カラーメモリー『Re・MAKECOLAR』

たぬきち

文字の大きさ
103 / 124
カラーエブリデイその6

103色 気になる彼の頼み事

しおりを挟む
 ワタシの名前は村咲菫むらさきすみれ。 商店街で喫茶店兼ケーキ屋を営む『村サ喫茶』の一人娘だ。

 今日は、センパイの農園で出荷の手伝いをしていた。

「……これで、さいごね」

 ワタシは最後のリンゴを籠に入れて、出荷分の作業を終えて一息ついた。

「おつかれさま、スミレ」
 
 背伸びをして固まったカラダを伸ばしていると、温和な優しい声がワタシに向けられた。

「は、はい、ありがとうございます」

 だらしなくカラダを伸ばしていたワタシは慌てて誤魔化す様に彼の前に行く。

「わざわざ手伝ってくれてありがとね。 本当に助かったよ」

 爽やかで綺麗な笑顔を向けられたワタシは無意識に顔が赤くなってしまうのを感じ、センパイから顔を下に向けてしまう。

「い、いえ、センパイのためなら死んでも働きます」
「さすがにそうなる前に止めるよ」

 変な事を口走ってしまったワタシにセンパイは優しく返してくれる。 それに、恥ずかしさを感じ、顔を下に向けているのに頭から湯気が出ているのではと錯覚するぐらい顔がさらに熱くなる。

「じゃあ、後はボクの仕事だからスミレは帰っても大丈夫だよ。 お礼に果物ジュースを作っておいたからよかったら家で飲んでね」
「え? もうおわりですか? それにお礼なんて」

 ワタシはセンパイの言葉に少し寂しさを覚えながらも聞き返す。 ナゼならワタシはセンパイともっと一緒にいたいからだ。

「うん、これから出荷の為にトラックに乗せるからチカラ仕事になっちゃうし、それにスミレにケガをさせる訳にはいかないしね」
「……そ、そうですよね」

 センパイはワタシの為に言ってくれているのはわかっているけど、やはり少し落ち込んでしまう。 そんなワタシに気付いたのか、センパイがもう一度笑顔を向けながらいう。

「じゃあ、スミレにお仕事をひとつあげようかな」
「ワタシにですか?」

 首を傾げるワタシにセンパイは優しく頷いて言葉を続ける。

「ボクの作ったジュースが美味しかったか今度教えてほしいな」

 つまりまた今度会えるということだ。 センパイのその言葉の意味に気付いたワタシは顔が真っ赤になりながらも言葉を返す。

「は、はい! 今度センパイに伝えます!」


 
 センパイからもらったジュースをカバンに入れて、農園を後にしたワタシは少し浮かれながらも実家に向かって歩いていた。 すると、見覚えのあるくるくる頭の緑色のパーカーを着た青年が目に入った。

「……あれって」

 ワタシは少し小走りで近寄ると後ろから声をかける。

「……ねえ」
「!?」

 突然声をかけたからか少しビクッと反応したけど、彼は振り返り、ワタシに気が付くと子供の様なかわいい笑顔を向けてきた。

「あ! むらさきさんこんにちは」
「ええ、こんにちは」

 彼の挨拶を返しながらワタシは彼を少しみる。 彼の名前は緑風空太みどりかぜくうたくん。 のほほんと優しい雰囲気を漂わせている。

 正直、この子はセンパイに比べて全然頼りないけど、ナゼかワタシはこの子が少し気になっていた。 うまく云えないけど、何かセンパイに『似ている』気がした。

「今からワタシの店にでもいくの?」

 自分でいって少し恥ずかしくなりながらもワタシが聞くと、彼は「うん」と首を振り答える。

「だけど、今日はむらさきさんに『おねがい』があって」
「え? ワタシに?」

 てっきりいつもの様にワタシのお店にコーヒーゼリーを食べにきたのかと思ったけど、意外な言葉にワタシは反射的に聞き返す。
 
「うん、むらさきさんのお店って『ケーキの予約』ってできたかな?」
「ええ、できるわよ。 それがどうしたの?」

 彼からでた言葉に少し疑問に思いながらもワタシは聞く。

「ケーキを『プレゼント』したい人がいて」
「!?」

 彼の言葉にワタシは少しカラダを反応させてしまう。

 ……だれにあげるのかしら……もしかして、あの発狂女? それとも、お嬢様? それか、アホ面女? …………いや、だれにあげようが関係ないわね。 しかも、なんでワタシはそんなこと気にしてるのよ。

「……その……だれにあげるの」
「?」
「!?」

 ワタシは自分が聞いてしまったことに驚くが、彼はそんなワタシの言葉が別に深い意味はないと思ったのか、あっさりと答えてくれた。

「かーさんだよ」
「え? 母親?」

 頬を掻きながら恥ずかしそうにいう彼の言葉にワタシは少し安心してしまった。

 ……って、なんでワタシは安心してるのよ。

「……そう、ならよかったわ」
「え?」
「!? いや、なんでもないわ」

 つい口にだしてしまったワタシは慌てて誤魔化す。

「それなら、ワタシの店にいくわよ」
「うん」

 半ば強引に誤魔化すワタシに緑風くんは特に気にすることなく笑顔を向ける。


「これに『日にち』と『サイズ』、『なにケーキ』かなどの項目を書いてちょうだい。 それと、『書いてほしいメッセージ』とかも」
「うん、わかった」

 ワタシの店に入り、受付の紙を渡して説明すると、彼は頷き記入していく。

 最後のメッセージの所で少し悩んでいる様子だったけど、何を書いてもらうか思い付いたのか、最後の記入を終わらせた。

「はい、かけました」

 元気よくいう彼から伝票を預かり、それを確認していくとワタシは驚いた。

「この日ってまだ『半年以上先』じゃない」

 彼の予約した日にちはかなり先だったのだ。

「うん、かーさんの誕生日ってクリスマスと大晦日と正月を一緒くたにされちゃって、ちゃんとケーキとかを誕生日に食べたことがないって言ってたから、せめてちゃんとお祝いしたくて」
「なんか聞いてるだけでかわいそうね」

