42 / 94
42. 騙し合い、そして
しおりを挟む
「始め!」
ラウルのその声と同時に、アンジェリカとユールベルは距離をとって身構えた。白い空に果てなく広がる薄茶色の地面。他には何もない。
ユールベルは短く呪文を唱えると、両手を揃えて前に突き出した。手のひらが白く光り、そこから頭くらいの大きさの光球が飛び出した。アンジェリカは後ろに飛びのきながら、両手を前へと伸ばし、同じ呪文で応戦した。
――ドン!
ふたりの真ん中で、互いの光球がぶつかった。爆発が起こったかのように、あたり一面を白い光が飲み込んだ。
その光に乗じて、アンジェリカは素早くユールベルの後ろに回り込んだ。気を集中させると、小さな声で長い呪文を唱え始めた。ユールベルはまだ無防備な背中を見せている。
――勝てる!
アンジェリカがそう思ったとき、ユールベルは左脇下から右手を突き出し、白い光を放射した。後ろ向きだったにもかかわらず、その光は少しのずれもなくまっすぐ目標へと突き進んだ。思いがけない攻撃に、呪文詠唱中だったアンジェリカは反応が遅れた。とっさに結界を張ることができなかった。両腕で身をかばったが、体ごとはじきとばされ宙を舞った。数メートル後方の地面に背中から叩きつけられると、そこからさらに数メートル、砂ぼこりを巻き上げながら滑っていった。アンジェリカの顔が苦痛に歪んだ。
「ワン、ツー」
ラウルはすかさずカウントを取り始めた。
「おいっ!」
彼女に聞こえないとは知りつつも、ジークは思わず声を上げた。
ラウルが三つ目のカウントを口にするより早く、アンジェリカは勢いよく飛び起きた。そして、その勢いのまま即座に反撃をしかけた。しかし、ユールベルは余裕だった。予測していたかのように、青白く光る結界を張り、向かってくる赤い炎を消滅させた。
アンジェリカに驚きと焦りの色が浮かんだ。まだしびれる左腕を押さえながら、息を荒くしていた。
「なに押されてんだよ、おまえ!」
ジークはディスプレイに向かってわめき立てた。だが、もちろん彼女には届かない。
「スリーカウントなんて短すぎるじゃねえか!」
今度はラウルに食ってかかった。しかし、ラウルはディスプレイに目を向けたままで、ジークのことなど完全に無視していた。
「ユールベル、かなり手強そうだね」
リックはなぜか声をひそめてジークに近寄った。
「ああ……。アンジェリカの行動がまるきり読まれているみたいだったぜ」
「うん、頭が良さそうだし、耳もいいんだろうね」
ふたりの口から出た言葉は、さらに自分たちを不安の深みへと落とし入れた。ジークは下唇を噛みしめ、祈るような気持ちでディスプレイを見上げた。
「俺はまだ、信じてるぜ」
その言葉はリックに向けられたものであり、アンジェリカに向けられたものであり、同時にジーク自身に言い聞かせるものでもあった。
ユールベルは青白い光に守られたまま、その内側で呪文を唱え始めた。指先までピンと伸ばした左手をまっすぐアンジェリカに向け、右手は大きく弧を描きながら後方へと引いた。
あれは――。
アンジェリカはピンときた。ユールベルの声は聞き取れなかったが、彼女のポーズには見覚えがある。アンジェリカもすぐに呪文を唱え始めた。両手を上空に向け、高々と掲げる。静かな緊迫感が一面に張りつめた。ジークもリックも、ディスプレイを見上げながら固唾を飲んだ。
先に唱え終わったのはアンジェリカだった。掲げた手の上に集めた魔導の力を、ゆっくりとユールベルに向け、勢いよく放った。白い帯がすさまじい速度で伸びる。だが彼女に届く一歩手前で結界にはじきとばされた。しかし、同時に結界も消滅した。
ユールベルは右目を見開き、明らかに驚きの表情を見せた。それでも呪文の詠唱を止めることはなかった。
アンジェリカはもう次の呪文の詠唱に入っていた。今度はさらに短い呪文だった。またしてもユールベルより早く唱え終わり、再び彼女に向けて放った。
しかし、どういうわけかユールベルはよけようとも防ごうともせず、目を閉じ呪文を唱え続けていた。白い光球が彼女に迫る。それでも動かない。ついに無防備な状態のユールベルに直撃した。白い光に飲み込まれ、はじきとばされるのが見えた。が、それと同時に砂ぼこりが巻き上がり、その後の彼女の姿は見えなくなった。だが直撃したことは間違いない。防ぐこともなくまともに受けたのでは、無事であるはずはない。アンジェリカは目を凝らして、砂ぼこりの奥を見つめた。
薄曇りの向こう側で、何かが光った。
――何?
