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アカリとフシギなタマゴ編
21色 マルの試練3
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「危なかったぞ! 思いっきり油断してたぜ」
姿を現した彼? は流暢に言葉を話していたが、明らかに『人間ではなかった』。
しかし、人間に近い生物? 動物? の姿をしていた。例えるなら。
「《お猿》さんですか?」
そう、私達が知っている動物で云うなら、彼は《猿》の姿をしていた。
「ん? オラッチのことか? オラッチはな《孫語空》ってゆうんだぜ」
お猿さんは自己紹介をしてくれた。
「はあ……《モン サルウ》さんですか」
「ちょっとしかカスってねえじゃねーか!」
名前を間違えてしまい、私はすぐに頭を下げる。
「すみません、人の名前を覚えるのが苦手でして」
「五文字ぐれいがんばって欲しいもんだな」
「検討します。《モルウ》さん」
「なんで三文字になってんだ? 自分でゆうのもなんだけどオラッチよく覚えやすい名前っていわれんぜ」
「え? そうなんですか? 《ゴウ》さん」
「初対面でワリーけど限度っちゅーもんがあるぞ」
会って数十秒の初対面のお猿さんに本気(がちめ)の注意をされてしまう。
「まあ、とりあえずそれは置いといてよ、一つ聞いてもいいか?」
「はい、何でしょう?」
モンさんは切り替えて話を続ける。
「オメッチよくオラッチの存在に気付いたな」
「私なりに推理しました」
「推理?」
「はい」と私の考え憶測を語る。
「まず、扉を潜る前にクーデリアが《神獣と戦ってもらう》と云っていました。 だから、私はあの人形を影で操っているものがいると、何となくですが、思っていました。 まあ、ここまでは誰でも考えることでしょう」
「まあ、そうだな」
私の話に頷き、続きを聞く。
「ですが、私は特別魔法が得意という訳ではないので、『感知魔法』も精度が高いのは扱えません。 ですので、人形を集中的に観察して、何処からか電気信号の様に送られてくるほんの僅かな《魔力》を辿って、一か八かその場所に魔弾を放ったんです。 つまりは『勘』ですね」
私は謙遜しながらいうと、モンさんは関心したように言葉を返す。
「だが、よくすぐに気づいたな、自分でいうのもなんだが、オラッチ隠れるのはまあまあ得意で最低でも十分ぐれいは気付かれないと思ったぜ」
「私の尊敬するおじいちゃんがよく云っていました、『可能性の低い事でも推測が大切』だと」
おじいちゃん看てますか? 私はおじいちゃんの教訓を胸に秘めがんばっています。 どうかこれからも空から見守ってください………………おじいちゃんまだ生きてますけどね。
「ところでモンさんは神獣なんですか?」
「ん? ああ、そうだな。オラッチは一応、《猿》の神獣だぜ!」
まあ、そうですよね。 人間の言葉を喋るお猿さんなんて普通いませんから。
「人形を操っていたのも魔法ですか?」
さっきの人形のことにも触れてみる。
「細かくいえば違うが似たようなもんだな。 オラッチの使うのは《妖術》ってゆうんだ」
「妖術?」
「ちっとみせてやるよ」
そういうと、モンさんは自分の毛を一本抜きそこに息を吹きかける。
すると、その場所に『私』が現れたのだ!
