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第1章 サイドストーリー 恐怖の怪談七不思議
第3話 恐怖のどん底
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全員は、1階の特別教室だけがある別館から、教室だけがある本館へと繋がる渡り廊下にいた。
「職員室から1-Cへの近道ってなると……この1階の渡り廊下から行ったほうが早いかな?」
「この時間だと、扉が閉まってるかも……あ、そっか。美琴さんが持ってたか」
「そうだよ~。でも渡り廊下の鍵はないんだよね~。だって、あの廊下も七不思議の1つだからね~」
「「は?」」
ちょ、なんで通るとこ全部が七不思議になってるわけ? もしかして、これ全部……。
「ちょっと待って美琴! もしかして、美琴の自作自演とか言わないよね⁈」
「あれ~? もうバレてた~?」
「やっぱり。藤沢さん、そういうのやめてよ。みんな怖がってるじゃん」
「お、俺は怖がってないし!」
「ぼくも、別に怖いとかじゃなくて…」
いやいや賢信さん。あなたが1番肩震わせてたし。別に怖くてもいいと思うけどな。
「あ、でも~。渡り廊下のやつは、本当の七不思議だよ~? しかも、最凶って言われてるくらいのね~」
「美琴、もういいよ。どうせハッタリでしょ?」
「違うよ~。深夜の学校の本館に繋がるガラス戸にね~。女の子が映るんだって~!」
おどろおどろしい口調で、美琴はそう言った。その演技力には、流石の壮亮さえ息を飲んだ。
「だ、だけどよ。深夜のガラス戸って、鏡みたいになるだろ? ほら、ソイツの顔が映ったとかって-」
「ううん~、そのガラス戸の向こうに立ってたらしいよ~?」
「いやぁぁぁぁぁ! も、もう帰る!」
「ちょ、美由さん⁉︎」
美由は恐怖に耐えきれなくなり、振り向いて別館に戻ろうとした。だが-
「ウソ⁉︎ 何で閉まってるの⁈ 美琴、まさかあんた……!」
「あたしじゃないよ~? だってあたし、先頭じゃ~ん」
そう、別館のガラス戸が閉まっていたのだ。しかも、鍵まで丁寧に。
「じゃ、じゃあ何で閉まってるの? だって、私達、ここから入ってきたんだよ⁈」
「みーちゃん、落ち着いて~。本館にだって非常口はあるし、出られるって~」
「いや! 本館のガラス戸、行きたくない!」
「だからって、ここにいても仕方ないだろ」
「じゃあ、どうしろっての⁉︎」
「美由さん、私達もいますから」
「そうだ! 歌でも歌ったら、もしかしたら気分が晴れるかも!」
その壮亮の案が、すんなりと全員の胸に伝わった。それだけ恐怖心が強かったのだろう。
「で、何歌うよ?」
「うーん……“Higher Higher”で!」
「よし! じゃあセーの!」
「騒がしい毎日が恋しい けれど」
「このままでいられないんだ もっと飛び立ちたい」
全員が口を揃えて歌い出した。そのわずかな希望が、ある音で消えた。
「ね、ねぇ。何か聞こえない?」
ザッ、ザザっ--
「ス、スピーカーから……ですよね?」
「で、でも放送の謎は解けてるし、怖くなんか-」
ポロンポロロンと、ピアノの音がスピーカーから流れた。そのメロディは、今歌っていたはずの“Higher Higher ”だった。
「どうなってんの⁉︎ 放送室に私達の曲ないよ⁈」
「し、しかもピアノもないはず……!」
「だぁぁぁぁぁ! こうなったら、もう目を瞑って本館行くぞ!」
「「うん!」」
正直、勝喜の提案が正しかった。一本道の廊下なら、目を瞑っていてもガラス戸は開けられる。
それなら怖い思いをすることもない。それが救いでもあった。
そして、全員は本館へと入って闇雲に走り抜けた。気付けばそこは、体育館への渡り廊下。
どうやら、ピアノの音から逃げたい思いもあいまって、遠くに来てしまったらしい。
「ちょっと美琴! さっきのは⁈」