 彼の母親は一体どんな子供時代を過ごしてきたのか逆に気になってしまった。 ケーキを買ってもらえないとか相当貧乏だったのかしら?

「他人のことを聞くのはあれだけど、アナタの母親一体どんな子供時代過ごしたの?」
 
 素朴な質問に緑風くんは普通に答えてくれた。

「えーっと、たしか、家にごはんがなかったから学校帰りとかに食べれる草とかをもって帰って炒めて食べてたとかいってたね」
「……ごめんなさい。 触れていけない内容だったわね」
「え? そうなの?」

 あまりの斜め上のエピソードにワタシは唐突に精神ダメージを受ける。 しかし、ナゼか緑風くんは首を傾げて頭にハテナを浮かべている。

「かーさんはすごい笑いながら話してくれるよ」
「ポジティブサイコパスね」

 ワタシは話を切り替える。

「まあ、でも、アナタ、マザコンね」

 ワタシの言葉に緑風くんは「あはは」と頬を掻きながら苦笑いする。

「そうだね、気持ち悪いかもしれないけど、かーさんは昔、すごい苦労していたみたいだから、せめてぼくからお返しができればと思って」
「そう、苦労されたのね」
「うん、例えば、親に捨てられたのに、ある日の朝、突然、飛行機に乗せられてその着いた先に自分を捨てた親がいたとかね」
「…………ごめんなさい、一旦話を変えましょう」

 また、突然の闇深エピソードにワタシは顔を反らしながらいう。

「まあ、とりあえずこれで受付完了ね。 はい、これ、なくさないようにしっかり保管しなさいね」

 伝票の下にある控えの紙を彼に渡すと、それを慎重な手付きで受け取る。

「うん! ありがとう、大切に保管するね!」
「そんなに気を張らなくてもいいわよ。 逆に心配だわ」

 ワタシがため息交じりにいうと、彼は「あはは」と笑いながら、紙をカバンの中の手帳にしまった。

「ねえ、この後はどうするの?」
「え?」

 ワタシは素朴な質問をすると彼は少し考えながら答える。

「うーん、とくにこれといって予定はないけど、ぶらぶら商店街をみて帰るかな」
「なら、ちょっとウチでゆっくりしていきなさい」
「え?」

 ワタシの言葉に彼は首を傾げる。

「ちょうどさっき、美味しい果物ジュースをもらったの、よかったら飲んでいきなさい。 サービスするわ」
「え? いいの?」
「ええ、むしろムリやり引きとめてでも飲んでもらうわ。 だって、センパイからもらった絶対美味しいジュースだもの。 この味をしらないなんて人生大損してるわ」
「なら、お言葉に甘えようかな」
 
 ワタシの半ば強引な引きとめに彼は純粋な笑顔を向けて答えると、ワタシの案内した席に座る。

「はい、センパイ特製のジュースよ」
「ありがとう、いただきます」

 ワタシからコップを受け取り一言いうと、彼はそれを口に運ぶ。

 その後、目を見開いて驚いた様な表情を浮かべると目を輝かせる。

「おいしいよ! すごいおいしいよ!」

 相当美味しかったのか語彙力のない感想をいう彼をみてワタシは頬が緩む。

「当然よ、センパイの特製ジュースよ、おいしいに決まってるわ。 センパイのだもの」

 誇らしげにいうワタシに緑風くんは少しフシギそうな表情を浮かべたけど、直ぐにナニか気付いた様な顔を浮かべて口を開いた。

「なるほど、むらさきさんはそのセンパイが『好き』なんだね」
「!! は、はああ!? す、すきって!! え、ええ!??」

 突然の爆弾発言にワタシは大きく取り乱してしまう。

 そして、ワタシの反応に驚いた緑風くんは少しきょとんとするけど、その後笑いだした。

「な、ナニがおかしいのよ!」
「あ! ごめん! 別にむらさきさんをバカにしたわけじゃないんだ」

 ほぼ逆切れに近い感じで怒ったワタシに彼は慌てて手を振りながら弁明する。

「え、えーっとなんていうかその、うまくいえないけど」
「ナニよ、言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」

 少し考えて言葉を探している感じだった緑風くんは言葉が見つかったのか「そうだ!」という感じの表情を浮かべていう。

「えーっと、むらさきさんっていつもクールで冷静な感じのイメージがあったけど、そんなおもしろくてかわいい反応をするんだなと思って」
「!? か、かわ!?」

 突然、かわいいといわれワタシは顔から湯気が出るような感覚に襲われる。

「け、消されたいの!?」
「ご、ごめん!」

 商店街にワタシの叫びと緑風くんの謝罪の言葉が響き渡った。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記

逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。 「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」 ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。 しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった! そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……! 「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」 「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」 これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...