9 / 68
第1章 メインストーリー
第8話 信頼
しおりを挟む
Bloom Sunsetを連れて、全員はあの広間へと入っていった。
「こんにちは~……って、誰もいないじゃん」
「今日はまだなのかな?」
「とりあえず~。ここは~、特別な場所だよ~。ゲームでいうところの、休憩スペースみたいなやつ~?」
「美琴、それちょっと違わないか?」
「なんて言うんだろう……難しいですね」
「ここの詳細は聞いておいた。どうやら、この大部屋に入ったバンドはここら辺で開催されるイベントにほぼ連絡なしで参加できるらしい」
えっ、何それ凄い便利。てことは、これってコンサート参加を優先させてもらえるバンドのための部屋ってこと?
「わ、私達がここ入って良いんですか?」
「良いよ~。この前の演奏聴いたし、あたしが保証しとくよ~」
「なんか、美琴にそういうの任せたくないよね」
「私も。なんか忘れちゃいそうだし」
「アッハハ! だろうな!」
「ムゥ~、じゃあしょうちゃんの補修、付き合ってあ~げない」
「ちょ、それは勘弁!」
なんかバンドらしくない会話してんな、俺たち。でもまあ、それで良いんだよな。
「それじゃあ~、あたし達はケーキ作りでもやりますか~」
「ん? ちょっとごめん、通知。えっと……あ、ダッシュボードからだ」
「良いなぁ、プロと連絡出来るって」
そう言う俺も、今じゃcolor’sと簡単にコンタクトできてるけど。
「う、嘘でしょ⁉︎」
「どした大声出して⁈」
「こ、これ見て!」
美由が見せたスマホの画面には、ダッシュボードが共有してきたあるニュースの記事の一面。
それは、ダッシュボードのメンバーである山村 宏太が、暴力団との関係を持っていたことを報道するものだった。
「これ……まずいんじゃない⁈」
「SNS確認しよ! かなり嫌な予感するけど…」
「……うん。私達のことまで疑われちゃってる」
「嘘でしょ……。どうしよ、いいとこだったのに」
無罪だってことは、他の人達は知ってるけど、俺たちのことを知らない人からすれば疑ってしまうのも当然だよね。
にしても、この状況はどうしよう。バンド継続なんてできるのかな。
「……あの! 私達にも協力させてください!」
「杏香……私からもお願いです! 私達の仲直りを手伝ってくれたお礼がしたいんです!」
「それに、審査員のえこ贔屓のお詫びも兼ねて」
私達だけが恩を受けておいて、何もお返しをしないわけにはいかない。
それに、ポシャンの音楽をもっと聴きたい。だから、何がなんでも!
「手伝うたって、何をどうすんだよ」
「ライブをやるんです! 私達も、全力でやります!」
「えっ、コラボってことだよね⁈ そんな簡単にできる⁈」
「あの、私達の新曲用の歌詞。来週には出来上がるんですよね?」
「え、あ、うん。間に合わせるよ」
「それができたら、私が中継を流します。SNSでライブすることで有名ですから!」
「杏香がこんなに熱くなってるの、久しぶりに見たかも。よーし、じゃあ張り切ってやろっか!」
「「おーっ!」」
その夜、颯太はテレビのニュースを眺めていた。やはり、ダッシュボードは駆け出しの頃でもあったため、どの報道番組もその事件でもちきりだった。
「はぁ~、大丈夫かな~……」
「大丈夫だよ! みんなでやるんだよ、なんとかなるって!」
「……それもそっか。サンキュ、元音」
妹に励まされるなんて、俺のメンツもズタボロだな。バンドって難しいや。
「今日はもう寝ないと。先お風呂入ってるね」
「あ、うん。分かった」
さて。じゃあ気晴らしに作詞でもしてようかな。先にBloom Sunsetの曲からやらないと。
翌日-
「お兄ちゃん、喫茶店に来てって美琴さんから」
「ん~。暑い中行きたくねぇけど、仕方ないか」
クーラーガンガン効いてるのに、もったいねぇ~。でも呼んでるわけだし、そんなこと言ってる場合じゃないよな。よし、行くか。
喫茶店-
「あ、来た来た~」
「ごめんなさい、実は私が呼んだんです」
「杏香……さん?」
「呼び捨てで構いません。それと、敬語はなしで。同年代だし、特に気を遣わなくても」
「あ、うん。で、どうしたの?」
なんか、あの日から一気にBloom Sunsetと距離が近くなったような。全然良いけど。
「その……作詞任せちゃっても良いのかなって。私達の曲なのに、手伝ってもらっちゃって」
「全然全然! 逆に気晴らしになってるし!」
「おかしいよね~、前までバンドに興味なくて詩も苦手だったのに、今じゃ作詞が気晴らしって~」
美琴はこんな状況でもいつも通りの雰囲気。焦ったり不安になったりしないのかな。
