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4節 破壊の芽
第10話 親子
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俺たちは飛び出した。どんな手を使ってでも、勝つために。今の俺たちじゃ、正々堂々戦ってノールには勝てねぇ。悔しいが、それが事実だ。
「この空間は私のテリトリー。脅威だって呼び寄せられる。ほら、こんな風にね!」
「ウソだろ⁉︎ せっかくのチャンスだってのに!」
「当たり前だな。ここは脅威の口の中だ…? いや待て。脅威の口は、いわばゲートだ。てことは、この先って…」
脅威の口ってゲートだったのか。てっきり、目には見えない、脅威の住処とばかり思ってたぜ。
「ドンボ、一か八かだ。ぼくたちは、この先へ行く! その間は、キールとエドで-」
「スタントが残れ。俺とエド、エルゴで行くぜ」
「俺も賛成っす。新生コンビのほうが、映像として映えるっすもん」
「俺様は父ちゃんといられれば、それで充分だぜ!」
「フォール、指揮は任せたぜ! 俺たちに構う必要はねぇ、こっちだけに集中してろよ!」
そう言い残して、俺たちは脅威の口の先へ急いだ。だが、どれだけ離れようと、俺たちは一緒だ。
それさえ覚えていれば、絶対に大丈夫だ。俺たちは負けやしねぇ。
「見えた。予想的中だ」
「うっわ、なんだこれ⁉︎」
辿り着いた先には、大きな空間の歪みでできた穴があった。その穴は上空にあるらしく、そこから見えたのは、ここと同じように暗い世界。
草木はなく、枯れた大地が広がり、赤黒い雲が空を覆っている。そしてなにより、数多の脅威が群れをなしてに生息している。
どうやら、ここは脅威が地球を支配している世界線らしい。そして俺はようやく脅威の口が何かを知った。
「まさかだが…こういう世界線に繋がっているのが脅威の口ってわけか⁉︎」
「そうっすよ。そして突然現れて、何体かの脅威を放出した後に自然と閉じられる不思議なゲートっす。それが普通なんすけど、これだけは特殊だったんすよ」
言われなくても分かる。前に脅威の口を目の当たりにしてるからな。あれは、たしかに何体かを出し切った後に消えた。だがこれは、消える気配がねぇ。
「まだ研究段階なんで違うかもっすけど…。脅威の口から放出される脅威の数は、脅威が支配する世界線に存在する脅威の数に比例する、って言われてるんすよね」
「違うだろうな。だとしたら、俺たちが相手にしてきた脅威の口の先にいる脅威の数、めっちゃ少ねぇぜ」
脅威で成り立ってる世界なのに、それが少ねぇわけがねぇ。これくらい蔓延っているのが普通だろ。
「とりあえず…。この穴を塞げば、脅威は現れないはずっす!」
「なるほどな! それじゃあ、エドとエルゴは護衛を任せたぜ。俺が穴を塞ぐ!」
フラットさんほどの強い神力があれば、きっとできるはずだぜ。俺にできるかどうかじゃねぇ。やるだけだ。
俺は穴の周りを触るように手を置き、神力を引き出した。そのときだった。穴の向こうにいる脅威が、こちらに気づいた。
「なっ⁉︎」
「神力に反応するんすよ! 俺たちが守るっすから、集中するっす!」
「俺様もついてる! 父ちゃんは、俺様が守る!」
ニャルほどな。神力に反応したからこっちに気付いたわけか。てか、今更だが、どうやって守るんだ?
「行くっすよ!」
「おう! 置いてかれんなよ!」
「ちょ、おい⁉︎」
エルゴは擬人化魔法を解いて、ドラゴンの姿に戻ると、エドを背中に乗せて、穴の目の前で防衛を始めた。
もちろん、もし俺が穴を封印したら2人は置いていかれる。俺はどうすべきだ?