「え!? 私ですか!?」
私の驚く反応をみて、モンさんは嬉しそうに胸を張る。
「おう、さっきは特になにも考えずに創ったが、今回はオメッチを創造しながら創ったんだ。 触ってみてもいいぜ、自分でいうのもなんだがよく出来てるからよ」
「では、お言葉に甘えて」
『私を観察する』という普通では絶対出来ない体験をする。 まずは、普段なら鏡でしか観れない自分の顔をみる。 へぇー私って意外と丸目だったんですね。
次に後ろ姿を確認する。
おっ、私って後ろの首元にホクロがあったんですね。 もしかして、とある貴族の血縁かもしれません。
「自分の身体を観察するなんて少々恥ずかしいですが、なかなか興味深いですね」
取り敢えず、この辺にしときますか。
私は観察を終了する。
「お、もういいのか?」
「はい、もうそろそろ本題に入ろうと思いまして」
「そうか、じゃあ戻すぞ」
モンさんは指を鳴らすと創りだした私を消した。
消えた私からモンさんの毛が宙に浮いて、そのまま地面に落ちる。 なるほど、ゴリラゴリラゴリラから視えた糸みたいなのは妖術が解けたモンさんの毛だったと。
「確認ですが、モンさん、試練はまだ継続されていますよね?」
単刀直入に聞いてみる。
「クーデリアが云っていたのは、《神獣と戦ってもらう》でした。 私はまだ《人形》としか戦っていません。 もし、モンさんの正体に気が付くが試練の内容なら正直助かりますけど」
試練はこれで終わりでいいですよね? の意味も踏まえて聞くと、少し考える仕草をすると口を開く。
「オラッチもはじめはそのつもりだったんだけどよ、気が変わったぞ」
「ん? それはどういうことですか?」
モンさんの言葉に少し『違和感』を覚えて、冷や汗がでる。
「オメッチがよ思ったよりオラッチの正体に早く気が付いたからちょっと物足りなくてよ」
「んん?」
私は冷や汗の量を増やし、笑顔で口元が引きつる。
「オメッチの動きを観てたがよ、人間にしては意外と強いみていだから、少し『手合わせ』したくなってきたぞ」
「マジデスカ」
予想だにしない言葉に耳を疑う。 いや、マジデスカ。
「そんな簡単に試練の内容を変えてもいいのですか?」
私の聞いた言葉が聞き間違いであって欲しいと願いながら聞いてみる。
「大丈夫だそんなもんその場の雰囲気とノリだ」
「なんですかそのご飯食べに行った後にカラオケ行こうみたいな感じは」
聞き間違いではなかったようです。
「まあ、手加減するから安心しな」
「因みに手加減しなかったら私はどうなりますか?」
「たぶん、瞬きで木端微塵になるぞ」
「では、超絶手加減でお願いします」
とてつもなく恐ろしいことを云われたので、全力で頭を下げる。 惨めでもいいんです。 私だって死にたくないです。
「じゃあ、オラッチに一撃でも与えることが出来たら合格にするぞ」
「一撃ですか?」
私は頭を下げたままの姿勢で顔だけ上げる。
「おう、ちょっとした模擬戦みたいなもんだ。 オラッチも軽く攻撃するからよ隙をみて一発いれてみろ」
そう云うと、モンさんは右手を前に出して棒を出現させ、それを掴みグルグルと器用に回してみせる。
「ひさしぶりに使うけどまあまあだな」
「愛用の武器ですか?」
「オラッチのむかしからの相棒『如意金箍棒』だ」
「如意金箍棒?それってもしかして如意棒ですか? 如意棒といったら、確か、【伝奇】に出てくる空想の神器かと思っていましたが、まさか本物が存在するとは」
私の言葉にモンさんは少し驚いた様に答える。
「お、博識だな。 こいつの存在を知ってるってことは大体の能力もわかってるってことか」
「あくまで伝奇で知っているだけなので、全て知っている訳ではありませんが」
知ってる範囲だと、伸びたり、大きくなる、でしたっけ?
「まあ、今回はオメッチの知ってる範囲の能力しか使わねえから安心しな」
「逆に安心出来ない気がしますが、感謝します」
つまり、私達の知らない能力もあるってことですね……。
「よし、話も長くなっちまったし早速はじめるか」
そういうと、モンさんはもう一度、如意棒を器用に回して構える。
「お手柔らかにお願いします」
私もマジック棒を構えて、今回は始めから身体強化魔法をかけて、モンさんの動きを観察する。
「…………」
全く隙がありませんね。
剣道を少しかじっただけとはいえ、おじいちゃんに武道の心得は叩き込まれているので、普通の人よりは腕は立つ自信があったのですが……。 これは困りましたね。
「そっちからこないならこっちからいくぜ」
痺れを切らしたモンさんが飛び込んで来た。
(来た!)
