パスカルからの最後の宿題

尾方佐羽

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ブレーズ・パスカルさまへ(あとがき)

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ブレーズ・パスカル さま

 このたび、あなたの発案で実現した『5ソルの馬車』について、書かせていただきました。
 こういうことを申し上げると、あなたはきっとがっかりされると思うのですが、私は数学や物理が大の苦手であることを告白しなければなりません。通信簿はアヒルのオンパレードです。そのような私がまさかあなたの考えた跡を追うなどとは、少し前まで夢にも思いませんでした。

 そもそも、計算間違っていませんか?

 語り手となるロアネーズ公爵が数学に堪能だったということを知って、さらに頭を抱えました。他に出すのがホイヘンスさんにフェルマさんです。何てことでしょう。本当ならば、数学や物理の基本、証明の仕方、論理的な筋道のたてかたについて、きっちりと勉強してから書くべきではないかと思いました。しかし、それを待つのではきっと一生書けないと思いました。

 私は昔からあなたに惹かれていました。高校のときに『世界の名著 パスカル』という本を読んでからずっとです。数学や物理の問題からではなく、あなたの人生そのものに強く惹き付けられたのです。以降、「数学・物理のパスカル」からは距離を置きつつ、親しんできました。

 それが変わったのは最近のことでした。森博嗣さんの『有限と微小のパン』という本を読んだときに、あなたのことをふっと思い出したのです。本にはまったくあなたの名前が出てこないのに。その後たまたまデカルトのことを調べていて、そこからあなたのことも調べてみました。そして、改めてあなたのことがとても気になるようになりました。

 特に、あなたが何の解も出さずに置いていった『5ソルの馬車』の話に猛烈に惹かれました。このアイデアを出したあなたは何を考えていたのか、猛烈に知りたいと思いました。そしておそらく、ロアネーズ公爵も、ホイヘンスさんも、フェルマさんも知りたいと思ったはずだと。

 楽しかった。
 ものすごく楽しかった。
 
 あなたはどんな風に考えたのだろうかと、それを考えるのが楽しかった。それをホイヘンスさんやフェルマさんがどう考えたのだろうと、視点を変えるのも楽しかった。

 お話に書いてあるようなことがらは、現在ならば物理や数学の教科書に普通に書いてあると思いますし、普通にある技術でしょう。それをほとんど念頭に置かず、ただただ、「あなたならどう考えるだろう」と考えました。

 そして、もっとあなたの考えていたことを追いたいと思いました。思います。

 これは私の楽しい実験です。またしたいです。

ありがとうございます。

おがたさわ
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