「早くやるっすよ! 俺たちなら大丈夫っす!」
「余計な心配すんじゃねぇよ!」
「…そうだな。任せたぜ!」
フラットさんから貰った神力で、俺は穴の封印を始めた。俺のために戦ってくれてるやつらの覚悟を無駄にはしねぇ。そのためにも、必ず成功させてやる!
「そろそろっすね。エルゴ、もど-」
「悪い。限界だぜ」
は? 限界って…。まさか! 俺は咄嗟にエルゴの翼を見た。まだ翼膜は治っていない。それをすっかりと忘れていた。
翼膜が破れているままじゃ、飛行にかかる負担は大きすぎるんだ。そんなことを思っている間に、エルゴは限界を迎えて重力と共に落ちていく。
「ちっ! エド、戻ってろ!」
「わわぁ⁉︎」
俺は飛び出して、せめてもと思って、エドを穴の中に投げ入れた。その直後に、穴は完全に閉ざされた。
そして俺は扱えもしない天空の力を使って、エルゴに近づこうとした。うまく飛べなくたって、絶対に離さねぇ。俺にだって、覚悟ってもんはある!
「父ちゃん…なんで来たんだよ⁉︎」
「当たり前だろ! お前を1人なんかにさせやしねぇ!」
俺はお前から教わったんだ。1人じゃないってこと、楽しみを分け合うってこと。そんなお前を、失うわけにはいかねぇんだ!
「だけどよ…!」
「俺の息子でいてぇなら、そんな顔すんな! こういうときこそ笑え! 良いな!」
「……あぁ!」
うまく飛べないからなんだ、役立たずだからなんだ。そう思えるなら、俺が引っ張ってやる。そんな俺だ、拒否権なんかなしだぜ!
俺はエルゴの手を取って、脅威だらけの地上を駆け出した。怖くなんかねぇ、コイツがいればな。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」
「ギュル!」
「へっ、来たぜ、父ちゃん!」
見える。フラットさんの記憶。俺の中に、一瞬一瞬だが見える。
「ここをこうして…僕の部屋へ! 簡易的神力ゲート完成!」
あの人らしい無邪気な記憶が、俺にゲートの作り方を教えてくれる。作ると同時に、行きたい場所を叫ぶ。完全に理解したぜ。
「こうだな…俺の仲間がいる場所! よっと!」
「スッゲェ! これ、どこに繋がってんだ⁉︎」
「帰るぜ。俺には、俺を待ってくれるやつらがいる」
まだ見えている。フラットさんの記憶。ほんの一部だけでも、それは俺の中で永遠に変わっていく。
「あったあった。バトラーのやつ、僕の部屋にカバン置いていきやがって」
「…。エルゴ、かけっこだ! アイツらのとこがゴールだぜ!」
「分かったぜ、ヨーイドンで行くぞ! フライングなしだ!」
「ニャハハ! いっくぜ!」
俺たちは一緒にゲートの中へ潜った。だが、その中へ入った瞬間に、とてつもない疲労が俺を襲い、膝からガクンと崩れるように倒れてしまった。
幸いにも、俺の神力が途切れたおかげでゲートの入り口は塞がった。だが、神力が途切れたせいで、ゲートも消滅を始めていた。
「父ちゃん、かけっこは終いだ! あとは任せな!」
「エルゴ…。悪い…」
俺のことを背負っているのだろう。エルゴの鋭く柔らかい鱗を感じる。
なにより、その温かさに、俺は安心できていた。
「謝んなよ。俺様、いっつも父ちゃんに迷惑かけてばかりだから。これくらいはしねぇとな!」
「…エルゴ…。お前は…」
言いてぇことがあるのに、俺はあまりの疲労に気を失うように眠ってしまった。
「見えたぜ! ドウリャアァァ!」
「えっ⁉︎」
「な、なにこれ⁉︎」