「そうそう~、その件でね~。作詞は終わってるの~?」
「早いな、まあ終わってるけど」
「はやっ! えっ、もう終わったの?」
「うん。はいこれ、ありがと」
昨日は暇だったし、あくまで詩の修正だったから楽だったのは事実。
それに、新しく詩も書き始められたし。
「なんか、颯太っち誇らしげだね~」
「そ、そう? 普通だと思うけど」
「もしかして、新しい詩ができてたり?」
「ギクっ! な、何のことかな~?」
「颯太っち~、目が泳いでる泳いでる~」
なんでこうも俺の行動って簡単に読まれるんだ? そんな単純なのか俺。
「えっ、本当に書いてたの。どこからネタが湧いてくるの?」
「アハハ、不思議だよね~。1日に5個は書いてるんじゃない~?」
「失礼な! 6個だよ!」
「6、6個……普通書けない」
いや、まだ短い詩しか書けないから。そんな凄くはないと思うけど。
「それでさ。新曲の詩もできたんだけど、どうかな?」
「どれどれ~?」
「……なんか、ポシャンの割に今回はポップみたいな歌詞じゃない」
「だよね。なんか、Bloom Sunsetが歌ってそうな歌詞っぽいなって自分でも思った」
「えっ、私達のこと本名で呼んでるの?」
「えっ?」
なんかおかしかったかな。普通のつもりだったんだけど。
「どのバンドもお客さんも、私達のことブルセットって呼んでるし」
「あ、そうなの。今知った」
「まあ隣町のバンドだからね~。こっちまでは情報が来ないんだよ~」
てことは、美琴の情報網はあくまでこの町の中だけってわけか。良かった、美琴ライン広すぎ問題とかはなくて。
「あの……ライブはいつやる? 私達は、来週なら土日以外いつでもやれる」
「俺たちは」……来週の水曜以降ならいつでも」
「じゃあ、木金どっちもやろうよ。なるべく多くの人に見てもらいたいし」
「なんか、あたし達だけで会議しちゃって良かったのかな~? しょうちゃんいないと、意味ない気もする~」
「一応はリーダーだもんね。アイツがリーダーってのも信じられないけど」
勉強苦手、体力だけに自信がある脳筋野郎。あれでリーダーやってるって知ってる人、絶対少ないよな~。
「まあ、どっちにしてもしょうちゃんは補修だから来れないか~」
「補修って。よくリーダーできるね」
「アハハ、みんなそう思ってるよ。ていうか、良いの? アイス、溶け溶けだよ」
「あっ! 話に夢中になってた…」
「へぇ~、きょうくん、案外可愛いんだね~」
「きょ、きょうくん? 私、女だけど…」
「だってクールじゃ~ん。あ、あたしのコーヒーの氷、全部溶けちゃた」
「美琴も夢中になってんじゃん」
案外仲良くなれるんだ。人馴れしてるわけでもないのに、なんか自然と他人だったはずの人と繋がってる。
「あの。この曲、ポシャンに提供します! その代わり……その曲、私達が歌わせてもらっても?」
「きょうくん……結構熱いこと言うね~、そういうの好きだよ~!」
「面白そう、やってみよ!」
「良かった……作曲は任せてください! 萌が得意なんで!」
「へ~、萌ちゃんが作曲するんだ~」
あのキャラにしては、かなりロック調の曲な気がするんだけど。人柄と曲ってマッチしないんだ。
「じゃあ、来週のライブまでお互い頑張るってことで」
「オッケ~。あたし達のライブで、無罪放免を勝ち取るよ~」
「本当は、美由にも来てほしいんだけど……」
「みーちゃんは、ちょっと音信不通なんだよね~」
だよね。美由が繋がってたから、今になっちゃってるのは事実だし。
そういうとこは、美由の弱いとこなんだよね。
「とりあえず~。練習にも来なかったらあたし達でお家に寄ろっか~」
「そうだね。じゃあ、今日の話はここまでにしよう」
「うん、それじゃあ解散で。お会計は美琴の分は奢りで
「俺は⁈」
「冗談だよ。本当、美琴の言ってた通りに純粋だね」
「美琴、変なこと教えないで」
「アハハ~、だって面白いじゃ~ん」
美琴が面白くても、こっちは面白くないっての。今思うと、美琴といると気疲れするわ。
でも、今日で目標が決まったわけだし改めて頑張るとしますか。
「こんにちは~……って、誰もいないじゃん」
「今日はまだなのかな?」
「とりあえず~。ここは~、特別な場所だよ~。ゲームでいうところの、休憩スペースみたいなやつ~?」
「美琴、それちょっと違わないか?」
「なんて言うんだろう……難しいですね」
「ここの詳細は聞いておいた。どうやら、この大部屋に入ったバンドはここら辺で開催されるイベントにほぼ連絡なしで参加できるらしい」
えっ、何それ凄い便利。てことは、これってコンサート参加を優先させてもらえるバンドのための部屋ってこと?
