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1章 夢現ダンジョン
23話【走破する者たち】
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地下6階も問題なく、全員で走破できた。
ほっとしたのも束の間で、
『これは夢ですが、ただの夢ではありません。ここにいるプレイヤーは全員現実に存在する、実在の人物本人です。助け合いクリアを目指し進みましょう』
そんな7階でのアナウンスは、僕たちにとっては既にわかっていた事だが、やはり多くの人たちは知らず、薄々感づいていた人が大半だった。
ここでの死は現実での死、と聞いて連想するのは自分以外の人間の実在性についてだろう。
共にいるのが友人でも、夢なら自分の記憶の産物なのではないかとも思える。
果たして実在の人物なのか、あるいは自分の記憶が作り出した人物なのか。
どちらがここでの正しいことなのかは、目覚めてみなければわからない。
だけど、アナウンスにはどうしようもなく『真実味』を感じてしまう。本能的な感覚で。
ショックを受け、へたり込む人も多い。友人を亡くしたあの弓の少女は泣き崩れている。少し気持ちを立て直していた根岸くんたちも、唖然として固まっている。
周囲の人たちが少女や、取り乱しかけた人を落ち着かせようと、慰めている中で、有坂さんが言った。
「スキルポイントコインを、譲渡できる人はいますか」
静かで穏やかな声が、響く。
「私の職業は中級回復師で、レベル50まで上がれば蘇生師を選べます。小部屋を完全に無視して進んでいる今、レベルが足りるかわかりません。10階ボス攻略後に、出来る限り蘇生を行いたいと思っています。ご協力をいただける方がいれば、挙手をお願いします」
パーティーメンバーを失った殆どの人が手を上げた。
根岸くんたちもだ。
「お1人ずつ、伺いますね。有難うございます」
僕もそれを手伝う。最初に弓の少女のところへ、有坂さんが向かう。泣く彼女から、コインを受け取った。
僕は根岸くんたちのところへ向かった。
「協力、ありがとう」
僕が言うと、コインを差し出す。
「敬、俺らが殺したやつらって蘇生、できるのか?」とぽつりと訊いた。
「スマホが残っていれば……多分。パーティーメンバーも……?」
殺したの? と訊けずに詰まってしまう。彼らがまた泣きそうな顔をしていたから。
「パーティーメンバーの1人は殺した。もう1人はモンスターにやられたんだ。……PvPをやった、会ったヤツらのスマホはない」
根岸くんがぽつりと言う。
「わかった。スキルやアイテムで何とか蘇生できたら、有坂さんがしてくれるから、待っていて」
「頼む。俺たちも出来ることは何でもする。何かあれば、言ってくれ」
「ありがとう、根岸くん」
僕はそう言って、彼らから離れた。もっと何か言って、側にいてあげたかった。
彼らは喧嘩はする。多少の悪いこともする。だけど、人を殺すなんてことは、彼らも現実なら絶対にしない。普通の、高校生なのに。
ゲームのような夢だと思って、普段やらないような悪事にまで手を染めてしまったことを後悔している表情で、頷いた僕を見送る。
僕はその顔に頷いて応えてから、他の人たちからコインを受け取って回る。
僕と有坂さんでコインを受け取りに回ると、いろんなことを訊かれ、言われた。
それは、大半は不安からくる質問と懇願だった。
泣きながら、助けようとしてくれてありがとうという人もいた。
みんな、みんな普通の人たちだった。
他に僕の知り合いはここにはいなかった。
いないからこそ不安だった。
母や、他の友達が、このダンジョンで酷い目にあっていないことを祈った。
「戻ったぜ、みんな準備してくれ」
武藤さんが戻り、声をかける。武藤さんはどんな状況でもからりと元気だ。
いてくれるだけで、みんなを元気にするような力がある。
武藤さんを見て、表情を明るくする人は少なくない。
全員でまた走り、7階ボスも武藤さんが瞬殺して終わった。
モンスターを相手にするのであれば、もう完全に無双。だけど、時間がない。護る物がある。
