよ」
きょとんとした顔で言う彼に、私は思い切り突っ込んだ。
「だったらそれを先に言っといてよ!」
そう言うと、カイルは楽しそうにケラケラ笑うと、ごめんごめんと謝りながら話し始めた。
「明日来たら、こないだの受付で声かけろよ? んで、出勤時間は魔塔と一緒だから。まあ、たまに例外はあるけど……。あと、初日だから早めに行くんだぞ。一緒に働く人は超絶優しいから安心しろよ!」
――意外とちゃんと説明してくれるんだ。
不安だったけど、ちょっと安心……。
カイルに親切さと優しさに感心してしまった。
「っカイル……ありがとう!」
「どういたしまして。そんじゃ、また明日なっ」
こうして帰るカイルを見送った後、私は夕食を摂り、明日に備え早々に眠りについた。
何とか新しい職場がすぐに決まったからだろう。様々な出来事があったにも関わらず、私はあっというまに夢の世界へと旅立った。
「カイルだったのね」
「ああ、俺じゃない奴が来ると思ったろ?」
確かにその通りだ。カイルは魔導士とはいえ、騎士団所属で魔塔の人間ではない。すると、カイルは私の対面の椅子に座り、足を広げ、肘を自身の膝の上に置くように前傾姿勢になり告げた。
「さっき会議があって、クリスタの配属先が決まったんだよ。んで、偶然魔塔にいた俺が、魔塔主様の命令で遣わされたってわけ」
――そうだったんだ。
というか、突然走ってどっか行ったと思ってたけど、魔塔に行っていたのかしら……?
それよりも、結果が気になるわ!
「来てくれてありがとう。で、どうなった!?」
自身の人生に大きく関わることだ。食い入るようにカイルに訊ねた。すると、カイルは真剣な私に反し、すこしおどけたような口調で結果を発表した。
「適性も考慮した結果、なんと……クリスタの新しい職業は騎士団の治癒士でーす!」
「はあ!? 騎士団ですって!?」
騎士団とは盲点過ぎた。カイルは「イエーイ」なんて言いながら、この場を盛り上げるかのようにパチパチと手を叩いている。
――騎士団ということは、あの人がいる職場で働くということよね……。
毎日会うたび、今日みたいな態度を取られたら……。
想像しただけでも恐ろしい。だから、反射的にカイルに言葉を放った。
「エンディミオン卿がいるのよ……いや、無理!」
そう言うと、私の発言に対しカイルは困ったような表情をした。
「でも、騎士団以外だと、レアード・カーチェスに絶対に会わなくて済む場所なんて、黒魔法管轄しかないし……」
「いやいやいや! あそこはもっと嫌! ぜっっったいに嫌!」
リスクが高すぎる上、黒魔法管轄で働く人は皆変人ばかりだ。あんな職場で働いていたら、恐らく私は正気を失う。
すると、カイルはフーとため息をついて口を開いた。
「てか、クリスタが悪いわけじゃないから、あいつにどっか行ってもらえれば良いだろ?」
確かにその意見が出るのは不思議じゃない。魔塔主様もそうだった。分かってもらえるかは分からない。だけど、私はカイルに率直な感情を告げた。
「あの男との思い出が残ってるところで働きたくないから、あいつがいようがいまいが魔塔はもう嫌!」
「だろ? じゃあ、騎士団しかないんだよ」
「でも、エンディミオン卿がいるし……」
ふとそう呟くと、カイルは呆れた様子で子どもに諭すかのように告げてきた。
「はあ? あいつがいるから何? 別に良くね? だってあいつ基本怪我しないもん。そんな無理無理嫌嫌言わないの! いくら俺でも、これ以上は姫さんのわがままなんて聞けないぜ」
そう言うと、彼は前傾姿勢から一気に体勢を変え、勢いよくドサッと背もたれによりかかって言葉を続けた。
「というか、エンディミオンは強くてイケメンでその上賢い、それに公爵家ときた。めちゃくちゃモテる男だぞ? 騎士以外には優しいし……。それに今日だって、クリスタから会いに来てたじゃん。なのに、何でそんなにエンディミオンのこと嫌がるんだ?」
カイルは本当に不思議だというような顔をしている。確かに、エンディミオン卿を世間一般の人がどう見るかを考えると、今さっきカイルが言った通りだ。