私はこの時を待っていました。
私の得意な【返し】をする為に! だけど、人形を使って私の動きを視ていたならそのくらい解っているはずです。 なので、私はその先を読みます! 私は少し手首を動かしフェイントをかける。
すると、それを見たモンさんは体を私から見て右側にずらして避ける態勢に入り、その隙を突き私は棒を横に振り切る。
「うおっと!!」
しかし、ギリギリのところでかわされてしまう。
「あっぶねえいきなり終わっちまうところだったぜ」
「逆に終わらせるつもりだったんですけどね……」
正直一発で決めるつもりの渾身の一撃をかわされてしまい、私は内心冷や汗をかく。
「やっぱりオラッチの目に狂いはなかったな! よっしゃーいっちょやるぜー!」
マズイです。 変なスイッチを入れてしまったみたいです。 内心かなり焦っている私を知ってか知らずかモンさんはウキウキしている。
「ハッ!」
モンさんは軽くジャンプをすると、その場から姿を消し、一瞬で私の右間合いに入ってきた。
「!」
「お? 《目では追える》みたいだな」
そういうと、如意棒を振り、私はそれをギリギリのところで受け止める。
「ぐっ!」
(重い!)
しかし、力負けしてしまい体が飛ぶ。
(一旦、この勢いを利用して距離をとります)
私はあえて飛ばされることにより衝撃を和らげることにする。
そして、飛ばされた先の竹に掴まり止まる。
「考えてる暇はないみたいですね」
私が態勢を整えて作戦を考える暇もなく、モンさんは追撃をしてこようとする。 そして、私の眼では追いきれない速さで姿を消した。
(ここまできたらもう野生の勘ですよ)
モンさんの来そうな場所に棒を振りかざすと、カキンをいう音が響く。
(ビンゴです!)
そこには私の攻撃を如意棒で受け止めるモンさんがいた。
「惜しい」
「よおっと!」
モンさんはすかさず押し返してきて、私は大きく態勢を崩す。
「ぬぅっ!?」
そして、如意棒振るう。
「やばっ!?」
不安定な態勢ながらもなんとか攻撃を受け止めようとしたが、マジック棒を弾かれてしまい、私の腕からかなり遠くの地面に転がり落ちる。
「いぃっ!?」
早く拾わないと! そう思い、全力で地面を蹴り、棒の飛ばされた場所に走る。
「伸びろ、如意棒!」
後ろからそのような掛け声が聞こえてきて、私の真横を如意棒が過ぎていき、地面に転がっていた私のマジック棒をまるで小枝かの様に折ってしまった。
「なんとっ!?」
「ほら、よそみすんな! 戻れ、如意棒!」
私は振り返る暇もなく背中に衝撃が走り体浮く感覚がした。 いや、実際に浮いていて、私は蹴り飛ばされて宙を舞い、受け身を一切取れずに地面を転がった。
「ぐぅぁ……」
全身に痛みが走り呻き声を上げ、立つことが出来ない。
「さっきの一撃はよかったぞ」
飛びそうな意識の中で声を拾う。
「オメッチは勘と思ってるかもしれないが、あれは明らかにオレッチを捉えてた、つまりは、オメッチは気づいてないだけでなかなかのポテンシャルを秘めてるみていだな」
お褒めに預かり光栄といった感じなんでしょうけど、なんてったって私は今ひんしの状態ですよ。 そんなこと云われましてもねえ……というか、そもそも私は一般学生であって何処ぞの戦闘民族じゃないんですから、当たり前ですが、戦闘狂ではありませんし、そもそもこの作品はバトルものではないはずです……ですよね?
「……考えたって……無駄ですかね……」
体の痛みを堪えながら、なんとか立ち上がる。
「お? まだやれるか?」
ふらふらになりながらもなんとか答える。
「はい、やれるところまでとことんやってみることにします」
「そうか、自分で攻撃しといてなんだけどよムリするなよ?」
「その通りですよ」
モンさんのブーメラン発言をツッコム気力はあるみたいです。
「そういえば先程仰いましたよね? 私はなかなかのポテンシャルを秘めていると」
「ああ」
「じゃあ、それを信じてみることにします」
私はそう云うと、折られたマジック棒をもう一度創造する。 しかし、今度はただの棒ではなく別のモノを創造する。
「ほう、おもしれえもん創ったな」
モンさんは私の創造したものをみて、楽しそうにいう。
「ええ、丁度、《この場所にある》ので、思い付きですけどね」
私が創造したモノ、それは、《竹刀》です。この場所は『竹林』で私の学んできたものは『剣道』です。 なので、導き出されて当然と云うべきですかね。
「それになかなか手に馴染むんですよ」
「じゃあ、これでお互いいい分だな」
お互いに自慢の武器を構え、再度、睨み合う。
「さて、私の潜在能力とやら信じてますよ」
立ち上がれ、私の中の『剣闘士《グラディエータ》』。 私はもう一度、身体強化魔法をかけて集中する。
そして、考えるやはり決めるなら自分の一番得意なものでやるべきだと、そう【返し】です。 先程は先読みを心みてかわされてしまいましたが、今度こそは一本取ってみせます!