「あ、あたし知らない……あんなの、聞いたことないよ~!」
「ちょっと、美琴さんまで……。と、とりあえず忘れ物回収して逃げましょ! なんか呪われちゃいそう!」
「も、元音。それマジで言ってるの?」
「何できみはそんなに落ち着けられるの?」
「えっ? だって、7人もいるから怖くないと思うけど」
「へ、7人⁉︎」
その言葉を聞いた途端に、壮亮以外の“5人”は固まった。そう、本来ならば美由、美琴、元音、賢信、勝喜、そして壮亮を含めた“6人”なのだ。
だが、壮亮は“7人”と言った。数え間違いであってほしいと、誰もが祈っていた。
「あれ? さっき鏡で見たときは、僕含めて7人だったんだけどな」
「鏡って~、廊下の大きいやつだよね~?それも七不思議だよ~」
「も、もう七不思議とかどうでもいい。早く帰ろうぜ!」
「そうそう! 何なのこの学校!」
「一応は自分の通学校だからそう言うと良くないよ」
「ケンケンだってそう思ってそうだけど~?」
「ぼくは別に。この学校の生徒会をやってる以上、そんなこと思うわけにはいかないの!」
「いた~! ケンケン、ゲンコツは勘弁だよ~」
い、意外。賢信さんって、真面目なイメージあったけどこんな一面があったんだ。
なんだ、案外普通な人なんだ。
「ん? 何か言いたげだね」
「い、いえ別に! それより、1-Cに向かわないと!」
「そうですよ! 早く帰るなら、早く済ませちゃいましょ!」
「で、でもよ。ここから1-Cに戻るってことはよ…」
「あの鏡の前を絶対通ることになるじゃん!」
「それが嫌なら、あそこから暗幕を借りればいいんじゃ?」
壮亮はある教室の暗幕を指差した。たしかに、それがあれば鏡を隠せて何も見なくて済む。
「良いね~。じゃあ、それはあたしがやるよ~」
「絶対お願い!」
「もちろ~ん。美琴ちゃんにお任せあれ~」
そして計画通りに美琴は鏡に暗幕をかけて、それを見えないようにした。そのおかげで恐怖心も薄れて全員も簡単に鏡の前を通れた。
そしてようやく、1-Cの前に辿り着いた。だが、ここで恐怖は終わらない。帰るまでが遠足というように、まだ恐怖は続いていくのだ。
「職員室から1-Cへの近道ってなると……この1階の渡り廊下から行ったほうが早いかな?」
「この時間だと、扉が閉まってるかも……あ、そっか。美琴さんが持ってたか」
「そうだよ~。でも渡り廊下の鍵はないんだよね~。だって、あの廊下も七不思議の1つだからね~」
「「は?」」
ちょ、なんで通るとこ全部が七不思議になってるわけ? もしかして、これ全部……。
「ちょっと待って美琴! もしかして、美琴の自作自演とか言わないよね⁈」
「あれ~? もうバレてた~?」
「やっぱり。藤沢さん、そういうのやめてよ。みんな怖がってるじゃん」
「お、俺は怖がってないし!」
「ぼくも、別に怖いとかじゃなくて…」
いやいや賢信さん。あなたが1番肩震わせてたし。別に怖くてもいいと思うけどな。
「あ、でも~。渡り廊下のやつは、本当の七不思議だよ~? しかも、最凶って言われてるくらいのね~」
「美琴、もういいよ。どうせハッタリでしょ?」
「違うよ~。深夜の学校の本館に繋がるガラス戸にね~。女の子が映るんだって~!」
おどろおどろしい口調で、美琴はそう言った。その演技力には、流石の壮亮さえ息を飲んだ。
「だ、だけどよ。深夜のガラス戸って、鏡みたいになるだろ? ほら、ソイツの顔が映ったとかって-」
「ううん~、そのガラス戸の向こうに立ってたらしいよ~?」
「いやぁぁぁぁぁ! も、もう帰る!」
「ちょ、美由さん⁉︎」
美由は恐怖に耐えきれなくなり、振り向いて別館に戻ろうとした。だが-
「ウソ⁉︎ 何で閉まってるの⁈ 美琴、まさかあんた……!」
「あたしじゃないよ~? だってあたし、先頭じゃ~ん」
そう、別館のガラス戸が閉まっていたのだ。しかも、鍵まで丁寧に。
「じゃ、じゃあ何で閉まってるの? だって、私達、ここから入ってきたんだよ⁈」