「わ、私達がここ入って良いんですか?」
「良いよ~。この前の演奏聴いたし、あたしが保証しとくよ~」
「なんか、美琴にそういうの任せたくないよね」
「私も。なんか忘れちゃいそうだし」
「アッハハ! だろうな!」
「ムゥ~、じゃあしょうちゃんの補修、付き合ってあ~げない」
「ちょ、それは勘弁!」
なんかバンドらしくない会話してんな、俺たち。でもまあ、それで良いんだよな。
「それじゃあ~、あたし達はケーキ作りでもやりますか~」
「ん? ちょっとごめん、通知。えっと……あ、ダッシュボードからだ」
「良いなぁ、プロと連絡出来るって」
そう言う俺も、今じゃcolor’sと簡単にコンタクトできてるけど。
「う、嘘でしょ⁉︎」
「どした大声出して⁈」
「こ、これ見て!」
美由が見せたスマホの画面には、ダッシュボードが共有してきたあるニュースの記事の一面。
それは、ダッシュボードのメンバーである山村 宏太が、暴力団との関係を持っていたことを報道するものだった。
「これ……まずいんじゃない⁈」
「SNS確認しよ! かなり嫌な予感するけど…」
「……うん。私達のことまで疑われちゃってる」
「嘘でしょ……。どうしよ、いいとこだったのに」
無罪だってことは、他の人達は知ってるけど、俺たちのことを知らない人からすれば疑ってしまうのも当然だよね。
にしても、この状況はどうしよう。バンド継続なんてできるのかな。
「……あの! 私達にも協力させてください!」
「杏香……私からもお願いです! 私達の仲直りを手伝ってくれたお礼がしたいんです!」
「それに、審査員のえこ贔屓のお詫びも兼ねて」
私達だけが恩を受けておいて、何もお返しをしないわけにはいかない。
それに、ポシャンの音楽をもっと聴きたい。だから、何がなんでも!
「手伝うたって、何をどうすんだよ」
「ライブをやるんです! 私達も、全力でやります!」
「えっ、コラボってことだよね⁈ そんな簡単にできる⁈」
「あの、私達の新曲用の歌詞。来週には出来上がるんですよね?」
「え、あ、うん。間に合わせるよ」
「それができたら、私が中継を流します。SNSでライブすることで有名ですから!」
「杏香がこんなに熱くなってるの、久しぶりに見たかも。よーし、じゃあ張り切ってやろっか!」
「「おーっ!」」
その夜、颯太はテレビのニュースを眺めていた。やはり、ダッシュボードは駆け出しの頃でもあったため、どの報道番組もその事件でもちきりだった。
「はぁ~、大丈夫かな~……」
「大丈夫だよ! みんなでやるんだよ、なんとかなるって!」
「……それもそっか。サンキュ、元音」
妹に励まされるなんて、俺のメンツもズタボロだな。バンドって難しいや。
「今日はもう寝ないと。先お風呂入ってるね」
「あ、うん。分かった」
さて。じゃあ気晴らしに作詞でもしてようかな。先にBloom Sunsetの曲からやらないと。
翌日-
「お兄ちゃん、喫茶店に来てって美琴さんから」
「ん~。暑い中行きたくねぇけど、仕方ないか」
クーラーガンガン効いてるのに、もったいねぇ~。でも呼んでるわけだし、そんなこと言ってる場合じゃないよな。よし、行くか。
喫茶店-
「あ、来た来た~」
「ごめんなさい、実は私が呼んだんです」
「杏香……さん?」
「呼び捨てで構いません。それと、敬語はなしで。同年代だし、特に気を遣わなくても」
「あ、うん。で、どうしたの?」
なんか、あの日から一気にBloom Sunsetと距離が近くなったような。全然良いけど。
「その……作詞任せちゃっても良いのかなって。私達の曲なのに、手伝ってもらっちゃって」
「全然全然! 逆に気晴らしになってるし!」
「おかしいよね~、前までバンドに興味なくて詩も苦手だったのに、今じゃ作詞が気晴らしって~」
美琴はこんな状況でもいつも通りの雰囲気。焦ったり不安になったりしないのかな。
「そうそう~、その件でね~。作詞は終わってるの~?」
「早いな、まあ終わってるけど」
「はやっ! えっ、もう終わったの?」
