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第3章~魔物の口~
17話「笛①」
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俺の名前はガルム。ギルドの連中は俺のことを「猛獣使い」とか呼んでるらしいが、内心もっとかっこいい異名をつけてくれよと思っていたりするただのお兄ちゃんさ。(キラッ☆
リメットを活動拠点の中心にして随分長くなったが、ここでの暮らしも随分と安定してきたものだと思う。街の住人や一部冒険者とは友好的な関係も結べたし、良心的な貴族などといった大物連中との伝もできた。
高ランクの依頼を終えれば、大金も入るし貯金もある。ようやく一息つけると思ってた矢先に・・・。
つまり、あー、なんというか、最近面倒な仕事が俺に回ってきた・・・ということだ。
見ず知らずの他人からだったら蹴っ飛ばしてた。間違いなく。
しかしこの依頼、非常に残念なことに昔のパーティーメンバーからの依頼だった。だから断り辛ぇんだよなぁ・・・。色々と借りもあるし。
俺は屋根の上で寝っころがりながら封筒を取り出す。内容はこうだ。
『親愛なる戦友へ。
同士よ、この手紙を読んでいるということは、おそらく私の身が危険に晒されている時だと思う。こんなことに君を巻き込むことは私の身勝手であると重々承知している。しかし、今は私個人の力でどうこうなる問題ではないのだ。どうか君の力を再び貸してほしい。君には、私の右手に隠された”混沌の印”を見せた唯一の人間だ。君以外に頼れる者は他にいない。
光と闇の子が、再び衝突しようとしているのだ。二つがぶつかりあう時、それは世界の終末を意味する。私たち人類が滅び、新たな生m』
前置きがスゲェ長い。4枚ある手紙の内3枚がこれ系の長文で綴られている。
奴の手紙を読むときは最後の1枚を読めば大体把握できるのは相変わらずだな。まぁどういう依頼内容なのかというと、得体の知れない魔笛がリメットにあるから、それを回収してくれとのことだ。
・・・他にはなぁーにもない。それだけだ。手掛かりが魔笛の挿絵しかねぇじゃん!?何考えてんだアホか!
「つーか身の危険とかなんだよ・・・そんなに急いでんなら伝書鳩とか瞬間移動とか他にあるだろうが。配達のおっちゃんが普通に渡してきたぞ・・・」
一見イタズラかと思えるフザけた手紙。だがこれが100%嘘の手紙である可能性が低い。アイツは実際に起こる、あるいは起こったことに自分なりのアレンジを加えるのを好んでいるからだ。
彼女なりに、この謎の笛をなんとかして回収してほしいと言っているのだ。それくらいはいちいち確認しなくてもわかる。
そういった理由もあり、俺はこの依頼を受けることにした。めんどくさいけど。
「まーたあいつ厄介事に首突っ込んでんだろうなぁ」
暗黒の宿った右手が疼くとか言ってた、かつての仲間だった魔女のことを思い出す。
昔から魔道具に対して強い関心を示していた。ただ、それはダンジョン産の天然物ではなく、人工的に作られた魔道具。
あの魔女は人の感情によって作られる魔力・・・呪いの研究をしていた。今回の魔笛の回収も、もしかしたらそういったモノが関係しているのかもしれない。
「・・・見つかるもんかねー」
手紙を再び懐に入れ、雲ひとつない青空を見上げる。さてどうしたものか・・・。
信頼のできる冒険者に依頼し、出来るだけの数の人員を集めることができた。人海戦術でどうにかなるかはわからんけど、何もしないよりはマシだ。かかった費用はあとで請求してやる。
「子竜か」
依頼を回した冒険者パーティーの中に、俺と同く従魔を従えたチームがいる。それは、ドラゴンの子供だった。
人には決して懐くことはないとされる竜。ドラゴンの亜種としてワイバーンがいるが、あれは国の竜騎士にしか育成方法が明かされていない。
あの二人の少女は、どうやってドラゴンを仲間にしたんだ?そもそもどうやって子竜なんて見つけたんだ?
