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ドライブ
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東名高速のETC専用の入口を通過するとき、今野津都武(つとむ)は減速しないことがある。それは一般的には決して奨励されないことだが、無性にそうしたくなるのだ。
それは櫛田沙耶(さや)が隣に座っているときだけに限られる。
津都武は減速せずにETCの入口に車を突っ込む。沙耶は、身を縮めて、ゲートが上がる瞬間までを凝視して、それからやっと呼吸をする。本当は怖い。減速して、と言いたいのだがなぜか言えないのだ。
それを津都武はわかっている。
なぜ、沙耶を乗せているときだけ、そうしたくなるのだろう。そういえば、沙耶が隣にいるときはスピードを出しがちだし、運転もやや荒くなる。妻や子どもたちが乗っているときには絶対にないことだ。
沙耶を怖がらせたいわけではない。
でも、このままどこまでも勢いに任せて、スピードを限界まで上げて走りたくなるのだ。
どうしてだろう、と津都武は考える。
夜の東名高速を東京方面に走らせながら、津都武は沙耶に言う。
「横浜で降りて、下道に行こうか」
沙耶は「うん」とうなずく。
それは、まっすぐ帰さないということだと沙耶は分かっている。
◆
津都武と沙耶は会社の同僚だ。ただし、津都武は神奈川支社の所属、沙耶は東京本社にいて普段は離れている。会社の研修や会議でお互いが職場を行き来することが多く、それで顔見知りになった。津都武と同様に、沙耶は2人の子を持つ既婚者だが、年齢よりはるかに若く見え、少し憂いを帯びた可憐さがある。そんな沙耶に津都武は惹かれた。そして、それは彼だけではなかった。
男性だけで痛飲しているときは彼女の話がよく出てきた。
「櫛田さん、色っぽいですよね。ああ見えて出るところ出てるし、一回お手合わせ願いたいなあ」などと若手社員がつぶやく。
「やっぱりあれだ、人妻ってやつは格別そそられるんだよ。ほら、人のものだからなおさら」と部長がニヤニヤとして言う。
そんな会話を横目に見ながら、津都武は内心優越感に浸っていた。なぜなら、沙耶は津都武にはよく話しかけてくるし、会議のときに目が合うこともしばしばあったからだ。自分が特別だという思いは、ある時点から決定的になった。
東京本社で会議があった夜、津都武は渋谷駅のホームで沙耶の姿を見つけて声をかけた。
「櫛田さん、こっち方向なの?」
沙耶は少し驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを見せた。
「はい、品川で乗り換え。今野さんは二宮でしたっけ、東海道線?」
津都武は彼女が自分の最寄り駅を知っていることを、くすぐったく感じる。二人は山手線に乗る。運よく席が空いているので、並んで腰かける。
「櫛田さんは偉いよね、主婦も仕事もで大変でしょう。うちの嫁は専業主婦だしさ」と津都武が言う。
「専業主婦のほうがたいへんよ。ご近所付き合いとかPTAとか。仕事をしていると、その辺りは大目に見てもらえるの」と沙耶が優しくたしなめる。他人を自然に尊重できる、素敵な女性だと津都武は思う。
たわいもない話は続く。ふと、沙耶が思い出したようにあっ、と声を上げる。
「今野さん、ボクシングやっていたんでしょう。手を見せて」
津都武はすっと自分の手を出す。沙耶がその手に触れてくる。冷たくて、すべすべとした指が彼の手を撫でまわす。実際はそれほど扇情的な行為ではなかったが、津都武は胸の鼓動が信じられないほど早くなるのを感じた。
「あれ、ごつごつしていないのね」と沙耶は不思議そうにつぶやく。
