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第1章〜ウロボロス復活〜
第55話「竜王が竜王をやめる時」
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「ぬ?な、何か今ぶつかったか!?」
大急ぎで飛んできたせいで前方不注意が過ぎた。着地した瞬間に何かに当たった気がするが、特に何も見当たらない。気のせいだろうか。
にしても久しぶり飛んだせいでうまくコントロールができなかった。下手したら事故に繋がるし、飛行の練習はしておいた方が良いかも知れん。
「な、な、なななな」
聞き覚えのある声が戸惑いの色を帯び、それは足元から聞こえてきた。
それは米粒みたいに小さくなったシオンが、我を見上げて口と目をあんぐり開けて震えてる姿であった。
否、シオンが小さくなったのではない。我が大きくなったのだ。
「姉さん!」
シオンの反応を待たずして、我の背に乗っていたサエラが勢いよく飛び降りる。
サエラはすぐさま姉の元に向かうと、その無事を確認して思い切り抱きしめた。シオンも我の姿に驚いていた硬直を解き、サエラの体を撫でるように抱きしめ返した。
「サエラ?サエラ‥‥‥け、怪我して、血が」
「大丈夫姉さん。大丈夫」
シオンを安心させるように柔らかい口調で話すサエラ。しかし頭を軽く擦り付けたり、手の甲に重ねるように置いたりと、その様子からは甘えも見て取れる。
あぁ、良かった。本当によかった。間に合って。
「‥‥‥で、このオオトカゲさんは一体何者なんですか」
うそだろ。この姿になってもトカゲか我。
だがシオンは我がウロボロス‥‥‥ウーロであることに気付いていないようだ。そりゃそうだ。あんなペットのような子竜と今の姿は似てもつかない。
‥‥‥我は数百年ぶりに、竜王と呼ばれていた頃の姿を取り戻していた。全長は20メートルは超える巨体。尾は太く、手足はワニのように横から生えて、腹を引きづる歩行をする。羽はヒレのように伸び、首が蛇のごとく長い。そして頭部も蛇を模した形状に近かった。
これが我の真の姿。人類の敵と呼ばれ、破壊と再生を司る竜の王。それが今の我なのだ。
ペットのウーロはでは、ない。
「これウーロ」
「はい?」
なのにサエラはなんの躊躇いもなしに我の正体を明らかにした。まさに瞬時の出来事。シオンは予想外の回答に思考が停止し、我は驚きと呆れなどごちゃ混ぜになった感情で思考が止まった。
なぁんでバラしちゃうの?しかも説明なく。
「ちょ、直球ぎるだろ!説明もなく伝えても信じてもらえんわ!」
「そう?」
「そうだよ!」
そう言うと、サエラはむむと口元に手を運びながら考え込む仕草をした。
ぽく、ぽく、ぽく、チーン。少し間を開けてからサエラはシオンに向かってこう伝えた。
「これ、ウーロ」
アホなの?
「だから説明をだな!」
「ウーロはウーロじゃん」
「あの、我を肯定してくれる言葉は嬉しいのだが、言い訳に使わないでほしいである」
「‥‥‥うーむ」
うーむじゃない。サエラは割と説明を省いてど直球に本題をぶつけてくるタイプなのだ。つまり「過程はいいから、結果だ結果!」という感じ。
口数が少ないせいだろう。シオンだって急にでかいドラゴンがペットのウーロだなんて言われてもちんぷんかんぷんだろうに。
現にシオンは混乱していた。それでもすぐ目の焦点を合わせたのはサエラの性格を考慮して、読み取る能力に長けたからか。
「ちょっと、ちょっと待ってください。え?これが、ウーロさんなんですか!?」
「うん」
「えぇ‥‥‥でも確かに喋り方とか、声質とか名残ありますけど‥‥‥なんで、どうやって」
やはりそう簡単に信じてはもらえないか。当然ではあるが。
我が全盛期の頃の姿を保っているのは他ならぬメアリーの魔法薬のおかげである。
あの薬、やはり規格外な代物だった。製作者が製作者なだけに予想はできたが‥‥‥否、予想外だ。
あの薬はただ魔力を回復させるだけではなく、本来の使用者の容量以上までドーピングできるほどのとんでもない魔法薬だったのだ。
人間とは比べ物にならないほどの魔力の容量を持つドラゴンが飲んでも全快とまではいかないが、3分の1くらいまでは回復することができる。
まぁとどのつまり人間の平均魔力容量が10の場合、あの魔法薬にはそもそも50分の魔力が込められていたのである。
明らかに異常である。普通の人間が飲めば溢れ出るエネルギーに酔ってぶっ倒れるかもしれん。だが今回、その効果は都合が良かった。
そもそも我が子竜と化していた原因が、魔力不足なためにそれに見合った姿まで縮小してしまったからだ。だから活動に対して十分なエネルギーを摂取することのできた我は一時的に元の姿に戻ることができたのである。
サエラは我がウロボロスだということを知ってたので、我が魔力回復できれば元の姿になり、飛行してシオンを救助できると考えていたのだ。結果大成功である。
しかし、今それら全てを説明している時間はない。手っ取り早くシオンに理解してもらうには、我の正体を明かすしかないだろう。
だが‥‥‥あぁ、やっぱりこわい。我はチラッとサエラの方を見た。
「‥‥‥」
甘えんな、と。無言の返答が返ってきた。はい。
「シオン、信じられんかもしれんが‥‥‥聞いてくれ」
「へ?あ、はい」