根掘り葉ぼり聞き出したいところだが、人には言えない事情に深入りするのは好きじゃない。
「いいなぁ・・・ドラゴン」
やっぱドラゴンは男のロマンだろ。場合によっては人よりも賢く、生物の頂点に君臨する生命体。かっこよすぎる。
「触りてぇ・・・撫でてぇ・・・」
「全く、相変わらずのモンスター愛好ぶりね、ガルムちゃん」
頭上から聞こえてきたのは、低音であるにも関わらずどこか透き通ったオッサンの声だった。
寝転がったまま声のする方へ目を向けると、見たくもない白いパンツがスカートからパンチラしていた。
「げっ」
「げってなによぉ~、レディの下着を見てその態度は何?」
「ハッ!股間から聖剣の生えてるレディがいてたまるか」
「あ”?」
女装した筋肉ムキムキマッチョマンが、一瞬だけ鬼の形相で睨みつけてきた。こっわ
「・・・久しぶりだな、ゴードン」
「えぇ・・・一年ぶりくらいかしら」
俺がまだまだ新米時代だった頃に世話になった恩人、ゴンザレス・ゴードン。Aランカー冒険者として名を馳せ、今は小さな宿を経営している。
世話好きで、宿の宿泊費をランクの低い冒険者が利用しやすい値段設定にしていたりと、その外見とは裏腹に様々な冒険者に支持されてる男である。こんな変質者のいる宿に泊まろうと決意するのは、相当な精神力を求められると思うけど。
そういう俺も、昔はゴードンの宿に泊まってたんだけどな。
「ウチのお客さんに会ったそうね?」
「・・・もうバレたか」
ゴードンが少し刺々しい口調で尋ねてきた。
あのエルフ二人と子竜がゴードンの宿で宿泊しているのは、二人がリメットに到着した当日に知っていた。というのも、笛を探させていた冒険者が代わりに「子竜を連れた二人組を見た」というネタを持ち帰ってきたからだ。
個人的にすげぇ気になったから、まる一日かけてあの二人と接触してみた。
ここだけの話、依頼を持ちかけたのは子竜を見るための口実だったりする。
「あの子達がアナタのことについて聞いてきたのよ。ドラゴンちゃんを連れてるし・・・嫌な予感がしたわ」
ゴードンが苦虫を噛み砕いたかのように表情を歪めた。人前でこんな顔をするとは珍しい。
というかあの二人速攻でゴードンに相談したのか。まぁ依頼の内容上、このことを他言するなとは言ってないから仕方ないけど。
「はっはっはっ!見事的中したってワケだ」
「笑い事じゃないわよ。で、何よあの笛。またアナタ面倒事を引き受けたの?」
「あのクソ魔女からだからな・・・断りずれえのよ」
「あーメアリーちゃんね。あの娘まだ呪いの研究とかしてるの?いつか死ぬわよ」
「だ・か・ら、そうならないように見張ってンだろーが」
実際あの魔女は何度も死にかけたからな・・・。
「アラアラ、そんなに想ってるならずっと傍にいてあげればイイじゃない」
ゴードンの気持ち悪いニヤニヤ顔をしながら言ってきたので、俺はゴロンと寝返りをうって視線を外した。別にそーゆーんじゃないし、昔の仲間だから気にかけてるだけだし。
「でも関係のない子達を巻き込むのはどうかと思うのよねー」
再度批難するように、ゴードンがジロッと睨んでくるのが雰囲気と声で伝わってくる。関係のない子達というのは、子竜を連れた二人を含む調査係の冒険者たちのことだろう。
まぁ確かに、あんま深入りすると命に関わるかもしれないからな。実際のところ、危険なのかそうじゃないのかもわかってねーし。
「だから調査内容も情報収集だけにとどめてるじゃんか。パズルのピースだけを集めてくれって言ってんの。組み立てろとまでは言ってない、それは俺の仕事だ」
「世の中情報を集めただけで命を狙う集団がいるっていうのに・・・この子何を学んでるのかしら」
それについては反論できまシェン。
「そうだ、お前あのシオンとサエラっていうエルフから依頼内容聞いたんだろ?何か知らないか?」
「うーん、残念ながら何にも知らないわ。二人からも聞かれたけど・・・代わりに魔道具と楽器屋の情報を教えてあげたわ」
ゴードンも知らないか。この笛・・・ホントに一体なんだってんだ。
