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第4章〜不死〜
41話
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すでに見えなくなったガルムの後をついていくと、そこには上空を滑空しているときにも見えたバリケードがあった。
木の骨組みの上から土を操る系統の魔法を使ったのか、頑丈な岩石のような壁ある・・・が、今やそれも見る影もない。
木っ端微塵とまでは言わないが、急遽建てられたバリケードの真ん中には破城槌でもついたかのような大穴が開いていたのだ。
そこから水筒からこぼれた水みたいに、ゾンビが雪崩れ込もうとしてくる。
「いいかぁ!一匹も中に入れるんじゃねぇぞ!」
「燃やせぇ!燃やしまくれえぇ!」
大穴を補強するように、重厚な装備を身にまとう戦士たちが大盾かざして横に並び、ゾンビ共を食い止めていた。
そしてまだ残っているバリケードの上にローブを着た人間たちが立っていて、全員が例外なく杖を持っていた。
どう見ても魔術師である。そのうち一人は他と比べて異常なほどに魔力が高い。辺境伯から送られた人員か?
細身の男は波のようにのたうつ死体の軍勢に、大きくはないものの透き通る声で指示を出した。
「火球の準備を!周囲をまとめて一掃しますよ!」
男がそう叫び、合図を送る。魔術師の杖の先端から現れた火球を一斉にゾンビの群れへと叩き込んだ。
流星のように線を描きながら落ちていく攻撃魔法がゾンビに直撃すると、これまた迫力のある大爆発が起こった。
そして魔法を放ち終えた魔術師が一旦下がると、その後ろにいた別の魔術師が前へ出て、再び詠唱を始めた。
なるほど、人員を入れ替えながら魔法を放つことで、連続でファイアボールを撃つことが可能なのか。
よくまぁ思いつくものだ。
「凄まじい」
「がう」
魔術師部隊による一斉射撃を見てサエラは目を見開きながらも、なんとか言葉をひねり出した。我も頷く。
魔術師を統率しているのは紫色の肌をした男・・・あれは魔族か。
「魔術師ゼリフ。ホールワード伯の戦力の一人ね」
何者かを教えるのはゴードン。どうやらあの男の姿を知っているらしい。
魔族が人間に仕えているとは・・・本当に時代は変わったなと心の底から思った。
「ここは彼らに任せても大丈夫そうね。ガルムちゃんもいないし・・・別の場所を防衛しましょう!」
ゴードンの提案にサエラはコクリと頷くと、言葉通りに別の防衛戦が行われている場所に移動する。
我がいない間にどこにバリケードがあるのか調べていたらしい。
次の防衛網は先ほどの魔術師部隊がいた所からそう離れた位置ではなかった。
ここのバリケードは無事だが、代わりに外側から大量のゾンビが互いを踏み台にし、よじ登ってきている。
ぞわぞわと屍が壁を乗り越えてくる様は、別にゾンビに対して恐怖心もない我でもおぞましいものだと感じた。
当然、苦手意識の強いサエラはその光景を目の当たりにし、顔を青くするがすぐに振り払う。
パンッ!と両手で顔を叩き、覚悟を決める。
「ここでは援軍が必要らしいわね!行くわよ!」
ゴードンが鋼鉄を身にまとい、言うが早くアンデットの群れへと突撃していった。
「了解・・・!」
「ガァッ!」
すこし出遅れて、我らもゾンビの溢れるバリケードまで向かって行く。
こぼれ落ちてくるゾンビを一匹一匹始末しているのは、リメットの衛兵たちである。
ゾンビは遅いし、落ちてから立ち上がるまでだいぶ時間がある。中には落下で骨が折れ、立ち上がれないゾンビもいるだろう。
しかしそのタイムロスを覆すほどの数がバリケードを乗り越え、降り注ぐ。
衛兵の数は10人。あと数分もてば良い方だろう。だが現状をひっくり返す戦力が投入された。
「いっくわよぉぉぉぉお!!『アイアン・ファウスト』ォッ!!」
鉄拳がバリケードに叩き込まれる。激しい衝撃音とは裏腹にバリケードは無傷だが、本当にダメージがあるのはゾンビ側である。
ゾンビたちは一瞬振動で揺れたバリケードから蹴り飛ばされるように吹っ飛ばされた。
バリケードを振動させ、それのエネルギーをゾンビに叩き込んだのである。
同時に血も飛び、バリケードはゾンビに付けられた傷跡を除けば新品同様の状態となった。
「て、鉄人!?」
「Aランカーがなぜここに」
「引退したはずじゃ!」
衛兵たちは歓声を上げるよりも混乱に驚いていた。
そういえば麻痺していたが、Sランカーは人外クラスで、Aランカーは英雄クラスなのだったな。そりゃ驚くわ。
「ま、まだいるぞぉ!」
「くそっ!」
さらに聞こえてくるのは毒を吐く衛兵の言葉。その先には殺し損ねたゾンビが数体、立ち上がろうとしている。
死骸に紛れていたのだろう。見分けにくいからな。
だがわずかに動くゾンビの脳天を、すぐに矢が射抜いて、ただの死体に戻した。
「・・・三体」
サエラはゾンビをしっかりと目に収め、確実なヘッド・ショットを決めてみせた。
人の頭蓋は硬いが、今の弓なら問題ありまい。植物ゾンビの時も上手くやれたし、できると信じていた。
よくやったぞサエラ。
「い、一撃!?」
「綺麗に頭に刺さってる」
「・・・エルフか?何者だ?」
衛兵たちが困惑しておる。いやはや愉快愉快、この娘は我の自慢の仲間であるぞ!