「うん。はいこれ、ありがと」
昨日は暇だったし、あくまで詩の修正だったから楽だったのは事実。
それに、新しく詩も書き始められたし。
「なんか、颯太っち誇らしげだね~」
「そ、そう? 普通だと思うけど」
「もしかして、新しい詩ができてたり?」
「ギクっ! な、何のことかな~?」
「颯太っち~、目が泳いでる泳いでる~」
なんでこうも俺の行動って簡単に読まれるんだ? そんな単純なのか俺。
「えっ、本当に書いてたの。どこからネタが湧いてくるの?」
「アハハ、不思議だよね~。1日に5個は書いてるんじゃない~?」
「失礼な! 6個だよ!」
「6、6個……普通書けない」
いや、まだ短い詩しか書けないから。そんな凄くはないと思うけど。
「それでさ。新曲の詩もできたんだけど、どうかな?」
「どれどれ~?」
「……なんか、ポシャンの割に今回はポップみたいな歌詞じゃない」
「だよね。なんか、Bloom Sunsetが歌ってそうな歌詞っぽいなって自分でも思った」
「えっ、私達のこと本名で呼んでるの?」
「えっ?」
なんかおかしかったかな。普通のつもりだったんだけど。
「どのバンドもお客さんも、私達のことブルセットって呼んでるし」
「あ、そうなの。今知った」
「まあ隣町のバンドだからね~。こっちまでは情報が来ないんだよ~」
てことは、美琴の情報網はあくまでこの町の中だけってわけか。良かった、美琴ライン広すぎ問題とかはなくて。
「あの……ライブはいつやる? 私達は、来週なら土日以外いつでもやれる」
「俺たちは」……来週の水曜以降ならいつでも」
「じゃあ、木金どっちもやろうよ。なるべく多くの人に見てもらいたいし」
「なんか、あたし達だけで会議しちゃって良かったのかな~? しょうちゃんいないと、意味ない気もする~」
「一応はリーダーだもんね。アイツがリーダーってのも信じられないけど」
勉強苦手、体力だけに自信がある脳筋野郎。あれでリーダーやってるって知ってる人、絶対少ないよな~。
「まあ、どっちにしてもしょうちゃんは補修だから来れないか~」
「補修って。よくリーダーできるね」
「アハハ、みんなそう思ってるよ。ていうか、良いの? アイス、溶け溶けだよ」
「あっ! 話に夢中になってた…」
「へぇ~、きょうくん、案外可愛いんだね~」
「きょ、きょうくん? 私、女だけど…」
「だってクールじゃ~ん。あ、あたしのコーヒーの氷、全部溶けちゃた」
「美琴も夢中になってんじゃん」
案外仲良くなれるんだ。人馴れしてるわけでもないのに、なんか自然と他人だったはずの人と繋がってる。
「あの。この曲、ポシャンに提供します! その代わり……その曲、私達が歌わせてもらっても?」
「きょうくん……結構熱いこと言うね~、そういうの好きだよ~!」
「面白そう、やってみよ!」
「良かった……作曲は任せてください! 萌が得意なんで!」
「へ~、萌ちゃんが作曲するんだ~」
あのキャラにしては、かなりロック調の曲な気がするんだけど。人柄と曲ってマッチしないんだ。
「じゃあ、来週のライブまでお互い頑張るってことで」
「オッケ~。あたし達のライブで、無罪放免を勝ち取るよ~」
「本当は、美由にも来てほしいんだけど……」
「みーちゃんは、ちょっと音信不通なんだよね~」
だよね。美由が繋がってたから、今になっちゃってるのは事実だし。
そういうとこは、美由の弱いとこなんだよね。
「とりあえず~。練習にも来なかったらあたし達でお家に寄ろっか~」
「そうだね。じゃあ、今日の話はここまでにしよう」
「うん、それじゃあ解散で。お会計は美琴の分は奢りで
「俺は⁈」
「冗談だよ。本当、美琴の言ってた通りに純粋だね」
「美琴、変なこと教えないで」
「アハハ~、だって面白いじゃ~ん」
美琴が面白くても、こっちは面白くないっての。今思うと、美琴といると気疲れするわ。
でも、今日で目標が決まったわけだし改めて頑張るとしますか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる