【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔

文字の大きさ
53 / 77

53話 招待状

しおりを挟む
 エンディミオン様と別れ、ギル様は私の膝を枕にして座椅子に寝転んだ。そして、その体勢のまま私に話しかけてきた。

「エンディがいてくれて良かったな」
「はい」
「あのサンダーボルトも良かったぞ」
「ありがとうございます」

 そこまで言うと、少し間を開けてギル様が問いかけてきた。

「好きなのか?」
「えっ……」
「エンディのこと、本当はどう思ってるんだ?」

 ギル様なら……まあ良いだろう。そう思い、包み隠さず話してみることにした。

「多分……好きなんだと思います。でも、やっぱりどうか分かりません」
「ん? 分からぬとな?」
「私は雰囲気に酔ってしまう癖があるんです。恋愛にも向いてないし、自分が正しく自身の気持ちを認識出来ているかも……分からないんです。情けないですよね」

 思わず自虐で苦笑を漏らしてしまう。一方、そんな私の話を聞いたギル様は、考え事をするようなしぐさを見せ再び口を開いた。

「つまり、好きだと思っているが、その認識自体が間違っていないかが不安ということだな。そうか……ならば、好きという前提でもう少し一緒に過ごしてみると良い」
「好きという前提で、ですか……?」
「ああ。そうしたら、好きという気持ちの確信が高まるか、やはり間違いだったと思うかのどちらかだろう」

 ――確かに、ギル様の言う通りね。
 というか、ギル様って何でこんなに恋愛感情に詳しいの?

 そう思いながらも、ギル様に言葉を返した。

「では、求婚に対する返事はもう少し寝かせても良いんでしょうか? 早く答えないと悪い気が……」
「人は儚い生き物だ。だから待たせすぎてはいかんが、気長に考えてみた方が良いこともある。エンディも短絡な返答は望んでいないだろう」
「……そうですね」
「ああ、考えるんじゃなくて感じたら良い。気難しく考えず、本能のままにな。そして、そのありのままを好きなタイミングでエンディに伝えてやれ」

 ギル様にそう言われると、何となく気持ちが落ちついてきた。そのため、待たせすぎはしないが、もう少し共に過ごし頃合いを見て返事をすることに決めた。

 ――恋ってこんなに怖いものだったかしら……。


 ◇ ◇ ◇


 しばらく馬車に揺られると、家に帰り着いた。そして、書斎に入ると手紙が置かれていた。

 ――こんな豪華な手紙……誰からかしら?

 そう思い、目に入った手紙を手に取ると、王室から届いた王室主催の舞踏会の招待状であることが分かった。ただこの招待状には問題があった。

 踊りのペアがいないのだ。当主として出ないわけにはいかないが、ペアとなる男性がいない。それに1人で行くにしろ、母親や叔母のように付き添いを頼める人もいない。

 ――困ったことになったわね……。
 明日取り敢えず、先生に相談してみましょう。

 一応、自分なりに解決方法を考えてはみた。しかし良い案は出ず、結局次の日の昼休みに先生と、先生に会いに来たカイルに相談することにした。

「ちょっと相談があるんですが……」
「ん? どうしたの?」
「どうした? 言ってみろよ」

 2人とも聞いてくれるようだ。そのため、私は話しを続けた。

「実は昨日王室主催の舞踏会の招待状が届いたんです。ですが、出ないといけないのに肝心のペアが居なくて……何か良い対処法はないですか?」

 そう尋ねると、真っ先にアルバート先生が口を開いた。

「僕がペアでもいいけど、それじゃあエンディミオン団長に悪いよね……」

 怒りはしないが、嫌な気にはなるだろう。そう思っていると、横にいたカイルが大声で先生に突っかかった。

「エンディミオンだけじゃなくて、俺にも悪い! 先生俺のことも気にしてよ!」

 そう言うと、突然先生から視線を私に移し、カイルが勢いよく話しかけてきた。

「それよかさ、大人の姿のギル様に頼めばそっこー解決じゃね?」
「それは私も昨日考えたの。だけど……」

 そう、私もカイルと同じでギル様をペアにしたら解決するのではないかと考えたのだ。そのため手紙を読んだ後、試しにギル様と踊ってみた。

 踊る前のギル様は、自身の踊りに自信満々の様子だったからだ。だから、そんなギル様を見て私は勝手に試す前から安心していた。

 だが、実際はとんでもなかった。踊ってみると、ギル様はまるで大道芸のように好き勝手踊り、最終的に私はギル様の魔法で空に浮かされた。

 これではダメだ! そう思い暴走する彼を何とか止めて、私は1から舞踏会のダンスを教えた。すると、ギル様はあっという間に一通りの振りを覚えた。

 ――今度こそ大丈夫なんじゃないかしら……!

 そう油断して実践した結果、私のつま先は死にかけた。昨日ほど、治癒魔法を自身に使えて良かったと思ったことは無いかもしれない。

「――ということで、ギル様がペアになるのは無理なのよ」

 そう説明をすると、カイルは愉しそうに腹を抱えて笑い出した。なんて奴だ。そう思いながらカイルをジーっと見ると、「悪い悪い」と言いながら、言葉を続けた。

「じゃあ、ダメだな。そしたらさ、もう普通にエンディミオンに頼めば?」

 良い案と思ってカイルは提案したのだろう。しかし、私はその案を一蹴した。

「今回の遠征は舞踏会の前日帰還の予定だから、話をつけていないし無理よ。その日に必ず帰って来られる保証も無いし……。それに、公的な場所で安易にペアになったらダメでしょ?」

 そう言うと、先生も私に続いてカイルに話しかけた。

「僕もその通りだと思います。それにカイル君、婚約もしてない2人が舞踏会に行ったらどうなると思います?」

 そう尋ねられ、カイルは何か嫌なものを想像したのだろう。ウエッと声を漏らしながら顔を歪めた。そして、そんなカイルに先生はなおも言葉を続けた。

「エンディミオン団長を狙うご令嬢たちに、クリスタさんが冗談でなく本当に暗殺されかねません。ただでさえ、大会の件で未だに噂になっているんですから」

 暗殺されかねないなんて怖すぎる。しかも、そんなわけ……と否定しきれないことがより怖さを湧き立てる。

 ――馬車の乗降口が騎士団内部で本当に良かったわ……。

 そう思っていると、その令嬢たちに絡まれた経験のあるカイルは、げっそりとした様子で口を開いた。

「確かに……。あの令嬢たちの一部は冗談抜きでヤバいぜ。どうするんだ?」

 いよいよ案が尽きてしまった。本当にどうしたら良いのだろうか。そう思い、カイルと頭を抱え込んでいると、先生が楽しそうな声で話しかけてきた。

「1ついい考えを思いついたんだけど……」

 そう言うと、先生はにこやかに微笑み、その考えについて話し出した。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら
恋愛
「どうしてよりによって、18歳で破滅する悪役令嬢に生まれてしまったのかしら」  こうなったら引きこもってフラグ回避に全力を尽くす!  そう決意したリアナは、聖女候補という肩書きを使って世界樹の塔に引きこもっていた。そしていつしか、聖女と呼ばれるように……。  うまくいっていると思っていたのに、呪いに倒れた聖騎士様を見過ごすことができなくて肩代わりしたのは「18歳までしか生きられない呪い」  これまさか、悪役令嬢の隠し破滅フラグ?!  18歳の破滅ルートに足を踏み入れてしまった悪役令嬢が聖騎士と攻略対象のはずの兄に溺愛されるところから物語は動き出す。 小説家になろうにも掲載しています。

「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。 絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...