「ふぅ……」
深く深呼吸をする。
「おもしれえ乗ってやるか!」
私の考えに気付いてくれたのかモンさんは構えを少し変える。
「……」
「……」
互いの読み合い。
勝負は一瞬……。
さあ、どうきますか?
……ジャリッ
「!」
足で地面を鳴らす音がして、一瞬でモンさんは姿を消した。
恐らく、姿を見せるのは二秒にも満たないはずです。
今の私は完璧にゾーンに入っており、たった二秒で思考をフル回転させる。 正面、右、左、それとも後ろ、何処に姿を現す? ……私ならどうする? ……いや、考えるまでもないですね。 私ならいえ、真剣勝負を志す者なら誰だって今この状況は絶対 《正面》に来るはずです! 私は正面に全意識を向ける。
そして、モンさんが姿を現す。
(ビンゴです!)
そんな私の予想を読んでいたのか、モンさんは間髪を入れず如意棒を振りかざしてくる。
私はそれを竹刀で『受け止める』!
……のではなく、如意棒と竹刀が当たるギリギリのラインでそれを【流し】モンさんの懐に入る。
「!?」
そして、素早く竹刀をモンさんの腹部に振りかざす。
「胴!!」
バシーンッ!!!
周囲に竹刀の綺麗な音が鳴り響く。
そして、私は忘れず、しっかりと残心《ざんしん》をする。
「………」
「………」
私は蹲踞して、竹刀を納め立ち上がり、数歩後ろに下がり礼をする。
「おみごとだ」
姿を現した彼? は流暢に言葉を話していたが、明らかに『人間ではなかった』。
しかし、人間に近い生物? 動物? の姿をしていた。例えるなら。
「《お猿》さんですか?」
そう、私達が知っている動物で云うなら、彼は《猿》の姿をしていた。
「ん? オラッチのことか? オラッチはな《孫語空》ってゆうんだぜ」
お猿さんは自己紹介をしてくれた。
「はあ……《モン サルウ》さんですか」
「ちょっとしかカスってねえじゃねーか!」
名前を間違えてしまい、私はすぐに頭を下げる。
「すみません、人の名前を覚えるのが苦手でして」
「五文字ぐれいがんばって欲しいもんだな」
「検討します。《モルウ》さん」
「なんで三文字になってんだ? 自分でゆうのもなんだけどオラッチよく覚えやすい名前っていわれんぜ」
「え? そうなんですか? 《ゴウ》さん」
「初対面でワリーけど限度っちゅーもんがあるぞ」
会って数十秒の初対面のお猿さんに本気(がちめ)の注意をされてしまう。
「まあ、とりあえずそれは置いといてよ、一つ聞いてもいいか?」
「はい、何でしょう?」
モンさんは切り替えて話を続ける。
「オメッチよくオラッチの存在に気付いたな」
「私なりに推理しました」
「推理?」
「はい」と私の考え憶測を語る。
「まず、扉を潜る前にクーデリアが《神獣と戦ってもらう》と云っていました。 だから、私はあの人形を影で操っているものがいると、何となくですが、思っていました。 まあ、ここまでは誰でも考えることでしょう」
「まあ、そうだな」
私の話に頷き、続きを聞く。
「ですが、私は特別魔法が得意という訳ではないので、『感知魔法』も精度が高いのは扱えません。 ですので、人形を集中的に観察して、何処からか電気信号の様に送られてくるほんの僅かな《魔力》を辿って、一か八かその場所に魔弾を放ったんです。 つまりは『勘』ですね」
私は謙遜しながらいうと、モンさんは関心したように言葉を返す。
「だが、よくすぐに気づいたな、自分でいうのもなんだが、オラッチ隠れるのはまあまあ得意で最低でも十分ぐれいは気付かれないと思ったぜ」
「私の尊敬するおじいちゃんがよく云っていました、『可能性の低い事でも推測が大切』だと」
おじいちゃん看てますか? 私はおじいちゃんの教訓を胸に秘めがんばっています。 どうかこれからも空から見守ってください………………おじいちゃんまだ生きてますけどね。
「ところでモンさんは神獣なんですか?」
「ん? ああ、そうだな。オラッチは一応、《猿》の神獣だぜ!」
まあ、そうですよね。 人間の言葉を喋るお猿さんなんて普通いませんから。
「人形を操っていたのも魔法ですか?」
さっきの人形のことにも触れてみる。
「細かくいえば違うが似たようなもんだな。 オラッチの使うのは《妖術》ってゆうんだ」
「妖術?」
「ちっとみせてやるよ」
そういうと、モンさんは自分の毛を一本抜きそこに息を吹きかける。
すると、その場所に『私』が現れたのだ!