「ドンボが使ったんだな。フラットのチート級の創造術、“ゲート接続”」
ドンボは背中で眠っているドンボを降ろし、
全員のもとへ寄った。
「それより、エドはどこだ?」
「知らない。一緒じゃないのか?」
「ふふっ、駄弁ってる暇があるの?」
『黙れっす!』
「グゥッ⁉︎」
ノールは背後を取られ、脳天にカカト落としをモロに食らった。
そのついでなのかもしれないが、衝撃で仮面が叩き落とされ、ノールの顔から外れた。
「イッターい…ちょ、なになに⁉︎」
「何じゃないっすよ…!」
「あれ…エド? どうなってるのこれ…?」
「エド! もう良いだろ、それ以上はやめろ」
「でもドンボとエルゴが…あれ?」
先程あの地獄とも呼べる世界に置いてきてしまったはずの2人が、目の前にいる。
その光景に、目をパチパチと瞬かせた。無論、目の前の光景は変わらない。
「…良かったすよ~っ!」
「よくない! あ、イッターい!」
「…ママ~っ!」
「わっと。ママって…もしかしてキール⁉︎ 随分と大きく……。ごめんね、寂しい思いさせたかな」
完全に自分を取り戻したのか、ノールからは先程までの殺気やら口調やらが抜けきっていた。
「おい。早くしないと脅威の口が閉じるぞ」
「はぁーい! ママ、一緒に!」
「…フォールがいるなら…ちょっと迷うな」
「それは後で説明するっすよ。それより、また一緒に働こうっす!」
差し伸べられたエドの手。ノールはそれを確かめて、ゆっくりと握った。
今まで残されてしまった者達の悲しみを無碍にしたくはない。そう思ったノールの決意だ。
「それじゃあ行くぜ! 遅れたら罰金だぜ!」
「ちょ、待ってよ! もう…行こ、ママ」
「…私もお先に!」
「え、ちょっと!」
駆け出していくエルゴに、どこか懐かしさを覚えたノールは、背中を追いかけるように走り出した。
そして、それはフォールも同じくして。
「みんなして勝手なんだから。私達も行こっか」
「もちろんっす!」
「ぼくたちがアイツらを見逃したら、何が起きるか分からん。行くぞ」
そして、3人も後に続いて走り出す。新しく、懐かしい風が、今ここから始まった。
「この空間は私のテリトリー。脅威だって呼び寄せられる。ほら、こんな風にね!」
「ウソだろ⁉︎ せっかくのチャンスだってのに!」
「当たり前だな。ここは脅威の口の中だ…? いや待て。脅威の口は、いわばゲートだ。てことは、この先って…」
脅威の口ってゲートだったのか。てっきり、目には見えない、脅威の住処とばかり思ってたぜ。
「ドンボ、一か八かだ。ぼくたちは、この先へ行く! その間は、キールとエドで-」
「スタントが残れ。俺とエド、エルゴで行くぜ」
「俺も賛成っす。新生コンビのほうが、映像として映えるっすもん」
「俺様は父ちゃんといられれば、それで充分だぜ!」
「フォール、指揮は任せたぜ! 俺たちに構う必要はねぇ、こっちだけに集中してろよ!」
そう言い残して、俺たちは脅威の口の先へ急いだ。だが、どれだけ離れようと、俺たちは一緒だ。
それさえ覚えていれば、絶対に大丈夫だ。俺たちは負けやしねぇ。
「見えた。予想的中だ」
「うっわ、なんだこれ⁉︎」
辿り着いた先には、大きな空間の歪みでできた穴があった。その穴は上空にあるらしく、そこから見えたのは、ここと同じように暗い世界。
草木はなく、枯れた大地が広がり、赤黒い雲が空を覆っている。そしてなにより、数多の脅威が群れをなしてに生息している。
