天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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「それも懐かしく感じませんか?」

「そうだけど、もうイメージが出来上がりすぎちゃって」

副社長室に入ると、掃除は行き届いていて、コーヒーメーカーも天満堂製品に変わっていたので、それでコーヒーを入れる。

「あ、結構美味しいかも。カプチーノとかもできるんだ」

「だんだん商品も増えてきましたね」

「最初は薬屋さんだったのに……」

「あれも表向きでしたから。ですが、もらった資料によると、天満堂薬局はチェーン店となり、全国展開したようですよ」

自分も渡された資料を見ると、品ぞろえの豊富さと、薬に関する知識、夜中でもやっている処方箋薬局で、他店舗とのグラフから見ても群を抜いている。

「兄がしたようですが、やはり最初の薬屋は辞めたくないと思ったのではないでしょうか?」

「買いやすい薬局だったら行くもんね。でも全国って……」

「コンビニ等と同じような形式を取っているようですよ」

「そうなんだ……最後の新商品開発についてってのは空欄なんだけど」

「今日の議題ではないでしょうか?」

「また嫌な予感しかしない……」

「それよりも、奏太様は1年以上向こうで過ごしたので、こちらでは一つ年をとっていることになります。19歳ですね」

「そう言えばそうだけど。向こうでは時間の流れが違うから、こちらで1年と向こうで1年は全然違うんだよね……」

「魔力が安定すれば好きな年齢に変えることもできますが」

「今のところこのままでいいかな?年取ったら考えるよ」

コンコン

「はい」

「居たのか。そろそろ会議なんだが……先に言っておくことがあってな」

結月がそう言う時には大体嫌な予感は当たる。

「嫌だ!」

「まだ何も言ってないんだが……」

「嫌な予感しかしないもん」

「感だけはいいな。あのモデルの件だ!ムーと奏太で天満堂製品の撮影。通販ファッション雑誌のモデル。明日の朝から前に行ったスタジオQに9時だ」

「嫌だ!」

「だがな、あのカメラマン違うところに行ったらしくて、新しい人らしいから、大丈夫だと思うぞ?」

あの昔にさせられたモデルの仕事がまだ生きていたなんてタダでさえ信じられないのに、カメラマンが変わったからと言って、全く嫌な思いがなくなる訳では無い。

「ムーには話したの?」

「朝に話したら逃げた!」

「だろうね。俺から話しておくからさ、お小遣いちゃんとくれよ?ムーのも!」

「あ……ムーもギャラは当然出るんだが、違う撮影もあるんだ。あのプリンの会社に、うちの犬が好きで食べてることを話したらしくてな、ぜひモデルにって。ギャラと別でいつでもプリンは無料だそうだ」

「それだけはOKしそう……」

「だろ?それもあのドッグランでの撮影にしてくれるそうだ。その分ギャラは安くなるが、犬のストレスはたまらないだろうって」

「俺もそっちがいいよ……」と項垂れる。

とにかく今から会議だと言われて会議室に三人で向かう事にした。
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