「え!? 私ですか!?」
私の驚く反応をみて、モンさんは嬉しそうに胸を張る。
「おう、さっきは特になにも考えずに創ったが、今回はオメッチを創造しながら創ったんだ。 触ってみてもいいぜ、自分でいうのもなんだがよく出来てるからよ」
「では、お言葉に甘えて」
『私を観察する』という普通では絶対出来ない体験をする。 まずは、普段なら鏡でしか観れない自分の顔をみる。 へぇー私って意外と丸目だったんですね。
次に後ろ姿を確認する。
おっ、私って後ろの首元にホクロがあったんですね。 もしかして、とある貴族の血縁かもしれません。
「自分の身体を観察するなんて少々恥ずかしいですが、なかなか興味深いですね」
取り敢えず、この辺にしときますか。
私は観察を終了する。
「お、もういいのか?」
「はい、もうそろそろ本題に入ろうと思いまして」
「そうか、じゃあ戻すぞ」
モンさんは指を鳴らすと創りだした私を消した。
消えた私からモンさんの毛が宙に浮いて、そのまま地面に落ちる。 なるほど、ゴリラゴリラゴリラから視えた糸みたいなのは妖術が解けたモンさんの毛だったと。
「確認ですが、モンさん、試練はまだ継続されていますよね?」
単刀直入に聞いてみる。
「クーデリアが云っていたのは、《神獣と戦ってもらう》でした。 私はまだ《人形》としか戦っていません。 もし、モンさんの正体に気が付くが試練の内容なら正直助かりますけど」
試練はこれで終わりでいいですよね? の意味も踏まえて聞くと、少し考える仕草をすると口を開く。
「オラッチもはじめはそのつもりだったんだけどよ、気が変わったぞ」
「ん? それはどういうことですか?」
モンさんの言葉に少し『違和感』を覚えて、冷や汗がでる。
「オメッチがよ思ったよりオラッチの正体に早く気が付いたからちょっと物足りなくてよ」
「んん?」
私は冷や汗の量を増やし、笑顔で口元が引きつる。
「オメッチの動きを観てたがよ、人間にしては意外と強いみていだから、少し『手合わせ』したくなってきたぞ」
「マジデスカ」
予想だにしない言葉に耳を疑う。 いや、マジデスカ。
「そんな簡単に試練の内容を変えてもいいのですか?」
私の聞いた言葉が聞き間違いであって欲しいと願いながら聞いてみる。
「大丈夫だそんなもんその場の雰囲気とノリだ」
「なんですかそのご飯食べに行った後にカラオケ行こうみたいな感じは」
聞き間違いではなかったようです。
「まあ、手加減するから安心しな」
「因みに手加減しなかったら私はどうなりますか?」
「たぶん、瞬きで木端微塵になるぞ」
「では、超絶手加減でお願いします」
とてつもなく恐ろしいことを云われたので、全力で頭を下げる。 惨めでもいいんです。 私だって死にたくないです。
「じゃあ、オラッチに一撃でも与えることが出来たら合格にするぞ」
「一撃ですか?」
私は頭を下げたままの姿勢で顔だけ上げる。
「おう、ちょっとした模擬戦みたいなもんだ。 オラッチも軽く攻撃するからよ隙をみて一発いれてみろ」
そう云うと、モンさんは右手を前に出して棒を出現させ、それを掴みグルグルと器用に回してみせる。
「ひさしぶりに使うけどまあまあだな」
「愛用の武器ですか?」
「オラッチのむかしからの相棒『如意金箍棒』だ」
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私の言葉にモンさんは少し驚いた様に答える。
「お、博識だな。 こいつの存在を知ってるってことは大体の能力もわかってるってことか」
「あくまで伝奇で知っているだけなので、全て知っている訳ではありませんが」
知ってる範囲だと、伸びたり、大きくなる、でしたっけ?
