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1章 昇竜
第16話 朝から晩までお仕事
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寿司屋に入ったというのに、ドラバースが最初に頼んだのはまさかの日本酒3升。あれ、食事だったよね。飲み会じゃないよね。
「ドラ先輩、酒強いから」
「あー……え、でも日本酒」
「バケモンなんだよ、ドラ先輩」
「え、バケモノ⁉︎」
「ちょ、そういう意味じゃねぇって!」
コソコソ話で濁していたのに、僕とレッドウルフの大声でドラバースどころか他のお客さんも、かなり驚いていた。
「なになに?」
「今バケモノとか」
「てかあれ、ヒーロー?」
そのせいで注目を浴びて、ドラバースとレッドウルフのことがバレてしまった。
「え、えっと……」
「うっわ、SNSもう拡散されてるし」
「流石は大人気ヒーロー様様だな!」
「アッハッハ……」
元凶は僕達なのに、それに気付かないドラバースに乾いた笑い声しか出なかった。
結局は、ほぼ店主に追い出される形で道端でのサイン会と握手会が開催された。
もちろんSNSが大バズりして社長にこの事がバレて怒りの電話を受けた。
「ハァ~……疲れた」
「だろうな。って、お前。なんもやってない」
「いやいや、列整備やってくれてたろ?」
「はい……すっごい疲れました」
「ガッハッハ! もう列に呑まれてたもんな!」
目の前にヒーローがいると知っているのだから、待つことができないのだろう。それにしても、すごい人だかりだった。
押さないでと言っても押してくるし、中には1人につきサイン1つというルールを破って2周する人もいるし。本当に疲れた。
「はいよ」
「あ……」
僕の頬に、ドラバースが冷たいミルクティーを当てて渡してくれた。
「ありがとよ、急な仕事に付き合ってくれて」
「いえいえ! 半分は自己満でやってることですしっ!」
「誰だってそうだろ。仕事ってもんは自己満でなきゃやってらんない」
レッドウルフが言うことも正しいが、僕の場合は趣味という意味での自己満だ。
「あ! えっと、お金お金……」
「気にすんなって。手伝ってくれる礼だ」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて……冷たっ⁉︎」
「あっちゃ、冷やしすぎたか?」
物体の熱を操る能力。それがドラバースの能力だが、いくらなんでも冷たくしすぎ。お紅茶がシャーベットになってるし。
「まあでも、別に良いだろ?」
「え、えぇ! めっちゃ良いです!」
「いやいや、氷霧出てる飲み物だぞ⁉︎」
たしかに、空いた飲み口から氷霧が出ている。一体これ、何度になっているんだろう。
「よっしゃあ、それじゃあ遅くなったが調査開始だ! バケモノは亡霊、ヤツらは寺院の結界の束縛から逃れて出てくるんだ。つまり、行く場所は大観音寺だ!」
目的地が決まり、僕達は疲れた足でゆっくりと歩き出した。朱色に染まる夕陽が僕達の影を伸ばす。
涼しさと温かさの両方を運ぶ風が優しく吹き、桜の花びらを撒き散らす。朝から夜まで働くのかと思うと辛いけれど、ドラバースと一緒なら大丈夫だって思える。夢を持つのって、本当に大事なんだな。
「ドラ先輩、酒強いから」
「あー……え、でも日本酒」
「バケモンなんだよ、ドラ先輩」
「え、バケモノ⁉︎」
「ちょ、そういう意味じゃねぇって!」
コソコソ話で濁していたのに、僕とレッドウルフの大声でドラバースどころか他のお客さんも、かなり驚いていた。
「なになに?」
「今バケモノとか」
「てかあれ、ヒーロー?」
そのせいで注目を浴びて、ドラバースとレッドウルフのことがバレてしまった。
「え、えっと……」
「うっわ、SNSもう拡散されてるし」
「流石は大人気ヒーロー様様だな!」
「アッハッハ……」
元凶は僕達なのに、それに気付かないドラバースに乾いた笑い声しか出なかった。
結局は、ほぼ店主に追い出される形で道端でのサイン会と握手会が開催された。
もちろんSNSが大バズりして社長にこの事がバレて怒りの電話を受けた。
「ハァ~……疲れた」
「だろうな。って、お前。なんもやってない」
「いやいや、列整備やってくれてたろ?」
「はい……すっごい疲れました」
「ガッハッハ! もう列に呑まれてたもんな!」
目の前にヒーローがいると知っているのだから、待つことができないのだろう。それにしても、すごい人だかりだった。
押さないでと言っても押してくるし、中には1人につきサイン1つというルールを破って2周する人もいるし。本当に疲れた。
「はいよ」
「あ……」
僕の頬に、ドラバースが冷たいミルクティーを当てて渡してくれた。
「ありがとよ、急な仕事に付き合ってくれて」
「いえいえ! 半分は自己満でやってることですしっ!」
「誰だってそうだろ。仕事ってもんは自己満でなきゃやってらんない」
レッドウルフが言うことも正しいが、僕の場合は趣味という意味での自己満だ。
「あ! えっと、お金お金……」
「気にすんなって。手伝ってくれる礼だ」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて……冷たっ⁉︎」
「あっちゃ、冷やしすぎたか?」
物体の熱を操る能力。それがドラバースの能力だが、いくらなんでも冷たくしすぎ。お紅茶がシャーベットになってるし。
「まあでも、別に良いだろ?」
「え、えぇ! めっちゃ良いです!」
「いやいや、氷霧出てる飲み物だぞ⁉︎」
たしかに、空いた飲み口から氷霧が出ている。一体これ、何度になっているんだろう。
「よっしゃあ、それじゃあ遅くなったが調査開始だ! バケモノは亡霊、ヤツらは寺院の結界の束縛から逃れて出てくるんだ。つまり、行く場所は大観音寺だ!」
目的地が決まり、僕達は疲れた足でゆっくりと歩き出した。朱色に染まる夕陽が僕達の影を伸ばす。
涼しさと温かさの両方を運ぶ風が優しく吹き、桜の花びらを撒き散らす。朝から夜まで働くのかと思うと辛いけれど、ドラバースと一緒なら大丈夫だって思える。夢を持つのって、本当に大事なんだな。
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