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2章 迷猫編
第4話 喪服姿の少女
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気分転換に外に出てみると、花屋に喪服姿の黒髪に黒い瞳という、今では珍しい日本人の少女がいた。百合の花を3輪抱え、そのままどこかへと歩いていった。
僕が知っている限りだと、その先には墓地がある。いや、もっと言えば墓地しかない。ちょうどこの先は、突き当たりの墓地しかない。
「ちょうど良いや、僕もお墓参りしてこ」
ちょうど1ヶ月後はお父さんの命日である、6月6日だ。皮肉にも、その日は地球が宇宙圏へとアクセス可能になった日と同じである。
僕はお父さんの好きだったシリウスの花を5輪買って、お墓へと向かった。
~墓地~
綺麗に列となって並べられた墓地。元からここは有名人が眠る墓地だけど、お父さんのお墓は、超がつくほどの有名なヒーローということもあって一番てっぺんの、中央という目立つ場所にある。
そこまで訪れると、先ほどの少女がお父さんのお墓のひとつ開けた右隣のお墓に花を携えていた。
「……? あの、わたしに何か?」
「あ、いえ。さっきも花屋で見かけて、偶然だなぁって」
失礼ながらにも、つい呆然と彼女を見つめていた僕。もちろん気付かれないわけはなかった。
「そうですか。でも、そのお墓……ファンだと思いましたが、メイビスおじさまのお好きなお花をお持ちになられているということは、もしかして……息子さんでいらっしゃいますか?」
「え、あ、はい」
たしかにお父さんのお墓は、コアなファンには知られている。なにせ目立つ場所にあるせいでどうしても知られてしまうのだ。
でも、だからと言ってセキュリティが甘いわけがない。お墓の周りには精度のいい監視カメラが、警察のほうにライブ映像として届けられている。故意に汚したり無礼なものを供えていた場合には確実に容疑者への罰が下されるようになっている。
だけど、ファンの中でもお父さんの好きな花は知られていない。だからいつも、お父さんが好きでも嫌いでもない花ばかりが供えられている。
だから僕は、お父さんの好きな花を知っているこの少女が何者なのか気になった。
「そうですか、メイビスおじさまの息子さんでしたか。わたしは、花岬 美雪と申します」
「花岬……? どこかで聞いたような」
どこかは分からないが、花岬というワードをどこかで聞いたようなことがある。
いや、聞いたのだろうか。見ただけかもしれない。ハッキリとは覚えていない。
「ふふふ、きっとおじさまから聞いただけかもしれませんわ。あまり一般的には聞かないはずですもの」
「うぅ~ん……」
「覚えてなくとも、必ずいつか見聞きできるはずです。頭を抱えなくて結構ですわ」
「そう、かな? あの、それで……。失礼かもしれないですけど、ここにお墓があるってことは……」
この墓地のてっぺんにお墓があるということは、地球圏の世界的に有名な人物であったということになる。
もしかしたら、僕が物心つく前に、花岬の名を聞きかじったのかもしれない。
「わたしの、ヒーローだった姉のお墓なんです。いえ、まだお墓でもありません」
「え?」
「まだ、姉は見つかっておりませんの。中身は空っぽで、何もありません。姉が見つかりますようにと、いつも祈っているんです」
「あっ……ごめんなさい、とんだ失礼を」
「いえいえ、お気になさらず。メイビスおじさまの息子様に出会えるのも何かの縁。少しお暇ありますでしょうか?」
お墓に向けていた目を僕の方に変えて、美雪さんは微笑んでそう尋ねてきた。
「まあ、今日は暇ですね」
「では、少しわたしの家へいらしてください。おじさまのこと、話しておかねばならないと思いまして」
たしかに、お父さんはヒーロー業となると、僕達家族の前でも決して口にしなかった。でも、美雪さんは何かを知っている様子。
お父さんのことを知れるチャンスならば、聞かぬ手はない。僕は美雪さんの家へ訪ねることにした。
僕が知っている限りだと、その先には墓地がある。いや、もっと言えば墓地しかない。ちょうどこの先は、突き当たりの墓地しかない。
「ちょうど良いや、僕もお墓参りしてこ」
ちょうど1ヶ月後はお父さんの命日である、6月6日だ。皮肉にも、その日は地球が宇宙圏へとアクセス可能になった日と同じである。
僕はお父さんの好きだったシリウスの花を5輪買って、お墓へと向かった。
~墓地~
綺麗に列となって並べられた墓地。元からここは有名人が眠る墓地だけど、お父さんのお墓は、超がつくほどの有名なヒーローということもあって一番てっぺんの、中央という目立つ場所にある。
そこまで訪れると、先ほどの少女がお父さんのお墓のひとつ開けた右隣のお墓に花を携えていた。
「……? あの、わたしに何か?」
「あ、いえ。さっきも花屋で見かけて、偶然だなぁって」
失礼ながらにも、つい呆然と彼女を見つめていた僕。もちろん気付かれないわけはなかった。
「そうですか。でも、そのお墓……ファンだと思いましたが、メイビスおじさまのお好きなお花をお持ちになられているということは、もしかして……息子さんでいらっしゃいますか?」
「え、あ、はい」
たしかにお父さんのお墓は、コアなファンには知られている。なにせ目立つ場所にあるせいでどうしても知られてしまうのだ。
でも、だからと言ってセキュリティが甘いわけがない。お墓の周りには精度のいい監視カメラが、警察のほうにライブ映像として届けられている。故意に汚したり無礼なものを供えていた場合には確実に容疑者への罰が下されるようになっている。
だけど、ファンの中でもお父さんの好きな花は知られていない。だからいつも、お父さんが好きでも嫌いでもない花ばかりが供えられている。
だから僕は、お父さんの好きな花を知っているこの少女が何者なのか気になった。
「そうですか、メイビスおじさまの息子さんでしたか。わたしは、花岬 美雪と申します」
「花岬……? どこかで聞いたような」
どこかは分からないが、花岬というワードをどこかで聞いたようなことがある。
いや、聞いたのだろうか。見ただけかもしれない。ハッキリとは覚えていない。
「ふふふ、きっとおじさまから聞いただけかもしれませんわ。あまり一般的には聞かないはずですもの」
「うぅ~ん……」
「覚えてなくとも、必ずいつか見聞きできるはずです。頭を抱えなくて結構ですわ」
「そう、かな? あの、それで……。失礼かもしれないですけど、ここにお墓があるってことは……」
この墓地のてっぺんにお墓があるということは、地球圏の世界的に有名な人物であったということになる。
もしかしたら、僕が物心つく前に、花岬の名を聞きかじったのかもしれない。
「わたしの、ヒーローだった姉のお墓なんです。いえ、まだお墓でもありません」
「え?」
「まだ、姉は見つかっておりませんの。中身は空っぽで、何もありません。姉が見つかりますようにと、いつも祈っているんです」
「あっ……ごめんなさい、とんだ失礼を」
「いえいえ、お気になさらず。メイビスおじさまの息子様に出会えるのも何かの縁。少しお暇ありますでしょうか?」
お墓に向けていた目を僕の方に変えて、美雪さんは微笑んでそう尋ねてきた。
「まあ、今日は暇ですね」
「では、少しわたしの家へいらしてください。おじさまのこと、話しておかねばならないと思いまして」
たしかに、お父さんはヒーロー業となると、僕達家族の前でも決して口にしなかった。でも、美雪さんは何かを知っている様子。
お父さんのことを知れるチャンスならば、聞かぬ手はない。僕は美雪さんの家へ訪ねることにした。
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