サエラから時々対ゾンビの相談を受けていた我は、鼻高々にフンと鼻息を漏らした。
木の骨組みの上から土を操る系統の魔法を使ったのか、頑丈な岩石のような壁ある・・・が、今やそれも見る影もない。
木っ端微塵とまでは言わないが、急遽建てられたバリケードの真ん中には破城槌でもついたかのような大穴が開いていたのだ。
そこから水筒からこぼれた水みたいに、ゾンビが雪崩れ込もうとしてくる。
「いいかぁ!一匹も中に入れるんじゃねぇぞ!」
「燃やせぇ!燃やしまくれえぇ!」
大穴を補強するように、重厚な装備を身にまとう戦士たちが大盾かざして横に並び、ゾンビ共を食い止めていた。
そしてまだ残っているバリケードの上にローブを着た人間たちが立っていて、全員が例外なく杖を持っていた。
どう見ても魔術師である。そのうち一人は他と比べて異常なほどに魔力が高い。辺境伯から送られた人員か?
細身の男は波のようにのたうつ死体の軍勢に、大きくはないものの透き通る声で指示を出した。
「火球の準備を!周囲をまとめて一掃しますよ!」
男がそう叫び、合図を送る。魔術師の杖の先端から現れた火球を一斉にゾンビの群れへと叩き込んだ。
流星のように線を描きながら落ちていく攻撃魔法がゾンビに直撃すると、これまた迫力のある大爆発が起こった。
そして魔法を放ち終えた魔術師が一旦下がると、その後ろにいた別の魔術師が前へ出て、再び詠唱を始めた。
なるほど、人員を入れ替えながら魔法を放つことで、連続でファイアボールを撃つことが可能なのか。
よくまぁ思いつくものだ。
「凄まじい」
「がう」
魔術師部隊による一斉射撃を見てサエラは目を見開きながらも、なんとか言葉をひねり出した。我も頷く。
魔術師を統率しているのは紫色の肌をした男・・・あれは魔族か。
「魔術師ゼリフ。ホールワード伯の戦力の一人ね」
何者かを教えるのはゴードン。どうやらあの男の姿を知っているらしい。
魔族が人間に仕えているとは・・・本当に時代は変わったなと心の底から思った。
「ここは彼らに任せても大丈夫そうね。ガルムちゃんもいないし・・・別の場所を防衛しましょう!」
ゴードンの提案にサエラはコクリと頷くと、言葉通りに別の防衛戦が行われている場所に移動する。
我がいない間にどこにバリケードがあるのか調べていたらしい。
次の防衛網は先ほどの魔術師部隊がいた所からそう離れた位置ではなかった。
ここのバリケードは無事だが、代わりに外側から大量のゾンビが互いを踏み台にし、よじ登ってきている。
ぞわぞわと屍が壁を乗り越えてくる様は、別にゾンビに対して恐怖心もない我でもおぞましいものだと感じた。
当然、苦手意識の強いサエラはその光景を目の当たりにし、顔を青くするがすぐに振り払う。
パンッ!と両手で顔を叩き、覚悟を決める。
「ここでは援軍が必要らしいわね!行くわよ!」
ゴードンが鋼鉄を身にまとい、言うが早くアンデットの群れへと突撃していった。
「了解・・・!」
「ガァッ!」
すこし出遅れて、我らもゾンビの溢れるバリケードまで向かって行く。
こぼれ落ちてくるゾンビを一匹一匹始末しているのは、リメットの衛兵たちである。
ゾンビは遅いし、落ちてから立ち上がるまでだいぶ時間がある。中には落下で骨が折れ、立ち上がれないゾンビもいるだろう。
しかしそのタイムロスを覆すほどの数がバリケードを乗り越え、降り注ぐ。
衛兵の数は10人。あと数分もてば良い方だろう。だが現状をひっくり返す戦力が投入された。
「いっくわよぉぉぉぉお!!『アイアン・ファウスト』ォッ!!」
鉄拳がバリケードに叩き込まれる。激しい衝撃音とは裏腹にバリケードは無傷だが、本当にダメージがあるのはゾンビ側である。
ゾンビたちは一瞬振動で揺れたバリケードから蹴り飛ばされるように吹っ飛ばされた。
バリケードを振動させ、それのエネルギーをゾンビに叩き込んだのである。
同時に血も飛び、バリケードはゾンビに付けられた傷跡を除けば新品同様の状態となった。
「て、鉄人!?」
「Aランカーがなぜここに」
「引退したはずじゃ!」
衛兵たちは歓声を上げるよりも混乱に驚いていた。
そういえば麻痺していたが、Sランカーは人外クラスで、Aランカーは英雄クラスなのだったな。そりゃ驚くわ。
「ま、まだいるぞぉ!」
「くそっ!」
さらに聞こえてくるのは毒を吐く衛兵の言葉。その先には殺し損ねたゾンビが数体、立ち上がろうとしている。
死骸に紛れていたのだろう。見分けにくいからな。
だがわずかに動くゾンビの脳天を、すぐに矢が射抜いて、ただの死体に戻した。
「・・・三体」
サエラはゾンビをしっかりと目に収め、確実なヘッド・ショットを決めてみせた。
人の頭蓋は硬いが、今の弓なら問題ありまい。植物ゾンビの時も上手くやれたし、できると信じていた。
よくやったぞサエラ。
「い、一撃!?」
「綺麗に頭に刺さってる」
「・・・エルフか?何者だ?」
衛兵たちが困惑しておる。いやはや愉快愉快、この娘は我の自慢の仲間であるぞ!
サエラから時々対ゾンビの相談を受けていた我は、鼻高々にフンと鼻息を漏らした。
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