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63話 悪戦苦闘
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ネクロマンサーと思わしき男のぎらついた目と視線が交わった直後、その男は私に対して脂下がったような表情を見せた。
――やっぱりあの人がネクロマンサーなんだわっ……。
本能がこの男がネクロマンサーだと訴えかけてくる。すると、男は私の反応を見て、自身の正体がバレたと気付いたのだろう。何やらぼそぼそと呟き、不審な動きを始めた。かと思えば、突然周囲にいたアンデッドすべてが、私に集中攻撃を仕掛けてきた。
一斉に迎撃や反撃が出来れば、集中攻撃をされても問題は無い。何とか対処が出来る範囲のはずだ。
しかし、そうしてしまえば周りの騎士たちを巻きこんでしまうことは必至。よって、むやみやたらにエリア攻撃を使うことが出来ず、私は一気に苦戦に追い込まれてしまった。
――かなりきつい状況になってしまったわね。
助けが欲しい……。
つい、そう思ってしまう。だが、今の戦場を俯瞰してみると、倒すために攻撃をしたり、かと言って下手に死ぬわけにもいかず逃げたりする騎士たちで溢れ返り、陣形も崩れてしまっている。
そんな中、自分のことで精一杯な人たちに、攻撃が集中しているから助けてほしいというのは、土台無理な話だった。
ネクロマンサーさえ倒すことが出来れば、アンデッドとの戦いも終結する。だからこそ、気付いたからには、ここにネクロマンサーがいるということを皆に伝えたい。この人さえ倒せば、すべてが終わるのだと叫びたい。
しかし、今の状況下においては、下手にネクロマンサーがいると不特定の騎士に知らせると、そのネクロマンサーがどこにいるんだと、騎士間で混乱が生じる可能性や、ネクロマンサーに逃げられる可能性が考えられる。
それに、悪いが今ここに居る騎士たちで、あのネクロマンサーに勝てる人は居ないだろうと予想が付いた。そのため、ネクロマンサーがいるということを伝えるとしても、ネクロマンサーに対抗できる強さを持った人でないといけないということが、私の中の考えとしてまとまった。
――塔の付近にいる人たちがこちらに来てくれたら良いんだけれど……。
ネクロマンサーどころか、アンデッドもあの人たちがいないと対抗しきれなくなってきたわ……。
そう考えている間にも、アンデッドは休む間を与えず攻撃を仕掛けてくる。倒しても倒しても、全方位を取り囲んで襲ってくるのだ。
そんな中、私は他の騎士たちを巻き込まないように雷を落とす等の攻撃をしたが、倒したアンデッドの周りにすぐまた別のアンデッドが来ている。
そして、別のアンデッドを倒したら、先に倒したアンデッドが時折復活をしており、倒しては攻撃しての無限ループ状態に陥ってしまっていた。
そのため、その打開策として私の周囲にいる十体以上のアンデッドを水の膜で包んで浮かせたが、この技は魔力消費が激しい。魔力枯渇のことを考えると、長期戦には向いていない技だった。
よって、私は何とか魔力を枯渇させない方法を考えながら、苦戦しつつアンデッドと戦い続けていた。そんな中、時折視界に入るネクロマンサーは、私を見て楽しそうに笑っている。
――人を、命を蹂躙しておいて、どうして笑っているの!?
絶対に許さないっ……。
あの脂下がった顔を見るだけで、本気で腸が煮えくり返るほどの怒りが湧いてくる。だが、それと同時に、本格的に体力が削られてきているのを感じていた。
このままではそろそろヤバい、まずいことになってしまう。あんな人にやられるわけにはいかないのにっ。そんな考えが、ふと頭を過ぎった時だった。
唐突に、あの人の声が聞こえてきた。
「クリスタ様っ!」
声の方に視線を向けると、そこにはエンディミオン様が居た。そして、彼の後ろには、塔に向かっていた特に強い団員たちが続いていた。
――戻ってきたのね……!
彼らの姿を確認した瞬間の安心感たるやなかった。救われた……そんな気持ちが胸いっぱいに広がったのだ。
そして、これは私の過ちだった。ほんの数秒ではあったが、彼らに気をとられた私は、背後の気配に気づくことが出来なかったのだ。
「エンディミオン様! あそこにネク――」
ネクロマンサーがいる。そう言いかけたところ、エンディミオン様が驚いた顔をしたかと思えば、とんでもない速さで私の方へと走って来た。
そして、気付けば私の身体は、エンディミオン様に勢いよく抱き留められていた。
「えっ……」
何が起こっているのか理解出来ず、驚きでつい声を漏らした。その瞬間、黒魔法が放たれる気配を感じた。
――今の、黒魔法でしょ……?
どこに放ったの!?
そう思い、エンディミオン様の身体の隙間から黒魔法を感知した方角に目をやると、そこにはネクロマンサーが立っていた。そして、ネクロマンサーは私と目が合うと、それは楽しそうな笑顔を向けてきた。
――どういうこと?
