71 / 176
第2章〜不死編〜
第70話「魔道具職人2」
しおりを挟む
「お、よく眠れたかおま‥‥‥どした?」
宿の外へ出るとすでにガルムが待っていて、壁に背中を預けていた。今日はゴードンやフィンにメアリーという、いつものメンツはいないらしい。
ガルムは出てきた我らを見るなり目を細めてそう言った。視線の先はシオンに向いている。
なぜならシオンは唇を口内に押し込んで、歯がゆそうにプルプルと震えていたからだ。何事かと思うのは仕方ないだろう。
「なんだ?宿気に入らなかったか?」
「違います。違いましゅ」
「?」
「気にしないで」
いつもと様子のちがうシオンを見て、ガルムがますます不思議そうな顔をするが、サエラが問題ないと告げる。
我もどうしてシオンがこうなったかは知らんが、なんだか恥ずかしいことでも暴露されそうになったのかもな。サエラがなんか言おうとしてたし。
「わたしは、わたしは腐女子なんかじゃねぇです」
うむ、お主は婦女子ではないな。
「なんかよくわかんねーけど、とりあえず体調が悪いとかそんなんじゃないんだな?」
「仕事はできる」
答えられない代わりにサエラがガルムの言葉に頷いた。仕事には差し支えないだろう。なかなかシオンも図太いので、あと数十分したら復活するはずだ。
そう思い我も頷くと、それならばとガルムは「じゃ、ついてこい」と言って我らの案内を始めた。
「これから向かう先は‥‥‥ちょいと訳ありなんだ」
「あ、やっぱりそうなのか」
ガルムの忠告に我は納得の表情で頷いた。我らの戦闘能力も、得意技能もなにも分からない状態で、我らに頼みたい仕事と言ったら、要するに何かしら普通の人間には任せられない理由ありきの依頼だと予想してたのだ。
当然その考えはシオンとサエラにも伝えてあるので、二人とも「なるほど」と口を揃えて言った。
ガルムは少々申し訳なさそうにボリボリと頭をかいた。
「わりーな。でもま、金になることは保証するよ」
「で、訳ありってどんな理由なんですか?」
シオンが聞くとガルムは周囲に誰もいないことを確認した上で、小声で返答する。
「これから向かうのはとある魔道具屋だ」
「魔道具」
魔道具とは、魔法薬のように魔法が込められた道具のことである。基本的に魔法薬よりも高価で、剣に魔法を込めた魔剣と呼ばれる代物から、日常を便利にする家具系の道具まで様々である。
最も、常人からすればとてもじゃないが手の出せる額ではなく、主に貴族か金持ちしか所有できんらしい。
「そうだ。腕は良いんだが‥‥‥」
「性格か?」
我が予想してみるが、答えは違うらしくガルムはむむむと悩みながら首を傾げた。
「性格‥‥‥いやまぁ性格もあるんだろうけど、なんつーんだろ。種族?」
「‥‥‥もしかして、魔族ですか?」
シオンの質問は正解だったのか、ガルムが同意を示した。
魔族。かつて人類と敵対していた魔物と人間の間に生きる種族。彼らはエルフ以上の高い魔力の素質を持ち、数は少ないがその基礎能力は人間を上回る。
我が生きた時代では常に人間と戦争を仕掛けており、彼らは国ではなく、魔王の元で戦っていた。
しかし現在。戦争も終わり、数百年もたち、人間とのいざこざも減ってきているらしい‥‥‥が。
「この都市、リメットは戦争の前線だった。だから魔族からの古傷も残ってて、ちょっとばかし魔族が住むにはやりにくいんだよな」
つまりは、人種や価値観の違いによるズレ。差別とはいかないが仕事がしにくかったり、偏見を買ったりするのだろう。
「お前らどうだ?なんか魔族に嫌な思い出とか、気持ちとかねーか?」
「いや全然」
「会ったことないし」
どうやらシオンとサエラは魔族にあったことすらない。ふふふ。我はここぞというタイミングで、胸を張って自慢をしてみた。
「我会ったことあるー!」
「え!マジですか!どんな人でした!」
ぐふふ、シオン聞きたい?聞きたい?気になっちゃう?
「なんとー」
「「なんと?」」
「魔王である!!」
「マジですか!え、魔王に会ったことあるんですか!」
「あるのよねー、我、魔王に会ったことあるのだよー。いいだろー」
「すご」
「お前らにその手の心配するのが無駄だってことがよくわかったよ」
なんかガルムが疲れたように息を吐いたが、大丈夫?尻尾揉む?