「まあ、今回はオメッチの知ってる範囲の能力しか使わねえから安心しな」
「逆に安心出来ない気がしますが、感謝します」
つまり、私達の知らない能力もあるってことですね……。
「よし、話も長くなっちまったし早速はじめるか」
そういうと、モンさんはもう一度、如意棒を器用に回して構える。
「お手柔らかにお願いします」
私もマジック棒を構えて、今回は始めから身体強化魔法をかけて、モンさんの動きを観察する。
「…………」
全く隙がありませんね。
剣道を少しかじっただけとはいえ、おじいちゃんに武道の心得は叩き込まれているので、普通の人よりは腕は立つ自信があったのですが……。 これは困りましたね。
「そっちからこないならこっちからいくぜ」
痺れを切らしたモンさんが飛び込んで来た。
(来た!)
私はこの時を待っていました。
私の得意な【返し】をする為に! だけど、人形を使って私の動きを視ていたならそのくらい解っているはずです。 なので、私はその先を読みます! 私は少し手首を動かしフェイントをかける。
すると、それを見たモンさんは体を私から見て右側にずらして避ける態勢に入り、その隙を突き私は棒を横に振り切る。
「うおっと!!」
しかし、ギリギリのところでかわされてしまう。
「あっぶねえいきなり終わっちまうところだったぜ」
「逆に終わらせるつもりだったんですけどね……」
正直一発で決めるつもりの渾身の一撃をかわされてしまい、私は内心冷や汗をかく。
「やっぱりオラッチの目に狂いはなかったな! よっしゃーいっちょやるぜー!」
マズイです。 変なスイッチを入れてしまったみたいです。 内心かなり焦っている私を知ってか知らずかモンさんはウキウキしている。
「ハッ!」
モンさんは軽くジャンプをすると、その場から姿を消し、一瞬で私の右間合いに入ってきた。
「!」
「お? 《目では追える》みたいだな」
そういうと、如意棒を振り、私はそれをギリギリのところで受け止める。
「ぐっ!」
(重い!)
しかし、力負けしてしまい体が飛ぶ。
(一旦、この勢いを利用して距離をとります)
私はあえて飛ばされることにより衝撃を和らげることにする。
そして、飛ばされた先の竹に掴まり止まる。
「考えてる暇はないみたいですね」
私が態勢を整えて作戦を考える暇もなく、モンさんは追撃をしてこようとする。 そして、私の眼では追いきれない速さで姿を消した。
(ここまできたらもう野生の勘ですよ)
モンさんの来そうな場所に棒を振りかざすと、カキンをいう音が響く。
(ビンゴです!)