「学生時代にやっていただけだよ。それにグローブを付けるし」と津都武は笑う。
内心では、顔がかあっと赤くなっていることに気づかれないか心配していた。
「あ、品川。降りましょう」と沙耶が席を立つ。津都武も慌てて同じようにする。彼は気もそぞろになっている。
「もっと話したいけど、東海道線に一緒に乗っちゃおうかしら」と沙耶がいたずらっぽい顔をする。
「えっ?」と津都武は目を見開く。沙耶はその様子を見て、「冗談よ」と笑う。津都武は反射的に彼女に言っていた。
「メールアドレス教えて」
それから何度か一緒に飲んで、沙耶が神奈川支社の研修に来たときに、最寄りの本厚木駅まで送るという名目で彼女を車に乗せた。もう津都武の欲望は手に触れたり、キスをするだけでは収まらなくなっていた。
車は駅ではないところに入った。
津都武はそれ以降、寝ても覚めても沙耶のことばかり考えるようになった。会議や研修のときにしか会うことができないので、メールを頻繁にした。会える日は会議後や飲み会の後、沙耶を強引に連れていく。
そのうち、沙耶からのメールの返信が途絶えがちになった。しつこい男だと思われているのだろうか。そんな懸念が心をよぎったが、もう止めようがなかった。
◆
「そういえばね、経理の田原さん、交通事故で入院したでしょう」と沙耶が言う。
「ああ、骨折とむち打ち症だっけ? 災難だったね」と津都武がハンドルを握って前方から目を離さずに言う。
「あれね、女性が一緒だったらしいの」と沙耶が続ける。
高速の灯りを見ながら、津都武は自分たちの立ち位置をふっと考える。
「知ってるよ、田原さんとこ、それで今離婚騒ぎになってるんだろう」
沙耶はうなずく。その様子は津都武には見えていない。
もうすぐ高速出口だ。津都武はオデッセイを左に寄せる。
3時間後、二人はからだを合わせて裸で絡み合っている。沙耶がつぶやく。
「何か、すごく激しかった……犯されているみたい」
津都武は何も言わず、また沙耶の首筋に唇を這わせ、胸を揉みしだいている。沙耶が急にその手を引き離して、ベッドから出る。津都武は慌てて沙耶に呼びかける。
「帰るの?」
「うん、シャワー使うね」と沙耶は沈んだ声で答える。
「……わかった」
やっぱり自分はあいそをつかされたのだろうか、と津都武は思う。最近は会社の会議でも飲み会でも、彼女はよそよそしい。他の男と楽しそうに喋っているのを見るたびに、津都武はやり場のない怒りがこみあげてくるのを感じる。メールに返信が来ることがなくなったから、なおさらだ。
こんなに沙耶を求めているのに、なぜ分かってもらえないのだろう……。
二人はまた、オデッセイに乗り込んで走りはじめた。第三京浜に乗って、沙耶の家まで行くのだ。もう10時を過ぎている。津都武はイライラしていた。またスピードがあがっていく。
「俺に飽きた?」と津都武は思いきって沙耶に聞く。
「そういうことじゃないけど……」と沙耶が困った顔になる。
「でも他にも沙耶を狙っている奴がいるからな。俺はこんなにおまえに尽くしてるのに、それを分かってほしいね」
「尽くす……?」と沙耶がふと、顔を上げる。
「俺、今日子どもが産まれたんだよ。それでもおまえに会いたくて……」
沙耶は目を見開いてしばらく固まったようになっていた。そして、叫んだ。
「聞いてないわ! そんなこと聞いてない!」
沙耶の激しい口調に、津都武はたじろいだ。
「いや……子どもができたのを黙っていたのは悪かった。嫁さんとセックスしてるのかって思われたくなかったから……」
沙耶は激しく首を横に振った。
「違う! 夫婦がセックスするのは当たり前よ、そんなことじゃない! そんなときに、こんなことをしているなんて、信じられない! 知っていたら、絶対に来なかったわ」
そう言うと、沙耶は涙をぽろぽろとこぼした。津都武は沙耶の言っていることは理解した。しかし、彼女の気持ちは分かっていなかった。
「今野さん、私はあなたが好きよ。本当に大好きなの。結婚していても、本当に好きになることもあるのよ。ただそれは、他の人には絶対に知られてはいけないの。そうしたら、すぐに踏みにじられて砕け散ってしまうわ。それと……私は奥さまやお子さんがいるあなたを好きになったんだから、そこに入り込む気はない。それも全部ひっくるめて、大好きなの」
津都武は沙耶の言葉に圧倒されながら、自分が沙耶の気持ちをまったく汲んでいなかったことに気がついた。お互いに好意があると思った時点できちんと話せばよかったのかもしれない、そう感じていた。沙耶は今度は自問自答するようにつぶやいた。
「結婚している男と女が誰かを好きになったら、そんな付き合いしかできないのかしら。好きな男に抱かれるのは幸せだわ。でも会うとセックスしかできなくなるなんて。違うの、違うの。私はあなたをまるごと愛せたらって、ずっと思っていた…………」
第三京浜を下りて、オデッセイは環状8号線に入っていく。沈黙が車内に充満している。
だんだん、彼女の家が近づいてくる。三日月が浮かんでいる。
ふっと、沙耶がつぶやく。
「このオデッセイでドライブするのが好きだったわ。助手席に乗って、シートベルトをするのも緊張して、あなたの好きな曲を聴いて、あなたの若い頃の話を聞いたり、コンビニで飲み物を買って、夜の埠頭を眺めて。夜景しかなかったけど、大切な時間だった」
「……俺は、沙耶が好きなんだ。本当に、沙耶のことしか考えられないぐらい、好きなんだ」
津都武はやっとそれだけ沙耶に告げた。
沙耶は悲しい目をして、オデッセイのドアを開ける。そして、振り返って、最後の微笑みを見せた。
「スピードを出しすぎたのね」
オデッセイは国道1号線に出ていく。
横浜まで24km。
小田原まで67km。
津都武はオデッセイの助手席を一瞥して、ゆっくりと自分の家に向けて走りはじめた。
Fin
それは櫛田沙耶(さや)が隣に座っているときだけに限られる。
津都武は減速せずにETCの入口に車を突っ込む。沙耶は、身を縮めて、ゲートが上がる瞬間までを凝視して、それからやっと呼吸をする。本当は怖い。減速して、と言いたいのだがなぜか言えないのだ。
それを津都武はわかっている。
なぜ、沙耶を乗せているときだけ、そうしたくなるのだろう。そういえば、沙耶が隣にいるときはスピードを出しがちだし、運転もやや荒くなる。妻や子どもたちが乗っているときには絶対にないことだ。
沙耶を怖がらせたいわけではない。
でも、このままどこまでも勢いに任せて、スピードを限界まで上げて走りたくなるのだ。
どうしてだろう、と津都武は考える。
夜の東名高速を東京方面に走らせながら、津都武は沙耶に言う。
「横浜で降りて、下道に行こうか」
沙耶は「うん」とうなずく。
それは、まっすぐ帰さないということだと沙耶は分かっている。
◆
津都武と沙耶は会社の同僚だ。ただし、津都武は神奈川支社の所属、沙耶は東京本社にいて普段は離れている。会社の研修や会議でお互いが職場を行き来することが多く、それで顔見知りになった。津都武と同様に、沙耶は2人の子を持つ既婚者だが、年齢よりはるかに若く見え、少し憂いを帯びた可憐さがある。そんな沙耶に津都武は惹かれた。そして、それは彼だけではなかった。
男性だけで痛飲しているときは彼女の話がよく出てきた。
「櫛田さん、色っぽいですよね。ああ見えて出るところ出てるし、一回お手合わせ願いたいなあ」などと若手社員がつぶやく。
「やっぱりあれだ、人妻ってやつは格別そそられるんだよ。ほら、人のものだからなおさら」と部長がニヤニヤとして言う。
