透明な恋心達

琥珀

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第一章 あの夏

海と君

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  あの夏、あの海で、僕は君に出会った。
ふわふわとした髪を揺らしながら、僕の所に来てくれる。
とてもとても可愛い女の子に出会った。
  その子と会った夏の僕は、まだ言葉を知らなかった。
そんな僕に、君は一から言葉を教えてくれた。
ゆっくりゆっくりと。
  砂にたくさん字を書いた。
君は口で、僕は砂で、他愛もない話をした。
  僕がちゃんと字が書けるようになった時には、君はもう大人だったね。
初めて会った時は、僕よりも小さかったのに。
その時は、僕のおでこぐらい、身長あったかな。

  字の次は、君と声で話す事だと、決心していた。
  でも君は、僕が決心した次の日から、来てくれなくなった。
悲しみは大きかったけれど、僕は待った。
何年も何年も。
  僕はその間に、何度も練習をして、声が出せるようになった。
これで、やっと君と話せる。
  そんな時だった。
『さようなら  あなたの声聞きたかったな』
  そう、君の字で書かれてあった。
  胸が苦しかった。
  涙が止まらなかった。
  声が出なくなるまで、叫んだ。
  君は、ここには戻ってこない。

  それから、僕は喋る事をやめた。
でも、あの君と出会った海には、まだいるんだ。
だから、会いに来たくなったら、いつでもおいで。
「久しぶり。今度は声を聞かせてくれる?」
そう、隣で言ってくれる日を、僕は待ってるよ。
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