虹虹の音色

朝日 翔龍

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第1章 サイドストーリー 恐怖の怪談七不思議

第1話 羽丘学園七不思議

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 お盆休み、ポシャンのメンバーは勉強会を兼ねて美由の喫茶店に来ていた。

「うわ~、英語の課題片付かね~!」
「英語なら教えられますよ。見せてくださ-⁉︎」


 中学英語とは大違いの高等英語に、元音は戸惑った。

「しょうがないな~、颯太ほどじゃないけど手伝うよ~? この文法はね~……あれ~? ごめ~ん、文法書貸して~」
「持ってねぇよ!」
「私も、持ってない」
「ぼくは文法書買ってない」


 羽丘学園の場合、教科書以外の参考書や文法書は各自の購入になるため持ってない人もいる。
 つまりは、全員持っていないのだ。

「私の学校だよ!」
「俺もだぜ、チクショー、取りに行くしかねぇか」
「取りに行けないよ~? お盆の間は閉校だも~ん」
「そう、それに立ち入った場合は罰則レポートだってある。諦めて自分で-」
「よし、取りに行くぜ!」
「ちょっと、今の話聞いて-」
「そうと決まれば、夜に行こうぜ!」
「「えっ?」」


 なぜか夜に行こうという提案に、全員はキョトンとした。

「せっかくだし、アレの解明を兼ねて肝試ししようぜ?」
「あぁ~、アレ、ね~?」
「アレって……まさかアレ⁈」
「アレって?」
「ぼくは分かった。それなら興味もあるし、なにより生徒のいたずらだったら困るしついていく」
「私知ってる。お兄ちゃんから聞いたことあるけど、“七不思議”ですよね?」


 それは、“羽丘学園七不思議”と呼ばれている原因不明の現象。それの解明を兼ねた忘れ物回収をするというのだ。

「でも、夜の学校行くの怖い…」
「幽霊なんて非科学的なもの、いるわけないよ」
「ケンケン~、現実的すぎて面白くないじゃ~ん」
「それでも怖いものは怖いですよね」
「僕も怖いかな。いつ行くとかは?」
「もちろん、深夜2時に決まってるだろ!」



 深夜2時、羽丘学園-

「よし、行くぜ!」
「本当に行くの?」
「僕達まで入って良いのかな?」
「だよね、まだ中学生なのに…」
「ぼくが許可するよ。本当はダメだけど」
「珍しくケンケンがオーケー出したね~。実は怖いの、苦手とか~?」
「うぐっ」


 真面目で硬派な賢信ですら、夜の学校となると怖いものになっていた。

「アッハハ! 幽霊なんていやしないって言っといて、怖いんじゃんかよ!」
「……非科学的なものを証明するためには、第三者の証言も欲しいから…」
「もう、駄弁ってないで早くいこ! 蚊に刺されたら嫌だし」
「そうですね、それでどこから入るんですか?」
「ふっふ~、美琴ちゃんにお任せあれ~。実はこの学校、壁の1箇所が崩れててね~、簡単に入れちゃうんだ~」
「え、ズボラな学校」

 崩れてるまま放置って、泥棒とか入りそうだけど大丈夫なのかな。

「もちろん、だからって簡単には入れないよ~。そこに、植木があるからね~」
「えっ、美琴! この時期、虫とか多いんだよ⁈    そういうとこはやめようよ、ね?」
「いいや、行くぞ。美琴、それどこだ?」
「行くんだ~。いきなり七不思議に挑むんだね~」
「な、七不思議⁈   そこが⁉︎」


 
 美琴が言うには、その崩れた壁を越えると必ずどこかを怪我するらしい。
 それと同時に、誰かに叩かれたような痛みが走るとも。

「いやいや! 痛いの嫌~!」
「美由、ちょっと大声出しすぎ!」
「注射を嫌がる子供みたいですよ、美由さん」
「ぼ、僕も痛いのは嫌だけど」
「それじゃあ、行くぜ!」


 全員は、崩れた壁を越えていった。その先に待つ恐怖が、どれほどなものかも知らずに……。
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