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第1章〜ウロボロス復活〜
第28話「弟」
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「ふぅ、旨かった」
「え、ウーロさんそんな少食でしたっけ!?」
皿に乗ってたササネリを食い終わると、シオンがありえんという感じで驚いた。お代わりしないですか!このおいしさわかりませんか!と。
いや、旨いことには旨いよ?可能なら我だって金払ってお代わりしたいである。
でもまず基本的なことを教えてやろう。 我文無しだぞ。
「お金なら、私が払ってあげる」
「えぇ、それは悪い気が」
サエラが言ってくれるが、いやこんな村で金を稼ぐのは大変であろう?サエラだってお代わりしたいだろうし‥‥‥。
「ウーロは狩り手伝ってくれてるから、それぐらい出すよ」
「そ、そうかの?では、おかわり‥‥‥したいなぁ」
「ウェールさんおかわりください」
サエラが厨房に向かってすこしだけ大きな声でそう言う。聞こえるか聞こえないかという微妙な音量であったが、お姉さんの耳が良いのか、それとも普通に聞こえたのか奥から「はーい」と上機嫌そうな返答が返ってきた。
というか、お姉さんの名前ウェールというのか。ふむふむ。
「ちなみにお代わりはいくらになるんだ?」
「10銅貨」
メアリーの質問にサエラが答える。ちなみにリンゴ一個80コッパー。パン一つ300コッパーである。
つまるところくっそやすい。
お代わりは早く出てくる。元々出来ていたものを切って出すだけだからか。値段も聞いて我はもぐもぐと食べる。メアリーもその安さからお代わりを何度かした。
外ではフィンもご馳走になっているらしい。狼というか、犬が食べても平気なのだと。まぁ過剰に甘いものでもないからの。
「口が汚れてる」
サエラがそう言って我の右ほっぺに手を当て、顔を近づけ引き寄せる。そして汚れてる側の口に布を当ててきて拭ってくれた。
うぬうぬ、これはかたじけない。
「ちゃんと噛まないと喉に詰まるよ」
「わかったである」
「なぁんか、サエラいつも以上に甲斐甲斐しく世話してません?」
お代わりがとっくに2桁に突入しだしたシオンが、サエラにそう指摘した。
その指摘には昨日知り合ったばかりのメアリーも同意のようで。
「まるで弟を世話してるみたいだぞ」
「そうかな?弟‥‥‥うん、そうかも」
何度か弟という言葉を口ずさみ、何やら納得した感じに頷くサエラ。
「弟が欲しかったんですか?」
「妹でもいいけど、年下は欲しかったかも」
どうやらサエラは年下の弟妹が欲しいらしい。意外と妹が抱きやすい感情を持っていたのだな。
シオンはペット、サエラは弟。ふむ、その二つを我が満たしてしまったというわけだな?ふふ、さすが我。
‥‥‥小娘に弟扱いされる我って。
「ウーロ、私の弟にならない?」
「いやだ」
サエラの可愛らしいお願いであるが、残念ながら却下させていただく。我こう見えても1万歳児。
そのあともサエラは我の服を引っ張ったり、肩を揺らしてきたりとちょくちょくとちょっかいをかけてきては、弟勧誘をするようになった。
シオンが犬みたいに騒ぐなら、サエラは猫が餌をねだるような感じである。
「ねーねー」
「あーもう、うるさいわ」
「あれ、外に誰かいますよ」
適当にサエラをあしらっていると、お腹いっぱいか、あるいは財布が軽くなったのか(たぶん後者)食べることをやめたシオンが窓に向かってそう言った。
だいたいみんな腹も満たされたので、サエラとメアリーと我も窓を覗くと、ウェールお姉さんと老婆が談笑していた。老婆はシオンと似た緑色の髪である。
「あれ、メリーアおばさんじゃない?」
「あ、ホントですね」
「誰だ?あのばあさんは」
姉妹に聞いてみるか。
「メリーアおばさん。おじさんの奥さん」
「別居してますけどね」
なるほど、グロータルの嫁か。エルフとはいえ、グロータルはそれなりに歳をとっている。その妻のメリーアとやらも、老いた姿をしているのは当然かもしれない。
なにぶんエルフは寿命が長いので、あまり老いた姿を見る機会はなかなかないのだ。
「‥‥‥む?」
なんだろう。何か既視感が。どこかで彼女を見たことがあるような、無いような‥‥‥。我は曖昧な記憶を掘り出すために、情報を2人に求めた。
「着ている衣服は良いものだな。何か偉い人なのか?」
「えーっと、確か竜の巫女姫っていう伝統的な役職に就いてましたね。ウロボロス伝説で竜王の復活を予知するんです」
「‥‥‥」
やべぇ、それだ。我はコソコソとあまり物音を立てないように窓から離れた。
そうだ、忘れてた。我竜王ウロボロスだった。我は復活すると、その情報が各国に広がり、瞬く間に討伐隊が送り込まれる。
情報は、レッテル村の巫女姫が発信するのだ。もし見つかったら、我が竜王だとバレるかもしれない。それだけはまずい!
するとシオンが自慢するように大きな胸をさらに張った。
「ちなみにわたしも巫女姫なんですよー!見習いですけど」
うっそ。
「おや、サエラにシオンじゃないか。またここでササネリを食べてるのかい?」
「あ、おばさん」
そうこうしているうちにメリーアがサエラたちに気付いて近づいてきた。
「え、ウーロさんそんな少食でしたっけ!?」
皿に乗ってたササネリを食い終わると、シオンがありえんという感じで驚いた。お代わりしないですか!このおいしさわかりませんか!と。
いや、旨いことには旨いよ?可能なら我だって金払ってお代わりしたいである。
でもまず基本的なことを教えてやろう。 我文無しだぞ。
「お金なら、私が払ってあげる」
「えぇ、それは悪い気が」
サエラが言ってくれるが、いやこんな村で金を稼ぐのは大変であろう?サエラだってお代わりしたいだろうし‥‥‥。
「ウーロは狩り手伝ってくれてるから、それぐらい出すよ」
「そ、そうかの?では、おかわり‥‥‥したいなぁ」
「ウェールさんおかわりください」
サエラが厨房に向かってすこしだけ大きな声でそう言う。聞こえるか聞こえないかという微妙な音量であったが、お姉さんの耳が良いのか、それとも普通に聞こえたのか奥から「はーい」と上機嫌そうな返答が返ってきた。
というか、お姉さんの名前ウェールというのか。ふむふむ。
「ちなみにお代わりはいくらになるんだ?」
「10銅貨」
メアリーの質問にサエラが答える。ちなみにリンゴ一個80コッパー。パン一つ300コッパーである。
つまるところくっそやすい。
お代わりは早く出てくる。元々出来ていたものを切って出すだけだからか。値段も聞いて我はもぐもぐと食べる。メアリーもその安さからお代わりを何度かした。
外ではフィンもご馳走になっているらしい。狼というか、犬が食べても平気なのだと。まぁ過剰に甘いものでもないからの。
「口が汚れてる」
サエラがそう言って我の右ほっぺに手を当て、顔を近づけ引き寄せる。そして汚れてる側の口に布を当ててきて拭ってくれた。
うぬうぬ、これはかたじけない。
「ちゃんと噛まないと喉に詰まるよ」
「わかったである」
「なぁんか、サエラいつも以上に甲斐甲斐しく世話してません?」
お代わりがとっくに2桁に突入しだしたシオンが、サエラにそう指摘した。
その指摘には昨日知り合ったばかりのメアリーも同意のようで。
「まるで弟を世話してるみたいだぞ」
「そうかな?弟‥‥‥うん、そうかも」
何度か弟という言葉を口ずさみ、何やら納得した感じに頷くサエラ。
「弟が欲しかったんですか?」
「妹でもいいけど、年下は欲しかったかも」
どうやらサエラは年下の弟妹が欲しいらしい。意外と妹が抱きやすい感情を持っていたのだな。
シオンはペット、サエラは弟。ふむ、その二つを我が満たしてしまったというわけだな?ふふ、さすが我。
‥‥‥小娘に弟扱いされる我って。
「ウーロ、私の弟にならない?」
「いやだ」
サエラの可愛らしいお願いであるが、残念ながら却下させていただく。我こう見えても1万歳児。
そのあともサエラは我の服を引っ張ったり、肩を揺らしてきたりとちょくちょくとちょっかいをかけてきては、弟勧誘をするようになった。
シオンが犬みたいに騒ぐなら、サエラは猫が餌をねだるような感じである。
「ねーねー」
「あーもう、うるさいわ」
「あれ、外に誰かいますよ」
適当にサエラをあしらっていると、お腹いっぱいか、あるいは財布が軽くなったのか(たぶん後者)食べることをやめたシオンが窓に向かってそう言った。
だいたいみんな腹も満たされたので、サエラとメアリーと我も窓を覗くと、ウェールお姉さんと老婆が談笑していた。老婆はシオンと似た緑色の髪である。
「あれ、メリーアおばさんじゃない?」
「あ、ホントですね」
「誰だ?あのばあさんは」
姉妹に聞いてみるか。
「メリーアおばさん。おじさんの奥さん」
「別居してますけどね」
なるほど、グロータルの嫁か。エルフとはいえ、グロータルはそれなりに歳をとっている。その妻のメリーアとやらも、老いた姿をしているのは当然かもしれない。
なにぶんエルフは寿命が長いので、あまり老いた姿を見る機会はなかなかないのだ。
「‥‥‥む?」
なんだろう。何か既視感が。どこかで彼女を見たことがあるような、無いような‥‥‥。我は曖昧な記憶を掘り出すために、情報を2人に求めた。
「着ている衣服は良いものだな。何か偉い人なのか?」
「えーっと、確か竜の巫女姫っていう伝統的な役職に就いてましたね。ウロボロス伝説で竜王の復活を予知するんです」
「‥‥‥」
やべぇ、それだ。我はコソコソとあまり物音を立てないように窓から離れた。
そうだ、忘れてた。我竜王ウロボロスだった。我は復活すると、その情報が各国に広がり、瞬く間に討伐隊が送り込まれる。
情報は、レッテル村の巫女姫が発信するのだ。もし見つかったら、我が竜王だとバレるかもしれない。それだけはまずい!
するとシオンが自慢するように大きな胸をさらに張った。
「ちなみにわたしも巫女姫なんですよー!見習いですけど」
うっそ。
「おや、サエラにシオンじゃないか。またここでササネリを食べてるのかい?」
「あ、おばさん」
そうこうしているうちにメリーアがサエラたちに気付いて近づいてきた。
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