「みーちゃん、落ち着いて~。本館にだって非常口はあるし、出られるって~」
「いや! 本館のガラス戸、行きたくない!」
「だからって、ここにいても仕方ないだろ」
「じゃあ、どうしろっての⁉︎」
「美由さん、私達もいますから」
「そうだ! 歌でも歌ったら、もしかしたら気分が晴れるかも!」
その壮亮の案が、すんなりと全員の胸に伝わった。それだけ恐怖心が強かったのだろう。
「で、何歌うよ?」
「うーん……“Higher Higher”で!」
「よし! じゃあセーの!」
「騒がしい毎日が恋しい けれど」
「このままでいられないんだ もっと飛び立ちたい」
全員が口を揃えて歌い出した。そのわずかな希望が、ある音で消えた。
「ね、ねぇ。何か聞こえない?」
ザッ、ザザっ--
「ス、スピーカーから……ですよね?」
「で、でも放送の謎は解けてるし、怖くなんか-」
ポロンポロロンと、ピアノの音がスピーカーから流れた。そのメロディは、今歌っていたはずの“Higher Higher ”だった。
「どうなってんの⁉︎ 放送室に私達の曲ないよ⁈」
「し、しかもピアノもないはず……!」
「だぁぁぁぁぁ! こうなったら、もう目を瞑って本館行くぞ!」
「「うん!」」
正直、勝喜の提案が正しかった。一本道の廊下なら、目を瞑っていてもガラス戸は開けられる。
それなら怖い思いをすることもない。それが救いでもあった。
そして、全員は本館へと入って闇雲に走り抜けた。気付けばそこは、体育館への渡り廊下。
どうやら、ピアノの音から逃げたい思いもあいまって、遠くに来てしまったらしい。
「ちょっと美琴! さっきのは⁈」
「あ、あたし知らない……あんなの、聞いたことないよ~!」
「ちょっと、美琴さんまで……。と、とりあえず忘れ物回収して逃げましょ! なんか呪われちゃいそう!」
「も、元音。それマジで言ってるの?」
「何できみはそんなに落ち着けられるの?」
「えっ? だって、7人もいるから怖くないと思うけど」
「へ、7人⁉︎」
その言葉を聞いた途端に、壮亮以外の“5人”は固まった。そう、本来ならば美由、美琴、元音、賢信、勝喜、そして壮亮を含めた“6人”なのだ。
だが、壮亮は“7人”と言った。数え間違いであってほしいと、誰もが祈っていた。
「あれ? さっき鏡で見たときは、僕含めて7人だったんだけどな」
「鏡って~、廊下の大きいやつだよね~?それも七不思議だよ~」
「も、もう七不思議とかどうでもいい。早く帰ろうぜ!」
「そうそう! 何なのこの学校!」
「一応は自分の通学校だからそう言うと良くないよ」
「ケンケンだってそう思ってそうだけど~?」
「ぼくは別に。この学校の生徒会をやってる以上、そんなこと思うわけにはいかないの!」
「いた~! ケンケン、ゲンコツは勘弁だよ~」
い、意外。賢信さんって、真面目なイメージあったけどこんな一面があったんだ。
なんだ、案外普通な人なんだ。
「ん? 何か言いたげだね」
「い、いえ別に! それより、1-Cに向かわないと!」
「そうですよ! 早く帰るなら、早く済ませちゃいましょ!」
「で、でもよ。ここから1-Cに戻るってことはよ…」
「あの鏡の前を絶対通ることになるじゃん!」
「それが嫌なら、あそこから暗幕を借りればいいんじゃ?」
壮亮はある教室の暗幕を指差した。たしかに、それがあれば鏡を隠せて何も見なくて済む。
「良いね~。じゃあ、それはあたしがやるよ~」
「絶対お願い!」
「もちろ~ん。美琴ちゃんにお任せあれ~」
そして計画通りに美琴は鏡に暗幕をかけて、それを見えないようにした。そのおかげで恐怖心も薄れて全員も簡単に鏡の前を通れた。
そしてようやく、1-Cの前に辿り着いた。だが、ここで恐怖は終わらない。帰るまでが遠足というように、まだ恐怖は続いていくのだ。
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