アンジェリカが目を細めたその瞬間。薄茶色に濁った空間から、彼女の胸を目がけ、白い光の矢が飛び出してきた。とっさに上体をねじり、間一髪でかわした。――かに見えたが、完全にはよけきれず、白い閃光は彼女の左肩をかすめていった。
「ぅうああぁあーーー!!!」
アンジェリカは絞り出すような悲鳴を上げ、肩を押さえてうずくまった。
「アンジェリカ!!」
ジークとリックは同時に叫んだ。ふたりの顔から一気に血の気が引いていった。彼らにアンジェリカの声は聞こえない。しかし、彼女の表情や様子を見ているだけで、つんざくような叫び声が聞こえてくるようだった。
ジークは居ても立ってもいられず、後ろからラウルに突進し、ヘッドセットに手を伸ばした。どうにかしてアンジェリカに声を届かせたい、その一心だった。しかし、あと少しというところで、ラウルのひじがジークのみぞおちにめり込んだ。
「うっ……」
ジークは冷や汗をにじませうずくまった。ラウルに一撃をくらわされたところを押さえ、歯を食いしばる。
「おとなしく見ていろ」
ラウルはディスプレイに目を向けたまま、振り返ることもなく、冷たく言い放った。
「大丈夫?」
リックはジークを心配そうに覗き込み、彼の背中に手を置いた。ジークはリックの顔を目にすると、徐々に落ち着きを取り戻した。
「俺よりもアンジェリカだ。やばいかもしれねぇな」
ジークは声をひそめた。リックは重々しくうつむいた。
「アンジェリカの攻撃をまともに受けて、それでも呪文を唱え続けるなんて、普通できないよ。それにユールベルのあの呪文て……」
「通常レベルの結界なら簡単に貫くほど強大な威力はあるが、その分、バカ長い呪文と、半端ねぇ集中力と、強大な魔導力に耐えられるだけの身体がいるとかいう、あんまり使えねぇヤツだな」
ジークは言葉にすればするほど絶望が近づいてくるように感じ、それ以上は何も言えなくなった。リックも同じように感じたのか、口をつぐんで黙りこくってしまった。ジークはみぞおちを押さえながら立ち上がり、再びディスプレイを見上げた。
砂ぼこりがおさまり、ユールベルの姿が次第にあらわになった。彼女もまったく平気というわけではなさそうだった。足元はふらつき、息もあらい。
ユールベルはこわばった表情で、茶色い靄にうっすらと浮かんだ人影をじっと見つめた。それがアンジェリカと判別できるようになるまで、そう時間はかからなかった。アンジェリカは片膝をつき、左肩を押さえ、頭をガクンと垂れ下げていた。肩を上下に揺らしているところから察すると、まだ意識はなくしていないらしい。
外した――。
ユールベルは右目を細め、焦りの色を見せた。
アンジェリカはその表情を見逃さなかった。痛みをこらえて立ち上がり、強気にユールベルに挑みかけるようににやりと笑ってみせた。
「あてが外れて残念そうね」
息苦しさをごまかすように、早口で一気に言った。彼女の額から頬へと、幾筋もの汗が伝った。
「あなたこそ」
ユールベルはあごを上げ、目一杯の余裕を装った。実際アンジェリカより、かなり余裕はあったのだろう。
アンジェリカはあごを引き、ユールベルを上目遣いで一睨みすると、自分のまわりに白く光る結界を張った。そして、その内側で攻撃呪文を唱え始めた。ユールベルも同じように結界を張り、呪文を唱え始めた。
ガクン。
アンジェリカはその途中で膝を折り、前のめりに倒れると、地面に手をついた。集まりかけていた魔導力も拡散し、結界も消滅した。
「アンジェリカ!!」
ジークは声の限り叫んだ。しかし、どんなに叫んでも彼女には届かない。
ユールベルは勝ち誇ったように口角を上げると、目を閉じ、よりいっそう魔導に集中した。彼女の両手の中の光球がぐんぐん大きくなっていく。
アンジェリカは片膝を立て、地面に手をつき、前傾姿勢でユールベルの様子をうかがっていた。彼女が目を閉じているのを確認すると、突然、地面を強く蹴って駆け出し、一気に加速した。一瞬のうちに結界をすり抜け、ユールベルの懐まで入り込む。そして、右手を彼女の脇腹に押し当て、短く呪文を唱えた。アンジェリカの指の間から白い閃光がもれる。
ユールベルは目を見開いて息を止めた。だが、その攻撃を防ごうとはしなかった。ぎゅっと唇を噛みしめると、すぐに呪文の続きを唱え始めた。
――効かない?!