すると「アラやだ、そろそろお仕事に戻らないと~」と、街の時計塔を見たゴードンがドスンドスンと腰を揺らしながら去っていく。「さようなら」ってウインクしながら言うな。
あと下が空家だからってそんなズンズン歩くなよ・・・壊れそうだ。と、最後にお願いしたいことがあるんだった。
「あ、ゴードン!子竜ともっと会いたいからパイプ役やってくれねーか!?」
「それぐらい自分で仲良くなりなさい!」
チッ・・・ケチ。
リメットを活動拠点の中心にして随分長くなったが、ここでの暮らしも随分と安定してきたものだと思う。街の住人や一部冒険者とは友好的な関係も結べたし、良心的な貴族などといった大物連中との伝もできた。
高ランクの依頼を終えれば、大金も入るし貯金もある。ようやく一息つけると思ってた矢先に・・・。
つまり、あー、なんというか、最近面倒な仕事が俺に回ってきた・・・ということだ。
見ず知らずの他人からだったら蹴っ飛ばしてた。間違いなく。
しかしこの依頼、非常に残念なことに昔のパーティーメンバーからの依頼だった。だから断り辛ぇんだよなぁ・・・。色々と借りもあるし。
俺は屋根の上で寝っころがりながら封筒を取り出す。内容はこうだ。
『親愛なる戦友へ。
同士よ、この手紙を読んでいるということは、おそらく私の身が危険に晒されている時だと思う。こんなことに君を巻き込むことは私の身勝手であると重々承知している。しかし、今は私個人の力でどうこうなる問題ではないのだ。どうか君の力を再び貸してほしい。君には、私の右手に隠された”混沌の印”を見せた唯一の人間だ。君以外に頼れる者は他にいない。
光と闇の子が、再び衝突しようとしているのだ。二つがぶつかりあう時、それは世界の終末を意味する。私たち人類が滅び、新たな生m』
前置きがスゲェ長い。4枚ある手紙の内3枚がこれ系の長文で綴られている。
奴の手紙を読むときは最後の1枚を読めば大体把握できるのは相変わらずだな。まぁどういう依頼内容なのかというと、得体の知れない魔笛がリメットにあるから、それを回収してくれとのことだ。
・・・他にはなぁーにもない。それだけだ。手掛かりが魔笛の挿絵しかねぇじゃん!?何考えてんだアホか!
「つーか身の危険とかなんだよ・・・そんなに急いでんなら伝書鳩とか瞬間移動とか他にあるだろうが。配達のおっちゃんが普通に渡してきたぞ・・・」
一見イタズラかと思えるフザけた手紙。だがこれが100%嘘の手紙である可能性が低い。アイツは実際に起こる、あるいは起こったことに自分なりのアレンジを加えるのを好んでいるからだ。
彼女なりに、この謎の笛をなんとかして回収してほしいと言っているのだ。それくらいはいちいち確認しなくてもわかる。
そういった理由もあり、俺はこの依頼を受けることにした。めんどくさいけど。
「まーたあいつ厄介事に首突っ込んでんだろうなぁ」
暗黒の宿った右手が疼くとか言ってた、かつての仲間だった魔女のことを思い出す。
昔から魔道具に対して強い関心を示していた。ただ、それはダンジョン産の天然物ではなく、人工的に作られた魔道具。
あの魔女は人の感情によって作られる魔力・・・呪いの研究をしていた。今回の魔笛の回収も、もしかしたらそういったモノが関係しているのかもしれない。
「・・・見つかるもんかねー」
手紙を再び懐に入れ、雲ひとつない青空を見上げる。さてどうしたものか・・・。
信頼のできる冒険者に依頼し、出来るだけの数の人員を集めることができた。人海戦術でどうにかなるかはわからんけど、何もしないよりはマシだ。かかった費用はあとで請求してやる。
「子竜か」
依頼を回した冒険者パーティーの中に、俺と同く従魔を従えたチームがいる。それは、ドラゴンの子供だった。
人には決して懐くことはないとされる竜。ドラゴンの亜種としてワイバーンがいるが、あれは国の竜騎士にしか育成方法が明かされていない。
あの二人の少女は、どうやってドラゴンを仲間にしたんだ?そもそもどうやって子竜なんて見つけたんだ?
