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2章 迷猫編
第22話 僕らしくいられる場所
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翌日、みんなが集まるようにチャットで地球防衛放送局湘南支部に呼び出した。
「で、えっと……僕の自室の物を奪ったのは、テイラなんだけど……みんなのを奪ったのは、ドラバースなんじゃないかって」
「てか、俺この目で見たぜ?」
「ちょっと待った。まだテイラが裏切った事実も残っている。それでドラゴンバースを疑うのか?」
マスケルの言い分も、間違いじゃない。でも、その言い分を覆すためにも、今日みんなに集まってもらったんだ。
「あのさ。テイラのことをよく知ってるのは僕だから。だから、分かる。テイラは、あんなやつじゃない。全部、全部バケモノのせいだよ」
「その通りだ。今テイラを責めるのは見当違いだぜ」
モスイさんのおかげで、テイラへの視線はとりあえず落ち着いた。
「それで、ドラゴンだっけか?」
「そろそろ潮時じゃないの? ドラバース」
今度はモスイさんとプレイアさんの目線が冷たくドラバースにぶつけられる。
「潮時って?」
「……話してやれよ。もう時効だろ?」
「……俺は、昔。大怪盗って言われてた。聞いたことないか? 『金色のドラゴンチーフ』。俺のことだ」
その名前を聞いても、僕は聞き覚えがない。お父さんがそういうことを言わなかったっていうのもあったけど、ニュースとしても聞いたことがない。
「モスイさん、普通知らないんじゃないの? 本名も変えてるし、整形もしてるんだよ?」
「おっと。そうだったけか? それじゃあ、改めて本名で頼むぜ」
「ああ。山賀藁 虎龍が今の名だが……旧名は、山瓦 龍虎」
その名前で、僕はようやく思い出せた。僕が幼い頃によく聞いた名だ。頻繁に宝石店を狙う、煌びやかなド派手な格好をした強盗犯。
でも、ドラバースがその強盗犯だなんて、いまだに信じられない。
「俺の異能力は、『物体の状態を変化させる』ものだった。よく耐衝撃ガラスを溶かして盗んでたな」
「あ、あのっ! じゃあ、なんでヒーローやってるんですか⁈」
僕は納得できない。心に不満のようなモヤモヤを抱えきれず叫ぶように問うた。
「……モスイがな、俺の心の闇を振り払ってくれたんだ」
「あぁ。ちっと厄介だったがな」
「え、私もそんな話知らない……」
「うちは知ってんで。せやから出てったんや」
歴の長い瑠璃だけが知っていた、ドラバースの過去。知っていたなら、ここを出ていくのも納得だ。
「でも、テイラに比べりゃ楽な仕事だったぜ」
「うげっ、俺のことはバラさなくても良いだろうが!」
「うるさい、テイラ。叫ばなくても聞こえる」
テイラって、焦るとすぐ大声で反論する。またその声量で物壊さないと良いけど。
「まっ、これくらいで話はいいだろう。それで? 俺の私物まで隠されてんだ。早くどこ隠したか吐けよ? 耳揃えて弁償してもらうでな」
「モスイはん、それじゃあただのヤクザやで。もうちょい言い方変えんと。てなわけで、うちの発明品や! 『本音吐かすくん』! これを頭につけると、本音しか言えんくなるんや! ほな早速!」
どこからともなく、緑色のヘルメットのような発明品の『本音吐かすくん』を瑠璃はドラバースとテイラに装着させた。
「ほなら聞きまっせ。あんさんら、どこにみんなの私物を隠したんや?」
「「売っぱらいました」」
「『は?』」
予想外、というか範疇にもなかった2人の返答に、僕達は声を揃えて呆れた。
「待って待って、売っぱらった? 教科書とか参考書とか、色々あったのに⁉︎」」
「えちょ、え? 私の家具、総額いくらか知ってんの⁉︎」
「エリスのお人形も⁉︎」
「……最悪だ」
売ってしまった以上、行方を追うのは猫の手を借りても雲を掴むことと同義だろう。
「しょうがない。あの、今から僕がみんなの家に寄って家具を実現化させる形でも良いですか?」
「まあ、それはそれで構わねぇ。ちょっくら2人には、俺からキツ~く言っておくからよ」
絶対、「ちょっくら」程度で終わんないな、この感じだと。売れた分のお金は返してもらうとして、罰ゲームもしてもらわないと気が済まないや。
「じゃあ、2人には給料の2割を天引きしてください」
「「えぇっ⁉︎」」
「おう、分かったぜ」
「「えぇぇっ⁉︎」」
僕の提案にも、それを承諾するモスイさんにも、2人は息を合わせて驚く。それがまた面白い。
「あれ? なんかプスプス言ってるよ?」
エリスがそう言う通り、2人に付けられた装置が音を出している。しかも、煙をあげながら。p
そうして、予感通り機械は爆発した。とは言っても、小規模のもので、2人が真っ黒になるくらいで済んだ。
怪我してなさそうだし、放っといて問題はなさそうかな。
「じゃ、そういうことで。僕はみんなの家の家具を直しに行くから」
外面では無表情を演じながら、内心笑いつつ僕は2人を置いていった。ようやく見つけられた、僕らしくいられる場所。