そんな会話を横目に見ながら、津都武は内心優越感に浸っていた。なぜなら、沙耶は津都武にはよく話しかけてくるし、会議のときに目が合うこともしばしばあったからだ。自分が特別だという思いは、ある時点から決定的になった。
東京本社で会議があった夜、津都武は渋谷駅のホームで沙耶の姿を見つけて声をかけた。
「櫛田さん、こっち方向なの?」
沙耶は少し驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑みを見せた。
「はい、品川で乗り換え。今野さんは二宮でしたっけ、東海道線?」
津都武は彼女が自分の最寄り駅を知っていることを、くすぐったく感じる。二人は山手線に乗る。運よく席が空いているので、並んで腰かける。
「櫛田さんは偉いよね、主婦も仕事もで大変でしょう。うちの嫁は専業主婦だしさ」と津都武が言う。
「専業主婦のほうがたいへんよ。ご近所付き合いとかPTAとか。仕事をしていると、その辺りは大目に見てもらえるの」と沙耶が優しくたしなめる。他人を自然に尊重できる、素敵な女性だと津都武は思う。
たわいもない話は続く。ふと、沙耶が思い出したようにあっ、と声を上げる。
「今野さん、ボクシングやっていたんでしょう。手を見せて」
津都武はすっと自分の手を出す。沙耶がその手に触れてくる。冷たくて、すべすべとした指が彼の手を撫でまわす。実際はそれほど扇情的な行為ではなかったが、津都武は胸の鼓動が信じられないほど早くなるのを感じた。
「あれ、ごつごつしていないのね」と沙耶は不思議そうにつぶやく。
「学生時代にやっていただけだよ。それにグローブを付けるし」と津都武は笑う。
内心では、顔がかあっと赤くなっていることに気づかれないか心配していた。
「あ、品川。降りましょう」と沙耶が席を立つ。津都武も慌てて同じようにする。彼は気もそぞろになっている。
「もっと話したいけど、東海道線に一緒に乗っちゃおうかしら」と沙耶がいたずらっぽい顔をする。
「えっ?」と津都武は目を見開く。沙耶はその様子を見て、「冗談よ」と笑う。津都武は反射的に彼女に言っていた。
「メールアドレス教えて」
それから何度か一緒に飲んで、沙耶が神奈川支社の研修に来たときに、最寄りの本厚木駅まで送るという名目で彼女を車に乗せた。もう津都武の欲望は手に触れたり、キスをするだけでは収まらなくなっていた。
車は駅ではないところに入った。
津都武はそれ以降、寝ても覚めても沙耶のことばかり考えるようになった。会議や研修のときにしか会うことができないので、メールを頻繁にした。会える日は会議後や飲み会の後、沙耶を強引に連れていく。
そのうち、沙耶からのメールの返信が途絶えがちになった。しつこい男だと思われているのだろうか。そんな懸念が心をよぎったが、もう止めようがなかった。
◆
「そういえばね、経理の田原さん、交通事故で入院したでしょう」と沙耶が言う。
「ああ、骨折とむち打ち症だっけ? 災難だったね」と津都武がハンドルを握って前方から目を離さずに言う。
「あれね、女性が一緒だったらしいの」と沙耶が続ける。
高速の灯りを見ながら、津都武は自分たちの立ち位置をふっと考える。
「知ってるよ、田原さんとこ、それで今離婚騒ぎになってるんだろう」
沙耶はうなずく。その様子は津都武には見えていない。
もうすぐ高速出口だ。津都武はオデッセイを左に寄せる。
3時間後、二人はからだを合わせて裸で絡み合っている。沙耶がつぶやく。
「何か、すごく激しかった……犯されているみたい」
津都武は何も言わず、また沙耶の首筋に唇を這わせ、胸を揉みしだいている。沙耶が急にその手を引き離して、ベッドから出る。津都武は慌てて沙耶に呼びかける。
「帰るの?」
「うん、シャワー使うね」と沙耶は沈んだ声で答える。
「……わかった」
