下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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パン、パン、パン──

「かすりもしなかった……」

「周太郎さんうまそうだよね?」

「私ですか?」

「うん」

周太郎が構え、一回打つと大きなぬいぐるみが倒れ、カランカランと鐘が鳴らされる。

「凄い……」

「次はもう少し小さなあのまりにしましょうか」

また打つと箱ごと倒れ、残りの1回も見事に命中する。

「どうぞ」

「いいの?翡翠喜ぶだろうなぁ。このお揃いの根付も金と銀にあげていい?」

「勿論です」

隣では祖母たちが金魚すくいをしており、何故だか祖父も参加している。

「なぜ儂だけ逃げられるんじゃ!三郎、お主得意であったろう?」

「何匹程……」

「取れるだけとれぃ!」

「お爺ちゃん熱くなるタイプなんだ……」

「御館様は負けず嫌いですから」

「金魚だよ?」

「ですよねぇ。どこで飼うのでしょう……」

何とか金魚を取れて満足したのか、金魚の袋を車椅子の取っ手に掛けてくる。

「次どこ行くの?」

「そうじゃな。ここの神輿は動かんが、奥の広場では神輿の練り歩きがそろそろ始まるかのう?」

チラシを見て言っているが、栞の祖父はまだ時間が早いと言っている。

「じゃが、並ぶのならそろそろ行かんと混み合うからのう」

のんびりと行けばいいと祖母たちは言うが、祖父が何やらそわそわしているので、だったら行こうと奥へと進む。

「凄い人だね……」

「毎年こうだな。雪翔は来年も来るのか?」

「多分。二人共お社だし」

「夏はどうする?」

「夏?分からないけど、みんなが帰省するのに合わせてくると思うよ?」

「夏はまた違った祭りもあるから楽しみにしてろ」と昴に言われ、わかったと返事をして前を見ていると広場につき、神輿に掛けていく祖父を見てびっくりしてしまった。

「お婆ちゃん、お爺ちゃん達何してるの?」

「あの上に乗れるのは早い者勝ちなのよ。乗りたかったんでしょうねぇ」

「うちの人ももう年なのに……雪翔にいいところ見せるんだって張り切ってたから。男の人って子供よねぇ」と呑気に言っているが、かなりの高さをヒョイヒョイと駆け上がっていき、てっぺんから手を振っている。

落ちないでよ!と大きな声で言ったつもりだが、多分聞こえていない。

「あ、綿あめ買わなきゃ!周太郎さん、あそこの綿あめのお店行ってくれる?」

「私たちはここに座ってるから、気をつけていくのよ?」

「はーい」

お店で金と銀の好きそうな柄の小さな袋の綿あめと、さらに小さいピンクの袋に入った綿あめを買い戻る時に誰かにぶつかり、ごめんなさいと言って祖母の待つ場所まで戻る。

「買えた?」

「うん、喜んでくれると思う」

後ろに掛けてもうあとは荷物は手で持たないといけないなと思い、お小遣いがあといくらあるか確かめようとした時、懐に入れていたお財布がないことに気づく。

「財布が……」

「三郎、四郎」

祖母が言うのが早いか動くのが早いかという素早さで、二人が人混みに消えていき、ぶつかった時だと思いながらなぜ気づかなかったんだろうと思う。
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