アンジェリカは焦った。手を離さず、もういちど同じ呪文を口にした。ユールベルの腹部に、再び白い閃光が押しつけられる。同時に、ユールベルは両手を振り上げ、白い光球をアンジェリカの背中に勢いよく振り下ろした。アンジェリカは間一髪で薄く結界を張ったものの、それも弾き飛ばされ、光球ごと地面に叩きつけられた。
「アンジェリカ!!」
ジークが叫ぶと同時に、ラウルはカウントを取り始めた。
「ワン、ツー」
ユールベルは容赦なく二発目を撃ち込んだ。だがアンジェリカは地面を転がり、ぎりぎりでかわした。その勢いで立ち上がると、後ろへ飛び下がって身構えた。
ユールベルは脇腹の痛みをこらえながら、鼻先で軽く笑った。
「わかったかしら。私の体は人並み外れて魔導を受け付けにくいのよ。あなたの何倍もね」
「目に見えない薄い結界でもまとっているのかと思ったけど、なるほど、種も仕掛けもなかったわけね」
アンジェリカも余裕の笑顔で返そうと思ったが、その瞬間、背中に痛みが走り、逆に顔をしかめることになってしまった。深呼吸をして息を整えると、今度はかすかに笑ってみせた。
「だったら話は早いわ」
アンジェリカはユールベルに背を向けた。
「どういうつもり?!」
ユールベルはきつい口調で問いつめた。それは戸惑いからきているということは明らかだった。アンジェリカが降参するとはとても思えない。だとしたらなぜ背中を見せるのか。何か彼女に考えがあるのだろうか。でもそれがなんなのか、わからない……。ユールベルは次第に手のひらが湿ってくるのを感じた。
アンジェリカは自分の目の前、すなわちユールベルとは反対側に四角い板状の結界を作った。結界は通常、対象物(自分であることが多い)のまわりを囲うように張るものである。こんな奇妙な結界はあまり見ない。
ユールベルは、アンジェリカの挙動のすべてに目を奪われていた。それでも冷静さは失っていなかった。彼女の後ろ姿を見ながら、自分のまわりに静かに結界を張った。
アンジェリカはユールベルに向き直った。彼女の目をまっすぐ見据えながら、腕を伸ばし、呪文を唱え始めた。向かい合わせた手のひらが白く光り、その間に魔導力が集まる。かなり大きい。
ユールベルは内側にもう一つ結界を張り二重化した。アンジェリカの背後の四角い結界が不気味に白く光る。ユールベルの額に汗がにじんだ。これだけ念を入れても落ち着かない。
アンジェリカは頭よりも大きくなった光球を、自分の体に引きつけた。
――来る!
