もふもふの銀猫は公爵令嬢に恋をする

松石 愛弓

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名前で呼びあって

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 サファーロ視点
**********

 朝食の後、一つ目の目的地に向かって出発した。
 今日も、良い天気だ。

 この商店街を抜ければ、森を通ることになる。
 情報収集もしたいから、歩くのもいいかなと思っている。

 シャルルを見ると、今朝のぱふぱふが思い出されてきて、なんだか照れてしまう。
  
 僕が銀猫の姿をしてた時は、あんなに密着していたのに、人の姿に戻った僕はシャルルの手にも触れる理由がない。
 なんだか不思議な気分だ。

 銀猫の姿に変身してシャルルからの愛情を受けられて嬉しかったけど、もう銀猫にはならないようにしよう。

 昨夜は意識を失って、それを偶然見つけてくれたシャルルに保護されて、色んなハプニングに見舞われたけど、次に自分の意志で銀猫になったら、それを期待してるみたいだ。

 でも、今日のシャルルはなんだか元気がない。どうしたのかな?

 僕が心配そうに彼女を見つめていると、エミリーさんがこっそり教えてくれた。
「お嬢様、銀猫に逃げられたらしくて、落ち込んでいらっしゃるんです」

 もふもふしたいのだろうか?

「シャルル、そこにペットショップがあります。貴女の好きな動物がいるかもしれない。プレゼントしますから行きませんか?」
 笑って誘ってみる。

 てっきり喜ぶと思っていたら、
「いいえ…。私はあの銀猫ちゃんが良いのです。他の子では代わりにならないのです…」と、寂しそうにつぶやく。

「そうですか…。もし、その銀猫がまた現れたら、どうするおつもりなのです?」

「撫でまわして、抱きしめて、頬ずりして、思う存分もふもふしたいですわ…」
 潤んだ瞳で、僕を見つめる。

 …そんなことされたら、僕の理性はもつのだろうか…。





 シャルル視点
**********

 屋敷を出発する前。
 銀猫に逃げられてがっかりしていたら、サファーロ様が話があると言って、私の部屋を訪ねていらっしゃいました。
 エミリーは気をきかせたのか、いつの間にか居ませんでしたわ。

 今日のサファーロ様は少し変です。
 顔を赤らめて、私を直視できないなんて。
 私たちは、ソファに並んで座りました。

「シャルル嬢…前から思っていたことなんですが…僕を、サファーロと呼んでいただけませんか?」

「サファーロ様は、私の窮地を命がけで救ってくださいましたわ。私は、感謝と尊敬の意味を込めて、サファーロ様、と呼んでいますのに…」

「でも僕は、貴女にサファーロと呼ばれたい」

 真剣な表情にズキュ~ン!とハートを撃ち抜かれて、あっという間にノックダウン寸前ですわ。
 なんて心臓に悪い、罪作りなお方。
 これは断れませんわね!

「では、私のことも、シャルルと呼んでくださいますか?」

「いいんですか?」

「私もずっと、シャルルと呼ばれたかったのです」

 ぱぁぁっ!と、嬉しそうに可愛らしく無邪気に笑うなんて…。
 私を萌え死にさせるおつもり?
 この二段攻撃はかなりボディーに効きましたわ!

「シャルル」

 ぐはぁっ!! 
 サファーロは春風のように微笑みながら、優しい声で私を呼んでくださいました。
 萌え過ぎて瀕死寸前ですわ!

「サ…サファーロ」

「シャルル」

「サファーロ…」

 見つめ合って、至近距離で名前を呼び合っていますと、サファーロに触れたくなってしまいましたわ。
 でも、私が突然、ギュウって抱きしめたら、はしたない女と思われるのでしょうか?
 
 ああっ!銀猫ちゃんがいれば、サファーロの代わりに思いきり抱きしめられますのに!
 まるで、サファーロの化身のような、銀色の毛に翡翠色の瞳をした美しい猫。
 銀猫ちゃ~ん、帰ってきて~!!

「では、20分後に出発です。支度があるでしょうから失礼しますね」

 えっ。もう行ってしまわれるの? 

 サファーロが部屋のドアを開けると、そこには、鍵穴から覗いていたのでは?と疑われる姿勢で、モーリスさんが立っていました。

「あれ? せっかく二人きりなのに何もしないんですか?」
「だから、のぞくな!」

 壁に耳あり、障子にメアリー。じゃなくてモーリス。
 何もしなくてよかったですわ~!
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