「我は、我は竜王ウロボロスなのだ」
「‥‥‥」
シオンは我に向かって、キョトンとした顔を晒したのだった。
大急ぎで飛んできたせいで前方不注意が過ぎた。着地した瞬間に何かに当たった気がするが、特に何も見当たらない。気のせいだろうか。
にしても久しぶり飛んだせいでうまくコントロールができなかった。下手したら事故に繋がるし、飛行の練習はしておいた方が良いかも知れん。
「な、な、なななな」
聞き覚えのある声が戸惑いの色を帯び、それは足元から聞こえてきた。
それは米粒みたいに小さくなったシオンが、我を見上げて口と目をあんぐり開けて震えてる姿であった。
否、シオンが小さくなったのではない。我が大きくなったのだ。
「姉さん!」
シオンの反応を待たずして、我の背に乗っていたサエラが勢いよく飛び降りる。
サエラはすぐさま姉の元に向かうと、その無事を確認して思い切り抱きしめた。シオンも我の姿に驚いていた硬直を解き、サエラの体を撫でるように抱きしめ返した。
「サエラ?サエラ‥‥‥け、怪我して、血が」
「大丈夫姉さん。大丈夫」
シオンを安心させるように柔らかい口調で話すサエラ。しかし頭を軽く擦り付けたり、手の甲に重ねるように置いたりと、その様子からは甘えも見て取れる。
あぁ、良かった。本当によかった。間に合って。
「‥‥‥で、このオオトカゲさんは一体何者なんですか」
うそだろ。この姿になってもトカゲか我。
だがシオンは我がウロボロス‥‥‥ウーロであることに気付いていないようだ。そりゃそうだ。あんなペットのような子竜と今の姿は似てもつかない。
‥‥‥我は数百年ぶりに、竜王と呼ばれていた頃の姿を取り戻していた。全長は20メートルは超える巨体。尾は太く、手足はワニのように横から生えて、腹を引きづる歩行をする。羽はヒレのように伸び、首が蛇のごとく長い。そして頭部も蛇を模した形状に近かった。
これが我の真の姿。人類の敵と呼ばれ、破壊と再生を司る竜の王。それが今の我なのだ。
ペットのウーロはでは、ない。
「これウーロ」
「はい?」
なのにサエラはなんの躊躇いもなしに我の正体を明らかにした。まさに瞬時の出来事。シオンは予想外の回答に思考が停止し、我は驚きと呆れなどごちゃ混ぜになった感情で思考が止まった。
なぁんでバラしちゃうの?しかも説明なく。
「ちょ、直球ぎるだろ!説明もなく伝えても信じてもらえんわ!」
「そう?」
「そうだよ!」
そう言うと、サエラはむむと口元に手を運びながら考え込む仕草をした。
ぽく、ぽく、ぽく、チーン。少し間を開けてからサエラはシオンに向かってこう伝えた。
「これ、ウーロ」
アホなの?
「だから説明をだな!」
「ウーロはウーロじゃん」
「あの、我を肯定してくれる言葉は嬉しいのだが、言い訳に使わないでほしいである」
「‥‥‥うーむ」
うーむじゃない。サエラは割と説明を省いてど直球に本題をぶつけてくるタイプなのだ。つまり「過程はいいから、結果だ結果!」という感じ。
口数が少ないせいだろう。シオンだって急にでかいドラゴンがペットのウーロだなんて言われてもちんぷんかんぷんだろうに。
現にシオンは混乱していた。それでもすぐ目の焦点を合わせたのはサエラの性格を考慮して、読み取る能力に長けたからか。
「ちょっと、ちょっと待ってください。え?これが、ウーロさんなんですか!?」
「うん」
「えぇ‥‥‥でも確かに喋り方とか、声質とか名残ありますけど‥‥‥なんで、どうやって」
やはりそう簡単に信じてはもらえないか。当然ではあるが。
我が全盛期の頃の姿を保っているのは他ならぬメアリーの魔法薬のおかげである。
あの薬、やはり規格外な代物だった。製作者が製作者なだけに予想はできたが‥‥‥否、予想外だ。
あの薬はただ魔力を回復させるだけではなく、本来の使用者の容量以上までドーピングできるほどのとんでもない魔法薬だったのだ。
人間とは比べ物にならないほどの魔力の容量を持つドラゴンが飲んでも全快とまではいかないが、3分の1くらいまでは回復することができる。
まぁとどのつまり人間の平均魔力容量が10の場合、あの魔法薬にはそもそも50分の魔力が込められていたのである。
明らかに異常である。普通の人間が飲めば溢れ出るエネルギーに酔ってぶっ倒れるかもしれん。だが今回、その効果は都合が良かった。
そもそも我が子竜と化していた原因が、魔力不足なためにそれに見合った姿まで縮小してしまったからだ。だから活動に対して十分なエネルギーを摂取することのできた我は一時的に元の姿に戻ることができたのである。
サエラは我がウロボロスだということを知ってたので、我が魔力回復できれば元の姿になり、飛行してシオンを救助できると考えていたのだ。結果大成功である。
しかし、今それら全てを説明している時間はない。手っ取り早くシオンに理解してもらうには、我の正体を明かすしかないだろう。
だが‥‥‥あぁ、やっぱりこわい。我はチラッとサエラの方を見た。
「‥‥‥」
甘えんな、と。無言の返答が返ってきた。はい。
「シオン、信じられんかもしれんが‥‥‥聞いてくれ」
「へ?あ、はい」
「我は、我は竜王ウロボロスなのだ」
「‥‥‥」
シオンは我に向かって、キョトンとした顔を晒したのだった。
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