どうやら、ここは脅威が地球を支配している世界線らしい。そして俺はようやく脅威の口が何かを知った。
「まさかだが…こういう世界線に繋がっているのが脅威の口ってわけか⁉︎」
「そうっすよ。そして突然現れて、何体かの脅威を放出した後に自然と閉じられる不思議なゲートっす。それが普通なんすけど、これだけは特殊だったんすよ」
言われなくても分かる。前に脅威の口を目の当たりにしてるからな。あれは、たしかに何体かを出し切った後に消えた。だがこれは、消える気配がねぇ。
「まだ研究段階なんで違うかもっすけど…。脅威の口から放出される脅威の数は、脅威が支配する世界線に存在する脅威の数に比例する、って言われてるんすよね」
「違うだろうな。だとしたら、俺たちが相手にしてきた脅威の口の先にいる脅威の数、めっちゃ少ねぇぜ」
脅威で成り立ってる世界なのに、それが少ねぇわけがねぇ。これくらい蔓延っているのが普通だろ。
「とりあえず…。この穴を塞げば、脅威は現れないはずっす!」
「なるほどな! それじゃあ、エドとエルゴは護衛を任せたぜ。俺が穴を塞ぐ!」
フラットさんほどの強い神力があれば、きっとできるはずだぜ。俺にできるかどうかじゃねぇ。やるだけだ。
俺は穴の周りを触るように手を置き、神力を引き出した。そのときだった。穴の向こうにいる脅威が、こちらに気づいた。
「なっ⁉︎」
「神力に反応するんすよ! 俺たちが守るっすから、集中するっす!」
「俺様もついてる! 父ちゃんは、俺様が守る!」
ニャルほどな。神力に反応したからこっちに気付いたわけか。てか、今更だが、どうやって守るんだ?
「行くっすよ!」
「おう! 置いてかれんなよ!」
「ちょ、おい⁉︎」
エルゴは擬人化魔法を解いて、ドラゴンの姿に戻ると、エドを背中に乗せて、穴の目の前で防衛を始めた。
もちろん、もし俺が穴を封印したら2人は置いていかれる。俺はどうすべきだ?
「早くやるっすよ! 俺たちなら大丈夫っす!」
「余計な心配すんじゃねぇよ!」
「…そうだな。任せたぜ!」
フラットさんから貰った神力で、俺は穴の封印を始めた。俺のために戦ってくれてるやつらの覚悟を無駄にはしねぇ。そのためにも、必ず成功させてやる!
「そろそろっすね。エルゴ、もど-」
「悪い。限界だぜ」
は? 限界って…。まさか! 俺は咄嗟にエルゴの翼を見た。まだ翼膜は治っていない。それをすっかりと忘れていた。
翼膜が破れているままじゃ、飛行にかかる負担は大きすぎるんだ。そんなことを思っている間に、エルゴは限界を迎えて重力と共に落ちていく。
「ちっ! エド、戻ってろ!」
「わわぁ⁉︎」
俺は飛び出して、せめてもと思って、エドを穴の中に投げ入れた。その直後に、穴は完全に閉ざされた。
そして俺は扱えもしない天空の力を使って、エルゴに近づこうとした。うまく飛べなくたって、絶対に離さねぇ。俺にだって、覚悟ってもんはある!
「父ちゃん…なんで来たんだよ⁉︎」
「当たり前だろ! お前を1人なんかにさせやしねぇ!」
俺はお前から教わったんだ。1人じゃないってこと、楽しみを分け合うってこと。そんなお前を、失うわけにはいかねぇんだ!
「だけどよ…!」
「俺の息子でいてぇなら、そんな顔すんな! こういうときこそ笑え! 良いな!」
「……あぁ!」
うまく飛べないからなんだ、役立たずだからなんだ。そう思えるなら、俺が引っ張ってやる。そんな俺だ、拒否権なんかなしだぜ!
