灯火

松石 愛弓

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 サリーは 私を心配しつつも、義妹アマンダの逆鱗に触れたくないようだった。
 サリーの立場も分かる。

「こんな状態の人に働けと? あなた方は何処のお屋敷に勤めておられるのですか?」
 怒気を含んだ声で 紳士が尋ねた。
「サンダー男爵家です・・」
 言いづらそうにサリーが答えると、
「こちらを睨んでいる、あの人ですね?」
 彼はアマンダを一瞥してから、
「失礼します」と言って 私を抱きかかえると 街路樹の傍のベンチに座らせた。

「私は オルドリッジ伯爵家のロナルドと申します。危ないところを助けていただき ありがとうございました。
 足を怪我されたようですし 体調も心配です。治癒院にお連れしたいのですが・・まず、サンダー男爵家の方と話してきます」
 彼は 優しく微笑んだ後、アマンダに向かって歩き出した。

 しかし、程なくして 呆れたように戻ってくると、
「話になりませんね。こんな状態のフィーリアさんを 冷血なアマンダさんに返すのは心配ですから、直接、サンダー男爵家に話に行きます。よろしいですか?」
 いいですよね?、と言いたげな表情のロナルドさんに恐縮して
「はい」と小さく答えた。

 少し先の路地に停めてあったオルドリッジ伯爵家の馬車に乗せていただき サンダー男爵家へと向かう。
 馬車の窓から アマンダが地団太を踏んでくやしがっている姿が見えた。
 自分は何をしても正しいと思ってるから 人に諭されたりすると我慢できないんだろうか。
 ロナルドさんがアマンダに何を言ったのかはわからないけど・・。

 車窓から見慣れた風景を眺めていると サンダー男爵家に到着した。
「馬車で待っていてください。横になっていてもいいですよ」
 ロナルドさんは 体調の悪い私に配慮しながら馬車を降り 男爵家を訪ねた。

 突然の訪問者に きっと義父母は驚いていることだろう。
 数分後 ロナルドさんは 馬車に戻ってきた。
「ご両親の許可はいただきました。令嬢なのに、メイドのようなことをさせられていたんですね。なんて酷いことを・・。凄くばつの悪そうな顔をされてましたよ」
 ロナルドさんが 複雑な表情をして腹立たしく思ってくれたことが 嬉しい。
 冷え切った心が 少しだけ溶けていくような気がした。

「では治癒院へ行きましょう」
 ロナルドさんの優しい声が 心の中に響いた。

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