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〜第6章〜ラドン編
56話
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「ここが地底湖であるか」
あるかないか怪しいほど小さな首を旋回させ、ウロボロスは目的地である地底湖を見渡した。
ゴツゴツした岩が無数に広がり、それらはレンコンの断面図のような小さな穴が空いている。そこから時々蒸気が漏れ、近くの岩に水滴を浮かばせた。
だが肝心のお湯の溜まり場が見当たらない。ウロボロスは怪訝な目つきでガルムを見上げる。
「・・・地底、湖?」
「お湯がそのまま湧いてるわけねぇだろ。ほれ!」
ガルムが愛用の薙刀の石突きの部分で地面を叩くと、バキバキと岩が割れて煙のように白い蒸気が噴き出した。プシュー!と意外と大きな音である。
「ぬお!?」
「キィ!」
地面に降りていたウロボロスとティは吹き出す蒸気と音に驚き、ゴロンと尻から倒れてしまった。コメディチックに足が天井を向く。
そして蒸気が一旦収まると、今度は砕けた岩の隙間から湯気を蒸すお湯が湧き出てきたのだ。シオンとサエラが「おーっ!」と見入るように声を上げた。
ガルムが得意げにニヤリと笑う。
「ここらは水脈がそこら中に通ってんのさ。例えんなら鉱山の血管だな」
ガルムの言う通り、ラドン鉱山には数え切れないほどの水脈が網の目状に広がっている。
至る所に流れる水脈は鉱山の奥深くに眠るマグマの熱に暖められ、溶け出した鉱石の成分を吸収しながら地上にやってくるのだ。
この地底湖と呼ばれる空間はいわゆる心臓の部分。鉱山の水脈を流れる水をまず最初に送り出す場所なのだ。
「多分ヤゴの大群はこの先だな・・・追跡者がいるとありがたいんだが・・・」
「サエラ!出番だぞ!」
「ラジャっ」
ガルムの呟きに反応したウロボロスはピシッと爪をサエラに向けて指示を出す。
シャキーンと綺麗な敬礼をしてみせたサエラは早速地面に座り、ヤゴの痕跡を探し始めた。久しぶりの探索でやる気充分なようだ。
「あー、そういやサエラって追跡者だったな。アーチャーじゃねぇんだな」
ガルムの言葉にウロボロスはウムウムと頷く。
「我も今思い出した」
そろそろ記憶が怪しい耄碌ジジイかもしれねぇなと、ガルムはホッホッホと笑うウロボロスを見て失礼な事を考えた。
子竜ではあるが、これでも万単位の年月を生きた竜なのだ。たまにその事を忘れる。
おそらくウロボロスも忘れている事だろう。竜王としての意識が既にないのだ。
それが良い傾向なのか、悪い傾向なのかは誰にもわからない。
するとサエラがとんでもない発言を口から漏らした。
「私も」
まさかのである。
「おい本人」
「お主が忘れてはならんだろ」
「てへぺろ」
ピンク色の舌をちろりと出して、コテンとイタズラっぽく頭に手を当てたサエラ。
しかしいつも通りの無表情であるため、それが可愛らしいかと聞かれると人によって感性で別れるだろう。
ウロボロスはやめろやめろと首を振り、満足な反応を得れなかったサエラは小さく出した舌をそのまま差すように突き出した。
いわゆるあっかんべーである。
「やだ、ウチの妹可愛すぎませんか」
シオンにはダイレクトにキタらしく、口元を手で覆ってプルプルと震えていた。
このシスコンめとウロボロスが呆れた視線を送る。と、急に背中を引っ張られる感触がウロボロスの注意を引いた。
クルッと振り返ると、ベタとガマが気を引くために翼を引っ張っていたことに気付いた。
「・・・なんであるか?」
そう尋ねるとベタとガマはお互いをギュッと抱きしめ、互いの頰を当て合いながら口を開く。
「竜王様。」
「見て。見て。」
「「てへぺろ。」」
サエラの真似をするようにぺろっと舌を出し、片目を瞑って小首を傾げる。
顔から影を取った二人の表情はとてもハッキリとしており、ギョロリとまん丸で大きな瞳は不気味ではあるが、まぶたで閉じてしまえばそこにあるのは幼女のあざとくも可愛らしい表情だった。
同じ顔を生かし、鏡に映ったかのように左右対称に表情を作った二人に、ウロボロスは心臓を矢で射抜かれた感じに胸を押さえた。
「くっ!可愛すぎる我が娘たちよ!」
見事にレッド・キャップの術中に嵌ったウロボロスは二人の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
それでも構わないと、ベタとガマはもっともっとと尻尾を振る犬みたいに頭をウロボロスの掌に押し付ける。
「・・・なんだこれ」
「ねぇねぇガルムガルム」
メアリーが白い目で周りを見渡すガルムの服の袖を引っ張る。反射的に振り向いてしまったガルムは、きらきらと期待するような目で自分を見上げるメアリーを見てこれから何が言ってくるのかを察した。
そして速攻でその意見を却下するセリフを喉の中に留めておく。
「てへぺ「ろとかしたら今日ずっと口聞かないからな」まままままさか、やつかれが無益な振る舞いをするはずがないだろう!」
ふははは!と言いながらガルムの視線を背に向けたメアリー。腕で額をこすり、小さく「ふぅ、あぶねぇ」と呟いたのに対し、ガルムは聞かなかったフリをした。
せめてもの慈悲であった。