そこには私の攻撃を如意棒で受け止めるモンさんがいた。
「惜しい」
「よおっと!」
モンさんはすかさず押し返してきて、私は大きく態勢を崩す。
「ぬぅっ!?」
そして、如意棒振るう。
「やばっ!?」
不安定な態勢ながらもなんとか攻撃を受け止めようとしたが、マジック棒を弾かれてしまい、私の腕からかなり遠くの地面に転がり落ちる。
「いぃっ!?」
早く拾わないと! そう思い、全力で地面を蹴り、棒の飛ばされた場所に走る。
「伸びろ、如意棒!」
後ろからそのような掛け声が聞こえてきて、私の真横を如意棒が過ぎていき、地面に転がっていた私のマジック棒をまるで小枝かの様に折ってしまった。
「なんとっ!?」
「ほら、よそみすんな! 戻れ、如意棒!」
私は振り返る暇もなく背中に衝撃が走り体浮く感覚がした。 いや、実際に浮いていて、私は蹴り飛ばされて宙を舞い、受け身を一切取れずに地面を転がった。
「ぐぅぁ……」
全身に痛みが走り呻き声を上げ、立つことが出来ない。
「さっきの一撃はよかったぞ」
飛びそうな意識の中で声を拾う。
「オメッチは勘と思ってるかもしれないが、あれは明らかにオレッチを捉えてた、つまりは、オメッチは気づいてないだけでなかなかのポテンシャルを秘めてるみていだな」
お褒めに預かり光栄といった感じなんでしょうけど、なんてったって私は今ひんしの状態ですよ。 そんなこと云われましてもねえ……というか、そもそも私は一般学生であって何処ぞの戦闘民族じゃないんですから、当たり前ですが、戦闘狂ではありませんし、そもそもこの作品はバトルものではないはずです……ですよね?
「……考えたって……無駄ですかね……」
体の痛みを堪えながら、なんとか立ち上がる。
「お? まだやれるか?」
ふらふらになりながらもなんとか答える。
「はい、やれるところまでとことんやってみることにします」
「そうか、自分で攻撃しといてなんだけどよムリするなよ?」
「その通りですよ」
モンさんのブーメラン発言をツッコム気力はあるみたいです。
「そういえば先程仰いましたよね? 私はなかなかのポテンシャルを秘めていると」
「ああ」
「じゃあ、それを信じてみることにします」
私はそう云うと、折られたマジック棒をもう一度創造する。 しかし、今度はただの棒ではなく別のモノを創造する。
「ほう、おもしれえもん創ったな」
モンさんは私の創造したものをみて、楽しそうにいう。
「ええ、丁度、《この場所にある》ので、思い付きですけどね」
私が創造したモノ、それは、《竹刀》です。この場所は『竹林』で私の学んできたものは『剣道』です。 なので、導き出されて当然と云うべきですかね。
「それになかなか手に馴染むんですよ」
「じゃあ、これでお互いいい分だな」
お互いに自慢の武器を構え、再度、睨み合う。
「さて、私の潜在能力とやら信じてますよ」
立ち上がれ、私の中の『剣闘士《グラディエータ》』。 私はもう一度、身体強化魔法をかけて集中する。
そして、考えるやはり決めるなら自分の一番得意なものでやるべきだと、そう【返し】です。 先程は先読みを心みてかわされてしまいましたが、今度こそは一本取ってみせます!
「ふぅ……」
深く深呼吸をする。
「おもしれえ乗ってやるか!」
私の考えに気付いてくれたのかモンさんは構えを少し変える。
「……」
「……」
互いの読み合い。
勝負は一瞬……。
さあ、どうきますか?
……ジャリッ
「!」
足で地面を鳴らす音がして、一瞬でモンさんは姿を消した。
恐らく、姿を見せるのは二秒にも満たないはずです。
今の私は完璧にゾーンに入っており、たった二秒で思考をフル回転させる。 正面、右、左、それとも後ろ、何処に姿を現す? ……私ならどうする? ……いや、考えるまでもないですね。 私ならいえ、真剣勝負を志す者なら誰だって今この状況は絶対 《正面》に来るはずです! 私は正面に全意識を向ける。
そして、モンさんが姿を現す。
(ビンゴです!)
そんな私の予想を読んでいたのか、モンさんは間髪を入れず如意棒を振りかざしてくる。
私はそれを竹刀で『受け止める』!
……のではなく、如意棒と竹刀が当たるギリギリのラインでそれを【流し】モンさんの懐に入る。
「!?」
そして、素早く竹刀をモンさんの腹部に振りかざす。
「胴!!」
バシーンッ!!!
周囲に竹刀の綺麗な音が鳴り響く。
そして、私は忘れず、しっかりと残心《ざんしん》をする。
「………」
「………」
私は蹲踞して、竹刀を納め立ち上がり、数歩後ろに下がり礼をする。
「おみごとだ」
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朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
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「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
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孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
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◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
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