やっぱり自分はあいそをつかされたのだろうか、と津都武は思う。最近は会社の会議でも飲み会でも、彼女はよそよそしい。他の男と楽しそうに喋っているのを見るたびに、津都武はやり場のない怒りがこみあげてくるのを感じる。メールに返信が来ることがなくなったから、なおさらだ。
こんなに沙耶を求めているのに、なぜ分かってもらえないのだろう……。
二人はまた、オデッセイに乗り込んで走りはじめた。第三京浜に乗って、沙耶の家まで行くのだ。もう10時を過ぎている。津都武はイライラしていた。またスピードがあがっていく。
「俺に飽きた?」と津都武は思いきって沙耶に聞く。
「そういうことじゃないけど……」と沙耶が困った顔になる。
「でも他にも沙耶を狙っている奴がいるからな。俺はこんなにおまえに尽くしてるのに、それを分かってほしいね」
「尽くす……?」と沙耶がふと、顔を上げる。
「俺、今日子どもが産まれたんだよ。それでもおまえに会いたくて……」
沙耶は目を見開いてしばらく固まったようになっていた。そして、叫んだ。
「聞いてないわ! そんなこと聞いてない!」
沙耶の激しい口調に、津都武はたじろいだ。
「いや……子どもができたのを黙っていたのは悪かった。嫁さんとセックスしてるのかって思われたくなかったから……」
沙耶は激しく首を横に振った。
「違う! 夫婦がセックスするのは当たり前よ、そんなことじゃない! そんなときに、こんなことをしているなんて、信じられない! 知っていたら、絶対に来なかったわ」
そう言うと、沙耶は涙をぽろぽろとこぼした。津都武は沙耶の言っていることは理解した。しかし、彼女の気持ちは分かっていなかった。
「今野さん、私はあなたが好きよ。本当に大好きなの。結婚していても、本当に好きになることもあるのよ。ただそれは、他の人には絶対に知られてはいけないの。そうしたら、すぐに踏みにじられて砕け散ってしまうわ。それと……私は奥さまやお子さんがいるあなたを好きになったんだから、そこに入り込む気はない。それも全部ひっくるめて、大好きなの」
津都武は沙耶の言葉に圧倒されながら、自分が沙耶の気持ちをまったく汲んでいなかったことに気がついた。お互いに好意があると思った時点できちんと話せばよかったのかもしれない、そう感じていた。沙耶は今度は自問自答するようにつぶやいた。
「結婚している男と女が誰かを好きになったら、そんな付き合いしかできないのかしら。好きな男に抱かれるのは幸せだわ。でも会うとセックスしかできなくなるなんて。違うの、違うの。私はあなたをまるごと愛せたらって、ずっと思っていた…………」
第三京浜を下りて、オデッセイは環状8号線に入っていく。沈黙が車内に充満している。
だんだん、彼女の家が近づいてくる。三日月が浮かんでいる。
ふっと、沙耶がつぶやく。
「このオデッセイでドライブするのが好きだったわ。助手席に乗って、シートベルトをするのも緊張して、あなたの好きな曲を聴いて、あなたの若い頃の話を聞いたり、コンビニで飲み物を買って、夜の埠頭を眺めて。夜景しかなかったけど、大切な時間だった」
「……俺は、沙耶が好きなんだ。本当に、沙耶のことしか考えられないぐらい、好きなんだ」
津都武はやっとそれだけ沙耶に告げた。
沙耶は悲しい目をして、オデッセイのドアを開ける。そして、振り返って、最後の微笑みを見せた。
「スピードを出しすぎたのね」
オデッセイは国道1号線に出ていく。
横浜まで24km。
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津都武はオデッセイの助手席を一瞥して、ゆっくりと自分の家に向けて走りはじめた。
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