下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
75 / 99
手術

.

しおりを挟む
「まず、熱の方はもう大丈夫でしょう。まだ微熱ですが、問題ないと思います。それと、レントゲンの方の右足の付け根の部分……ここの骨の変形が少し見られます。これがMRI……」と次々に写真が出され、説明が続く。

「____という事なので、考えておいてください」

「すぐに出来ますか?」

「予約制なのでできますが、入院が大体2週間ほどでしょうか。その後痛みが取れてきたらリハビリに入りますが……」

「僕、学校案内とか行きたいよ……」

「でしたら、その日は外出にしてその後予約しますか?」

「お願いします。ですが、また変形になったりしませんか?」

「気をつけていれば大丈夫でしょう。これは前の時の傷のこともあっての変形なので、ちゃんと戻してあげれば殆どが良くなります」

トントン拍子に手術の日が決まっていく。前は骨折と言っても手術はしなかったので、初めての手術となる。不安にならないといえば嘘になるが、やはり怖い。

その後は詳しく手術方法などを聞き、そのまま入院することになったので、着替えなど栞と那智が取りに行ってくれた。

「もう痛くないのにな……」

「違和感とかなかったんですか?」

「歩く時に少し……でも、そんなものなのかなって思ってて」

「先生の話だと、なかなか筋力も戻らなかったので片側に負担がかかったのだろうと。それに、付け根の部分にもヒビが入ってましたからねぇ」

「それ聞いてないよ?」

「記憶なくしてたでしょう?だからみんな言わなかったんだと思いますよ?狐を使えば治りは早いですが、雪翔の場合色々とありましたからねぇ。この手術で痛みがなくなってリハビリも上手く行けば、後は気持ちの問題だけです」

「うん……」

「ですが、焦りは禁物ですよ?」

「分かってるけど……」

「那智から聞きましたよ。妖街のこと。あちらの街は暖かいですし、那智が一緒ならば問題は無いでしょう。目的も聞いてますし、退院したら行ってみてはどうでしょう?」

「いいの?」

「いいですよ?退院して南の街に行って色々と見てくるのもいいでしょう」

「目的って何?」

「雪翔の力のことです。自分が危険な時に守ってもらわなければいけない狐と式を翡翠が中から出られないように守るのは異例です。たしかにみんな小さいですが、小さいながらも力はあります。私と那智の考えは、雪翔があの子達を守りたい気持ちのが大きくて、それを翡翠が変わりにしているのではないかと言うことです」

「僕が?」

「ええ。雪翔は優しい子ですから、みんなが傷つくのが嫌だって気持ちのほうが大きいのでしょう。色々な体験をして来るのもいいです。雪翔、みんなにちゃんと守ってもらえるようになりなさい。そして守ってあげなさい。今は難しいかも知れませんが、わかる時が必ずきますから」

「うん……」

「手術の日までみんなを返しておきます。那智の狐がいるので紫狐はこちらのままですが、みんなで交代で見に来ますから。それと、学校案内が終わってからある傍聴ですが、手術の前日です。行きますか?」

「行く。僕ちゃんと聞かなきゃ」

「分かりました」

ガラッと扉が開き、栞と隆弘が荷物を持ってきてくれた。

「なんか大変なことになったな……あ、海都からゲーム機預かってきた。それと参考書と問題集な。ちょっと見たけどかなり難しくないかそれ?」

「うん、でも何とかわかるから頑張るよ」

「微熱あるんだから、無理しちゃダメよ?後、これ賢司君から。本だって言ってたけど」

「本?」

袋から出すと陰陽師のルーツと書かれていた。もう1冊は昔の陰陽師の仕事や使役した式神。それに使われていたとされる術が解説されていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...