根掘り葉ぼり聞き出したいところだが、人には言えない事情に深入りするのは好きじゃない。
「いいなぁ・・・ドラゴン」
やっぱドラゴンは男のロマンだろ。場合によっては人よりも賢く、生物の頂点に君臨する生命体。かっこよすぎる。
「触りてぇ・・・撫でてぇ・・・」
「全く、相変わらずのモンスター愛好ぶりね、ガルムちゃん」
頭上から聞こえてきたのは、低音であるにも関わらずどこか透き通ったオッサンの声だった。
寝転がったまま声のする方へ目を向けると、見たくもない白いパンツがスカートからパンチラしていた。
「げっ」
「げってなによぉ~、レディの下着を見てその態度は何?」
「ハッ!股間から聖剣の生えてるレディがいてたまるか」
「あ”?」
女装した筋肉ムキムキマッチョマンが、一瞬だけ鬼の形相で睨みつけてきた。こっわ
「・・・久しぶりだな、ゴードン」
「えぇ・・・一年ぶりくらいかしら」
俺がまだまだ新米時代だった頃に世話になった恩人、ゴンザレス・ゴードン。Aランカー冒険者として名を馳せ、今は小さな宿を経営している。
世話好きで、宿の宿泊費をランクの低い冒険者が利用しやすい値段設定にしていたりと、その外見とは裏腹に様々な冒険者に支持されてる男である。こんな変質者のいる宿に泊まろうと決意するのは、相当な精神力を求められると思うけど。
そういう俺も、昔はゴードンの宿に泊まってたんだけどな。
「ウチのお客さんに会ったそうね?」
「・・・もうバレたか」
ゴードンが少し刺々しい口調で尋ねてきた。
あのエルフ二人と子竜がゴードンの宿で宿泊しているのは、二人がリメットに到着した当日に知っていた。というのも、笛を探させていた冒険者が代わりに「子竜を連れた二人組を見た」というネタを持ち帰ってきたからだ。
個人的にすげぇ気になったから、まる一日かけてあの二人と接触してみた。
ここだけの話、依頼を持ちかけたのは子竜を見るための口実だったりする。
「あの子達がアナタのことについて聞いてきたのよ。ドラゴンちゃんを連れてるし・・・嫌な予感がしたわ」
ゴードンが苦虫を噛み砕いたかのように表情を歪めた。人前でこんな顔をするとは珍しい。
というかあの二人速攻でゴードンに相談したのか。まぁ依頼の内容上、このことを他言するなとは言ってないから仕方ないけど。
「はっはっはっ!見事的中したってワケだ」
「笑い事じゃないわよ。で、何よあの笛。またアナタ面倒事を引き受けたの?」
「あのクソ魔女からだからな・・・断りずれえのよ」
「あーメアリーちゃんね。あの娘まだ呪いの研究とかしてるの?いつか死ぬわよ」
「だ・か・ら、そうならないように見張ってンだろーが」
実際あの魔女は何度も死にかけたからな・・・。
「アラアラ、そんなに想ってるならずっと傍にいてあげればイイじゃない」
ゴードンの気持ち悪いニヤニヤ顔をしながら言ってきたので、俺はゴロンと寝返りをうって視線を外した。別にそーゆーんじゃないし、昔の仲間だから気にかけてるだけだし。
「でも関係のない子達を巻き込むのはどうかと思うのよねー」
再度批難するように、ゴードンがジロッと睨んでくるのが雰囲気と声で伝わってくる。関係のない子達というのは、子竜を連れた二人を含む調査係の冒険者たちのことだろう。
まぁ確かに、あんま深入りすると命に関わるかもしれないからな。実際のところ、危険なのかそうじゃないのかもわかってねーし。
「だから調査内容も情報収集だけにとどめてるじゃんか。パズルのピースだけを集めてくれって言ってんの。組み立てろとまでは言ってない、それは俺の仕事だ」
「世の中情報を集めただけで命を狙う集団がいるっていうのに・・・この子何を学んでるのかしら」
それについては反論できまシェン。
「そうだ、お前あのシオンとサエラっていうエルフから依頼内容聞いたんだろ?何か知らないか?」
「うーん、残念ながら何にも知らないわ。二人からも聞かれたけど・・・代わりに魔道具と楽器屋の情報を教えてあげたわ」
ゴードンも知らないか。この笛・・・ホントに一体なんだってんだ。
すると「アラやだ、そろそろお仕事に戻らないと~」と、街の時計塔を見たゴードンがドスンドスンと腰を揺らしながら去っていく。「さようなら」ってウインクしながら言うな。
あと下が空家だからってそんなズンズン歩くなよ・・・壊れそうだ。と、最後にお願いしたいことがあるんだった。
「あ、ゴードン!子竜ともっと会いたいからパイプ役やってくれねーか!?」
「それぐらい自分で仲良くなりなさい!」
チッ・・・ケチ。
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