「遊んでないで手伝ってよ」
サエラのごもっともな言葉に、一同は素直に頷いた。
あるかないか怪しいほど小さな首を旋回させ、ウロボロスは目的地である地底湖を見渡した。
ゴツゴツした岩が無数に広がり、それらはレンコンの断面図のような小さな穴が空いている。そこから時々蒸気が漏れ、近くの岩に水滴を浮かばせた。
だが肝心のお湯の溜まり場が見当たらない。ウロボロスは怪訝な目つきでガルムを見上げる。
「・・・地底、湖?」
「お湯がそのまま湧いてるわけねぇだろ。ほれ!」
ガルムが愛用の薙刀の石突きの部分で地面を叩くと、バキバキと岩が割れて煙のように白い蒸気が噴き出した。プシュー!と意外と大きな音である。
「ぬお!?」
「キィ!」
地面に降りていたウロボロスとティは吹き出す蒸気と音に驚き、ゴロンと尻から倒れてしまった。コメディチックに足が天井を向く。
そして蒸気が一旦収まると、今度は砕けた岩の隙間から湯気を蒸すお湯が湧き出てきたのだ。シオンとサエラが「おーっ!」と見入るように声を上げた。
ガルムが得意げにニヤリと笑う。
「ここらは水脈がそこら中に通ってんのさ。例えんなら鉱山の血管だな」
ガルムの言う通り、ラドン鉱山には数え切れないほどの水脈が網の目状に広がっている。
至る所に流れる水脈は鉱山の奥深くに眠るマグマの熱に暖められ、溶け出した鉱石の成分を吸収しながら地上にやってくるのだ。
この地底湖と呼ばれる空間はいわゆる心臓の部分。鉱山の水脈を流れる水をまず最初に送り出す場所なのだ。
「多分ヤゴの大群はこの先だな・・・追跡者がいるとありがたいんだが・・・」
「サエラ!出番だぞ!」
「ラジャっ」
ガルムの呟きに反応したウロボロスはピシッと爪をサエラに向けて指示を出す。
シャキーンと綺麗な敬礼をしてみせたサエラは早速地面に座り、ヤゴの痕跡を探し始めた。久しぶりの探索でやる気充分なようだ。
「あー、そういやサエラって追跡者だったな。アーチャーじゃねぇんだな」
ガルムの言葉にウロボロスはウムウムと頷く。
「我も今思い出した」
そろそろ記憶が怪しい耄碌ジジイかもしれねぇなと、ガルムはホッホッホと笑うウロボロスを見て失礼な事を考えた。
子竜ではあるが、これでも万単位の年月を生きた竜なのだ。たまにその事を忘れる。
おそらくウロボロスも忘れている事だろう。竜王としての意識が既にないのだ。
それが良い傾向なのか、悪い傾向なのかは誰にもわからない。
するとサエラがとんでもない発言を口から漏らした。
「私も」
まさかのである。
「おい本人」
「お主が忘れてはならんだろ」
「てへぺろ」
ピンク色の舌をちろりと出して、コテンとイタズラっぽく頭に手を当てたサエラ。
しかしいつも通りの無表情であるため、それが可愛らしいかと聞かれると人によって感性で別れるだろう。
ウロボロスはやめろやめろと首を振り、満足な反応を得れなかったサエラは小さく出した舌をそのまま差すように突き出した。
いわゆるあっかんべーである。
「やだ、ウチの妹可愛すぎませんか」
シオンにはダイレクトにキタらしく、口元を手で覆ってプルプルと震えていた。
このシスコンめとウロボロスが呆れた視線を送る。と、急に背中を引っ張られる感触がウロボロスの注意を引いた。
クルッと振り返ると、ベタとガマが気を引くために翼を引っ張っていたことに気付いた。
「・・・なんであるか?」
そう尋ねるとベタとガマはお互いをギュッと抱きしめ、互いの頰を当て合いながら口を開く。
「竜王様。」
「見て。見て。」
「「てへぺろ。」」
サエラの真似をするようにぺろっと舌を出し、片目を瞑って小首を傾げる。
顔から影を取った二人の表情はとてもハッキリとしており、ギョロリとまん丸で大きな瞳は不気味ではあるが、まぶたで閉じてしまえばそこにあるのは幼女のあざとくも可愛らしい表情だった。
同じ顔を生かし、鏡に映ったかのように左右対称に表情を作った二人に、ウロボロスは心臓を矢で射抜かれた感じに胸を押さえた。
「くっ!可愛すぎる我が娘たちよ!」
見事にレッド・キャップの術中に嵌ったウロボロスは二人の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
それでも構わないと、ベタとガマはもっともっとと尻尾を振る犬みたいに頭をウロボロスの掌に押し付ける。
「・・・なんだこれ」
「ねぇねぇガルムガルム」
メアリーが白い目で周りを見渡すガルムの服の袖を引っ張る。反射的に振り向いてしまったガルムは、きらきらと期待するような目で自分を見上げるメアリーを見てこれから何が言ってくるのかを察した。
そして速攻でその意見を却下するセリフを喉の中に留めておく。
「てへぺ「ろとかしたら今日ずっと口聞かないからな」まままままさか、やつかれが無益な振る舞いをするはずがないだろう!」
ふははは!と言いながらガルムの視線を背に向けたメアリー。腕で額をこすり、小さく「ふぅ、あぶねぇ」と呟いたのに対し、ガルムは聞かなかったフリをした。
せめてもの慈悲であった。
「遊んでないで手伝ってよ」
サエラのごもっともな言葉に、一同は素直に頷いた。
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