今までは、優しさを演じていた。でも。失わないためにも、もう隠さない。もう逃げない。傷ついたって、僕らしくいてやる。テイラのためにも、みんなのためにも。そして、僕のためにも。
「で、えっと……僕の自室の物を奪ったのは、テイラなんだけど……みんなのを奪ったのは、ドラバースなんじゃないかって」
「てか、俺この目で見たぜ?」
「ちょっと待った。まだテイラが裏切った事実も残っている。それでドラゴンバースを疑うのか?」
マスケルの言い分も、間違いじゃない。でも、その言い分を覆すためにも、今日みんなに集まってもらったんだ。
「あのさ。テイラのことをよく知ってるのは僕だから。だから、分かる。テイラは、あんなやつじゃない。全部、全部バケモノのせいだよ」
「その通りだ。今テイラを責めるのは見当違いだぜ」
モスイさんのおかげで、テイラへの視線はとりあえず落ち着いた。
「それで、ドラゴンだっけか?」
「そろそろ潮時じゃないの? ドラバース」
今度はモスイさんとプレイアさんの目線が冷たくドラバースにぶつけられる。
「潮時って?」
「……話してやれよ。もう時効だろ?」
「……俺は、昔。大怪盗って言われてた。聞いたことないか? 『金色のドラゴンチーフ』。俺のことだ」
その名前を聞いても、僕は聞き覚えがない。お父さんがそういうことを言わなかったっていうのもあったけど、ニュースとしても聞いたことがない。
「モスイさん、普通知らないんじゃないの? 本名も変えてるし、整形もしてるんだよ?」
「おっと。そうだったけか? それじゃあ、改めて本名で頼むぜ」
「ああ。山賀藁 虎龍が今の名だが……旧名は、山瓦 龍虎」
その名前で、僕はようやく思い出せた。僕が幼い頃によく聞いた名だ。頻繁に宝石店を狙う、煌びやかなド派手な格好をした強盗犯。
でも、ドラバースがその強盗犯だなんて、いまだに信じられない。
「俺の異能力は、『物体の状態を変化させる』ものだった。よく耐衝撃ガラスを溶かして盗んでたな」
「あ、あのっ! じゃあ、なんでヒーローやってるんですか⁈」
僕は納得できない。心に不満のようなモヤモヤを抱えきれず叫ぶように問うた。
「……モスイがな、俺の心の闇を振り払ってくれたんだ」
「あぁ。ちっと厄介だったがな」
「え、私もそんな話知らない……」
「うちは知ってんで。せやから出てったんや」
歴の長い瑠璃だけが知っていた、ドラバースの過去。知っていたなら、ここを出ていくのも納得だ。
「でも、テイラに比べりゃ楽な仕事だったぜ」
「うげっ、俺のことはバラさなくても良いだろうが!」
「うるさい、テイラ。叫ばなくても聞こえる」
テイラって、焦るとすぐ大声で反論する。またその声量で物壊さないと良いけど。
「まっ、これくらいで話はいいだろう。それで? 俺の私物まで隠されてんだ。早くどこ隠したか吐けよ? 耳揃えて弁償してもらうでな」
「モスイはん、それじゃあただのヤクザやで。もうちょい言い方変えんと。てなわけで、うちの発明品や! 『本音吐かすくん』! これを頭につけると、本音しか言えんくなるんや! ほな早速!」
どこからともなく、緑色のヘルメットのような発明品の『本音吐かすくん』を瑠璃はドラバースとテイラに装着させた。
「ほなら聞きまっせ。あんさんら、どこにみんなの私物を隠したんや?」
「「売っぱらいました」」
「『は?』」
予想外、というか範疇にもなかった2人の返答に、僕達は声を揃えて呆れた。
「待って待って、売っぱらった? 教科書とか参考書とか、色々あったのに⁉︎」」
「えちょ、え? 私の家具、総額いくらか知ってんの⁉︎」
「エリスのお人形も⁉︎」
「……最悪だ」
売ってしまった以上、行方を追うのは猫の手を借りても雲を掴むことと同義だろう。
「しょうがない。あの、今から僕がみんなの家に寄って家具を実現化させる形でも良いですか?」
「まあ、それはそれで構わねぇ。ちょっくら2人には、俺からキツ~く言っておくからよ」
絶対、「ちょっくら」程度で終わんないな、この感じだと。売れた分のお金は返してもらうとして、罰ゲームもしてもらわないと気が済まないや。
「じゃあ、2人には給料の2割を天引きしてください」
「「えぇっ⁉︎」」
「おう、分かったぜ」
「「えぇぇっ⁉︎」」
僕の提案にも、それを承諾するモスイさんにも、2人は息を合わせて驚く。それがまた面白い。
「あれ? なんかプスプス言ってるよ?」
エリスがそう言う通り、2人に付けられた装置が音を出している。しかも、煙をあげながら。p
そうして、予感通り機械は爆発した。とは言っても、小規模のもので、2人が真っ黒になるくらいで済んだ。
怪我してなさそうだし、放っといて問題はなさそうかな。
「じゃ、そういうことで。僕はみんなの家の家具を直しに行くから」
外面では無表情を演じながら、内心笑いつつ僕は2人を置いていった。ようやく見つけられた、僕らしくいられる場所。
今までは、優しさを演じていた。でも。失わないためにも、もう隠さない。もう逃げない。傷ついたって、僕らしくいてやる。テイラのためにも、みんなのためにも。そして、僕のためにも。
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