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第二章
苦いコーヒーの理由
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数日後、瑞希の妹・柚希はカフェで結婚式の招待客を最終確認していた。
一息入れたところで、ふと顔を上げると、窓際の席に見覚えのある顔…
「晃平さん?」
「…柚希ちゃん?」
「やっぱり!お久しぶりです」
「うわっ、久しぶり。元気?」
「はい!」
偶然再会した晃平。
柚希が話し掛けた理由は、ただ一つだった。
「晃平さん、…結婚するんですね」
「…瑞希から聞いたか」
柚希がコクリと頷くと、晃平は伏し目がちに「そっか」と小さく答える。
「お姉ちゃんより、大事な人が出来たんだね…」
「……」
晃平は黙ったままだ。
柚希はいたたまれなくなり、
「幸せになって」
と告げた。
晃平は苦笑いを浮かべる。
その表情は、今から結婚する人の顔じゃない…どこか、違和感を感じた柚希は、
「晃平さんって、前はもっとニカッて笑ってたのにね。今はまるで抜け殻みたい」
と、晃平の心のうちを探るように言葉を投げた。
「…言ってくれるね」
鼻で笑いつつも、晃平は眉を下げる。
「抜け殻か…」
「言っとくけど、うちのお姉ちゃんもだから。本っ当、似た者同士」
柚希の言葉にだんだんと晃平の顔が穏やかに緩んでいく。
ピロリン…
「あ…、旦那からメールだ。帰らなきゃ…」
「柚希ちゃん結婚したの?」
「入籍だけ先に!結婚式は来月なんですよー」
「おぉ!そうなんだ?おめでとう」
「ありがとうございます!」
柚希は、荷物を持つと「じゃあ」と言って席を立った。
歩き出そうとして、ふと立ち止まると、晃平に振り返る。
「晃平さん、お姉ちゃんの煎れるコーヒー…、今ねものすごく苦いんだよ」
「え…?」
「晃平さんと付き合ってる時は、あんなに甘いコーヒー煎れてたのにね…」
晃平はふと、自分が飲んでいる甘めのコーヒーに目を落とす。
「晃平さんを待ってる三年間も、お姉ちゃんのコーヒーはずっと甘いままだった…。今は…無理して忘れようとしてるみたいに、苦い」
それだけ言うと、柚希はカフェを出ていった。
「…瑞希…」
晃平が呟いた声は、誰にも気付かれないほど小さく、消え入りそうで…
微かに震えていた。
カフェの外に出た柚希は、目にいっぱいの涙を溜めてもう一度立ち止まる。
先程、晃平に言った言葉を思い出して、余計なことを言ってしまったかもしれない…
自分が口を挟むことではなかったのかもしれないと、下を向く。
それでも、瑞希の気持ちを考えれば、言わずにはいられなかった。
涙が零れないように、空を見上げて深呼吸すると、
「いいよね、これくらい…」
そう呟いて歩き出した。
一息入れたところで、ふと顔を上げると、窓際の席に見覚えのある顔…
「晃平さん?」
「…柚希ちゃん?」
「やっぱり!お久しぶりです」
「うわっ、久しぶり。元気?」
「はい!」
偶然再会した晃平。
柚希が話し掛けた理由は、ただ一つだった。
「晃平さん、…結婚するんですね」
「…瑞希から聞いたか」
柚希がコクリと頷くと、晃平は伏し目がちに「そっか」と小さく答える。
「お姉ちゃんより、大事な人が出来たんだね…」
「……」
晃平は黙ったままだ。
柚希はいたたまれなくなり、
「幸せになって」
と告げた。
晃平は苦笑いを浮かべる。
その表情は、今から結婚する人の顔じゃない…どこか、違和感を感じた柚希は、
「晃平さんって、前はもっとニカッて笑ってたのにね。今はまるで抜け殻みたい」
と、晃平の心のうちを探るように言葉を投げた。
「…言ってくれるね」
鼻で笑いつつも、晃平は眉を下げる。
「抜け殻か…」
「言っとくけど、うちのお姉ちゃんもだから。本っ当、似た者同士」
柚希の言葉にだんだんと晃平の顔が穏やかに緩んでいく。
ピロリン…
「あ…、旦那からメールだ。帰らなきゃ…」
「柚希ちゃん結婚したの?」
「入籍だけ先に!結婚式は来月なんですよー」
「おぉ!そうなんだ?おめでとう」
「ありがとうございます!」
柚希は、荷物を持つと「じゃあ」と言って席を立った。
歩き出そうとして、ふと立ち止まると、晃平に振り返る。
「晃平さん、お姉ちゃんの煎れるコーヒー…、今ねものすごく苦いんだよ」
「え…?」
「晃平さんと付き合ってる時は、あんなに甘いコーヒー煎れてたのにね…」
晃平はふと、自分が飲んでいる甘めのコーヒーに目を落とす。
「晃平さんを待ってる三年間も、お姉ちゃんのコーヒーはずっと甘いままだった…。今は…無理して忘れようとしてるみたいに、苦い」
それだけ言うと、柚希はカフェを出ていった。
「…瑞希…」
晃平が呟いた声は、誰にも気付かれないほど小さく、消え入りそうで…
微かに震えていた。
カフェの外に出た柚希は、目にいっぱいの涙を溜めてもう一度立ち止まる。
先程、晃平に言った言葉を思い出して、余計なことを言ってしまったかもしれない…
自分が口を挟むことではなかったのかもしれないと、下を向く。
それでも、瑞希の気持ちを考えれば、言わずにはいられなかった。
涙が零れないように、空を見上げて深呼吸すると、
「いいよね、これくらい…」
そう呟いて歩き出した。
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