どうして、私を見て笑って――。
そう思った時だった。突然私に覆いかぶさるように、力無くぐったりとしたエンディミオン様が倒れかかってきた。
――やっぱりあの人がネクロマンサーなんだわっ……。
本能がこの男がネクロマンサーだと訴えかけてくる。すると、男は私の反応を見て、自身の正体がバレたと気付いたのだろう。何やらぼそぼそと呟き、不審な動きを始めた。かと思えば、突然周囲にいたアンデッドすべてが、私に集中攻撃を仕掛けてきた。
一斉に迎撃や反撃が出来れば、集中攻撃をされても問題は無い。何とか対処が出来る範囲のはずだ。
しかし、そうしてしまえば周りの騎士たちを巻きこんでしまうことは必至。よって、むやみやたらにエリア攻撃を使うことが出来ず、私は一気に苦戦に追い込まれてしまった。
――かなりきつい状況になってしまったわね。
助けが欲しい……。
つい、そう思ってしまう。だが、今の戦場を俯瞰してみると、倒すために攻撃をしたり、かと言って下手に死ぬわけにもいかず逃げたりする騎士たちで溢れ返り、陣形も崩れてしまっている。
そんな中、自分のことで精一杯な人たちに、攻撃が集中しているから助けてほしいというのは、土台無理な話だった。
ネクロマンサーさえ倒すことが出来れば、アンデッドとの戦いも終結する。だからこそ、気付いたからには、ここにネクロマンサーがいるということを皆に伝えたい。この人さえ倒せば、すべてが終わるのだと叫びたい。
しかし、今の状況下においては、下手にネクロマンサーがいると不特定の騎士に知らせると、そのネクロマンサーがどこにいるんだと、騎士間で混乱が生じる可能性や、ネクロマンサーに逃げられる可能性が考えられる。
それに、悪いが今ここに居る騎士たちで、あのネクロマンサーに勝てる人は居ないだろうと予想が付いた。そのため、ネクロマンサーがいるということを伝えるとしても、ネクロマンサーに対抗できる強さを持った人でないといけないということが、私の中の考えとしてまとまった。
――塔の付近にいる人たちがこちらに来てくれたら良いんだけれど……。
ネクロマンサーどころか、アンデッドもあの人たちがいないと対抗しきれなくなってきたわ……。
そう考えている間にも、アンデッドは休む間を与えず攻撃を仕掛けてくる。倒しても倒しても、全方位を取り囲んで襲ってくるのだ。
そんな中、私は他の騎士たちを巻き込まないように雷を落とす等の攻撃をしたが、倒したアンデッドの周りにすぐまた別のアンデッドが来ている。
そして、別のアンデッドを倒したら、先に倒したアンデッドが時折復活をしており、倒しては攻撃しての無限ループ状態に陥ってしまっていた。
そのため、その打開策として私の周囲にいる十体以上のアンデッドを水の膜で包んで浮かせたが、この技は魔力消費が激しい。魔力枯渇のことを考えると、長期戦には向いていない技だった。
よって、私は何とか魔力を枯渇させない方法を考えながら、苦戦しつつアンデッドと戦い続けていた。そんな中、時折視界に入るネクロマンサーは、私を見て楽しそうに笑っている。
――人を、命を蹂躙しておいて、どうして笑っているの!?
絶対に許さないっ……。
あの脂下がった顔を見るだけで、本気で腸が煮えくり返るほどの怒りが湧いてくる。だが、それと同時に、本格的に体力が削られてきているのを感じていた。
このままではそろそろヤバい、まずいことになってしまう。あんな人にやられるわけにはいかないのにっ。そんな考えが、ふと頭を過ぎった時だった。
唐突に、あの人の声が聞こえてきた。
「クリスタ様っ!」
声の方に視線を向けると、そこにはエンディミオン様が居た。そして、彼の後ろには、塔に向かっていた特に強い団員たちが続いていた。
――戻ってきたのね……!
彼らの姿を確認した瞬間の安心感たるやなかった。救われた……そんな気持ちが胸いっぱいに広がったのだ。
そして、これは私の過ちだった。ほんの数秒ではあったが、彼らに気をとられた私は、背後の気配に気づくことが出来なかったのだ。
「エンディミオン様! あそこにネク――」
ネクロマンサーがいる。そう言いかけたところ、エンディミオン様が驚いた顔をしたかと思えば、とんでもない速さで私の方へと走って来た。
そして、気付けば私の身体は、エンディミオン様に勢いよく抱き留められていた。
「えっ……」
何が起こっているのか理解出来ず、驚きでつい声を漏らした。その瞬間、黒魔法が放たれる気配を感じた。
――今の、黒魔法でしょ……?
どこに放ったの!?
そう思い、エンディミオン様の身体の隙間から黒魔法を感知した方角に目をやると、そこにはネクロマンサーが立っていた。そして、ネクロマンサーは私と目が合うと、それは楽しそうな笑顔を向けてきた。
――どういうこと?
どうして、私を見て笑って――。
そう思った時だった。突然私に覆いかぶさるように、力無くぐったりとしたエンディミオン様が倒れかかってきた。
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