ユールベルの緊張が高まったそのとき、アンジェリカは地面を蹴り、体を半回転させた。そして、結界で作った四角い壁に向かって全魔導力を放射する。白い光はアンジェリカと結界の間で大きく膨張し、その反動で彼女の小さな体は弾丸のように吹き飛んだ。まっすぐ、ユールベルへと向かう。アンジェリカは彼女に体ごとぶつかり、腹部にひじを突き立てた。
その瞬間、ヒューンという音とともにディスプレイがブラックアウトした。続いて静電気がパチパチと軽い音を立てた。
「て……停電か?」
ジークは自信なさげにそう言って、あたりを見渡した。しかし、部屋の明かりは消えていない。
ラウルはヘッドセットを外し、振り返った。
両側のコクピットのふたがウィーンと機械音を立てながら、ゆっくりと開いていった。中から姿を現したアンジェリカとユールベルは、ポカンとした顔でラウルを見ている。
「ユールベル側のリミッターが働いて、システムが停止した」
ラウルの説明に反応する者は誰もいなかった。全員がきょとんとして彼を見つめている。ラウルは言葉を付け足した。
「つまり、アンジェリカの勝ちだ」
ジークの表情がパッと輝いた。
「やったな!」
ゆっくりと身を起こそうとしているアンジェリカに駆け寄り、コクピットから抱え上げると外に降ろした。
「ヒヤヒヤさせやがって!」
その言葉とはうらはらの思いきりの笑顔。ジークはアンジェリカの額に、軽くこぶしをねじ込んだ。
「もう! けっこう体中痛いんだから、ちょっとはいたわってよ」
そう言って頬をふくらませたアンジェリカも、やはり笑っていた。
「……納得いかない」
ユールベルはコクピットのふちに手を掛け、体を起こしながら声を震わせた。
「あんなの……魔導じゃないじゃない!」
彼女はラウルを見上げ、必死に訴えた。
「戦いにルールはない」
ラウルは腕を組み、冷めた声で言った。
「魔導以外の要素を軽視したのが、おまえの敗因だ。魔導耐性は高いが、身体的な能力は低い。その自覚があるのなら、魔導のみを遮る通常結界ではなく、あらゆる物質を遮断する高度な結界を使うべきだった」
ユールベルに返す言葉はなかった。それでも、やはり納得はできない。身をかがめ腹部を押さえながら、よろよろとコクピットから降りると、アンジェリカを鋭く睨み上げた。
「えっ?!」
リックはユールベルのポーズを見て、驚きの声を上げた。彼女は両手を前に突き出していた。そして、リックの懸念どおり、呪文を唱え始めた。緩やかなウェーブを描いた金の髪と、後ろで結ばれた白い包帯が、空気の対流を受けて舞い上がる。
「やめろ!」
ジークとリックはアンジェリカをかばうように立ちはだかった。ふたりは同時に結界を張り、さらにアンジェリカも結界を張り、三人のまわりに三重化した結界ができた。
ユールベルの手に魔導の力が集まり、白い光を放つ光球がふくらんでいく。
「大丈夫なの?」
リックは不安げに尋ねた。
「部屋までは守れねぇな」
ジークは前を向いたまま、いたずらっぽくニッと笑ってみせた。
ラウルは無表情でユールベルへと近づいていった。無言で彼女を冷たく見下ろした。そして、右手で光球を握りつぶし消滅させると、左手で彼女の腕をひねり上げた。
あっというまの出来事に、ジークとリックは呆気にとられた。
「……ぅ……ぁあああーーー!!!」
ユールベルはラウルに腕をつかまれたまま、うつむき、絶叫して泣いた。喉の奥から絞り出すような激しい慟哭が、ジークたちを揺さぶった。
「おまえたちは行け」
ラウルは後ろで立ち尽くす三人に言った。しかし、誰も動かない。
「行け!」
今度は振り向き、凄みをきかせた低音で命令した。
ジークはアンジェリカの肩に手をまわすと、渋る彼女を促し、三人で連れ立って部屋から出た。ユールベルの泣き叫ぶ声が、次第に遠くなっていった。
ユールベルの号泣は、徐々にすすり泣きへと変わっていった。そして、膝から崩れ落ちるようにぺたんと床に座り込んだ。ラウルは彼女を抱き上げ、ヴァーチャルマシンルームをあとにした。
ラウルは自分の医務室に戻ると、ユールベルをパイプベッドの白いシーツの上に降ろした。
「落ち着いたら帰れ」
ユールベルはうなだれたまま、首を小さく横に振った。肩から髪が落ち、合間から折れそうな白い首筋がのぞいた。
「勝手にしろ」
ラウルは無表情でそう言って立ち去ろうとした。だが、ユールベルの細い腕が、彼の長い髪をつかみ、引き止めた。
「……私を……救って……」
消え入りそうな儚い声。ラウルは彼女の腕を、肩を、首筋を、背中を、じっと見つめた。
「私におまえは救えない」
ユールベルの手から力が抜け、ぱたんとベッドの上に落ちた。それきり彼女は動かなかった。
ラウルは背中を向け、後ろ手で仕切りの白いカーテンを閉めた。そして、立ち止まることなく奥へと消えていった。
ラウルのその声と同時に、アンジェリカとユールベルは距離をとって身構えた。白い空に果てなく広がる薄茶色の地面。他には何もない。
ユールベルは短く呪文を唱えると、両手を揃えて前に突き出した。手のひらが白く光り、そこから頭くらいの大きさの光球が飛び出した。アンジェリカは後ろに飛びのきながら、両手を前へと伸ばし、同じ呪文で応戦した。
――ドン!
ふたりの真ん中で、互いの光球がぶつかった。爆発が起こったかのように、あたり一面を白い光が飲み込んだ。
その光に乗じて、アンジェリカは素早くユールベルの後ろに回り込んだ。気を集中させると、小さな声で長い呪文を唱え始めた。ユールベルはまだ無防備な背中を見せている。
――勝てる!
アンジェリカがそう思ったとき、ユールベルは左脇下から右手を突き出し、白い光を放射した。後ろ向きだったにもかかわらず、その光は少しのずれもなくまっすぐ目標へと突き進んだ。思いがけない攻撃に、呪文詠唱中だったアンジェリカは反応が遅れた。とっさに結界を張ることができなかった。両腕で身をかばったが、体ごとはじきとばされ宙を舞った。数メートル後方の地面に背中から叩きつけられると、そこからさらに数メートル、砂ぼこりを巻き上げながら滑っていった。アンジェリカの顔が苦痛に歪んだ。
「ワン、ツー」
ラウルはすかさずカウントを取り始めた。
「おいっ!」
彼女に聞こえないとは知りつつも、ジークは思わず声を上げた。
ラウルが三つ目のカウントを口にするより早く、アンジェリカは勢いよく飛び起きた。そして、その勢いのまま即座に反撃をしかけた。しかし、ユールベルは余裕だった。予測していたかのように、青白く光る結界を張り、向かってくる赤い炎を消滅させた。
アンジェリカに驚きと焦りの色が浮かんだ。まだしびれる左腕を押さえながら、息を荒くしていた。
「なに押されてんだよ、おまえ!」
ジークはディスプレイに向かってわめき立てた。だが、もちろん彼女には届かない。
「スリーカウントなんて短すぎるじゃねえか!」
今度はラウルに食ってかかった。しかし、ラウルはディスプレイに目を向けたままで、ジークのことなど完全に無視していた。
「ユールベル、かなり手強そうだね」
リックはなぜか声をひそめてジークに近寄った。
「ああ……。アンジェリカの行動がまるきり読まれているみたいだったぜ」
「うん、頭が良さそうだし、耳もいいんだろうね」
ふたりの口から出た言葉は、さらに自分たちを不安の深みへと落とし入れた。ジークは下唇を噛みしめ、祈るような気持ちでディスプレイを見上げた。
「俺はまだ、信じてるぜ」
その言葉はリックに向けられたものであり、アンジェリカに向けられたものであり、同時にジーク自身に言い聞かせるものでもあった。
ユールベルは青白い光に守られたまま、その内側で呪文を唱え始めた。指先までピンと伸ばした左手をまっすぐアンジェリカに向け、右手は大きく弧を描きながら後方へと引いた。
あれは――。
アンジェリカはピンときた。ユールベルの声は聞き取れなかったが、彼女のポーズには見覚えがある。アンジェリカもすぐに呪文を唱え始めた。両手を上空に向け、高々と掲げる。静かな緊迫感が一面に張りつめた。ジークもリックも、ディスプレイを見上げながら固唾を飲んだ。
先に唱え終わったのはアンジェリカだった。掲げた手の上に集めた魔導の力を、ゆっくりとユールベルに向け、勢いよく放った。白い帯がすさまじい速度で伸びる。だが彼女に届く一歩手前で結界にはじきとばされた。しかし、同時に結界も消滅した。
ユールベルは右目を見開き、明らかに驚きの表情を見せた。それでも呪文の詠唱を止めることはなかった。
アンジェリカはもう次の呪文の詠唱に入っていた。今度はさらに短い呪文だった。またしてもユールベルより早く唱え終わり、再び彼女に向けて放った。
しかし、どういうわけかユールベルはよけようとも防ごうともせず、目を閉じ呪文を唱え続けていた。白い光球が彼女に迫る。それでも動かない。ついに無防備な状態のユールベルに直撃した。白い光に飲み込まれ、はじきとばされるのが見えた。が、それと同時に砂ぼこりが巻き上がり、その後の彼女の姿は見えなくなった。だが直撃したことは間違いない。防ぐこともなくまともに受けたのでは、無事であるはずはない。アンジェリカは目を凝らして、砂ぼこりの奥を見つめた。
薄曇りの向こう側で、何かが光った。
――何?