そして、もし、人間がこの先にいるのなら、それは、モンスターより明らかに強いだろう。
ほっとしたのも束の間で、
『これは夢ですが、ただの夢ではありません。ここにいるプレイヤーは全員現実に存在する、実在の人物本人です。助け合いクリアを目指し進みましょう』
そんな7階でのアナウンスは、僕たちにとっては既にわかっていた事だが、やはり多くの人たちは知らず、薄々感づいていた人が大半だった。
ここでの死は現実での死、と聞いて連想するのは自分以外の人間の実在性についてだろう。
共にいるのが友人でも、夢なら自分の記憶の産物なのではないかとも思える。
果たして実在の人物なのか、あるいは自分の記憶が作り出した人物なのか。
どちらがここでの正しいことなのかは、目覚めてみなければわからない。
だけど、アナウンスにはどうしようもなく『真実味』を感じてしまう。本能的な感覚で。
ショックを受け、へたり込む人も多い。友人を亡くしたあの弓の少女は泣き崩れている。少し気持ちを立て直していた根岸くんたちも、唖然として固まっている。
周囲の人たちが少女や、取り乱しかけた人を落ち着かせようと、慰めている中で、有坂さんが言った。
「スキルポイントコインを、譲渡できる人はいますか」
静かで穏やかな声が、響く。
「私の職業は中級回復師で、レベル50まで上がれば蘇生師を選べます。小部屋を完全に無視して進んでいる今、レベルが足りるかわかりません。10階ボス攻略後に、出来る限り蘇生を行いたいと思っています。ご協力をいただける方がいれば、挙手をお願いします」
パーティーメンバーを失った殆どの人が手を上げた。
根岸くんたちもだ。
「お1人ずつ、伺いますね。有難うございます」
僕もそれを手伝う。最初に弓の少女のところへ、有坂さんが向かう。泣く彼女から、コインを受け取った。
僕は根岸くんたちのところへ向かった。
「協力、ありがとう」
僕が言うと、コインを差し出す。
「敬、俺らが殺したやつらって蘇生、できるのか?」とぽつりと訊いた。
「スマホが残っていれば……多分。パーティーメンバーも……?」
殺したの? と訊けずに詰まってしまう。彼らがまた泣きそうな顔をしていたから。
「パーティーメンバーの1人は殺した。もう1人はモンスターにやられたんだ。……PvPをやった、会ったヤツらのスマホはない」
根岸くんがぽつりと言う。
「わかった。スキルやアイテムで何とか蘇生できたら、有坂さんがしてくれるから、待っていて」
「頼む。俺たちも出来ることは何でもする。何かあれば、言ってくれ」
「ありがとう、根岸くん」
僕はそう言って、彼らから離れた。もっと何か言って、側にいてあげたかった。
彼らは喧嘩はする。多少の悪いこともする。だけど、人を殺すなんてことは、彼らも現実なら絶対にしない。普通の、高校生なのに。
ゲームのような夢だと思って、普段やらないような悪事にまで手を染めてしまったことを後悔している表情で、頷いた僕を見送る。
僕はその顔に頷いて応えてから、他の人たちからコインを受け取って回る。
僕と有坂さんでコインを受け取りに回ると、いろんなことを訊かれ、言われた。
それは、大半は不安からくる質問と懇願だった。
泣きながら、助けようとしてくれてありがとうという人もいた。
みんな、みんな普通の人たちだった。
他に僕の知り合いはここにはいなかった。
いないからこそ不安だった。
母や、他の友達が、このダンジョンで酷い目にあっていないことを祈った。
「戻ったぜ、みんな準備してくれ」
武藤さんが戻り、声をかける。武藤さんはどんな状況でもからりと元気だ。
いてくれるだけで、みんなを元気にするような力がある。
武藤さんを見て、表情を明るくする人は少なくない。
全員でまた走り、7階ボスも武藤さんが瞬殺して終わった。
モンスターを相手にするのであれば、もう完全に無双。だけど、時間がない。護る物がある。
そして、もし、人間がこの先にいるのなら、それは、モンスターより明らかに強いだろう。
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