そして、私も今日の今日まではエンディミオン卿に対し、大衆とほとんど変わらぬイメージを抱いていた。だが、そうでない彼の一面を知ってしまったからには、もう今まで通りのイメージで接することは不可能に思えた。
だから、私はそのことを伝えるべく、今日カイルがいなくなってからの出来事をカイルに伝えた。
「今日途中でカイルがいなくなったでしょう?」
「おう」
「そのときね……プロポーズされたの」
そう言うと、カイルは耳は私の発言を信じていないような真顔で声を漏らした。
「は? まさか?」
「そのまさかよ」
「ショックで頭がおかしくなった訳じゃなく?」
「そうだったらどれほど良かったか……」
そう言葉を返すと、カイルは一瞬何かを考えたような顔をしたが、途端に笑顔になって告げてきた。
「まじかよ……。まあ、良いんじゃね! あいつ性格も良いからよ!」
「カイルってば……もう! 他人事過ぎるのよ!」
私は真剣に悩んでいたが、カイルは真逆の反応をするものだから、つい大きい声を出してしまった。しかし、カイルはより晴れやかな笑顔になり告げてきた。
「大丈夫だって。あいつ治癒士の世話にはならないし、それにめちゃくちゃ忙しいから。正直いくらクリスタのことが好きで会いたくても、なかなか勤務時間中に会うのは難しいと思うぜ。まあ……昼休みは日によってチャンスあるけどよ……」
そうだわ……エンディミオン卿は基本忙しい人よ。今日のせいでそんなこと、すっかり頭から抜けてしまっていた。
第3騎士団の仕事は討伐に関する事案が中心と聞く。そのため、彼らは事案がなくともその間はかなりハードな訓練をしているはずだ。
それに騎士団長ともなれば、自身も訓練をしてなおかつ団員にも指導をし、そのうえ書類手続きの仕事もしなければならないのだ。
――それなら適度な距離感で働けそうじゃない……?
「じゃあ、やってみようかな」
そう言うと、カイルは嬉しそうに微笑んだ。
「そう来なくっちゃな! それに、失恋は新しい恋でって、魔導士学校の先生も言ってただろう? 騎士団は男しかいねーからより取り見取りだぜ」
「もう! カイルったら、すぐにそんなふざけたことばかり言って!」
そう言うと、カイルは楽しげな顔で笑いながら口を開いた。
「まあ、クリスタが俺にこんなに言い返せるくらい元気で良かったよ。ショックで死なれたらどうしようかと思ったんだぞ!」
そう言うと、カイルはホッとしたような顔で私のことを見てきた。私に兄がいたならきっとこんな感じなんだろうなと、ふと思った。そんな彼に、私は告げた。
「自分でも不思議なの。こんなに未練が無くなるなんて思わなかったわ……。ショック以前に怒りが強すぎるもの」
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怒りというのはとてつもないエネルギーを消費する感情だ。だからこそ、未だ怒りが燻る自身に驚いている。
そして、こんな私にカイルが口を開いた。
「怒れるだけ良かったよ。お前が元気だったらそれだけで良いからさ」
なんて良い友人を持ったのだろうか。そんな風に感動していたが、そんな私にカイルはびっくりするようなことを言ってきた。
「じゃあ俺そろそろ戻らないといけないから……。クリスタ、お前は明日から出勤だから、絶対に遅刻すんなよ!」
「え!? 帰ってきたばかりなのに明日からなの!?」
「ああ、そうだよ」
きょとんとした顔で言う彼に、私は思い切り突っ込んだ。
「だったらそれを先に言っといてよ!」
そう言うと、カイルは楽しそうにケラケラ笑うと、ごめんごめんと謝りながら話し始めた。
「明日来たら、こないだの受付で声かけろよ? んで、出勤時間は魔塔と一緒だから。まあ、たまに例外はあるけど……。あと、初日だから早めに行くんだぞ。一緒に働く人は超絶優しいから安心しろよ!」
――意外とちゃんと説明してくれるんだ。
不安だったけど、ちょっと安心……。
カイルに親切さと優しさに感心してしまった。
「っカイル……ありがとう!」
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