アンジェリカが目を細めたその瞬間。薄茶色に濁った空間から、彼女の胸を目がけ、白い光の矢が飛び出してきた。とっさに上体をねじり、間一髪でかわした。――かに見えたが、完全にはよけきれず、白い閃光は彼女の左肩をかすめていった。
「ぅうああぁあーーー!!!」
アンジェリカは絞り出すような悲鳴を上げ、肩を押さえてうずくまった。
「アンジェリカ!!」
ジークとリックは同時に叫んだ。ふたりの顔から一気に血の気が引いていった。彼らにアンジェリカの声は聞こえない。しかし、彼女の表情や様子を見ているだけで、つんざくような叫び声が聞こえてくるようだった。
ジークは居ても立ってもいられず、後ろからラウルに突進し、ヘッドセットに手を伸ばした。どうにかしてアンジェリカに声を届かせたい、その一心だった。しかし、あと少しというところで、ラウルのひじがジークのみぞおちにめり込んだ。
「うっ……」
ジークは冷や汗をにじませうずくまった。ラウルに一撃をくらわされたところを押さえ、歯を食いしばる。
「おとなしく見ていろ」
ラウルはディスプレイに目を向けたまま、振り返ることもなく、冷たく言い放った。
「大丈夫?」
リックはジークを心配そうに覗き込み、彼の背中に手を置いた。ジークはリックの顔を目にすると、徐々に落ち着きを取り戻した。
「俺よりもアンジェリカだ。やばいかもしれねぇな」
ジークは声をひそめた。リックは重々しくうつむいた。
「アンジェリカの攻撃をまともに受けて、それでも呪文を唱え続けるなんて、普通できないよ。それにユールベルのあの呪文て……」
「通常レベルの結界なら簡単に貫くほど強大な威力はあるが、その分、バカ長い呪文と、半端ねぇ集中力と、強大な魔導力に耐えられるだけの身体がいるとかいう、あんまり使えねぇヤツだな」
ジークは言葉にすればするほど絶望が近づいてくるように感じ、それ以上は何も言えなくなった。リックも同じように感じたのか、口をつぐんで黙りこくってしまった。ジークはみぞおちを押さえながら立ち上がり、再びディスプレイを見上げた。
砂ぼこりがおさまり、ユールベルの姿が次第にあらわになった。彼女もまったく平気というわけではなさそうだった。足元はふらつき、息もあらい。
ユールベルはこわばった表情で、茶色い靄にうっすらと浮かんだ人影をじっと見つめた。それがアンジェリカと判別できるようになるまで、そう時間はかからなかった。アンジェリカは片膝をつき、左肩を押さえ、頭をガクンと垂れ下げていた。肩を上下に揺らしているところから察すると、まだ意識はなくしていないらしい。
外した――。
ユールベルは右目を細め、焦りの色を見せた。
アンジェリカはその表情を見逃さなかった。痛みをこらえて立ち上がり、強気にユールベルに挑みかけるようににやりと笑ってみせた。
「あてが外れて残念そうね」
息苦しさをごまかすように、早口で一気に言った。彼女の額から頬へと、幾筋もの汗が伝った。
「あなたこそ」
ユールベルはあごを上げ、目一杯の余裕を装った。実際アンジェリカより、かなり余裕はあったのだろう。
アンジェリカはあごを引き、ユールベルを上目遣いで一睨みすると、自分のまわりに白く光る結界を張った。そして、その内側で攻撃呪文を唱え始めた。ユールベルも同じように結界を張り、呪文を唱え始めた。
ガクン。
アンジェリカはその途中で膝を折り、前のめりに倒れると、地面に手をついた。集まりかけていた魔導力も拡散し、結界も消滅した。
「アンジェリカ!!」
ジークは声の限り叫んだ。しかし、どんなに叫んでも彼女には届かない。
ユールベルは勝ち誇ったように口角を上げると、目を閉じ、よりいっそう魔導に集中した。彼女の両手の中の光球がぐんぐん大きくなっていく。
アンジェリカは片膝を立て、地面に手をつき、前傾姿勢でユールベルの様子をうかがっていた。彼女が目を閉じているのを確認すると、突然、地面を強く蹴って駆け出し、一気に加速した。一瞬のうちに結界をすり抜け、ユールベルの懐まで入り込む。そして、右手を彼女の脇腹に押し当て、短く呪文を唱えた。アンジェリカの指の間から白い閃光がもれる。
ユールベルは目を見開いて息を止めた。だが、その攻撃を防ごうとはしなかった。ぎゅっと唇を噛みしめると、すぐに呪文の続きを唱え始めた。
――効かない?!