俺はエルゴの手を取って、脅威だらけの地上を駆け出した。怖くなんかねぇ、コイツがいればな。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」
「ギュル!」
「へっ、来たぜ、父ちゃん!」
見える。フラットさんの記憶。俺の中に、一瞬一瞬だが見える。
「ここをこうして…僕の部屋へ! 簡易的神力ゲート完成!」
あの人らしい無邪気な記憶が、俺にゲートの作り方を教えてくれる。作ると同時に、行きたい場所を叫ぶ。完全に理解したぜ。
「こうだな…俺の仲間がいる場所! よっと!」
「スッゲェ! これ、どこに繋がってんだ⁉︎」
「帰るぜ。俺には、俺を待ってくれるやつらがいる」
まだ見えている。フラットさんの記憶。ほんの一部だけでも、それは俺の中で永遠に変わっていく。
「あったあった。バトラーのやつ、僕の部屋にカバン置いていきやがって」
「…。エルゴ、かけっこだ! アイツらのとこがゴールだぜ!」
「分かったぜ、ヨーイドンで行くぞ! フライングなしだ!」
「ニャハハ! いっくぜ!」
俺たちは一緒にゲートの中へ潜った。だが、その中へ入った瞬間に、とてつもない疲労が俺を襲い、膝からガクンと崩れるように倒れてしまった。
幸いにも、俺の神力が途切れたおかげでゲートの入り口は塞がった。だが、神力が途切れたせいで、ゲートも消滅を始めていた。
「父ちゃん、かけっこは終いだ! あとは任せな!」
「エルゴ…。悪い…」
俺のことを背負っているのだろう。エルゴの鋭く柔らかい鱗を感じる。
なにより、その温かさに、俺は安心できていた。
「謝んなよ。俺様、いっつも父ちゃんに迷惑かけてばかりだから。これくらいはしねぇとな!」
「…エルゴ…。お前は…」
言いてぇことがあるのに、俺はあまりの疲労に気を失うように眠ってしまった。
「見えたぜ! ドウリャアァァ!」
「えっ⁉︎」
「な、なにこれ⁉︎」
「ドンボが使ったんだな。フラットのチート級の創造術、“ゲート接続”」
ドンボは背中で眠っているドンボを降ろし、
全員のもとへ寄った。
「それより、エドはどこだ?」
「知らない。一緒じゃないのか?」
「ふふっ、駄弁ってる暇があるの?」
『黙れっす!』
「グゥッ⁉︎」
ノールは背後を取られ、脳天にカカト落としをモロに食らった。
そのついでなのかもしれないが、衝撃で仮面が叩き落とされ、ノールの顔から外れた。
「イッターい…ちょ、なになに⁉︎」
「何じゃないっすよ…!」
「あれ…エド? どうなってるのこれ…?」
「エド! もう良いだろ、それ以上はやめろ」
「でもドンボとエルゴが…あれ?」
先程あの地獄とも呼べる世界に置いてきてしまったはずの2人が、目の前にいる。
その光景に、目をパチパチと瞬かせた。無論、目の前の光景は変わらない。
「…良かったすよ~っ!」
「よくない! あ、イッターい!」
「…ママ~っ!」
「わっと。ママって…もしかしてキール⁉︎ 随分と大きく……。ごめんね、寂しい思いさせたかな」
完全に自分を取り戻したのか、ノールからは先程までの殺気やら口調やらが抜けきっていた。
「おい。早くしないと脅威の口が閉じるぞ」
「はぁーい! ママ、一緒に!」
「…フォールがいるなら…ちょっと迷うな」
「それは後で説明するっすよ。それより、また一緒に働こうっす!」
差し伸べられたエドの手。ノールはそれを確かめて、ゆっくりと握った。
今まで残されてしまった者達の悲しみを無碍にしたくはない。そう思ったノールの決意だ。
「それじゃあ行くぜ! 遅れたら罰金だぜ!」
「ちょ、待ってよ! もう…行こ、ママ」
「…私もお先に!」
「え、ちょっと!」
駆け出していくエルゴに、どこか懐かしさを覚えたノールは、背中を追いかけるように走り出した。
そして、それはフォールも同じくして。
「みんなして勝手なんだから。私達も行こっか」
「もちろんっす!」
「ぼくたちがアイツらを見逃したら、何が起きるか分からん。行くぞ」
そして、3人も後に続いて走り出す。新しく、懐かしい風が、今ここから始まった。
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