宿の外へ出るとすでにガルムが待っていて、壁に背中を預けていた。今日はゴードンやフィンにメアリーという、いつものメンツはいないらしい。
ガルムは出てきた我らを見るなり目を細めてそう言った。視線の先はシオンに向いている。
なぜならシオンは唇を口内に押し込んで、歯がゆそうにプルプルと震えていたからだ。何事かと思うのは仕方ないだろう。
「なんだ?宿気に入らなかったか?」
「違います。違いましゅ」
「?」
「気にしないで」
いつもと様子のちがうシオンを見て、ガルムがますます不思議そうな顔をするが、サエラが問題ないと告げる。
我もどうしてシオンがこうなったかは知らんが、なんだか恥ずかしいことでも暴露されそうになったのかもな。サエラがなんか言おうとしてたし。
「わたしは、わたしは腐女子なんかじゃねぇです」
うむ、お主は婦女子ではないな。
「なんかよくわかんねーけど、とりあえず体調が悪いとかそんなんじゃないんだな?」
「仕事はできる」
答えられない代わりにサエラがガルムの言葉に頷いた。仕事には差し支えないだろう。なかなかシオンも図太いので、あと数十分したら復活するはずだ。
そう思い我も頷くと、それならばとガルムは「じゃ、ついてこい」と言って我らの案内を始めた。
「これから向かう先は‥‥‥ちょいと訳ありなんだ」
「あ、やっぱりそうなのか」
ガルムの忠告に我は納得の表情で頷いた。我らの戦闘能力も、得意技能もなにも分からない状態で、我らに頼みたい仕事と言ったら、要するに何かしら普通の人間には任せられない理由ありきの依頼だと予想してたのだ。
当然その考えはシオンとサエラにも伝えてあるので、二人とも「なるほど」と口を揃えて言った。
ガルムは少々申し訳なさそうにボリボリと頭をかいた。
「わりーな。でもま、金になることは保証するよ」
「で、訳ありってどんな理由なんですか?」
シオンが聞くとガルムは周囲に誰もいないことを確認した上で、小声で返答する。
「これから向かうのはとある魔道具屋だ」
「魔道具」
魔道具とは、魔法薬のように魔法が込められた道具のことである。基本的に魔法薬よりも高価で、剣に魔法を込めた魔剣と呼ばれる代物から、日常を便利にする家具系の道具まで様々である。
最も、常人からすればとてもじゃないが手の出せる額ではなく、主に貴族か金持ちしか所有できんらしい。
「そうだ。腕は良いんだが‥‥‥」
「性格か?」
我が予想してみるが、答えは違うらしくガルムはむむむと悩みながら首を傾げた。
「性格‥‥‥いやまぁ性格もあるんだろうけど、なんつーんだろ。種族?」
「‥‥‥もしかして、魔族ですか?」
シオンの質問は正解だったのか、ガルムが同意を示した。
魔族。かつて人類と敵対していた魔物と人間の間に生きる種族。彼らはエルフ以上の高い魔力の素質を持ち、数は少ないがその基礎能力は人間を上回る。
我が生きた時代では常に人間と戦争を仕掛けており、彼らは国ではなく、魔王の元で戦っていた。
しかし現在。戦争も終わり、数百年もたち、人間とのいざこざも減ってきているらしい‥‥‥が。
「この都市、リメットは戦争の前線だった。だから魔族からの古傷も残ってて、ちょっとばかし魔族が住むにはやりにくいんだよな」
つまりは、人種や価値観の違いによるズレ。差別とはいかないが仕事がしにくかったり、偏見を買ったりするのだろう。
「お前らどうだ?なんか魔族に嫌な思い出とか、気持ちとかねーか?」
「いや全然」
「会ったことないし」
どうやらシオンとサエラは魔族にあったことすらない。ふふふ。我はここぞというタイミングで、胸を張って自慢をしてみた。
「我会ったことあるー!」
「え!マジですか!どんな人でした!」
ぐふふ、シオン聞きたい?聞きたい?気になっちゃう?
「なんとー」
「「なんと?」」
「魔王である!!」
「マジですか!え、魔王に会ったことあるんですか!」
「あるのよねー、我、魔王に会ったことあるのだよー。いいだろー」
「すご」
「お前らにその手の心配するのが無駄だってことがよくわかったよ」
なんかガルムが疲れたように息を吐いたが、大丈夫?尻尾揉む?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
85
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる