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兄に見られる

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ぎょっとして、目の前の少年を見る
茶髪前髪センター分けのチャラそうな男子だ
「フォトン!なんかそのオッサンと仲良さそうだけど。どういう関係?」
オッサン…!?え、俺の事…?
うっ…その言葉ガチで効くからやめて…
「はぁっ!?私のカレシに向かって何言ってんのよ!」
あわわ…!
「ふ、フォトンちゃんっ」
あれ?なんで俺この2人の仲裁してんの?
「か、彼氏ィ!?フォトン俺と付き合ってたじゃん!二股!?」
「何言ってんの?私は自然消滅したと思ってたんだけど…連絡もなかったし!
てか私がモデル始めてすぐ、別の女の子と付き合ってたじゃん!」
えぇ…高校生って意外とドロドロしてるんだな…
「っ…とにかく!俺は今でもフォトンが好きだよ…そんなオッサンやめて俺ともう1回付き合お?」
うぐっ…
「嫌だって言ってんじゃん!月代さん、コイツに付き合ってないで帰ろ」
と俺の方を向いたが。
「待ってフォトン!俺の話聞いてよ…!」
と、元彼は彼女の手首を掴んできた
「や…っ!離して!もうカレシいるんだから、話すことなんてないってば!」
…この子供、俺のかわいいフォトンちゃんの手首を…力を入れたらすぐに折れてしまいそうな細い手首を、あんなに乱暴に掴んで…!
ぱしっ
「やめて…!フォトンちゃんが嫌がってるでしょ」
さすがに彼の手を払った。
行こう、と彼女の肩を抱く。
「はぁ…ありがとう月代さん…久々に会ったらあんなにしつこくなっててビックリした~」
…ストーカーとかにならないかな…?
後ろから少年がフォトンちゃんを呼ぶ声が聞こえるが、ムカついてきて彼女の耳を塞いだ
「ひゃ…!?あ、歩きづらいよぉ~♡」イチャイチャ
彼女のカバンと、俺の彼シャツが入った紙袋を預かって車の後部座席に載せた
そしてメルセデスの助手席ドアを開け、大切な彼女を乗せる
…自分も運転席に座った
「フォトンちゃん、さっき掴まれたところ見せて
あの子すごく乱暴に掴んでたし…」
「え?大げさだよ~」
…どうやら、アザになってないか心配してると思われてるらしい。
俺は黙って除菌ティッシュを取り出し、彼女の手首を拭いた
「…ぶはっwそういう事だったの?ヤキモチ~?」ニヤニヤ
「…。
他に触られたところない?」
「んーん、ないよ!
月代さん、私が汚れてると嫌なんだ~」
「!そんな事ないよ!どんなフォトンちゃんだって好きだよ」
「うふふっ♡知ってる~♡」
ううっ…かわいい……!!!

彼女が住んでるマンションの近くにメルセデスを停め、彼女の荷物を持ってエスコートする
ん?
「フォトンちゃん、そこのベンチ座ってくれる?」
「え?」
「靴紐が緩んでいる」
彼女の手を引いてエントランス前のベンチに座らせる
「え~、家帰ったら結ぶし、気をつけて帰るからいいよー!」
「ううん、フォトンちゃんはじっとしてて」
と彼女の前に跪き、つやつやしたパンプスの靴紐をきゅっと結んだ
「え~!?月代さん結んでくれるの?もー優しい~♡♡」じたばた
「ちょっ、じっとして、て…ん?」
彼女の薄い靴下に、赤いものが滲んでいた
…!!
「酷い靴擦れだ…!い、いつからこんなふうになってたの?」
「ん?最初からこの靴合わないな~とは思ってたけど、かわいいし我慢してた!」
、、、
「フォトンちゃん…気づかなくてごめん……………………」
俺はすっかり意気消沈して、彼女の膝に触れた。
「えぇっ!?月代さんが謝ることじゃないよ!」
はぁ…。
とにかく俺は立ち上がって、彼女をお姫様抱っこした
「えぇっ!?ちょ、恥ずかしいよ!家すぐそこだし歩いて帰れるよ…!」
「ん?何やってんの?」

アークくん!
「ひぇ、お兄ちゃん…!うぅ…お兄ちゃんにだけは見られたくなかった…」
「は?てか月代なに俺の前でイチャついてんだよっ」
と俺に詰め寄ったが、彼の大切な妹を俺が抱えてる以上、無闇に小突いたりはできないようだ。
「…………アークくん、ごめん…………」
俺、デート終わるまでフォトンちゃんの靴擦れに気づかなかった…。
彼女のことはなんでも知っておきたいのに。
「は?なんだその深刻そうな顔……
………はっ、お前まさかフォトンにヤマシイことを…!!!」
…やましい事…?た、確かに俺ん家でしたかもね…
じゃなくて!
「フォトンちゃん、靴擦れしてたのに全然気づかなかった…。」
「…はぁ?」
「…ね、ねぇ…なんでもいいから降ろして…!」
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