アンジェリカは焦った。手を離さず、もういちど同じ呪文を口にした。ユールベルの腹部に、再び白い閃光が押しつけられる。同時に、ユールベルは両手を振り上げ、白い光球をアンジェリカの背中に勢いよく振り下ろした。アンジェリカは間一髪で薄く結界を張ったものの、それも弾き飛ばされ、光球ごと地面に叩きつけられた。
「アンジェリカ!!」
ジークが叫ぶと同時に、ラウルはカウントを取り始めた。
「ワン、ツー」
ユールベルは容赦なく二発目を撃ち込んだ。だがアンジェリカは地面を転がり、ぎりぎりでかわした。その勢いで立ち上がると、後ろへ飛び下がって身構えた。
ユールベルは脇腹の痛みをこらえながら、鼻先で軽く笑った。
「わかったかしら。私の体は人並み外れて魔導を受け付けにくいのよ。あなたの何倍もね」
「目に見えない薄い結界でもまとっているのかと思ったけど、なるほど、種も仕掛けもなかったわけね」
アンジェリカも余裕の笑顔で返そうと思ったが、その瞬間、背中に痛みが走り、逆に顔をしかめることになってしまった。深呼吸をして息を整えると、今度はかすかに笑ってみせた。
「だったら話は早いわ」
アンジェリカはユールベルに背を向けた。
「どういうつもり?!」
ユールベルはきつい口調で問いつめた。それは戸惑いからきているということは明らかだった。アンジェリカが降参するとはとても思えない。だとしたらなぜ背中を見せるのか。何か彼女に考えがあるのだろうか。でもそれがなんなのか、わからない……。ユールベルは次第に手のひらが湿ってくるのを感じた。
アンジェリカは自分の目の前、すなわちユールベルとは反対側に四角い板状の結界を作った。結界は通常、対象物(自分であることが多い)のまわりを囲うように張るものである。こんな奇妙な結界はあまり見ない。
ユールベルは、アンジェリカの挙動のすべてに目を奪われていた。それでも冷静さは失っていなかった。彼女の後ろ姿を見ながら、自分のまわりに静かに結界を張った。
アンジェリカはユールベルに向き直った。彼女の目をまっすぐ見据えながら、腕を伸ばし、呪文を唱え始めた。向かい合わせた手のひらが白く光り、その間に魔導力が集まる。かなり大きい。
ユールベルは内側にもう一つ結界を張り二重化した。アンジェリカの背後の四角い結界が不気味に白く光る。ユールベルの額に汗がにじんだ。これだけ念を入れても落ち着かない。
アンジェリカは頭よりも大きくなった光球を、自分の体に引きつけた。
――来る!
