虹虹の音色

朝日 翔龍

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第2章 サイドストーリー カラフルリバティ

第1話 二兎を追うものは一兎をも得ず

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 これは、color’sがデビューしたばかりの日。

「俺たちの先輩デビューを祝って!」
「「かんぱ~い!」」
「いや、本当にBig newsだね! 沙弥もこれからは忙しいかもね!」
「えぇ、忙しいのは困るなぁ。もっとのんびりしてたいよ」
「ていうか、嘉道は馴れ馴れしくすんな! お前が1番年下なんだぞ!」
「まあまあ、嘉道くんはそういうの気にするような人じゃないし」


 この日はcolor’sのデビューを祝う会ということで、カラフルリバティがパーティを開いていた。

「そしてなにより! 今日は沙弥さんの誕生日ってことで、買ってきました巨大ケーキ! 9人で分けましょ!」
「デ、デカ…どこで買ってきたんだこれ」
「え? もちろん、フランスから取り寄せたパーティ用のケーキだよ」
「フランス⁈   パーティ用⁈」


 カラフルリバティのドラム担当、二葉 新奈ふたば にいなはとある大企業のご令嬢。
 そのため、簡単に豪華なものをポンと出せるのだ。だが、一般人の感性がないのが傷。そんな散財している様子を見せられると、誰しもが嫌な気分になる。
 一応、カラフルリバティとcolor’sのメンバーは慣れているかつ理解もあるため、特に気にはしない。

「まあ食べよっか、もったいないし」
「そう言って、ただ単に甘いもの食べたいだけだろ優花ゆかは」
「うっ、たまには良いじゃん!」
「まあまあ、姉妹バンドで喧嘩しなくても」
神奈かながカラリバのリーダーで良かったよ」
「ありがとう養平ようへい
「とりあえず、改めて祝ったほうがbetterじゃないか?」
「そうだね」


 カラフルリバティのメンバーが立ち並び、深呼吸をして息を整えた。

「カラフルリバティのリーダー、キーボード担当中山なかやま 神奈!」
「同じくカラフルリバティのギターボーカル担当橘川きっかわ   養平!」
「カラフルリバティのベース担当、大澤おおさわ嘉道!」
「カラフルリバティ、ドラム担当の二葉 新奈!」
「「私達カラフルリバティは、color’sの門出を心からお祝いします!」」


 color’sの弟子として生まれたカラフルリバティのメンバーのため、彼らのデビューを本当に誇りに思っていた。
 そしていつかは自分たちもと、そう高みを目指し始めた。

「じゃあ、color’sもお返しやらないとね。ボーカル担当の水谷 沙弥みずたに さや
「ギター担当の黒田 洸哉くろだ こうや
「ベース担当、穂沿 藺願ほそい いね!」
「ドラム、犬飼 剛志いぬかい つよし
「DJの鐘山かねやま優花」
「「カラフルリバティの祝いを胸に、頑張り続けます!」」


 まさかの息のあった返しに、カラフルリバティのメンバーは言葉を失くした。

「え、もしかして僕達が祝うこと知ってました?」
「まさか! 予想してただけだよ」
「カラリバのことだから、祝うに決まってるってさ。沙弥の勘、舐めちゃいかんぜ?」


 
 楽しい祝いの会は、笑いが絶えることなく続いた。そして、それからというもの、カラフルリバティは精一杯練習に励んだ。

「新奈、もう少し音の強弱つけられるか?」
「分かった!」
「嘉道はもう少しアンプのボリューム上げて良い」
「OK! 流石は養平、goodな耳してるね!」
「ヘヘッ、俺の耳はどんなやつよりも良いんでな! それより、神奈? どうしたよ、キーボードのミス目立ってたぞ?」
「……」
「おい、神奈?」
「あっ、ごめん! ちょっと疲れちゃって」

 たしかに疲れてそうだけど、にしてはどこかsadな表情にも見えるよ?

「ごめんね、今日は帰る。明日にはいつもの調子に戻ると思うから。ごめんね!」
「wait、神奈! …行っちゃったか」
「どうしたんだろう? 私、何もしてないよね?」
「新奈は特に関係してないはずだが…仕方ない、少し様子を…?」


 床に落ちている1枚の紙切れを、養平は見つけて拾い上げた。

「よろしければ、ご連絡ください。ロックバンド・Red Breakersより⁉︎」
「what⁉︎   神奈、浮気してたの⁈」
「嘘でしょ、ありえないんだけど」
「待った待った! まだそうと決まったわけじゃないんだ。あくまで声をかけられただけかもしれないだろ?」

 oh、その可能性もあるね。でも、ならなんでwonderしてるんだ? 俺たちのバンド、選ぶはずじゃん。

「こりゃ、話聞くしかないね!」
「ちょ、おい新奈! 行くぞ!」
「I see!」



 神奈の家-

「ヤバっ、あの紙落としてきちゃった。怒ってるだろうな~…なんて説明しよう…?」

 ピンポーン-

「き、来ちゃった⁉︎   もうこうなったら、素直に言うしかないよね!」


 覚悟を決めて、神奈は玄関を開けた。案の定扉の先には憤りしか感じられない顔をするメンバーがいた。

「あ、あの紙見ちゃったよね…」
「あぁ。まあ、神奈のことだから信じちゃいるけど…実際どうなんだ?」
「…その…正直、行きたい…かな」
「やっぱり! だから今日の練習、本気出せなかったんでしょ⁉︎   私達のリーダーやってるのに、何考えてんの⁉︎」
「神奈には失望したよ。leaderだったけど、あまりにbadな行為、許せないね」


 神奈も、その声には納得していた。だから言い返さず、素直に聞き入れた。
 それで、自分の道が開けると思っていたから。

「もういいよ、帰ろ!」
「そうだな、じゃあこれっきりで」
「Never come! 短い間、お疲れ様」


 冷たく切れた絆を気にすることはなく、神奈は家に戻った。



 そしてその夜。Red Breakersとの待ち合わせの場所へと神奈は訪れた。
 そこには、先日会ったボーカルの清浦 香純きようら かすみが立っていた。

「ごめんなさい、遅れちゃって! それで、バンドの件、お願い-」
「その件なんですけど、ごめんなさい。実はキーボード、いい人見つけちゃって。なので、今まで通りカラリバで頑張ってください」
「えっ?」


 聞き捨てならない言葉に、神奈は固まった。カラフルリバティを捨ててここに来た。それなのに、何も叶わないと悟った瞬間、ただ彼女は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
 みぞおちの辺りからヒンヤリとした何かが這い上がり、背中には冷や汗が流れる。
 風がなぜか冷たく感じられる、世界がスローモーションになる。
 イタズラに過ぎていく時さえも感じられてしまう。そしてそれは段々と感情へ変わる。だがその前に香純の姿はなかった。

 
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