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12. 蒼い瞳のクラスメイト
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「俺、四大結界師を目指すぜ!」
まだ肌寒さの残る中、ジークは顔を上気させ、ひとりで熱くなっていた。ジークとは対照的に、アンジェリカとリックのふたりは、寒さのために身をすくめている。ふたりともあまりジークの話には関心を示さず、ただ黙って歩いているだけだった。それでもジークはおかまいなしに話を続けた。
「かっこいいよな。自分が世界を護るんだぜ」
両方のこぶしを握りしめ、興奮をあらわにしている。そんなジークを横目で見ながら、アンジェリカが冷ややかに言い放った。
「あんな人柱のどこがいいのよ。毎日地味に結界に力を送り続けるだけで、誰もあまりありがたさを実感してくれないじゃない」
それでもジークの熱は冷めることはなかった。
「おまえみたいなお子さまには男のロマンはわかんねぇよ。な、リック」
アンジェリカの向こう側にいるリックを覗き込んで、白い歯を見せながら同意を求めた。
だが、リックはから笑いを浮かべた。
「僕もどっちかっていうとアンジェリカの意見の方が……」
「なんだ。おまえもまだまだお子さまだな」
肩をすかされたジークは、力の抜けた声でひとりごとのように言った。
アカデミーの門をくぐる。そこを境に少し暖かくなっていることは、寒さの和らいだ今でもまだ感じることができる。これも、結界の力なのだろうか。
「でも、現実問題として、難しいんじゃないかなぁ」
リックが冷静に分析をする。
「世界でたった四人だけ。しかも滅多なことで交代はないんでしょ」
ジークは口の右端を軽く上げ、不敵な笑みを浮かべると、リックの分析に切り返した。
「いいや四人中三人はジジイだし、俺がアカデミーを卒業する頃にはチャンス到来かもな」
「チャンスはいずれ来るとは思うけど、それでもなれるとは限らないわよ」
周りの空気が暖かくなったことで、アンジェリカの口は次第に滑らかになってきた。
一方のリックは、苦笑いしながらも、周りをきょろきょろうかがっている。ふたりが悪びれる様子もなく失礼なことを言っているので、他の人に聞かれてはしないかと冷や冷やしているのだ。
「いーや」
ふたりの二歩前を歩いていたジークは、足を止め、振り返り、胸元で軽く握りこぶしを作った。
「俺はチャンスさえあれば、必ず実現させるぜ」
自信とやる気をその瞳にみなぎらせ、きっぱりと言い放った。
「私も四大結界師を目指してるわよ」
ふいに聞こえたなじみのない声に、三人は一瞬動きを止めた。なじみはないが、その落ち着いた、深みのある声には聞き覚えがあった。
「男じゃないけどね」
というと同時に、教室の扉の内側からひとりの女性が姿を現した。
「……えーと、おまえ……。誰だっけ」
「ショックだなぁ。クラスメイトなのに。セリカよ。セリカ=グレイス」
セリカと名乗った女性は、その言葉とは裏腹に明るく笑っていた。
ジークはあまり他人に関心がないせいか、いまだにクラスメイトの顔と名前を覚えきれていない。そんな彼だからわからなかったが、実はセリカはアカデミー内ではかなり知られた存在なのだ。
背が高く、スレンダーなシルエット。利発そうな引き締まった顔立ち。明るい栗色の髪、澄んだ濃青色の瞳。これだけの要素が揃えば否が応にも目立つ。
もちろんアンジェリカとリックも、直接話をすることはほとんどなかったが、彼女のことはクラスメイトとして認識していた。
「セリカさんはどうして四大結界師になりたいの?」
リックが不思議そうに尋ねた。
「ああ」
ひと呼吸おくと、顔をわずかにうつむけて、右手の人さし指を口元に持っていった。わずかな時間、そのポーズで考えたあと、顔を上げ、そして語り始めた。
「私の亡くなった祖父がね、四大結界師のひとりだったのよ。私は現役時代のことは知らないんだけどね」
ふいに目を細めて、懐かしそうに微笑む。
「結界師という仕事にすごく誇りを持ってた人でね。何度も話を聞かされているうちに、私もだんだん憧れを持つようになっちゃって」
セリカは三人から顔をそらし、後ろで手を組みながら、軽く肩をすくめた。
「なんか、うまいことすりこまれちゃったのかな」
そう言って、照れ笑いをした。
それまで彼女の話を黙って聞いていたアンジェリカが、遠慮がちに口を開いた。
「あの、もしかして、その人って……」
そこまで言ったところで、セリカは思い出したように目を大きく見開いた。「あ」と言うと同時に、ぽんと手を叩いた。
「そうそう。私の祖父はラグランジェ家の人よ。分家の方だけど。私たちは遠い親戚ってことになるのよね」
セリカはそう言いながら、アンジェリカに親しげな笑顔を投げかけた。アンジェリカは一瞬、戸惑いの表情を見せたが、それはすぐ無表情に覆い隠された。
「へえ。そうなんだぁ」
アンジェリカの代わりに、リックの素頓狂な声が飛んだ。彼が続けて何かを言おうとしたとき、そこで始業を告げるチャイムが鳴りだした。
「親戚っていったって、遠いじゃない」
アンジェリカがかぼそい声でつぶやく。しかし、そのセリフはチャイムにかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
まだ肌寒さの残る中、ジークは顔を上気させ、ひとりで熱くなっていた。ジークとは対照的に、アンジェリカとリックのふたりは、寒さのために身をすくめている。ふたりともあまりジークの話には関心を示さず、ただ黙って歩いているだけだった。それでもジークはおかまいなしに話を続けた。
「かっこいいよな。自分が世界を護るんだぜ」
両方のこぶしを握りしめ、興奮をあらわにしている。そんなジークを横目で見ながら、アンジェリカが冷ややかに言い放った。
「あんな人柱のどこがいいのよ。毎日地味に結界に力を送り続けるだけで、誰もあまりありがたさを実感してくれないじゃない」
それでもジークの熱は冷めることはなかった。
「おまえみたいなお子さまには男のロマンはわかんねぇよ。な、リック」
アンジェリカの向こう側にいるリックを覗き込んで、白い歯を見せながら同意を求めた。
だが、リックはから笑いを浮かべた。
「僕もどっちかっていうとアンジェリカの意見の方が……」
「なんだ。おまえもまだまだお子さまだな」
肩をすかされたジークは、力の抜けた声でひとりごとのように言った。
アカデミーの門をくぐる。そこを境に少し暖かくなっていることは、寒さの和らいだ今でもまだ感じることができる。これも、結界の力なのだろうか。
「でも、現実問題として、難しいんじゃないかなぁ」
リックが冷静に分析をする。
「世界でたった四人だけ。しかも滅多なことで交代はないんでしょ」
ジークは口の右端を軽く上げ、不敵な笑みを浮かべると、リックの分析に切り返した。
「いいや四人中三人はジジイだし、俺がアカデミーを卒業する頃にはチャンス到来かもな」
「チャンスはいずれ来るとは思うけど、それでもなれるとは限らないわよ」
周りの空気が暖かくなったことで、アンジェリカの口は次第に滑らかになってきた。
一方のリックは、苦笑いしながらも、周りをきょろきょろうかがっている。ふたりが悪びれる様子もなく失礼なことを言っているので、他の人に聞かれてはしないかと冷や冷やしているのだ。
「いーや」
ふたりの二歩前を歩いていたジークは、足を止め、振り返り、胸元で軽く握りこぶしを作った。
「俺はチャンスさえあれば、必ず実現させるぜ」
自信とやる気をその瞳にみなぎらせ、きっぱりと言い放った。
「私も四大結界師を目指してるわよ」
ふいに聞こえたなじみのない声に、三人は一瞬動きを止めた。なじみはないが、その落ち着いた、深みのある声には聞き覚えがあった。
「男じゃないけどね」
というと同時に、教室の扉の内側からひとりの女性が姿を現した。
「……えーと、おまえ……。誰だっけ」
「ショックだなぁ。クラスメイトなのに。セリカよ。セリカ=グレイス」
セリカと名乗った女性は、その言葉とは裏腹に明るく笑っていた。
ジークはあまり他人に関心がないせいか、いまだにクラスメイトの顔と名前を覚えきれていない。そんな彼だからわからなかったが、実はセリカはアカデミー内ではかなり知られた存在なのだ。
背が高く、スレンダーなシルエット。利発そうな引き締まった顔立ち。明るい栗色の髪、澄んだ濃青色の瞳。これだけの要素が揃えば否が応にも目立つ。
もちろんアンジェリカとリックも、直接話をすることはほとんどなかったが、彼女のことはクラスメイトとして認識していた。
「セリカさんはどうして四大結界師になりたいの?」
リックが不思議そうに尋ねた。
「ああ」
ひと呼吸おくと、顔をわずかにうつむけて、右手の人さし指を口元に持っていった。わずかな時間、そのポーズで考えたあと、顔を上げ、そして語り始めた。
「私の亡くなった祖父がね、四大結界師のひとりだったのよ。私は現役時代のことは知らないんだけどね」
ふいに目を細めて、懐かしそうに微笑む。
「結界師という仕事にすごく誇りを持ってた人でね。何度も話を聞かされているうちに、私もだんだん憧れを持つようになっちゃって」
セリカは三人から顔をそらし、後ろで手を組みながら、軽く肩をすくめた。
「なんか、うまいことすりこまれちゃったのかな」
そう言って、照れ笑いをした。
それまで彼女の話を黙って聞いていたアンジェリカが、遠慮がちに口を開いた。
「あの、もしかして、その人って……」
そこまで言ったところで、セリカは思い出したように目を大きく見開いた。「あ」と言うと同時に、ぽんと手を叩いた。
「そうそう。私の祖父はラグランジェ家の人よ。分家の方だけど。私たちは遠い親戚ってことになるのよね」
セリカはそう言いながら、アンジェリカに親しげな笑顔を投げかけた。アンジェリカは一瞬、戸惑いの表情を見せたが、それはすぐ無表情に覆い隠された。
「へえ。そうなんだぁ」
アンジェリカの代わりに、リックの素頓狂な声が飛んだ。彼が続けて何かを言おうとしたとき、そこで始業を告げるチャイムが鳴りだした。
「親戚っていったって、遠いじゃない」
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