ユールベルの緊張が高まったそのとき、アンジェリカは地面を蹴り、体を半回転させた。そして、結界で作った四角い壁に向かって全魔導力を放射する。白い光はアンジェリカと結界の間で大きく膨張し、その反動で彼女の小さな体は弾丸のように吹き飛んだ。まっすぐ、ユールベルへと向かう。アンジェリカは彼女に体ごとぶつかり、腹部にひじを突き立てた。
その瞬間、ヒューンという音とともにディスプレイがブラックアウトした。続いて静電気がパチパチと軽い音を立てた。
「て……停電か?」
ジークは自信なさげにそう言って、あたりを見渡した。しかし、部屋の明かりは消えていない。
ラウルはヘッドセットを外し、振り返った。
両側のコクピットのふたがウィーンと機械音を立てながら、ゆっくりと開いていった。中から姿を現したアンジェリカとユールベルは、ポカンとした顔でラウルを見ている。
「ユールベル側のリミッターが働いて、システムが停止した」
ラウルの説明に反応する者は誰もいなかった。全員がきょとんとして彼を見つめている。ラウルは言葉を付け足した。
「つまり、アンジェリカの勝ちだ」
ジークの表情がパッと輝いた。
「やったな!」
ゆっくりと身を起こそうとしているアンジェリカに駆け寄り、コクピットから抱え上げると外に降ろした。
「ヒヤヒヤさせやがって!」
その言葉とはうらはらの思いきりの笑顔。ジークはアンジェリカの額に、軽くこぶしをねじ込んだ。
「もう! けっこう体中痛いんだから、ちょっとはいたわってよ」
そう言って頬をふくらませたアンジェリカも、やはり笑っていた。
「……納得いかない」
ユールベルはコクピットのふちに手を掛け、体を起こしながら声を震わせた。
「あんなの……魔導じゃないじゃない!」
彼女はラウルを見上げ、必死に訴えた。
「戦いにルールはない」
ラウルは腕を組み、冷めた声で言った。
「魔導以外の要素を軽視したのが、おまえの敗因だ。魔導耐性は高いが、身体的な能力は低い。その自覚があるのなら、魔導のみを遮る通常結界ではなく、あらゆる物質を遮断する高度な結界を使うべきだった」
ユールベルに返す言葉はなかった。それでも、やはり納得はできない。身をかがめ腹部を押さえながら、よろよろとコクピットから降りると、アンジェリカを鋭く睨み上げた。
「えっ?!」
リックはユールベルのポーズを見て、驚きの声を上げた。彼女は両手を前に突き出していた。そして、リックの懸念どおり、呪文を唱え始めた。緩やかなウェーブを描いた金の髪と、後ろで結ばれた白い包帯が、空気の対流を受けて舞い上がる。
「やめろ!」
ジークとリックはアンジェリカをかばうように立ちはだかった。ふたりは同時に結界を張り、さらにアンジェリカも結界を張り、三人のまわりに三重化した結界ができた。
ユールベルの手に魔導の力が集まり、白い光を放つ光球がふくらんでいく。
「大丈夫なの?」
リックは不安げに尋ねた。
「部屋までは守れねぇな」
ジークは前を向いたまま、いたずらっぽくニッと笑ってみせた。
ラウルは無表情でユールベルへと近づいていった。無言で彼女を冷たく見下ろした。そして、右手で光球を握りつぶし消滅させると、左手で彼女の腕をひねり上げた。
あっというまの出来事に、ジークとリックは呆気にとられた。
「……ぅ……ぁあああーーー!!!」
ユールベルはラウルに腕をつかまれたまま、うつむき、絶叫して泣いた。喉の奥から絞り出すような激しい慟哭が、ジークたちを揺さぶった。
「おまえたちは行け」
ラウルは後ろで立ち尽くす三人に言った。しかし、誰も動かない。
「行け!」
今度は振り向き、凄みをきかせた低音で命令した。
ジークはアンジェリカの肩に手をまわすと、渋る彼女を促し、三人で連れ立って部屋から出た。ユールベルの泣き叫ぶ声が、次第に遠くなっていった。
ユールベルの号泣は、徐々にすすり泣きへと変わっていった。そして、膝から崩れ落ちるようにぺたんと床に座り込んだ。ラウルは彼女を抱き上げ、ヴァーチャルマシンルームをあとにした。
ラウルは自分の医務室に戻ると、ユールベルをパイプベッドの白いシーツの上に降ろした。
「落ち着いたら帰れ」
ユールベルはうなだれたまま、首を小さく横に振った。肩から髪が落ち、合間から折れそうな白い首筋がのぞいた。
「勝手にしろ」
ラウルは無表情でそう言って立ち去ろうとした。だが、ユールベルの細い腕が、彼の長い髪をつかみ、引き止めた。
「……私を……救って……」
消え入りそうな儚い声。ラウルは彼女の腕を、肩を、首筋を、背中を、じっと見つめた。
「私におまえは救えない」
ユールベルの手から力が抜け、ぱたんとベッドの上に落ちた。それきり彼女は動かなかった。
ラウルは背中を向け、後ろ手で仕切りの白いカーテンを閉めた。そして、立ち止まることなく奥へと消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる